書きましたとも…。
ですがクロスオーバー。前話のフラグはしっかりと回収させて頂くのが書き手ってもんですからね。
「出会いがあれば別れもあるの!その別れは悲しいものではないわ!新たな出会いへの布石なの!」
いつもどおり可愛らしい胸を張ってくりむが誰かの名言を借りパクしてる。
好きだなぁ…くりむも…。
「てなわけで…今日はなんとゲストが来てます。3名です。」
「おぉ!誰ですか!?というか…この時期にゲスト…?」
「まぁゲストっていうか…かなたんにお客さんだけど…。」
然るべき時がきた…。てか普通に逃げたい…。
あ、なんで鍵が書き手じゃないかというと…。
「なんで俺は椅子に縛られて目隠しされなきゃならないんですか!!」
ま、こんなところだ…。そりゃ美少女…いや美人が3人も来るってなるんだったらこうなって然るべきだからな。
「そりゃあ杉崎が何しでかすか分からないからに決まってるでしょ!?耳栓とさるぐつわ?しないだけありがたいと思いなさいよ!」
「そんな殺生な!!!奏多さんっ!何か言ってくださいよ…!」
「…悪い…鍵…。オレ今そんな気分になれねえんだわ…。」
「くそ!頼みの綱が1番使えねえ!深夏ゥ!知弦さんッ!真冬ちゃんッ!」
「鍵…。アタシは往生際はいいやつの方が好きだぞ?」
「…これはこれで拷問のしがいがあるけれどね…。」
「です。たまには静かにしててください。」
致し方あるまいよ…。なにせ来るのはμ'sの3人…。オレ1人じゃどうにもならん相手だ…。
「ぐっ…深夏がそういうんだったら…俺は…俺はッ!…ぐぅ…。」
…本当に血の涙流すやつは初めて見たが…。それに突っ込む気力は無い…。
「いいねいいね。杉崎も黙ったし…。どうぞ!お入りください!」
ガラガラと扉が開き3人が中に入ってくる。
相変わらずのにこちと海未姉…。そしてことりさん。
「お邪魔します。奏多…久しぶりですね?」
笑ってるけど怖いんだよ…。頬引きつってんだよなぁ…。
「え、えー…あぁ…。海未…姉さん…お久しぶり…。」
「全く!何も声を掛けずに音乃木坂から転校したって聞いた時は何事かと思いましたよ…。」
「わ、悪かったよ…。お…。わ…私にも色々あったんだよ…。」
…5人してオレが私って言ってるのを不思議がるなよ…。
仕方ないだろ!?アイドルとしてオレを上り詰めさせた超本人の前だからな!?
「言葉遣いは…相変わらずですが。一人称はそれなりに努力してるみたいですね…。」
「は、ははは…。」
「かーなーちゃん!」
「うわっちょ!!」
やれやれとした表情の海未姉に気を取られ飛びついてくることりさんに気付かなかった。
「危ないですよ…ことりさん…。」
「えへへ…。久々だったからつい…。元気だった?」
「元気でしたよ。音乃木坂にいる時よりは…。」
「ごめんね…私が気づいてあげれてれば…。」
「ことりさんにはことりさんの立場がありますから…。気にしなくて良いですよ…。」
ヨシヨシと頭を撫でる。この人は本当に昔から変わらない。
「ん〜。撫でるの上手くなったね?」
「そんなことは無いと思いますよ…。」
「奏多!」
体制を崩して倒れ込んだオレを見下ろす様にしているのは…にこち。相変わらずちょっと高飛車だけどこの人にもオレは頭が上がらない。
「…久しぶりにこち。」
「なーんでアタシだけあだ名なのよ!さん付けで呼びなさいよ!」
「えー…だってそう言う人じゃないだろ…?」
「身長と胸のこと言ってんのね!?ばかなた!」
「そりゃ言い過ぎだ…。よっと。」
立ちあがりゃ分かるがにこちは小さい。もう25になるというのにあれから一切身長は伸びてる様子は無い。
「ぐぬぬ…。しゃがみなさいよ!」
「それは頂けねえ相談だ…。」
ヒョイっとお姫様抱っこをしてみせる。
顔を赤くして黙ってしまったにこち
いや、まぁなんかベクトルが違うが…くりむと似たようなものを感じる。
「寂しくさせて悪かったよ…何も言わなかったのはお…私が悪いからな…。」
「そ、そんなのは別に気にしてないわ!ただ何も言わないで居なくなったことが気に食わないの!」
「んー…だから今それを謝ってるんだけどな…。お気に召さないかな?お姫様…?」
お姫様抱っこのまま抱き寄せ顔を近づけ鼻息が掛かるぐらいの位置まで寄せる。
「ち、近いっ!」
「これくらいの距離で見つめないと満足してくれないだろう?にこちはさ…。」
「もう…わかったわ!許す!だから降ろして!」
…よし何とかやり過ごした…。
「「…。」」
んー?生徒会室の空気がしんとしてるのはなんでだ?
「んー?なんでみんな静かなの?お喋りしようよ?」
事を理解していないくりむが皆に声をかけるが固まったまま動かない4人は額に汗を流している。…まぁ内地とはいえ熱くなってきたからな…。
「いやいやいやいや!たかが姐さんの為に来ていいメンツじゃないだろ!?」
「です!!あの伝説のμ'sの3人です!?」
「うぉぉぁああ!!!早く俺をこの椅子から解放しろぉぉぉお!」
「…流石は奏多さんね…。作品の壁を軽々超えてくれる…。」
だからメタい発言はやめてくれって!てか、深夏、たかがってなんだよ!オレだって紛いなりにもトップスクールアイドルだからな!?でも…、まぁ…普通じゃないのか…。とは言えどもう一般人でしかないはずなんだが…。海未姉さんは弓道家に、にこちは保育士、ことりさんは親の後を継いでというか…。まぁコネで音乃木坂の教師になってるしな。
てか普通に鍵は拘束を解き放たんと暴れまくってるが…良いのか?
