聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
名を失いし翔子の魂を呑み込まんと迫る、その瞬間!
舞い降りたのは、愛と美の女神を名乗る白薔薇の光!
セーラー服か、神衣か!? 虚偽の玉座に響くのは笑いか、あるいは真実の力か――!
次回――「虚偽の玉座と白薔薇の神衣」
姉妹の絆が、闇をも凌駕する!
(???視点)
私はずっと様子をうかがっていた。闇のエデンに小宇宙の乱れが走った瞬間、これはただ事じゃないと飛び込んできたのだ。で、目にしたのは、うら若き乙女――つまり翔子(?)を襲おうとしている、でっかい蛇。しかも口を開けば「我こそ神だ」なんてほざいてやがる。ああもう、こういう手合いには昔から虫唾が走る。
だから私は、颯爽と決めてやった。
「待ちなさい!闇のエデンに小宇宙が乱れているから来てみれば、うら若き乙女を襲う蛇、そして神を騙るとなっちゃ黙っていられない!」
言いながら、びしっとポーズを決める。腕をクロスしてから片足を引き、腰をひねって左手を天に、右手を腰に――完璧な決めポーズだ。
「愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラー――」
そこでだ。頭の中に、突如として響いた声が私をぶった切った。
『キョーコさん!それは恥ずかしいからやめなさい!』
……え? ちょっと待って。なんで今!?なんで私の決め台詞をジャマーする!?
「何よ?せっかく決めようとしてるのに!」思わず口に出した。
そして、さらに追い打ちをかけるように、私の内側から別の声が響きわたる。女神じみた威厳に満ちた声。
『だからセーラー服はやめなさいと言ったでしょう!あなた今年で22でしょう?』
「年齢バラすな!」私は思わず大声を上げてしまった。
蛇が一瞬びくっとして引いてたけど、そんなことはどうでもいい。
「とにかく私が代わります!」と声が言い放つ。
気がつけば私の口が勝手に動き出していた。
「我こそは!愛と美、そして豊穣を司る女神!オリンポス十二神に名を連ねる超絶美女!世の男すべてを狂わせ、女すらも嫉妬に震わせるこの美貌!我が名は……生殖と豊穣の女神――アフロディー『ヴィーナスよ!』」
……待てコラ。私の身体使って勝手に名乗るんじゃない!
「なんで邪魔するの!?」とヴィーナスは頭の中で叫ぶ。
『あんただって邪魔したでしょう!』と返される。『それに聖域にアフロディーテっていう聖闘士がいるって翔子が言ってたわ。紛らわしいからヴィーナスで良いでしょう!』
「なんで神の私が人間に譲るのよ!」とヴィーナスは怒鳴る。
『早い者勝ち!』
「ふざけんな!神話の時代から名乗ってんのは私でしょうが!」
『うるさい!話が進まないでしょう!』
こうして私とヴィーナスの脳内大ゲンカが始まった。
気づけば蛇も翔子(?)も、完全に固まって私たちを見ていた。蛇なんか口半開きで、「え?」って顔してる。さっきまで「我こそ神!」って威張ってたくせに、この空気に飲まれてる。
ようやくヴィーナスが折れた。
『……仕方ないわね。今回は譲りますが、覚えてなさいよ、キョーコさん』
「ふん、最初からそうすればいいのよ!」私は勝ち誇ったように返した。
で、改めてポーズを決め直す。片足を踏み出して、胸を張って、堂々と宣言する。
「私は!愛と正義のセーラー服美少女戦士!セーラーヴィーナス!金星に代わってお仕置きよ!」
……沈黙。
うん、静寂ってこういうことを言うんだろう。さっきまでドス黒い小宇宙と怒号で満ちていた玉座の間が、今は鳥が鳴きそうなくらいの静けさ。蛇も翔子(?)も、揃って目を丸くして私を見てる。
「………………。」
いや、分かってる。自分でもちょっと痛いのは分かってる。でも、決まったんだよ?自分的には完璧に決まったんだよ!?なのに、なんで誰も何も言わないの!?
翔子(?)なんか、虚ろな瞳で首を傾げてるし。蛇に至っては、舌をペロペロさせながら「え、これ何の時間?」みたいな顔してる。
でも私はめげない。静寂はむしろ拍手の前触れ。そう信じて胸を張った。
「ふふん……決まったでしょ?」
……まだ沈黙。
あれ?
