聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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氷原を裂くは、悪意の蝶――
闇に咲いた邪精霊の花を、烈火の炎が焼き尽くす!

立ちふさがるは、殺戮を司るフォノス。
概念すらも喰らうその糸は、逃れられぬ死の罠!

だが、アスガルドの誇りを背負う神闘士フレア、
その拳に宿すは太陽をも砕く灼熱の光――!!

悪意を焼き、殺戮に挑む!
デルタ星メグレスの炎‼


悪意を焼き、殺戮に挑む!デルタ星メグレスの炎

(フレア視点)

 

 あの蝶たちが羽音を立てて押し寄せてきた瞬間、私は思わず笑みを浮かべてしまいました。なぜって?だってあんなもの、所詮は花弁に群がる虫と同じ。私の小宇宙の前では、瞬き一つの間に燃え尽きる存在ですもの。

 

「あら、綺麗な花ですね」

 

 皮肉混じりにそう呟いて、小宇宙を解き放ちました。全身から迸る灼熱の光。私の内に秘めた炎は、蝶が触れるより先に広がり、辺り一面のロベリアの花を灰に変えていきます。

 

ぱちぱちと音を立てて燃え尽きる光景を見届けた時、私の身体に自然と神闘衣が呼び寄せられました。アスガルドの誇り――デルタ星メグレスの神闘衣。冷たい大地で鍛えられた炎の守護者にのみ許される証です。

 

 鎧が組み上がる感覚は、いつだって背筋を伸ばしてくれる。背に重みを感じた瞬間、私は本来の自分を取り戻した気がしました。

 

「さすがに、名乗っておきましょうか」

 

 私はゆっくりと一歩踏み出し、目の前の小娘に声を投げました。

 

「私は聖域はアッシュ様の首席秘書官にして、アスガルドが誇る神闘士、デルタ星メグレスのフレアと申します。以後、お見知りおきを」

 

 相手は小さな少女の姿をしていながら、その目には小賢しい光が宿っていました。エモニ――悪意の名を持つ邪精霊。彼女は私の言葉を鼻で笑い飛ばしました。

 

「楽しそうね!でも、神闘士のお姉ちゃんは、なんで聖域にいるの?オーディーンに仕えるはずの神闘士が、アテナの聖域で参謀長の秘書官…なんて。代行者のおじさん(ドルバル)ともども、裏切りがお好きなのかしら?」

 

 ……ふふ。言いたい放題ですわね。ですが、そんな挑発にわざわざ乗るつもりはありません。私がアッシュ様を支えると決めた時から、私の忠義も未来もすべて、その方に預けたのです。誰にどう言われようと、揺らぐことなどない。

 

 だから私はただ、短く告げました。

 

「……では、死んでください」

 

 言葉と同時に、私の拳に灼熱が集束しました。太陽そのものを掌に抱いたかのような熱と光。私はその力を一点に凝縮させて放つ――。

 

「ソールブリョウトゥル――『太陽を砕く者』!!」

 

 空気が焼け、音が消え、世界が白一色に染まりました。光は直線となってエモニを貫き、あの小さな身体を一瞬で呑み込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エモニの口元に浮かんだのは、子供らしい無邪気さと、邪精霊特有の残酷さを同居させた笑みだった。

 

「いきなりなんて、随分ひどいわね。これは邪霊衣っていうの。お母様があつらえてくれた、私だけのドレスよ。これがある限り、私には触れることすらできないわ」

 

 彼女は、私の太陽を砕く光を受けながらも、勝ち誇ったように両腕を広げて見せた。リーフと呼ばれるその鎧が、赤黒い光を放ち、確かに私の炎を押し返しているように見える。

 

 けれど、私は静かに笑った。

 

「……それは、どうでしょう?」

 

 私の炎は、ただの火ではない。アスガルドの伝承にあるスルトの剣の力を宿した灼熱の小宇宙だ。表面を守る程度の力で、防げるものではない。

 

 次の瞬間、エモニの小さな身体が内側から燃え上がった。

 

「ぎゃあああ!?」

 

 悲鳴が夜空に響く。彼女の纏う邪霊衣は確かに強固だったが、内側に入り込んだ私の炎は、彼女の生命力そのものを焼き尽くす。外から防御しても無駄なのだ。

 

「我が炎は、世界すら焼き尽くすスルトの剣。その程度で消えるほど、アスガルドの炎は甘くありませんのよ」

 

 燃え盛る光に包まれ、エモニはやがてその姿を保てなくなり、黒い灰と化して風に散った。最後に残ったのは、クマのぬいぐるみがぼろ布のように地面へ落ちる音だけだった。

 

 私は一つ息をつき、鎧を整えた。

 

「ふん、私の相手には、千年早いですわね」

 

 そう口にした刹那、背筋に別の気配が走った。私は迷わず顔を上げ、視線を森の上へと向ける。木の枝に、一人の男が佇んでいた。

 