「すみません…申し遅れました…。私は園田海未。それでこちらが…。」
「びっくりさせてごめんね?一応、音乃木坂の方でかなちゃんの担任をしていました。南ことりです。」
「ま、その驚きようなら知ってるだろうけど!矢澤にこ。」
「?そんなにすごい人なの?」
「知らねぇでゲストって言ってたのかよ!会長さんは!」
「だって昇降口で人集りが出来てたから…野次馬根性で人の波を掻き分け前に出たら奏多さんはどちらに?って聞くからさぁ?」
「μ'sですよ!会長。貴方どれだけ世間知らずなんですか!」
「みゅ、みゅーず…?石鹸の?」
「「本人を目の前にそれを言うなぁァァ!」」
「…てか鍵は声だけで判別して暴れてたの…やばくねぇか?」
「深夏…。あの優しい口調の海未さん!そして高飛車なにこち!そしてあの特徴的な声のことりさん!分からないわけが無いだろ!?」
うわぁ…流石のオレでも引くぞ…そりゃ…。
でも、俺も…μ'sの9人なら見分けられると思うわ…。それは長い付き合いの上で…だが…。
「ところで…なんで奏多さんはμ'sと仲が良いのかしら?卒業生とは言えど…ここまで仲がいいのは不思議なのだけれど…。」
「あぁ、それはですね…えぇっと…。お名前は…?」
「紅葉知弦と申します。自己紹介が遅れてしまいすみません。」
「…知弦さんってちゃんと年上に敬意を払って綺麗な敬語…使えるんだな…。」
「…真冬も思いました…です…。」
「2人とも…ちょーっと後でお話しよっか?」
言わんこっちゃない…全然小声じゃないからそりゃ聞こえるさ。知らねぇよオレは…。
「あああぁ!俺を解放しろおぉぉ!たのむぅぅ!!」
「…賑やかな生徒会なんですね…?」
「…すみません…少々彼は特殊でして…。」
「まぁ、いいです。奏多とは7つも離れてますから…。小さい頃からの付き合いなんですよ。私達の練習やライブにも足を運んでμ'sみたいになりたいって言ってたのが懐かしいくらいですが…。」
「よ、余計なこと言うなよ!」
「事実です。奏多は黙っててください。兎に角、ご近所でお姉ちゃんお姉ちゃんと私のことを慕ってくれてたのがつい最近のように思い起こされます…。」
ナーンでそんな遠い目で過去を懐かしんで赤らんでるんだよ!!止めろ!恥ずかしいだろ!?
「海未お姉ちゃんみたいになりたいって言ってたもんねかなちゃん。」
ことりさんまで!?
「あの頃は可愛かったのに今じゃこんなにデカくなって…。でもまぁ私達のおかげですトップアイドルである栗花落 紗凪として活動してられたのよ!感謝しなさい!」
くりむの如く小さい胸を張ったにこちが威張る。
「…なんか貶された気がするんだけど…。」
「気のせいだよ…にこち…。」
「あーん何小さくて可愛かったかなたん…こほん。奏多さんがこんなに大きくなってしまって…しかも私達とは違うクールビューティなアイドルになるなんて思ってもみませんでした。」
「時の流れは残酷だね…海未ちゃん…。」
…俺が悪いみたいなのやめろよ。悲しくなるだろ!?
「にこさんのツボには刺さってるみたいですけどね…。」
「「あぁ。確かに…。」」
いや、流石だよお前ら…この環境でさえ順応して相槌を打てるぐらいになるんだからな!!怖ぇよ…普通に…。
「なるほど…ありがとうございます。」
「気にしなくていいですよ知弦さん。」
海未姉は昔っから年下でも年上でも敬意をちゃんと払えるからすげぇよ。
「ところで…なぜ奏多さんはこんな喋り方になってしまったんでしょうか?さっきの話ですと純真無垢で可愛らしい女の子のはずでしたが…。」
「「…。」」
「なぜ黙る!?」
「男の子の副会長が1人いるとは聞いていましたけれど…。」
「そのひとりが…その…。椅子に縛りつけられて…目隠しされてたら…ねぇ…?」
「…なんだか暴走した希と同じ匂いがするわね…。」
「初対面なのに扱いひでぇなこの人達!?だから拘束しないでくれって言ったのに!!」
「…くりむ。解放してやれよ…。あの状態で真面目な話されても真面目に聞こえねぇし…。何より印象が良くない…。」
「…んむぅ…かなたんがそう言うなら…。仕方ないなぁ杉崎…。」
解放した途端にどこからか取り出した花束を持って3人の前に跪く鍵。どこから出したそれ…。というか花束を常備してるのはなんなんだよ…。
「プリンセス。いえ、麗しき女神達…。今一度お目にかかれたことを感謝します。」
「あら…思ってたよりも礼儀正しいのですね。」
騙されるな海未姉!そいつの裏の顔を知ったら幻滅するぞ!?
「えぇ。ここまで奏多さんを綺麗に育て上げたのは貴方たちのお力添えがあってこそです…。あ、正式に奏多さんとお付き合いさせて頂いていま―。」
「JET〇ストルッ!」
「セカンドッ!」
「…あまり野蛮なことをするものでは無いですよ奏多…。」
「すまねぇ…海未姉…でも…コイツは…コイツだけは冗談でも言っちゃならねぇことを言ってるんだ…。」
「まさかかなちゃんが付き合うとはね?余程いい子なんだよ。」
「付き合ってなあァい!!こいつの妄想だ!!ことりさんも海未姉も惑わされないでくれよ!!」
「え?そうなんですか?仲は良さそうでしたのでてっきり…。」
まぁ仲が良いのは認めるが…。というか放課後も含めなんでだか知らねぇけどバイト先々で鍵の奴が働いてるからな…。ムカつくことに仕事は出来るしクレーム対応はしてくれるし助かってるのは事実だ…。でも付き合っちゃいねぇよ!?