……まあいい。私はこれで完全に空気を支配した。
◆
私の勝利宣言の直後、頭の中でぶつぶつ言っていたヴィーナスが、ようやく観念したらしい。ドヤ顔で胸を張る私に、天からスパァン!って光が降り注いできた。まるで舞台のスポットライト。でもこれがただの照明じゃないのは、肌で分かる。
眩しいくらいの光が身体を包み込んで、次の瞬間、セーラー服がシャラララって消えた。いや、正確に言うと、破けて弾け飛んで、その下からきらっきらの神衣が姿を現したんだ。
「ちょ、ちょっと待って!私のセーラー服!?」
頭の中で叫ぶ私を無視して、ヴィーナスの小宇宙はどんどん膨らんでいく。真珠色に輝く胸当て、流れるみたいなラインのスカート風のパーツ、背中からはふわっと透明なベール。極めつけは腰のあたりに咲く巨大な薔薇の飾り。
「どう?これぞ私の神衣(カムイ)。あんたの安っぽいセーラー服とは格が違うでしょ?」
ヴィーナスのドヤ声が頭に響く。私は内心めっちゃ悔しいけど、実際に格が違いすぎて反論できない。セーラー服が学園祭のコスプレ衣装なら、今のこれは銀座のショーケースに飾られるオートクチュール。比べるのも失礼。
その神々しさに、あの蛇まで「ひぃっ」って声を漏らして後ずさった。お前、さっきまで「我こそ神」って威張ってなかったか?何が神だよ、薔薇一輪でビビってんじゃないわよ。
私は(というかヴィーナスが主導権握ってる私の身体は)、その蛇を一瞥すると、くるっと翔子?の方に向き直った。
「エリスちゃん、人間と融合しすぎたみたいね。ちょっと危ない状態よ。とりあえず、ここをこうして…」
そう言って、額に指をそっと触れる。すると、指先からじんわり温かい小宇宙が流れ込んでいく。まるでホットアイマスクのCMみたいに、じわじわと効いてる感じ。
翔子の周りに渦巻いていた不安定な紫一色のオーラが、するすると青と紫の二重螺旋に戻っていくのが見えた。あの異様な気配が和らいで、翔子の瞳に光が戻る。
「…あれ?お姉ちゃん?」
おお、やっと翔子の声だ!思わず抱きしめたい気分だったけど、その前にヴィーナスが「待って」とストップかけてきた。
(なんでよ!ここはお姉ちゃんムーブで感動の再会タイムでしょう!?)
『落ち着きなさい。今は神同士の会話が先』
仕方なく我慢してると、翔子の中から別の声が響いてきた。
「キサマ……アフロディーテか?」
おっと、これが本物のエリス?確かに声がちょっと低くて偉そう。さっきまでの翔子とは明らかに違う。
「しばらくはヴィーナスと名乗るわ。エリスちゃん、人間とあまり深く融合するのは、神としてどうかと思うわよ?」
ヴィーナスが言うと、エリスはしばらく黙り込んだあとで、ぼそっと返した。
「…………ショーコは我が依代にて、我自身だ」
おおー、なんかラスボス感ある返答。でもヴィーナスは全然ひるまない。むしろ鼻で笑ってる。
「ふーん。でも、危なく誰でもなくなるところだったわよ。気をつけなさい」
「……………………すまない」
えっ!?今の「すまない」って言った!?あの尊大女神が謝った!?
頭の中で私は思わず叫ぶ。
「ねえヴィーナス!今の聞いた!?女神様が素直に謝ったよ!?」
『格の違いを見せれば当然よ。私は愛と美を司る女神。場の空気を支配するのは得意中の得意』
「いや、ドヤ顔すぎるだろ…」
けど実際、私の目の前でエリスが押し黙ってるのを見ると、確かに格の違いってこういうことなのかもしれない。今まで散々暴れてた神が、完全に気圧されてる。
蛇もさっきから壁際で震えてるし、玉座の間は完全にヴィーナス空間。翔子も少しずつ落ち着きを取り戻してきてる。
よし、ここは私の出番だ。主導権を取り戻すチャンス!
