聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
だがその口から飛び出したのは、まさかの「掃除完了!」の一言!?
神罰か、日常か!
女神の光とお姉ちゃんの生活感が織りなす、前代未聞のバトルコメディ‼
次回――
「白薔薇の神衣と日常感――女神のお掃除完了!」
神殿に笑いと衝撃が走る!
(響子視点)
正直な話、私だってこんなところに来る予定じゃなかったのよ。普通に日本で生活してて、妹が変な神様に憑依されてるって聞いた時だって「まーた翔子が何かやらかしたな」くらいにしか思ってなかった。でも気付いたらセーラー服で空飛んで、今は神衣(カムイ)纏って、目の前に羽生えた大蛇が「我こそ神」とかほざいてるんだから世の中どうかしてる。
蛇が禍々しい瘴気をブワーッと撒き散らしながら突っ込んでくるのを見て、私は思わずため息をついた。いや、普通はここでビビるべきなんだろうけど、なんかもう緊張感より「また掃除の手間が増える」みたいな気持ちになるのよね。玉座の間が汚れると後で誰が掃除すると思ってんの。絶対私たち姉妹じゃない。ここってエリスちゃんの庭なんでしょう?
「ええい、何者かは知らぬが、この我を前にして無事で済むと思うな!神の器ごと、喰らってくれるわ!」
はいはい、大口叩くのは自由だけどさ。そもそも自分で「神」って連呼してる時点で怪しいんだよ。神様ってのは「私は神です」なんてわざわざ言わなくても勝手に崇められるものでしょう?営業トークみたいに自分で言っちゃうとか、浅はかにもほどがある。
私は掌をすっと差し出した。ただそれだけでいい。神衣が自動で守ってくれるし、小宇宙が勝手に相手の攻撃を弾く。便利よね。これ、マジで自動ドア感覚。蛇の放つ瘴気が、私の目の前で霧みたいに消えていく。
「神の名を騙るのも悪くはないと思うけど…蛇はないでしょう。センスが古いわ」
口から出たのは完全に私の本音だった。だってそうじゃない?ギリシャ神話とか、もっと色々バリエーションあるのに、なんで蛇?羽生やしたって限界あるでしょ。ていうか蛇が神を名乗るって、どう考えても中二病の悪役ムーブよ。
「なっ…!?」
蛇が目を剥いて驚いてるけど、いやこっちが驚きたいわ。自分の攻撃が効かないことに今気付いたの?さっきから全然通用してないのに。反応がワンテンポ遅いのよ。
内側からヴィーナスがまた口を挟んできた。
『あなた、挑発が下品よ。もう少し神らしい気高さを出しなさい』
「は?いや、ここでオブラートに包んでどうするのよ。あの蛇、プライド高そうだから直球で刺した方が効くに決まってるじゃない」
『効く効かないじゃなくて、神の品格を…』
「私、人間だから。神じゃないから。現場感優先でいくから」
内心でそんな押し問答をしてる間に、蛇は必死に「ぐぬぬ」みたいな顔して突進の構えを取り直していた。いやいや、何度やっても無駄だっての。
翔子が隣で心配そうに私を見ているけど、正直この程度じゃ汗一つかかない。むしろ翔子の方が心配。さっきまで自我がグラグラで「私は誰?」状態だったんだから。
蛇は再び突進する。でも結果は同じ。目に見えない壁にドンッとぶつかって勝手に跳ね返っていく。玉座の間に響くのは鈍い衝突音と蛇の情けない呻き声。
私は腕を組んで言ってやった。
「だから言ったでしょ。蛇はないって。時代はもう少し華やかに行かないと。せめてドラゴンくらいにしときなさいよ」
翔子が思わず吹き出すのが見えた。笑ったでしょ今。場違いなタイミングだけど笑うよね、これは。
蛇はさらに怒り狂って羽をバサバサさせて威嚇してくるけど、完全に負け犬の遠吠え。いや蛇だから遠吠えじゃなくてあの舌を出してシャーって感じか。
「お姉ちゃん、煽りすぎ…!」翔子が小声で言うけど、私はニヤッと笑って返す。
「こういうのはね、徹底的にプライドを折るのが一番効果的なのよ。格下相手に優しくすると調子に乗るでしょ?」
『その言葉遣いが既に格下っぽいのよ!』とヴィーナスがまたツッコミを入れてくるけど、私は完全に無視した。
蛇はついに力尽きたのか、床に崩れ落ち、震えながら私を見上げていた。自分が神だと信じ込んでいた存在が、こうして怯える姿。哀れっちゃ哀れだけど、騙るなら最後まで堂々としてなさいよね。
私は軽く肩をすくめて言った。
「ま、騙るくらいならもっとマシな看板背負いなさい。神様ってのはね、名乗るんじゃなくて名を呼ばれるものなのよ」
◆
正直言って、私は蛇が大嫌いだ。爬虫類全般がダメってわけじゃない。トカゲとかヤモリならまだ「うわ、きもっ」と言いながらも何とか距離を取ってやり過ごせる。でも蛇は違う。あの長い胴体、ぬるっとした肌、にゅるにゅるした動き。何よりもあの無感情な目がダメだ。冷たく見下ろされてる感じがして、背筋がぞわぞわする。だから目の前で「我こそ神!」とか言いながら羽まで生やして威張ってるこの蛇は、存在してるだけでアウト。