「よかった…。奏多が取られたのかと…。」
「…にこち?」
「なんでもないわ!」
1番信じ込んで絶望した表情してたよ…にこち…。
まるで親父に騙されてロン〇ヌス2本抜いちゃった時のシンジくんぐらい悲痛な顔してましたよ…?
「兎に角、本日は誠にありがとうございます。来ることを知っていればお迎えにも上がれたのですが…。」
「気にしないでください。えっと…。」
「杉崎です。杉崎 鍵。」
「あぁ、杉崎くん。そのお心遣いありがとうございます。」
…セクハラしなきゃ完璧なんだけどなぁコイツ…。
変に先公に任せるより断然コイツに任せた方が安心出来るわ。
でも…。
「…あんまり信用しすぎるなよ…ことりさんも海未姉さんも…。」
「?なんで?鍵君いい子だよ?」
あーあー。知らね。
「ぐす…。ひっぐ…。」
「杉崎…センパイ…?」
なぜ泣き出した…?なんか悲しいことあったか!?
「け、鍵…?なんだ…どうしたんだよ…。」
「いや…。あのことりさんに名前、呼んでもらえるなんて…。生きててよかったなぁって…。ありがとうございます…奏多さん。」
「えぇ…。そんなに大号泣することか…?つか止めろ!手を握るな!」
「…奏多センパイ、今日ペース乱されっぱなしですね。」
「…いつも以上に口数少なくないか?真冬ちゃん。」
「そりゃそうですよ。ボロがでたら困りますから…。」
あ、それやっぱり自分でも思ってるんだ…。
「で、話題を戻しましょうか…。純真無垢な奏多さんは何処へ?」
言い方ムカつくなぁ…。
「中一から高一まで奏多はイギリス行ってたのよ。お父さんの仕事の都合でね。」
「あー…だから学士号持ちなんですね。」
「そう。いつからそんなに頭が良かったのか知らないけど。テレビ電話もしたし手紙のやり取りもしてたんだけど…。気がついた時には…もう…。」
「死んだみたいな言い方をするな。生きてんだろちゃんと。」
「かつてのかなちゃんは死んだようなものだしね…。ぐすん…。」
「止めろぉ!なんでこの生徒会のノリがあんた達にも出来るんだよ!おかしいだろ!?」
「毒を以て毒を制すだよ?もしくは目には目を歯には歯をだね。」
現国の教師らしい言い回しだなぁ!?
「兎も角私達も不思議なんです。ある日突然こうなってしまって…。なにがあったのですか?奏多…。」
本人に聞く!?いや…特に何かあったわけじゃ…。いや無いわけじゃないが…。
「…普通に舐められたら困るし、向こうじゃこっちほど語気を強く言う言い回しもねえし…。だからっつーか…。まぁ…。日本が恋しくて読んでた漫画のせいもあるっつーか…。」
「「何を読んでたんですかね…?」」
海未姉と鍵が口を揃える。
「なんでそこだけ息が合うんだよ…。まぁ…幽白とか…。4部とか?」
「あー…幽〇とか仗〇とかか…何となくわかる気がするわ。」
「じゃないですよ!知弦さんもそれで納得しないでください!深夏くらい偏ってますからね!?」
「仕方ねぇじゃん親父が持ってたのがその漫画しか無かったんだからよ…。」
「奏多…?親父、ではなくお父さんでしょう?」
あんまり書きたくはないけど、厨二チックに書くならこれが暗黒微笑って奴だろう…睨むなオレを…。
「…。ことりさんはなんで来たんだ?海未姉さんなら兎も角、にこちとことりさんが来るのはよくわかんねぇんだよなぁ…。」
「華麗に無視するとは…。成長しましたね奏多。」
嫌味かキサマッ!っと…。内なる勇次郎が出てしまった。
「…海未姉さんの言葉を全部真に受けてたら身が持たないんだよ…。」
「あら、そうですか…なら…。写真を持ってきたんですよ。昔の…かなたんの写真を。」
おい!待て!無視したことは謝るッ!だからたのむぅぅ!!
「…この頃から完成されてるのな…。姐さん…。」
「面影どころか普通に奏多センパイですぅ…。」
「ふむ…まぁあどけなさはあるが…これはこれでありだな。」
「杉崎ってやっぱりロリコン?」
「アンタにだけは言われたくないです。会長。」
あーあ…。なんでこうなるのか…。
オレが刻〇帝使えんなら普通に自身に十二の弾打ち込むよ…。
過去を変えてやる…。
「ふふふ…。いい気味です。奏多…。」
「ほんとにいつからそこまで性格悪くなった!?もっと優しかったじゃねぇかよ!!」
「そりゃあそうですよ…。貴方が何も言わずに音乃木坂から居なくなったんですから…。」
「うぐ…。」
そりゃ当たり前だが…。にしても人の心を抉ることはやっちゃダメだろ!?
「…それだけ海未ちゃんも悲しかったんだよかなちゃん…?」
「…まぁ、絵里も希も奏多に対して怒ってるってより奏多のお義母さんに怒ってるけどね…。」
「…そりゃどうも…。悪かったよ…海未姉さん…。」
「分かればいいんですよ…。」
閑話休題。
うん…。便利だね。
話題を戻すのに…。
「それでことりさんとにこちは…何故?」
「まぁ私は担任だったから…?紗鳥ちゃんにも会いたかったし…。」
紗鳥…ちゃん?