「というわけで!」と大声で言って、私は再び腕をクロスしようとした。
だが、すかさずヴィーナスの声が割り込む。
『やめなさい。そのポーズは格が落ちる』
「なんでよ!今こそ決めポーズで締めるタイミングでしょ!」
『女神はポーズを取らなくても輝くもの。そこを理解しなさい』
……くそぅ、理屈っぽいくせに妙に説得力ある。結局私はまたしても引き下がるしかなかった。
でもまあ、今のところ翔子が無事に戻りつつあるし、エリスも大人しくなってるし、蛇もビビってるし、結果オーライか。
……ただし。心の中でだけは宣言しておく。
「次のチャンスでは絶対に私のポーズで決める!」
誰も聞いてなくても、そう誓ったのだった。
◆
玉座の間で状況をようやく理解してきた翔子が、ぽかんと口を開けたまま私を見ていた。いやまあ、セーラー服から一瞬で神衣に早変わりしてれば驚くのも当然か。しかも薔薇付きの豪華仕様。舞台衣装感あるし。
「お姉ちゃん…なんでここに?その格好は…?」
ああ翔子、可愛い妹よ。その純粋な疑問はもっともだ。けど私は胸を張り、優雅に髪を払って言ってやった。
「詳しい話は後でゆっくりしてあげる。今は…」
くるっと振り返って、壁際でブルブル震えている蛇をビシィッと指差す。
「あのゴミを片付けるのが先よ!」
……決まった。いや、決まったはずだ。玉座の間に響く私の声。背後でヴィーナスが「その言い回しはもう少し上品に」とかぶつぶつ言ってるけど無視。こっちは現場の空気を掴んでんの。
翔子もすぐ横に並び立ってくれた。薄紫の小宇宙をまとったその姿は、妹ながら本当に神々しい。なんだろう、妙に頼もしい。普段はドジなのに。いや、さっきもずっこけてたけど。
でも今はそんなのどうでもいい。二人並んで敵に向き合うこの構図。私のテンションは爆上がりだった。
「愛の天罰、落とさせてもらいます!」
決め台詞を高らかに叫ぶ。玉座の間にビリビリと響く私の小宇宙。蛇は「ヒィィッ!」と変な声をあげて後ずさる。おいおい、神を騙るくせに情けない悲鳴出すんじゃないよ。
でもまあ、この反応悪くない。ヴィーナスも頭の中で「よしよし、その調子」って上から目線で褒めてきた。褒め方が腹立つけど、今回は飲み込んでおこう。
今なら本当に世界を救える気がする。いや、正確には蛇一匹退治するだけなんだけど。
私は手を広げ、小宇宙を高めた。体の奥から溢れてくるのは、確かに神の力。自分でもびっくりするくらいの熱と光が湧いてくる。まるで舞台の幕が上がる瞬間みたいな昂揚感。
「ゴミ掃除の時間よ!」
うん、言ってから気づいたけど、すごく生活感あるセリフになったなこれ。でも翔子がクスッて笑ってくれたから良しとする。
蛇は「我こそ神…!」とか必死に強がってるけど、小宇宙がぷるぷる震えてるのが分かる。完全にビビってるじゃん。
翔子が隣で小宇宙を解き放ち、私も負けじと光を放つ。二つの光が重なって、玉座の間が一瞬昼間みたいに明るくなった。
「行くわよ、翔子!」
「うん、お姉ちゃん!」
この瞬間、私は確信した。姉妹で立ち向かえば、どんな神を騙る蛇だって怖くない。いや、むしろ掃除機で吸い込めるレベルの害虫。
心の中で私はガッツポーズを決めた。
「見てなさいよ、翔子。今日のMVPはお姉ちゃんだからね!」
……そう思ったけど、背後からヴィーナスの冷静な声が飛んできた。
『MVPは私に決まってるでしょう?』
……はいはい分かりましたよ女神様。
響子「……ねえ、ヴィーナス。セーラーヴィーナスって、やっぱりその……自分で名乗ってて恥ずかしいの?」
ヴィーナス「恥ずかしいどころの話じゃないわよ!神衣をまとった女神が、よりによって“セーラー服美少女戦士”なんて……格が落ちるじゃない!」
響子「えーっ!?いいじゃない!かっこいいんだから!」
ヴィーナス「かっこいい……?あれが?」
響子「そうよ!だって決めポーズまでばっちりで、あの蛇までドン引きしてたじゃない!むしろ効果抜群でしょ?」
ヴィーナス「……いや、それは引いてただけでしょ。畏怖とか威厳とは違うのよ」
響子「細かいこと気にしすぎ!“愛と正義のセーラー服美少女戦士”って名乗れる神なんて、世界中であなただけよ?めっちゃ唯一無二!」
ヴィーナス「唯一無二って……褒めてるのか貶してるのか分からないわね」
響子「もちろん褒めてるわ!私なんか心の底から“お姉ちゃん推し”になりそうだったもの!」
ヴィーナス「……(ちょっと頬を赤らめて)……まあ、あなたにそう言われると悪い気はしないけど」
この物語の着地点は‥‥。
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十二宮編までで十分
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ハーデス編で終わらせて
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ΩやNDまで続けて欲しい
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エピソードGの世界線も欲しい
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黄金魂とか海皇再起も手を出そう
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もうつまらない。今すぐ完結