聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
無関心を決め込む怠惰なる神々!
そして、人と神の革新を夢見る穏健派!
三派に割れるオリンポスの思惑の中、翔子とエリスの運命は揺れ動く!
だが――愛と美の女神は商魂たくましく、地上にチョコをばらまき大人気!?
神罰か、それとも販促か!? 誰にも読めぬ女神の気まぐれ!
次回、セインティア翔編 ~明けの明星~
「裸の姉と神々の議場 ~愛と美の女神は商魂たくましく~」
「私より先にお姉ちゃんの裸を見たの、許さないからね!」
妹の怒りが天を裂き、神々の議場に笑いと戦慄が奔る!
燃えろ、小宇宙(コスモ)――!!
(翔子視点)
偽エリスが消滅してからしばらく経つのに、まだ耳の奥に変な残響が残ってる気がする。まあ、それはさておき。
問題はうちのお姉ちゃんだ。
神衣ってやつを着たまま、ふぅーっとため息をついたかと思ったら、突然中の女神様(ヴィーナス)がしゃしゃり出てきて――。
「まったく、キョーコさんの趣味は理解に苦しみますわ。愛と美の女神が、いつまでもこんな格好…」
そう言って、お姉ちゃんの手を勝手に動かしてパチンと指を鳴らした。
――で、神衣が、消えた。
裸。完全な裸。
……はい、ストップ。
頭が真っ白になるってこのことだと思う。目の前にいるのは、正真正銘うちのお姉ちゃん。だけど、光の粒子に包まれながら脱ぎ捨てた神衣の下から現れたのは――説明不要。
「なっ!?」
「なっ!?」
「なっ!?」
同時に声をあげたのは、アイオロス君、オルフェウスさん、そしてヤンさん。三人揃って顔を真っ赤にして、見事に背中をくるり。反射的に背けるあたり、まだ紳士でよかったと安堵していいのかどうか。
問題は、その後。
「ヴィーナス!あんたねぇ!人が見てる前で何てことを!」
お姉ちゃんが顔を真っ赤にしながら怒鳴る。そして次の瞬間――。
ドンッ!ゴンッ!バキッ!
三人の後頭部に鋭い拳が炸裂した。しかも角度も威力も完璧。黄金聖闘士だろうが白銀だろうが関係なし。まとめて床に沈む姿は、ある意味芸術的だった。
「見るな!」
……いや、背けてたでしょ!?って突っ込みたかったけど、口にしたら絶対巻き添えで殴られる。だから黙ってた。大人の対応ってやつ。
三人が床に突っ伏して「理不尽だ…」と呻いているのを見て、心の中で合掌。合掌しながらもちょっと笑いそうになったのは秘密だ。
で、その張本人であるお姉ちゃんはというと、顔を真っ赤にして「ちょっと着替えてくる!」と叫びながら神殿の奥に走り去っていった。光の粒子の残滓だけがふわふわ漂ってて、なんかもうシュールすぎる。
……いやいやいや。
こっちとしてはもっと大問題があるのだ。
アイオロス君がだよ?私より先に!お姉ちゃんの裸を見たんだよ!?いや、正確には「見てしまった」なんだけど、そんなの私にとっては大差ない!
あり得ない。絶対に許せない。
私は思わず腕の中で震えるアイオロス君を睨んでしまった。いや、彼は悪くない。悪くないんだけど……悪い!だって私より先に――!