「なんで紗鳥姉のこと知ってんだ…?」
「そりゃ姉妹校だもの…。」
「あー…。そういうこと…?」
「と言うよりも私ここに来たことあるんだよ?変装してたし偽名も使ってたけど…。くりむちゃんと知弦ちゃんは覚えてるはずなんだけどなぁ…。『東 紗枝』って覚えてなぁい?」
「「紗枝ちゃん先生!?」」
「わぁ…。やっぱり覚えてた!あの時は教育実習生だったからねぇ…。でも久しぶりだねぇ?」
ちらちら2人のこと見てたからなんでだとは思ってたけど…。そういうことかよ…。
「わぁ!紗枝ちゃん先生!なの!?ホントに!?」
「そうだよ?くりむちゃん。よかったぁ…忘れられてたらどうしようかと…。」
「なんだ…紗枝ちゃん先生だったのね…。でもなんで変装なんか?」
「ほら、やっぱり顔バレはしてるから…。人集りが出来ちゃうと良くないからさ?」
まぁたしかに…。碧陽の生徒たちは結構、噂好きだしな…。
「でも良かったよ〜くりむちゃんも知弦ちゃんも元気そうで
!」
「うん!元気だよー!後輩も沢山できたし友達も増えたんだ〜。」
「頑張ったんだねぇ…。よしよし。偉い偉いっ!」
「えへへ〜。」
天性の人たらしめ…。まぁことりさんの理由はわかった。
じゃあにこちは?
「…。べつに?真姫から連絡貰っただけ。穂乃果も花陽も心配してたし。一応顔みとこうって思っただけよ。」
「…それ海未さんとことりさんから聞けば良くないですか?」
ナイス鍵!偉いぞ!物怖じせずに言えたお前を褒めてやる!
にこちは素直じゃないからな!
いいぞ!もっとやれ!
「っ!貴方初対面なのに言うわね…。」
「すみません…。でも…ほら事実ですし…。何より、あれ…見てないですから…。」
やれやれ!もっとやれ!辱めてやれ!
20代後半にもなってにっこにっこにーはキツかろう…。ふふふ…。
「ったく…。そんなににこのアレが見たいっての?」
「是非に!本物をこの目に!」
「ふふん!仕方ないわねぇ…。」
チョロいなぁ…。昔っから乗せられるとそうだけど…。
まぁ今でも、というかその歳でもツインテールにしていられるのはにこちの特権だとは思うよ…うん。
「にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこにー♪笑顔届ける矢澤にこにこー♪にこにーって覚えてラブにこっ♪」
拍手喝采!衰えることを知らない若作りッ!
流石はにこにー流石にアイドルモードのオレでもこの挨拶は出来やしない…。1回真似しようとここ見た結果錯乱したってネットニュースになってから二度とやらないようにしてる。
「うわぁ、すっげ!ホンモノだ!真冬ちゃん!すげーよ!!」
「ですです!これは紛うことなきにこちゃんです!」
「そんなに褒めなくても…。全く!褒めても何も出ないわよ!」
「それで…。なんで来たんですか?」
「そんなの当たり前じゃない!奏多に会いたかった…か…ら。」
パァンとどこぞのスラ〇ダンクの如く手と手を打ち付け合うオレと鍵と深夏。よくやったぜ!鍵!
「は…嵌められた…。にこともあろうものが…。こんなトーシロに…!?」
「よくやったぜ!鍵!お前のにこ虐のセンスには素直に脱帽だ!」
「会長と同じ手法で行けると思ったんですけどまさかまかり通るとは!やってやりましたよ!奏多さん!」
「なんだかわかんねぇけどアタシまでハイタッチしちまったじゃねぇか!」
兎も角、にこちの来た理由は分かったので一人でDI〇みたいになってるにこちはほっとくとしよう…。
「で、学業は頑張っているのかしら?」
「…。」
「はぁ…。なんで…。」
「いや…普通に…ことりさんなら知ってると思うが…。」
「あ、そういえば紗鳥ちゃんから聞いたよ〜。凄いねぇ…。編入試験満点オーバー!逆に先生の採点してたって言うんだもん〜。」
「またそんなことばかり…。もう少し素直に生きなさい!」
むぎゅっと頬を挟まれる。痛くは無いが少し息苦しい…。
「まぁまぁ…海未さん…。奏多さん、その分別の方面で頑張ってくれてますから…。大目に見てあげてください。」
「杉崎さんがそう言うのでしたら…。」
なんでーお前はそんなに外面は良いんだよ。
碧陽周辺のおじいとおばあは鍵君、今日は元気かい?と必ず挨拶はしてるわ。商店街に行きゃあ鍵坊持ってけ持ってけと惣菜の類を食いきれないくらい持たされてるのを見てるオレからすれば心底訳が分からない。
「兎に角!かなちゃんが元気で私は良かったかなぁ?穂乃果ちゃんにも絵里ちゃんにもそう伝えられるしね。あとくりむちゃんと知弦ちゃんにも会えたし〜。」
「そうですね…。みんなにもちゃんと話してあげましょう…。長居するのも申し訳無いですし…そろそろお暇しましょうかしら…。」
「あ!待ってください!最後に聞きたいことが!!」
…深夏…?なんだか嫌な予感がする。
「好きなガ〇ダムを聞いてもいいですか?」
またそれかよ!なんで来る人来る人聞かなきゃ気が済まないんだよ!!
「私は…そうですね…。フェ〇クスとかキャリ〇ーンとかですかね?」
「私はウイングゼ〇カスタム!」
「にこは…そうねぇ…。エピ〇ンとか…。ゴールド〇レームアマテラスとか…?」
全員答えんのかよ!てかなんかぽくて反応に困るんだよ!!
