聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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闇を舞う蝶が、甘き香りで戦士の心を惑わす!
忍び寄る邪精霊、その名はエモニ!悪意を糧に咲き誇る毒の花‼
フレアの心を突き刺すのは、揺るがぬ忠誠か、それとも愛の嫉妬か!?
次回――
悪意の花咲く時!邪精霊エモニの甘き毒‼
その笑みは無邪気か、破滅の序曲か!
見逃すなよ、セインティアの運命を!


悪意の花咲く時!邪精霊エモニの甘き毒‼

(翔子視点)

 

 通信のランプが点滅して、私は慌ててボタンを押した。画面に映し出されたのは、ちょっと疲れた顔をしているけど、やっぱり眩しいくらいの笑顔が似合う、私の恋人――アイオロス君だ。

 

「――というわけで、敵の正体はまだ不明。でも、私の中にいるエリスとは別の勢力みたい」

 

 私はできるだけ冷静に、簡潔に報告したつもりだった。けど、返ってきた反応は……。

 

「なっ……!翔子、大丈夫か!?怪我は!?無理してないか!?今すぐ俺がそちらへ向かう!」

 

 ……あの、通信越しでも分かるくらい狼狽してるんですけど。

 なんか、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、オロオロしてる。いや、心配してくれるのは嬉しいけど、黄金聖闘士の威厳が吹き飛んでるから!

 

「落ち着いてよ、アイオロス君。こっちにはオルフェウスさんもヤンさんもいるし、大丈夫だから」

 

 そうなだめると、アイオロス君は画面の向こうでまだハラハラしてる。かわいい。ちょっとだけ、胸がキュンとした。

 

 ……が。精神世界では、例の駄女神が、案の定お祭り騒ぎを始めていた。

 

(ククク……見たかショーコ!我が夫(仮)は、かくも我らを愛してくれているのだ!良いぞアイオロス、もっと心配するがよい!もっと狼狽するがよい!)

 

 うるさい。ほんと、心の中で大声出さないでほしい。頭に響くんだよ。

 

 と思った矢先。嫌な予感しかしないのに、やっぱりやらかした。エリスが、私の身体の主導権を半分だけ強奪してきて、通信機に向かって吐息混じりの声を出しやがったのだ。

 

「アイオロス……心配してくれるのか?ならば、今宵、その熱い口づけで、我が恐怖を拭ってくれるなら許す……」

 

「えっ!?え、ええええっ!?」

 

 画面の向こうで、アイオロス君の顔が真っ赤に。いやもう真っ青に。いやむしろ虹色に変化している。混乱の極み。

 

「こらぁぁぁ駄女神!余計なこと言うな!」

 

 私は慌てて主導権を取り戻し、モニターに向かって頭を下げる。

 

「ご、ごめんアイオロス君!今のは私じゃなくてエリスだから!私じゃないからね!?ほんとだからね!?」

 

 ……必死で弁解しても、画面の向こうで固まってる彼は、耳まで真っ赤だ。心配と混乱と恥ずかしさが全部ごちゃ混ぜになった顔。あああああ、もう穴があったら入りたい。

 

 その後もしばらく、アイオロス君は「今すぐ行く!」「いや、やっぱり行く!」と繰り返していた。けど私は、必死に止めた。

 

「ちょっと待って!ダメだから!だって、アイオロス君がここに来たら、アテナ様を誰が守るの!?沙織ちゃん、まだ二歳でしょ!?おむつ替えだって必要でしょ!?バブバブ言ってる女神を一人にしたら大変でしょ!?」

 

 ……必死に説得したら、彼はぐぅの音も出なくなった。正論すぎて。

 でも、顔はまだ「翔子を抱きしめたい欲」でいっぱい。いやもう、画面越しに飛んでこないでよ。

 

 そんなラブコメ寸前の空気に水を差したのが、後ろから聞こえてきた妙に落ち着いた声だった。

 

「いっそのこと、我ら全員で、そちらへ移ればよいのではありませぬかな?」

 

 ……振り返ると、にこやかに立っていたのは、ドルバル。アスガルドの元教主にして、今は総大主教。通称、狸オヤジ。

 

「…………」

 

 空気読めええええええええええええええええ!!!

 

 いや確かに、合理的だよ!?全員で拠点をまとめればいいのは分かるよ!?でも今このタイミングで言う!?