内側でヴィーナスがつぶやいた。
『まあ、蛇は古来から神聖視されてきた生き物よ。再生や知恵、神の使いとして扱われることも多いし、決して忌むべき存在ではないわ』
あーはいはい、知識マウントきました。こっちは感覚の問題なの。いくら偉そうに神話的な意味付けしても、私にとっては「キモい」の一言で片付くのよ。
「(私が蛇、嫌いなの)」
私が即答すると、ヴィーナスは一瞬沈黙した。さすがの女神も、理屈じゃなくて個人の好悪を前にすると無力らしい。
『…そう…。でもね、エリスちゃんの名を騙るなんて、確かに不届き者だわ。それに、あの程度の蛇にキュンとするわけもないし。ええ、消えてもらいましょう』
まさかの意見一致。理由は違えど、結論は同じ。「蛇は退場してもらう」ってこと。ヴィーナス的には「ときめかないからOUT」らしいけど、私の「嫌いだからOUT」と大差ない。神様の基準も案外軽い。
蛇のやつはまだ必死に虚勢を張っていた。「我こそエリス!貴様らごときが私に敵うはずがない!」と叫びながら瘴気をまき散らす。でも私からすれば、ただのゴキブリホイホイにかかったゴキブリが必死にもがいてるだけに見える。いや、むしろゴキブリの方がまだスピード感あって手強いかもしれない。
「(ちょっと待って、蛇よりゴキブリの方がマシとか思ったら、なんか余計に蛇が哀れに見えてきた…)」
『哀れ?私はむしろ哀れむ理由すらないと思うけど』
そうだった。ヴィーナスにかかると容赦ゼロになる。
女神の彼女は「気に入らない=即消去」
その冷徹さ、ある意味羨ましい。私はどうしても人間的な同情とか余計な感情が混ざってしまう。けど、蛇だけは別。こいつに関しては本気で一片の情けも湧かない。
私はにやっと笑った。蛇に向けて、はっきりと口にする。
「ごめんだけど、私、蛇が本当に嫌いなの」
その瞬間、蛇がピタッと動きを止めた。なぜだか知らないけど、その一言がものすごい効果を発揮したみたいだ。瘴気を吐くのも忘れて、目を見開いて私を見ている。
「(効いてる効いてる!ほら見なさいヴィーナス、正直な気持ちをぶつけるのが一番効果あるんだから)」
『……意外とあなたの単純さも使えるのね。まあいいわ。じゃあ一気に片付けましょう』
私の身体が熱を帯びる。ヴィーナスの小宇宙が私の感情と共鳴して、一気に高まっていく。蛇は怯えたように後ずさりしながら「ば、馬鹿な…人間風情が…!」と叫んでるけど、もう完全に負け犬の遠吠えだ。
「蛇ってさ、見た目がどうこう以前に…騙りがダサいのよ。自分の力で勝負せずに神の名を借りるとか、プライドなさすぎ。そういうところが本当に嫌い」
◆
「消えなさい」
私がそう呟いた瞬間、自分でもびっくりするくらいの光が身体から溢れ出した。まるでスポットライトに全方向から照らされたアイドルのセンター気分。しかもピンク色。愛と美の女神カラー全開。いやいや、こんなの自分で言うのも何だけど、どう見ても神罰ってよりライブ演出でしょ。
蛇のやつはぎょっと目を見開いて、「ば、馬鹿な…!」とか言ってたけど、もう遅い。私の小宇宙に触れた瞬間、あの気持ち悪い羽付きの体が、バグったテレビ画面みたいにビリビリ揺れて、そのまま光に飲まれていった。
「ぎゃあああ!」
断末魔っていうけど、あれはどっちかというと「中途半端に強いボスキャラの退場演出」だったわね。しかも一緒に掲げてた黄金の林檎まで、セットで粉々に。見た目はすごく派手だったけど、感想はただ一つ。
「塵芥、処分完了っと」
掌を突き出すと、光が奔流となって蛇を飲み込んだ。悲鳴も虚しく、偽りの神は崩れ落ち、瘴気と共に霧散していく。最後に残ったのは、焦げた匂いと、玉座の間に漂う変な静けさだけ。
私は大きく息を吐いた。
「はー…やっぱ蛇はダメ。ストレス溜まる」
ヴィーナスが呆れた声を出す。
『神を討ち倒しておいて、感想がそれなのね…』
「(だって仕方ないでしょ。嫌いなものは嫌いなんだから)」
『本当に人間ってやつは…』
でもまあ、結果オーライ。嫌悪と気紛れのタッグで、偽神の蛇は消え去った。女神の裁きってのは、案外こういう「好み」で決まっちゃうのかもしれない。
まるで掃除機でゴミ吸った後みたいな気分だった。いや、ほんとに。派手な神罰だのなんだの言ってるけど、結局やってることはゴミ掃除。しかも嫌いな蛇だったから、いつも以上に掃除がはかどった気分。
私が勝手にスッキリしている間、精神世界の中でヴィーナスが小声でぼそっと言った。
『あの…神罰って、もうちょっと厳かにやるものなんだけど…』
「(えー?別にいいじゃない。結果オーライでしょ)」
『まあ…結果は完璧だったけど…あなたの感想が『掃除完了』っていうのは…』
「(だって、ほんとにそれ以外思いつかなかったんだもん)」