「それじゃあ。奏多のことお願いしますね。碧陽学園生徒会の皆さん…。」
「じゃあね?かなちゃん。くりむちゃん。知弦ちゃん。鍵君。深夏ちゃん。真冬ちゃん。紗鳥ちゃんによろしくね?」
「ああ、先生なら下で車を待機させてくれてますよ。空港まで送るって。」
「え〜。ありがとう鍵君。気が利くんだね…!」
「はい!美女の為なら!!」
「ま、そゆことだから…上手くやんなさいよ奏多。」
「にこちもあんま、周りに敵作んなよ。オ…私は助けてやれないからな…。」
「もう大人だから!そんな手助け必要無いわ!」
誰だよ…。一番最初に子供が子供の面倒みるなんて変なの!って言われて泣いてたやつ…。
まぁそれでも、胸以外は大人になってるって事だな。
「…今失礼なこと考えなかった?」
「いーえー?滅相もない…。」
この世界には宇宙に進出してないのにも関わらずニュー〇イプ
が多すぎる。
「まるでニュー〇イプのバーゲンセールだな…です。」
真冬ちゃん…。SE〇Dなのかニュー〇イプなのかサイ〇人なのかはっきりした方がいいと思うな…。てかまたしれっと人の心を読むんじゃない!!
「奏多。」
ちょいちょいと海未姉に呼ばれる。
なんだよまったく…。近くに近づくとものっそい力で抱きしめられた。ぐるじい!!!
「良いですか?貴方は1人ではありません。善樹君も今は私達の保護下にいます。だから安心してください。あんな悲劇は二度と起こさせませんから…。」
「ありがとう…海未姉…。」
「『企業』の上層には私の方から伝えます…。碧陽学園と音乃木坂学院には手を出すな…と。」
耳打ちで伝えられる。はにゃ?何を言って…というか…海未さん?なんで貴方が…『企業』の事を…?
「気にしなくていいです。私は私のやれることをしますので…貴方は学生としてその本分を果たしてください。」
そういうと抱きしめるのを辞めてしまう。
謎が謎を呼ぶ展開にオレの脳みそはパンク寸前だ。
「それじゃあ。皆さん。お邪魔しました。また遊びに来ますね?」
「何時でも大丈夫ですよ。来月は碧陽祭ですし。次来れるなら9人で…。」
「鍵君がそういうのなら次は9人で来ようね?」
「サービスはしますから。ことり先生、お気を付けて。」
「やだなぁ…。学校は違うんだから鍵君は普通に呼んでいいんだよ?」
「あ…えっと…。南さん?違うか…ことりさん…?」
「テレビの前では?」
「ことりちゃーん!!可愛いよ!こっち向いてー!!」
「ならそれでいいよ!ばいばい?かなちゃん!」
「ごめんなさいね。あんまり喋れなかったけれど…。奏多を頼むわ。」
ガラガラピシャッと閉まった扉。フッと肩をなでおろす一方。固まったまま動かない男が1人。
まぁこの生徒会にゃ男は一人しかいない訳だが…。
「こ…ことりちゃぁぁん!!!」
そんなに嬉しかったのか…。まぁでも…オレでも呼んだことない呼び方で呼べるのは正味羨ましさはある。
「楽しかったねぇ?」
「紗枝ちゃん先生久々だしね。良かったわね。元気そうで。」
「知弦ももっと話せばよかったのに…。」
「いいのよ…今日はアカちゃんに譲るわ。」
2人は思い出話に花を咲かせている。
オレにも知らない1面を見た2人だからな…何か感じることは有るんだろう…。
で、だ。さっきっからずうっと!ずぅぅっと!固まったまま動かないのは真冬ちゃんだ。ことりさんに名前を呼ばれた時に「ヒユッ」っと言う呼吸音が聞こえて以来なんの反応も示していない…何故?
…推しに名前を呼ばれたことによる尊死…?仕方ない…ショック療法だ…。
確か…真冬ちゃんは…。オレのもう1つのグループの方も知ってたはずだ…と言うよりもそっちから入ってたはず…。なら…。
耳元で囁く。
「おい…真冬…?いつまで寝てるんだい?ボクが起こしているのに…起きないだなんて…。悪い子だね…お仕―」
「ヒュッ!真冬は悪い子です!悪い子ですので!お仕置を!」
息を吹き返したようだ…。というか…。変態度なら鍵にも負けず劣らずだと思うんだよなぁ…真冬ちゃん…。
「我が妹ながら…。そりゃないぜ…真冬…。」
「何故です!お姉ちゃんには分からないのですか!?彼方さんが…!いえ!あの花奏さんが真冬の名前を呼んでお仕置だと言ってくれてるんですよ!?」
「だとしてもだ…。お姉ちゃんには理解できないよ…。」
「なら同じ気持ちになればいいのです…。百合百合なお姉ちゃんならすぐに堕ちるです…。奏多さん…?」
無茶振りが多い日だ…。仕方ない…。深夏よ…恨むなよ…。
「や、やめ!近いって!姐さん!?」
「深夏…悪い子だね…?そんな乱暴な言葉を使うもんじゃないよ…。僕は聞いてて悲しいな…。もっといい子だと思っていたのに…。」
「ひゃ!ひやめ!耳がっ!」
「ん?深夏は耳が弱いんだね…。なら…舐めても…いい…かな?」
「ストップ!ストップ!!!俺のハーレムを自分のハーレムに作り変えないでくれよ!!見てて面白いけど!!」
チッ!あと一歩だったのに…。
「ひ、ひゃ…。あ、危ねぇところだぜ…。危うく女にされちまうところだった…。」
「強い言葉は好きじゃないな…。」
「ひゃ…ひゃい…。お姉様…。」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙俺のハーレムが…!ハーレムがァァ!!」
そんなに大声を出して叫ぶことでもない。
というか…。
「私達別に杉崎のハーレムの一員になった覚えは無いからね?」
「です。」
「まぁもっと誠実だったら考えたかもしれないけれどね…?」
「ほわぁ…お姉様…。」
深夏さん…?帰ってきて貰ってもいいですか?そろそろ収集がつかなくなってしまうので。
まぁ、3人の言う通りである。別にオレ達は鍵のハーレムに加わったつもりは無い。というか金輪際ない。
「えぇ!?もうすっかり全員落ちてるものだと…。」
「そんなわけないでしょう?ライトノベルじゃあるまいし…。」
「この作品は一応議事録ですけど形式はライトノベルですよ!?何を仰っていらっしゃるんですか知弦さん!?」
「キー君の中ではそうなんでしょうね…。キー君の中では。」
「止めてくださいよ!そんな含みのある言い方!」
「でもまぁ林檎はお兄ちゃんの事好きだよ…?」
「おうおう…。そう言ってくれるのは林檎だけだよ…ありがとう…my sister…。」
ん?今…知らねえ誰かがいた気がするんだが…。まぁ気の所為だろう。
「えー…林檎ちゃんも物好きだよね…杉崎の妹だから変わり者なのはわかるけど…。」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか会長!我が義妹はよくできたいい子ですよ!?変な教育を施したバカのせいでちょっとおかしいですけど…。」
「飛鳥お姉ちゃんに言いつけちゃうよ?」
「待て!それだけは勘弁してくれ…ん?林檎さん…?いつから…ココに?」
「深夏さんが壊れるところから?」
「「いや!スルースキルが高すぎるッ!そして自然に溶け込みすぎだ!!」」
「えへへ…。林檎、よく居るかいないか分からないって言われるんだよね。」
「だとしてもだ!自然と溶け込むんじゃないよ!全く!連絡すれば迎えに行ったのに!!あとそれ褒められてねえよ!!」
「お兄ちゃんをびっくりさせたかったんだよ〜。いつの間にかもう一人増えてるし…お兄ちゃんの彼女さん。」
生徒会に入ったら全員鍵の彼女認定なのか!?この子の中ではどうなってるんだよ!?