 

 しかも後ろで、フレアが「ドルバル様ステキです!」と拍手してるし。なんなのこの人たち。

 

 結局、通信を切った後、私の脳内は「アイオロス君の狼狽」「エリスの悪戯」「ドルバルの割り込み発言」で、完全にキャパオーバー。頭の中がスパゲティ状態だった。

 

(ねえ神様……これで本当に世界を救えるんですか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その日、エリス神殿は異様な熱気に包まれていた。

 原因は分かっている。まさか、日本の全戦力が「推し活設備完備」の玉座の間に集結するなんて、誰が想像できただろう。

 

 ドルバルにフレア、アイオロス君に、ちっちゃいアテナ様(沙織ちゃん)さらにはオルフェウスにヤン。私と、精神世界のエリスも含めて、もうカオスの極み。

 

(え、これ本当に「世界の危機に立ち向かうチーム」なんだよね?今からでも「城戸邸漫才協会」に看板掛け替えた方が自然じゃない?)

 

 とりあえず議題は「敵の正体は何か?」。私は勇気を出して、報告を切り出した。

 

「その……私の姉、響子が日本に帰国してから事件が始まったの。タイミングが一致してるのは間違いないと思う」

 

 会議室――じゃなくて玉座の間――に、ざわめきが広がる。

 

 ドルバルは顎に手を当て、思わせぶりに呟いた。

「ふむ……タイミングだけを見れば、最も怪しい。しかし証拠がなければ、軽率に断じるべきではない」

 

 うん、正論だよね。……のはずなんだけど、その隣でフレアが机をバンッと叩いた。

 

「そんなことよりアッシュ様は!?アッシュ様のスケジュール管理は誰がしているの!?もしアッシュ様が過労で倒れたら、この世界の小宇宙バランスは崩壊するんですわよ!」

 

「今それ関係ないでしょ!?」

 

 思わず全力でツッコんでしまった。

 

 アイオロス君は、真剣な顔で立ち上がり、拳を握りしめる。

「いかなる敵であろうと、正義の名の下に打ち破るのみ!」

 

「出たよ、脳筋宣言!それ会議の答えになってないから!」

 

 さらに追い打ちをかけるように、精神世界から駄女神が参戦する。

 

「フン、手柄は我がものだ!ついでにアイオロスも我がものにする!」

 

「……この駄女神、ほんとに黙っててくれない?」

 

 場は混乱を極める一方で、オルフェウスさんは竪琴を爪弾きながらうっとりしている。

 

「どのような結末であれ、それは美しい悲劇の序曲に過ぎない……」

 

「ポエムはいいから!現実的な意見をくださいよ!」

 

 唯一まともなのはヤンさん……かと思いきや、彼はただ私を見つめて心の中で決めているらしい。

 

(……俺は、翔子様をお守りできれば、それでいい)

 

 いや、守ってくれるのは嬉しいけど!それ会議じゃなくて個人宣言だから!

 

 もう玉座の間は、完全に「勝手にしゃべる人たちの集会所」と化していた。

 

 そして極めつけ。

 沙織ちゃん――まだ2歳――が、私の隣でよちよち歩きながら「まんま!」と叫んだ瞬間、全員が息を呑んだ。

 

 ドルバルは真剣に頷きながら言った。

「……なるほど、アテナのお言葉だ。『全ての根源は食糧にある』と」

 

「いやいや!今のただのご飯要求だから!」

 

 でも誰一人として聞きゃしない。アイオロス君は「アテナ様の指示だ!」と拳を突き上げるし、オルフェウスさんは「美しき飢えの旋律……」とか言ってるし、フレアに至っては「アッシュ様のお食事管理も私が!」と勝手に張り切ってる。

 

(うん、ダメだこれ。史上最低の作戦会議だ)

 

 結局、この日の結論は――

 

「敵の正体はまだ分からない」

「でも翔子は可愛い」

「アッシュ様は世界の要」

「お腹が減ると人は争う」

 

 という、完全に意味不明なまとめに落ち着いた。

 

 私は机に突っ伏して、天を仰ぎ見ながら心の底から嘆いた。

(こんなんで世界を救えるの!?ねえ誰か答えて!?)

 

 すると精神世界の駄女神が、妙に誇らしげに言い放った。

「安心せよショーコ。我は神だ!神がいる限り、なんとかなる!」

 

(……ああもう、絶望しか見えない!)

 

 

 

 

 

(フレア視点)

 

 

 全くもって腹立たしいことですわ。あの史上最低の作戦会議、なんだったのですか?アイオロス殿は「正義!正義!」とうるさいし、オルフェウス殿は竪琴を鳴らしてポエムばかり、ドルバル殿に至っては「いかに利益を得るか」とか言ってる。極めつけはアテナ様(沙織ちゃん)が「まんま」と叫んだだけで、全員が真剣に頷くという茶番。

 

(ああ、アッシュ様……!どうしてこんな愚か者どもと私を引き離したのですか!こんな世界、滅びてもいいからアッシュ様と一緒にいたかった!)