「……アイオロス君」
名前を呼んだだけで、彼がビクッと肩を震わせる。うん、罪悪感はあるみたい。なら今のうちに釘を刺しておくべきだろう。
「私より先にお姉ちゃんの裸を見たの、許さないからね」
言った瞬間、彼は耳まで真っ赤に染めて、慌てて手を振った。
「ち、違うんだ!見てない!いや、見てないはずだ!背けたし!」
その必死さに思わず笑ってしまいそうになったけど、そこは我慢。ここで笑ったら本気度が伝わらない。
「ふーん?でも、見たんでしょ?」
「だから!見てない!見てないってば!」
……うん、怪しい。
そのやり取りを横で見ていたオルフェウスさんとヤンさんは、まだ床に突っ伏したまま呻いていた。けどその顔は明らかに「巻き込まれたくない」って書いてある。そりゃそうだよね。下手に口を出したら、お姉ちゃんの拳が再び飛んでくるのは目に見えてる。
私としては、アイオロス君の必死な弁明を楽しみながらも、ちょっとだけ胸がむず痒くなっていた。やっぱり好きだから、嫉妬ってやつは避けられない。
とにかく、この場は私が勝者だ。そういうことにしておく。
……その後、着替えを終えたお姉ちゃんが戻ってきた時には、男三人とも完全にしおれていた。そりゃそうだ。後頭部にあんな拳をもらって、さらに裸事件の余韻を引きずってるんだから。
私はと言えば、ちゃんと腕を組んでアイオロス君の横に立った。牽制の意味を込めて。
お姉ちゃんは不思議そうに首を傾げたけど、私はあえて何も言わなかった。ただ心の中で決めたのだ。
――これからは私の方が先に、アイオロス君に全部を見せる。
だから、もうお姉ちゃんには負けない。
◆
お姉ちゃんがまともな服に着替えて戻ってきた時、玉座の間の空気が少し落ち着いた気がした。ついさっきまで大騒ぎだったのが嘘みたいに、今は静まり返っている。
けれど、その静けさの理由は笑えないものだった。お姉ちゃんの顔を見れば分かる。さっきまで私をからかって笑っていた人と同じとは思えない。目が鋭く、背筋がぴんと伸びている。どこかで聞いた「女神の気配」ってやつは、きっとこれのことなんだろう。
「皆さんに、話しておくべきことがあります。……いいえ、私より、この方から直接」
そう言った途端、お姉ちゃんの身体から光が立ち上った。
ヴィーナスだ。
姿かたちはお姉ちゃんのままなのに、雰囲気はまるで別人。華やかで、堂々としていて、さっきまでの姉バカ感ゼロ。声も同じはずなのに、妙に響いて聞こえる。
「オリンポスは今、大騒ぎよ」
開口一番そう言われて、私は息をのんだ。
オリンポス。つまり、あのギリシャ神話の神様たちの本拠地。私たち人間にとっては絵本とか伝説の世界の存在が、現実に議論してるってこと? 想像しただけで頭が追いつかない。
ヴィーナスは淡々と続けた。
「エリスと人間が融合するなど神の沽券に関わる、と即時討滅を主張するゼウス様筆頭の過激派。エリスごとき、放っておけばよろしい、と高みの見物を決め込む無関心派。そして、人と神の新たな可能性、革新であると、あなたたちに加護を与えるべきだと主張する穏健派……意見は三つに割れ、大紛糾しているわ」
心臓がどくんと鳴った。
つまり、私とエリスが一緒にいることが、神様たちの間で大問題になってるってこと? それって、私の存在が世界規模で会議の議題にされてるってこと? 急に手のひらが冷たくなって、思わずアイオロス君の腕に力を込めた。
フレアさんが一歩前に出て、真剣な顔で尋ねた。
「では、なぜあなたがここに……?」
ヴィーナスは唇を吊り上げ、少しだけおどけた調子で答えた。
「高天原から降りてきて泥にまみれるのを嫌がる怠け者ばかりだからよ。だから、この私が直々に様子を見に来てあげた、というわけ」
高天原って言った? 日本神話の世界まで出てくるの? 頭が混乱するけど、それを口に出す勇気はなかった。ただでさえ私は蚊帳の外だし、変なこと言ったらまた「誰?」って突き放されそうで怖い。
でも、黙って聞いているだけじゃ駄目だとも思った。だって、問題の中心は私なんだから。勇気を振り絞って口を開く。
「……つまり、私は……存在するだけで、神様たちの喧嘩の種になってるってことですか?」
声が震えていた。
ヴィーナスはこちらを一瞥し、ゆっくりと頷いた。
「そういうこと。あなたとエリスの融合は、神にとっても人にとっても例のない事態。無視できるはずがないのよ」
心臓がまた大きく鳴った。背筋を冷たいものが走る。ゼウスっていう名前くらいは知ってる。雷を操る最高神で、神話のトップみたいな存在。その人が私を「即時討滅」って……。そんなの、ただの女子大生に背負える話じゃない。
気づけばアイオロス君が肩を抱いてくれていた。その温もりで、何とか正気をつなぎとめられる。オルフェウスさんは目を閉じて低く唸り、フレアさんは悔しそうに唇を噛んでいた。
ヴィーナスの声が再び響く。
「あなたたちに加護を与えるべきだと考える者もいる。だから、すぐに雷が落ちるような事態にはならない。少なくとも、私が見ている間はね」
少しだけ救いの言葉に聞こえた。けれど同時に、それは「あなたが守られているのは一時的」という意味でもある。安心なんかできるはずがなかった。