「でも…おにいちゃん…もう少しで俺の悲願が達成されるって言ってたけど…。誰と?」
「やめろォ!口に出すな!!それはオレと林檎の会話だろぅ!?」
…ふぅん…。鍵が誰と何するって?悲願って…?
何となく分かるが…本当に変な見栄は張るしどうしようもねぇな…。
「すみません…奏多さん…。コイツが俺の義妹で…。林檎って言います。林檎、この人が例の…。」
「あぁ!音乃木坂から来たスクールアイドルさん!YouTubeで見ました!かっこいいですね!」
「あぁ…ありがとう…。」
素直にこう褒められてしまうと照れる。杉崎の思考に染められては居るがそれでも根はいい子なのだろう…。
「それで…。やっぱり『娘〇スペシャルサービスメドレー』を歌うのは大変でしたか…?」
「俺はマク〇スフロンティアに出ちゃいねぇよ!?シェ〇ルに似てるとはよく言われるけどさぁ!?」
「あれ…そうでしたか…。じゃあ…『とかちつくちて』ですか?」
「アイドル〇スターでも無い!!だったら普通にラブライブ!って言ってくれ!そっちの方がまだ救いがある!!」
「あぁ!沼津の…。」
「サンシャインじゃなぁぁあい!!!」
えぇ…兄弟揃ってこういう感じなの…?オレ…今日こんな感じなの?普通に限界迎えるよ!?
「ふふっ。冗談ですよ。紗凪さん、林檎が入院中によく見ていました。林檎もアイドルになりたいなぁって!」
「林檎ちゃん…。かなたんにすらあのスタンスとは…恐るべし!でも久しぶりだねぇ…。」
「お久しぶりです、会長さん。お元気そうでよかったです。」
「変わらず元気そうでよかったわ。でもあんまり耐性が無い人をそこまでいじめてしまうのは良くないわ。こう…ちょっとずつ攻めていかないと…ね?」
「はい!知弦さん!ありがとうございます!」
ピシッと敬礼する可愛らしい少女。
まぁ義妹っつーんだから鍵に似てないのは当たり前として…。
普通に美人なんだよなぁ…。北海道恐るべし…。
「真冬とキャラ被りしてますよ林檎さん。」
「仕方ないです。でも病弱妹キャラ+義妹というステータスは林檎の特権です!」
「林檎ちゃんがアタシの義妹になったら…。椎名…〇檎か…。ありだな」
いや!ねぇよ!!てかいつの間に復活したんだよ!