私が悪いのか?いや悪くない。だって目の前でキモい蛇が光に溶けてくの見たら、普通「うわー助かったー」くらいでしょ。それを「神罰を下した」とか言うほうが逆に芝居がかってるって。
部屋に残ったのは、きらきら漂う光の粒子と、やけに神々しい静寂。確かに雰囲気だけは最高級。こういうの、アニメだったらエンディング曲が流れ始めるタイミングなんだろうな。でも私は知っている。こういう時こそ、「まだ終わってないんじゃ…?」って展開が来るやつだ。
「(ヴィーナス、これ…本当に終わり?第二形態とかない?)」
『さすがにこれだけ派手に消滅させたら、残っている可能性は低いわ。まあ、心配なら掃除の仕上げにモップでもかける?』
「(やだよ神殿でモップがけなんて!せっかくの神々しい雰囲気が台無しじゃない!)」
そうこうしているうちに、足元に残った小さな光の欠片が、じわじわと消えていった。完全に消滅。はい終了。
私は腕を組んで大きく頷いた。
「よし、完ッ璧。神罰っていうより、女神のお掃除。まあ、響子様クリーンセンターってとこね」
精神世界のヴィーナスがため息をついた。
『……せっかくの威厳ある場面なのに。あなたってほんと、何やっても日常感にしちゃうのね』
「(日常感大事よ?だって人間だもん)」
『……いや、もういいわ。好きにしなさい』
どうやら完全に諦めたらしい。私はにんまりして、片手でピースサインを作った。光の余韻に包まれながらピースサイン。誰かに写真撮ってほしかったくらいに映えてた。
でもね、私がドヤ顔してる横で、翔子(まだちょっとぼーっとしてる)がじーっとこっちを見てるのに気づいた。
「お姉ちゃん…なんでそんなに嬉しそうなの?」
「そりゃ蛇退治したんだから!あんたの大嫌いなゴキブリ退治と同じよ!」
翔子が「あー…」って顔した。分かってる分かってる。同じ理屈。嫌いなもんが消えたら、それだけでハッピー。これぞ人間の本能。女神の気紛れだろうと、人間の蛇嫌いだろうと、結論は一緒。だから私は胸を張って言えるのだ。
「掃除完了!」
……ああ、でも次はもっとマシな相手がいいな。蛇以外でお願いします、ほんと。
(翔子・エリス視点)
――光が散ったあと、静寂が玉座の間を満たしていた。
私はただ呆然と立ち尽くしていた。
(これが……神……?)
蛇が最後に見せた崩壊は、恐ろしくて、そして哀れで。
でもお姉ちゃんは一瞬の迷いもなく、それを「ゴミ」と言い切った。
私は恐怖と同時に、どうしようもない隔たりを感じていた。
人間である私と、神と同じ場所に立つお姉ちゃんの間に横たわる深い溝を。
その時、胸の奥で別の声が冷たく響いた。
(……フン。オリュンポスの神はこれだから嫌いだ)
それはエリスの声だった。
(気紛れで生かし、気紛れで殺す。感情で動き、飽きれば見捨てる。あれが神の在り方。……だが、ショーコ。忘れるな。お前の姉も“例外”ではないぞ)
私は言葉を失ったまま、震える手で胸を押さえた。
お姉ちゃんは笑っていた。光に包まれ、眩しすぎるほどの姿で。
でも私の心には、恐怖と愛情と不安が絡み合って、形を成さない影が残っていた。
翔子「ねえ、エリス……。さっきのお姉ちゃんの中にいた“ヴィーナス”って、どんな神なの?」
エリス「……ふん。概ね神話通りだ。愛と美と豊穣を司る女神。美貌で男を狂わせ、女を嫉妬に震わせる存在……それが彼女だ」
翔子「へぇ……なんだかすごく華やかで優しそうな神様に聞こえるけど……」
エリス「優しい?笑わせるな。あれはドジで間抜けで、突拍子もないことをやらかすくせに……気に食わぬ者には容赦なく死を与える。気紛れで生かし、気紛れで殺す――そういう怖ろしい神だ」
翔子「……え、それって……お姉ちゃん、ほんとに大丈夫なの……?」
エリス「さあな。だが一つだけ言える。神というものは、いつも“人間らしさ”と最も遠い場所にいる。……それを忘れるな、ショーコ」
この物語の着地点は‥‥。
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十二宮編までで十分
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ハーデス編で終わらせて
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ΩやNDまで続けて欲しい
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エピソードGの世界線も欲しい
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黄金魂とか海皇再起も手を出そう
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もうつまらない。今すぐ完結