 月明かりに照らされ、長身の体躯に黒い戦闘衣を纏い、蜘蛛の糸のように細く鋭い小宇宙を漂わせている。その顔立ちは端正で、どこか儚げな色気すら漂わせていた。だが、その瞳には底知れぬ殺意が潜んでいた。

 

「……で、そこで見ている殿方は、次のお相手ですの?」

 

 私が声をかけると、男は軽く枝を蹴って地面へと降り立った。

 

「バレているとはな」

 

 低く、しかしよく通る声。男は、私の前に立つと、燃え尽きた妹の残骸を一瞥し、唇を歪めた。

 

「俺の可愛い妹に、随分と酷いことをしてくれるじゃないか」

 

 その言葉に、私は眉をひそめる。妹――先ほどのエモニのことだろう。

 

「あら……」

 

 私が軽く返すと、男は一歩踏み出し、名を名乗った。

 

「俺は邪精霊、殺戮を司るマーダーのフォノス。妹の仇、ここで討たせてもらう」

 

 その名を聞いた瞬間、私は悟った。この男はただの精霊ではない。殺戮そのものを神格化した存在。言葉通り、彼の周囲の空気は血の匂いを帯びていた。

 

 小宇宙が揺れる。彼のものは、蜘蛛の巣のように広がり、触れたものすべてを絡め取ろうとする粘性を持っていた。まるで、世界そのものを罠にかけるかのように。

 

「妹の死を悲しむのは結構ですが……ここは戦場ですわ。情けをかけるつもりはありません」

 

 私はそう言い放ち、拳を握った。だが、フォノスは表情一つ変えずに微笑んだ。

 

「情け?違うな。俺は妹を哀れんでいない。むしろ感謝している。あの子が散ったからこそ、俺は全力でお前を殺す理由を得たのだ」

 

 その声に、私は背筋を正した。戦士の論理。愛情と憎悪を同列に置き、殺すことを是とする存在。邪精霊とは、やはり神話の残滓であり、常人の理では測れない。

 

 彼は糸を操るように指を動かした。瞬間、目に見えぬ刃が幾筋も空間を裂いた。私は身をひねり、神闘衣で受け流す。火花が散る。刃は確かに私を斬ろうとしたが、ギリギリのところで防ぎ切った。

 

「ほう、防ぐか。さすがは神闘士。だが……これはどうかな」

 

 フォノスは指を広げた。空間一帯に、無数の糸が展開する。蜘蛛の巣のように張り巡らされ、動けば切り裂かれる。

 

 私は眉を寄せるが、恐れはしなかった。

 

「……残念ですわね」

 

 次の瞬間、私の全身から炎が迸る。熱風が吹き荒れ、糸は焼き切られていく。蜘蛛の巣は脆い。炎の前には無力。

 

 だが、フォノスは笑った。

 

「いいぞ。その炎、もっと見せてくれ」

 

 彼は一歩も退かない。焼かれてもなお、次々と糸を生み出す。燃やしても燃やしても、無限に再生するかのように。

 

 私は拳を握り直した。

 

「……ならば、太陽そのものをくれてやりますわ」

 

 拳に炎を集束させる。再び「太陽を砕く者」を放とうとしたその時、フォノスが静かに言った。

 

「俺は殺戮。燃やされようが、斬られようが、殺すことをやめはしない。お前が燃やすのは肉体だけだ。だが、俺は概念そのもの。殺すことを楽しむ限り、死なない」

 

 その言葉に、一瞬、私の心臓が跳ねた。概念の具現化――つまり、この敵は倒しても蘇る可能性がある。妹を失っても微塵も動じなかった理由はそこにあるのだ。

 

 だが、私は微笑んだ。

 

「いいでしょう。ならば、概念ごと燃やし尽くして差し上げます」

 

 私は灼熱の小宇宙をさらに燃やし、全身を炎に包んだ。フォノスの殺意と、私の炎が正面から衝突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前の男――フォノスは、妹を燃やし尽くされたというのに、哀れむでもなく憎悪するでもなく、ただ淡々と「殺戮」という概念を体現するかのように立っていた。小宇宙が形を持たず、刃となり、網となり、毒の霧のように漂っている。触れれば、確実に生命を断ち切るだろう。

 

 けれど、私は恐怖を覚えるどころか、むしろ笑みが漏れた。

 

(……アッシュ様には遠く及びませんが、まあまあのいい男ですわね)

 

 長い睫毛の下に潜む瞳は冷徹で、頬の線は鋭い。戦士としての気迫もある。だが、それ以上ではない。あの方のように、知略と胆力と美貌を兼ね備えた完全無欠の存在とは比べるまでもない。だからこそ、私は少しだけ肩の力を抜けた。

 

 フォノスの小宇宙が殺意を帯び、波のように押し寄せる。その刃は森の木々を切り裂き、地面を蜘蛛の巣状に割っていく。普通の戦士なら、立っているだけで全身を刻まれていたはずだ。