「真冬は!?妹の座を奪われてしまうのですか!?」
「真冬は鍵の義妹になればいいんじゃねぇか?」
「杉崎 真冬…。アリだな!なんかこう!籍入れたみたいで!」
「絶対嫌です!どれくらい嫌かって言われたら毒みがグ〇イオンくらい嫌です!!」
「陰険すぎる!!しかも嫌の部類が心底嫌なんだろうなって思えるぐらいに!!」
「…オレだったら鍵の妹になるのは…暗黒期のメガガルぐらいには嫌だな。」
「それはそれで嫌そう!2人してポ〇モンに例えるのは何故!?」
「「あ、なら『飛竜の卵』運搬クエのラン〇スで。」」
「もっと嫌だ!!なんでそんな雑魚キャラに!?」
「鍵は良いとこ某世紀末で一番最初にケン〇ロウに絡んで『あべしっ』って爆散する奴がお似合いだろ…。」
「みんなの中で俺の認識ってどうなってるんですか…。」
「夏場の小バエ。」
「アクアリウムにいつの間にか侵入してるちっちゃいタニシ。」
「顔もかかれないモブキャラ」
「ロケット団のしたっぱ」
「序盤のスライム」
「浮かばれねぇな!俺!!」
「林檎は好きだよ…?」
「林檎…そう言ってくれるのはお前だ―」
「ビー〇ルくらいには!」
「秘伝要員!!チャンピオンロードまでは手持ちにいるけど以降はボックス要員になる可哀想な序盤ポ〇モン扱い!?」
流石は生徒会。切れ味が良すぎる。
そして、杉崎林檎ちゃん…。侮ることなかれだな…。流石は鍵の妹なだけある。
「妹よ…然して今日は何故…?」
「うーん…なんとなくだよ?一応身内だし来年にはココに入学予定だから!」
「そうか、そうか…来年にはココに…って!えぇ!?そんなに頭良かったか!?」
「失敬な!林檎だってやる時はやりますよ!こう…。体力の限界値をご飯で削って…。火事場スキルが発動すれば!!」
「ここはモン〇ンの世界じゃない!」
「でもちゃんと推薦は貰ったもん。これでようやくお兄ちゃんと一緒にいれるね…。ずっと…ずうっと一緒だよ?」
「いつの間にそんなヤンデレ属性を身につけたんだよ!!でもまぁ頑張ったんだな…。林檎も…。」
「飛鳥お姉ちゃんにお勉強は教えてもらいましたから…。色んな意味で…。キャッ。」
「野郎ぶっ殺してやる。」
ガタンと席を立ち上がった鍵を制する。どうどう…。
「止めないでくれ!奏多さん!俺は…俺は!アイツを殺さなきゃならないんだッ!」
「ひとまず私生活ですら犯罪者ギリギリなのにこれ以上犯罪犯してどうするんだよ…。やめとけ?な?」
「奏多さん…。いや、なんか感動的な感じになってるけど、俺しっかり貶されてますよね!?」
「んなこた無いよ。お前がいなくなったらみんな悲しむんだから…。」
「「…。」」
「肯定の沈黙ですか!?否定の沈黙ですか!?」
哀れなり杉崎鍵。でもまぁ本当に杉崎が居なくなってしまえばオレへの負担がかなり増える。それだけは勘弁して欲しい。
「お兄ちゃん…愛されてるんだね…。」
「あぁ!多分な!?否定的に捉えなきゃそうだろうよ!!」
「でも今日は本当にお客さんが多いねぇ…。こうも多いと疲れちゃうよ…。」
「オレなんてクタクタだよ…。あの3人を相手取るのは骨が折れるからな…。」
「でもまぁ皆さんいい人達でしたし。なにより本物のμ'sに会えただけ良かったですよ真冬は。」
「え、さっき廊下ですれ違ったのは見間違いじゃ無かったって事ですか!?」
「あぁ、ちょうど帰り際にすれ違ったのか…。林檎ちゃんは…。」
「まぁそうなるな…。てか林檎…そろそろ帰らねぇと時間ヤバいんじゃないか?」
「んえ…ヤバ!もうこんな時間ですか!?うえーん!話し足りません…。」
「ダメだ。母さんたちが心配するだろ?送ってってやるから…。」
椅子から立ち上がる鍵、それにつられて林檎ちゃんも立ち上がる。
「むぅ…。今日のところは…大人しく帰ります…。」
「あぁ。気をつけて帰れよ。林檎ちゃん。」
「奏多さん、お兄ちゃんのことよろしくお願いします。」
「あぁ、友人としてならな。」
「もちろんそのつもりで言ってますよ。他にどういうつもりがあるのでしょうか…?」
「…最後の最後で全く…。」
「すみません…奏多さん…。帰ってきますんで…。」
「いや、良いよ。たまには早く帰れ、てかお前もそのままたまには実家に顔出してやれよ。父さんも母さんも心配してんだろ?」
「いや…そういう訳には…。」
「かなたんのご好意を素直に受け取りなさい、杉崎。いい男になりたいなら尚更、引き下がることも大切よ。」
くりむのやつ珍しくまともなこと言うじゃん。
「まぁ、後のことはアタシと姐さんに任せろ。」
「え、良いのか…深夏…。」
「馬鹿言え。お前と同じ副会長だろ?お前にできてアタシに出来ねえことはねぇよ!」
「だそうよ。キー君、あとは任せて。」
「皆…。すみません…。お先に失礼させて頂きます。」
「お気を付けて、杉崎センパイ。林檎ちゃん。」
「皆様もお身体にお気を付けて。ではまた遊びに来ますっ!」
ぺこりとお辞儀した兄妹を見送り生徒会室に残された5人。
「さ、解散しましょうか。」
「だな。」
「1回やってみたかったんだよね。本日の生徒会活動〜♪」
「「終了っ♪」」
小説じゃ伝わらない謎ポーズは辞めて貰ってもいいですかね…。
兎に角、いつも通りに解散し、会長にバレぬように生徒会室に戻り書類を広げる。
今日は鍵ではなく深夏が残ってくれるみたいだから助かった。
「悪いね。深夏…。」
「気にしないでくださいよ…。アタシだってたまには仕事しないと…。」
「まぁ、な…。」
「なんだかんだ、鍵には救われてますから…アタシたち。」
「家に帰るより居心地はいいな。あのバカが馬鹿な事をしてくれるからだろうけど。」
「ああ、悪態をつくけど…皆んなはどうか知らないっすけど…アタシは本心アイツのことは嫌いじゃないっすから…。」
「それはオレも同じくだ。あいつの言葉に、アイツの行動に救われてるオレがいる。それは揺るぎない事実だからな。」
「アタシ達姉妹は皆話せていないトラウマを抱えてる。それは真冬も同じですから…。」