 

 そう胸の奥で泣き叫んでいたその時です。ふと、妙な小宇宙を感じ取りました。ええ、もちろん私は鋭敏ですから、すぐに気づきました。

 

「……すみません、ちょっとお手洗いに」

 

 と、堂々と嘘をついて席を立ちましたの。誰も突っ込まないあたり、もはや会議の機能は完全に壊れていた証拠ですわね。

 

 外に出て森を歩くと――いました。ポツンと、小さな女の子。

 

「お姉ちゃん、道に迷っちゃったの。助けてくれる?」

 

 まあ!なんて愛らしい。……と言いたいところですが、残念ながら私は騙されませんわ。ええ、だって分かりますもの。背後から漂う、不気味で粘っこい小宇宙。

 

「ええ、助けてさしあげますわ。……ですがその前に。バレバレですよ、邪精霊(ドリアード)さんとやら」

 

 フレアは続ける。「全く、貴女たちのような邪魔虫のせいで、私は愛しのアッシュ様と離れるハメに…。この責任、どう取ってくださるのかしら?」

 

少女は、あっさりと正体を見破られ、悪びれもなく謝った。

 

「ごめんなさいね。でも、遊ぶのだったら、私たちも混ぜてほしいな」

 

(……はあ!?遊ぶ!?私はお姉さんごっこの相手をしに来たんじゃありませんのよ!?)

 

 私は優雅に髪をかき上げて、皮肉を込めて微笑んでやりました。

「あなた方には、名乗る作法というものもないのですね。さすが邪魔虫……」

 

 するとその少女、抱いていたクマのぬいぐるみをトントン叩きながら言ったのです。

「この子は私の友達のミック。そして、私は邪精霊、悪意を司るマリスのエモニ。さあ、遊びましょう、お姉ちゃん!」

 

 次の瞬間、周囲から無数の蝶がブワァッと飛び立ちました。しかも紫色に光っていて、触れた瞬間から力が抜けていくのが分かる。

 

「力が抜けてくるでしょう?それは、あなたの体を栄養にして咲き誇る、ロベリアの花…。お花たちに囲まれて、朽ち果てなさい」

 

 ……ちょっと待っていただけません?言ってることは物騒なのに、やってることは「花畑に埋もれて死んでね♡」って、なんかオシャレ風。こちとら命がかかっているんですのよ!

 

エモニは楽しそうにクルクル回って、スカートをひらひらさせている。

 

「お姉ちゃん!でもね、悪意って、誰の心にもあるんだよ。アッシュって人のこと、すごくすごく好きなんでしょ?でもさ、その人、あなたを裏切るかもしれないよ?」

 

 ……なにぃ!?

 

「ア、アッシュ様が裏切るわけありませんわ!あの方は世界で一番お優しく、最も聡明で、何よりも美しい……!」

 

「ふふーん?でも、エレナって人と一緒にいる時間の方が長いんでしょ?本当にあなたが一番大切なのかなぁ?」

 

「ぐぬぬぬぬぬ……!」

 

 クソガキ……!こんな小娘、ただの邪精霊のくせに、なぜそんなに核心を突いてくるのです!?私の心の最も弱いところを、まるで見透かしたかのように!

 

 顔が真っ赤になるのを感じながらも、私は必死に言い返しました。

「ア、アッシュ様は、きっと……平等に愛してくださっているだけですわ!そう、そういう方なのです!」

 

 エモニはにやぁっと笑って、クマのぬいぐるみを持ち上げた。

「ミックもそう思う?」「うん、裏切るよ」ってクマの声で答えたんですけど!?腹話術!?いやホラー!?




エレナ「ねぇ、やっぱり私……アッシュ様に告白するべきかしら?遠回しなんて性に合わないもの。愛は真っ直ぐに、よね?」

デスマスク「おいおい、またその話かよ。……だがな、エレナ。フレアもアイツに惚れてんだろ?お前さんだけが突っ走ってたら、あの子が気の毒だぜ」

エレナ「……分かってるわ。でも、譲れないの。だって私の心臓が、彼を求めて燃えてるんだもの」

デスマスク「なら余計だ。背中から撃つんじゃなくて、正々堂々と行け。アイツを巡って本気で勝負すりゃいい。負けても恨みっこなし、それが女の意地ってもんだろ?」

エレナ「ふふ……あなたにしては、ずいぶんと真っ直ぐなことを言うのね」

デスマスク「バカ言え。俺だってな、愛に生きる女は嫌いじゃねえんだ。ただし――姑息な真似だけは似合わねぇぞ」

エレナ「……ありがとう。なら私、もっと堂々と燃やしてみせるわ。この愛の小宇宙を」

この物語の着地点は‥‥。

  • 十二宮編までで十分
  • ハーデス編で終わらせて
  • ΩやNDまで続けて欲しい
  • エピソードGの世界線も欲しい
  • 黄金魂とか海皇再起も手を出そう
  • もうつまらない。今すぐ完結
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