私は深呼吸して、自分に言い聞かせた。怖いけど、逃げちゃ駄目だ。だって私のせいでみんなを巻き込んでるんだから。
視線を前に戻すと、ヴィーナスがわずかに笑みを浮かべていた。その笑みは優しさなのか皮肉なのか、私には判断できなかった。
◆
ヴィーナスの説明に、玉座の間の空気が張り詰めた。オリンポスの神々の間で意見が三つに割れているなんて、想像以上に大ごとだったからだ。私なんかが関わってしまって、本当に大丈夫なんだろうか。
怖さを抑えきれなくて、私は思わず口を開いた。
「じゃあ、ヴィーナスさんは、どの意見なの?」
自分でも声が震えているのが分かった。だって、彼女が「討滅派」だったら、ここで私を消すことだってできるはずだから。
だけど返ってきた答えは意外すぎた。
「私はね……ふふふ。この地上をもっと愛と美で満たすために来たのよ!」
そう言って、ヴィーナスはウィンクした。まるで舞台女優みたいに堂々としていて、悪戯っぽく笑う姿に、場の空気が一瞬だけ緩む。
その表情があまりに明るくて、私は一瞬だけ本気で安心しかけた。でも、安心していいのか分からない。彼女は神様だ。私たちの常識では測れない存在。次の瞬間には全く逆のことを言い出すかもしれない。
ヴィーナスは肩をすくめて続けた。
「今の時代はすごいわね。簡単に情報を届けたり発信したりできるんですもの! キョーコさんの会社の企画、面白そうだったから半分くらい手伝ってあげたわ。私のプロデュースしたチョコ、大人気よ?」
「えっ……」私は思わず変な声を出してしまった。
横でヤンさんが額に手を当て、小声でつぶやいた。
「……あの異常な売上、女神の仕業だったのか」
まさかバレンタインのチョコ商戦に女神が関わっていたなんて。あれだけの売れ行きは不自然だと思っていたけど、理由を知った今は納得するしかなかった。人間相手に神の営業力を持ち込むなんて、反則にもほどがある。
私は唖然としたまま口を閉じた。ヴィーナスは得意げに胸を張っている。彼女にとっては「神として地上に干渉する理由」なんて難しいものじゃなくて、ただの娯楽や自己表現みたいなものなんだ。
「だから当面は地上をどうこうするつもりもないわ……」
ヴィーナスは軽く言ったけど、その声の奥に妙な重みを感じた。
「アテナ……城戸沙織がこんな子供(2歳)じゃあ、今手を出すのはアンフェアだろうし……ね」
私は唇を噛んだ。私がエリスと融合していることですら大問題なのに、今度はアテナまで絡んでくるのか。世界がどう転んでも、神々が好き勝手に動けば人間なんて簡単に踏み潰される。
横でアイオロス君の腕が強くなった。まるで「心配するな」と言っているみたいで、その温かさに少し救われる。
だけど、エリスの気配は少し不満げだった。胸の奥で感じる彼女の感情は、怒りとも焦りともつかないもの。きっと「アンフェア」なんて言葉が気に入らなかったんだと思う。私にとってはありがたい猶予でも、彼女にとっては自分の存在を軽んじられたようなものだから。
けれどエリスは何も言わなかった。助けられた手前、黙るしかなかったのだろう。
私はただ俯きながら考えた。ヴィーナスの言葉は本心なのか、それとも全部演技なのか。愛と美を広めるため、なんて言葉はきれいだけど、神様がそんな単純な理由だけで動くとは思えない。
もしその裏に別の狙いがあるとしたら……私たちはまた振り回されるだけだ。
でも、黙って流されるわけにはいかない。私がどうするかで、この先の未来が決まるかもしれないのだから。
翔子「ねぇ、アイオロス君……お姉ちゃんの裸を見た件、まだ説明してもらってないんだけど?」
アイオロス「ち、違う!見てない!背けてたし!ほんとだ!」
翔子「でも“見た”でしょ?」
アイオロス「……ごめん。ちょっと見えた」
翔子「~~っ!!」
(思わず耳まで真っ赤にして腕を組む)
アイオロス「でも……!俺が本当に見たいのは……翔子の――」
翔子「なっ……!?な、ななななに言ってるのアイオロス君!!」
(完全に固まる)
エリス「ふふ……ならば我が脱いでやろう。そなたの望みとあらば――」
翔子「やめてぇぇぇぇっ!!」
(慌てて胸を押さえ込む)
アイオロス「ち、違う!そういう意味じゃ――!」
翔子「だまれぇぇぇっ!!」
この物語の着地点は‥‥。
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十二宮編までで十分
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ハーデス編で終わらせて
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ΩやNDまで続けて欲しい
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エピソードGの世界線も欲しい
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黄金魂とか海皇再起も手を出そう
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もうつまらない。今すぐ完結