それは薄々勘づいてはいた。学園生活の上で、まぁ普通では無いが校内を散策しては他の教室を覗くこともある。それこそ、同じクラスであるくりむと知弦さんは除き、深夏と鍵のクラス。真冬ちゃんのクラス。覗けば大体わかることはある。
「深夏は…鍵のおかげかクラスで浮くこともなくちゃんと交友関係もある。普通に人気者っていう立ち位置ではあるよな。」
「あぁ、まぁ…夫婦漫才って皆にはからかわれるけど…。」
「ははっ…。それはそれで嫌じゃない自分も居るんだろ?」
「鋭いっすね…。」
「夏に君と出会った鍵は『どうすれば君みたいになれる?』そう質問したみたいだね。その問いに対して君は『アタシを目指してるようじゃ生徒会に入る資格はねぇよ』と一蹴したと…。君らしいじゃないか…。」
1枚1枚書類を仕分けしながら言葉を並べる。
かえって深夏は俯いたまま書類を眺めている。
「昔の自分を見ているようで嫌だったってのもありますけどね…。」
「ほう?昔の自分か…。」
確かに…。その頃の鍵の様子は普通ではなかったと聞く。
それは先程来ていた林檎ちゃんと幼なじみである飛鳥君。2人の間で精神的な二股状態に陥ってしまったからと…。
そして彼が選んだのは…罰として、戒めとして友人達のストレス発散の捌け口になる事を望んだ…と。
「君にはその気はないように感じるんだが?」
いつにも増して巫山戯たご意見箱の中身だ。それでもこれだけアクティブに紙が入っているのはいいことだとは思う…。
でも『彼女が欲しいです…。』やら『紅葉先輩に踏まれたいです。』とかそういった類のものが多すぎる…。
馬鹿ばっかりじゃないか…。
「確かに鍵の過去とアタシの過去は違う。それでも母は父に捨てられ女手1つでアタシら姉妹を育ててくれた…。毎晩泣いていたのも見ていた。だからアタシが父さんの代わりを務めなきゃってヤッケになって父を学んだ。」
「それを学んだ結果が今の君だよね。それは分かる。」
「いまいち、男を信用できてな居ない自分がいるんだ…。それは鍵でも同じく…。」
「まぁそうだね…。心身的トラウマというものはそう簡単には矯正できない。それはオレも同じだ。」
「だから、鍵を信用出来ない自分が嫌になる…。」
成程…そういう事か…。誰よりも鍵のハーレムの中でゴールに近しいのはこの子か…。
恋心は自覚しながらも妹と母親の狭間で揺られているそんな自分が恋などしていいわけが無いと…。
「それに…アタシたちは来年にはこの学園を去らなきゃならない。母さんが再婚して内地に行くから…。」
それでも気丈に振る舞える深夏は強い。寂しさも悲しさも微塵も出さないのだから。
「奏多さん…。アタシ、鍵から聞いたよ…。」
「あぁ…別にそんなに気に病むことは無いよ。後々はオレから皆に話そうとは思っていたからな…。」
「なんで貴方はそんなに強く居られるんだ?」
「それは深夏と同じだよ。オレにも守るべきものがある。だからこそ誰にも屈することはしない。それだけだよ。」
いつもの元気を無くしてしまい、しゅんとしている深夏。いたたまれなくなってきた…。なにかオレにしてやれることは…。
はぁ…そういった趣味はないが…。仕方ない…。ずっと立ち上がり深夏の後ろに回り込む。
普段ならなんだよ!後ろに回り込まれたら投げちゃうだろ!?って言うところを微塵にも反応を示さない。
そんなに凹むなら話さなきゃいいのに…。とそれは野暮だな…。
後ろからそっと抱きしめる。
「お前には甘えられる人がいなかったな…。ずっと母さんを支えなきゃ、真冬ちゃんを支えなきゃと自分の気持ちを殺して姉として、父として振舞ってきた。」
「え…あ…。奏多…さん?」
「だからたまには甘えていいんだよ。オレでも鍵でも…。お前を包み込んでくれるやつはこの生徒会にはいくらでもいる。それに真冬ちゃんももう、お前が思うより弱くは無いんだぞ?」
「…うん…。」
後ろから回した腕をぎゅっと掴む深夏の顔は今までの天真爛漫な笑顔ではなく、優しい、少女。年頃の儚げな少女の笑顔をしている。
「鍵の事に関しては時間が何とかする…。オレには何も出来ねぇよ。でも…。アタシだけを見て欲しいって思うんならちゃんと伝えろ?アイツはそれでも変わらねえとは思うけどな?」
「あ…いや…それは…!うぅ…。」
「可愛いものが好きでも良いし。女の子っぽいものが好きでも構わないんだよ。」
「そっか…。ありがとう奏多さん。」
「それと、無理に敬語、使わなくていいからな。俺とお前はマブだ。」
「マ〇ュとニャ〇ンじゃないんだからさ…でも…ありがとう。なんか少し軽くなった気がするよ。」
そういうつもりで言ったわけじゃねぇけど…。まぁいいか…。
にしても今日の意見箱の中身…。全部蹴っても良いだろうか…?
面白さの欠けらも無いものばかりで大喜利だとしても紹介はしたくない程だ…。
「ったく…ウチの生徒はこんなんばっかり入れるから困るんだよなぁ…。」
「去年からこんな感じなのか?」
「ずっとこうらしいぜ…。会長達も去年から辟易してたからな…。」
「まぁそれだけ平和だってことだよ…。」
諦めかけ箱に手をかけた時底に引っかかっていた1枚がぴらりと床に落ちた。
何故だろう。嫌な予感がする…。深夏に見つかる前に回収してしまおう…。
それに目を向ける。ただのルーズリーフに書き記されたそれはまごうこと無くオレと鍵に対する脅迫状。
『我々に手を出すな。今年の生徒会役員がどうなっても構わないのであればそのまま続けるがいい。』
と記されていた。おもむろに握りしめポケットへとしまい込む。
「?奏多さん?どうした?そんなに険しい顔して…。」
訝しむ深夏に笑顔で返す。
「なんでもないよ。」
とだけ。これが一番最初のオレらに対する宣戦布告であった。
前回に続き、次は深夏との居残り作業。
関係値を築く上でこのやり取りはあってもいいのだと思っています。
次回は杉崎くんは頑張りすぎた結果夏風邪を引きます。
果たして、大黒柱が居ない生徒会の会話は成り立つのでしょうか…?
2025/08/16 整合性の取れない箇所の訂正をしました。