 

 私は拳を胸元に置き、神闘衣を煌めかせながら小さく呟いた。

 

「ちょうど、最近私、ストレスが溜まっていましたので……よろしいですわ」

 

 私はわざとゆっくりと、彼に向かって手招きした。挑発するように、妖艶な笑みを浮かべながら。

 

「この火照った身体を鎮めるのに、少しだけ、付き合ってもらいましょうか!」

 

 フォノスの眉がわずかに動いた。感情を持たぬように見えても、挑発には反応するのだろう。

 

「……いいだろう。お前の身体を、殺戮の供物にしてやる」

 

 次の瞬間、彼の周囲に張り巡らされていた糸が、一斉に収束し、私の全身を目掛けて襲いかかってきた。無数の刃、無数の罠。生きて帰れる余地を与えぬ一撃。

 

 だが、私は一歩も退かない。胸の奥に炎を宿し、それを全身に巡らせた。

 

「ソールブリョウトゥル!」

 

 灼熱の光線が奔流となり、迫る糸の群れを焼き尽くす。夜の森が昼間のように輝き、焦げた匂いと共に糸は霧散した。

 

 しかし、フォノスは笑みを崩さない。

 

「やはり強いな。だが、炎は焼く。俺は殺す。その差は埋まらない」

 

 彼は再び指を動かす。今度は、糸が見えない。気配もない。ただ、肌に薄氷が張り付くような冷気を覚えたかと思えば、神闘衣の表面に細かい傷が刻まれていた。

 

 

(不可視の糸……なるほど。あの妹の花のように、視覚に頼っていては遅れるということですのね)

 

 私は瞼を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。小宇宙をさらに燃やし、炎で周囲の空気の流れを可視化する。細い糸が空間を切り裂き、熱を奪っていく。そこに、彼の殺意が凝縮されている。

 

「見えましたわ」

 

 私はその網を突き破り、拳を突き出す。灼熱の衝撃波が空間を覆い、不可視の糸を一斉に焼き切る。

 

 フォノスは一歩退き、目を細めた。

 

「……妹が散った理由が分かった気がする」

 

 その言葉と同時に、彼の小宇宙が膨張した。森全体が圧迫されるような重圧。殺戮そのものが形を持ち、空気を押し潰す。

 

 私は息を整えながら笑った。

 

「ふふ……やっと本気になってくださったのね」

 

 炎と殺戮。相反する力が衝突し、爆発音が絶え間なく響く。私は拳を、彼は糸を操り、何度も何度もぶつかり合う。夜空には光と影の網が広がり、地面は次々と砕けていく。

 

 

 全身の小宇宙を一点に集める。胸の奥が焼け付くほどに熱い。視界が揺れる。けれど止まらない。

 

「……これが、私の本当のストレス発散ですわ」

 

 拳に凝縮した灼熱は、太陽を超え、世界を焼く光へと変わる。

 

「ソールブリョウトゥル!」

 

 咆哮と共に放った光が、フォノスを包み込む。彼の糸がいくつも切り裂かれ、身体が焼かれ、それでも彼は立ち続けた。

 

 炎の中で、彼は薄く笑った。

 

「……いい炎だ。だが、俺は殺戮。死なぬ」

 

 

 けれど、それでいい。私は立ち続ける。アッシュ様のために、聖域のために、そして私自身の誇りのために。

 

 




フレア「……やはり言われましたわね。神闘士でありながら、炎を使うとは珍しい、と」

ドルバル「珍しいどころか、前代未聞だ。氷と雪の大地を守るはずのアスガルドの戦士が、炎を宿すとはな。だが――お前の炎は、美しく、恐ろしい」

フレア「ふふ。誉め言葉として受け取っておきますわ。もっとも、私の炎はただ燃やすためのものではありません。アスガルドに生きた者の誇り、そしてアッシュ様に仕える忠義の証。冷たい氷をも溶かし尽くす、灼熱の意志ですの」

ドルバル「言葉も炎のように熱いな。だが――忘れるなよ、炎は燃やし尽くすだけが能ではない。時に周囲を焦がし、己すらも呑み込む」

フレア「……相変わらずですわね、ドルバル殿。言葉の端々に毒を仕込むところ、まるで蛇のよう」

ドルバル「毒もまた力だ。効き目を知り、扱える者だけが、生き残る」

フレア「……ええ。ならば私の炎と、あなたの毒。どちらが最後まで残るか――楽しみにしていてくださいませ」

ドルバル「ふっ、怖い女だ」

フレア「そちらこそ。狸殿の毒、いずれは私でも焼き尽くしてみせますわ」

この物語の着地点は‥‥。

  • 十二宮編までで十分
  • ハーデス編で終わらせて
  • ΩやNDまで続けて欲しい
  • エピソードGの世界線も欲しい
  • 黄金魂とか海皇再起も手を出そう
  • もうつまらない。今すぐ完結
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