聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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女神たちが見守る中、翔子とアイオロスの誓いの時が迫る!
だが、ゼウス派の影が忍び寄り、運命の鐘は乱世の号砲とかす!

愛か、宿命か、それとも神々の機工か――!
立ち上がれ翔子!燃え尽きるまで、その小宇宙で未来を切り拓け!

次回!「燃えろ!愛と宿命のブライダルロード」

君の心に、小宇宙は燃えているか!?


燃えろ!愛と宿命のブライダルロード

(翔子視点)

 

 

あれから2年。私たちの世界は一気に変わった。いや、正確には私が「変えられてしまった」と言うべきかもしれない。だって見てよ――あのドルバルさん。

 

 新興学術都市に建ったパライストラっていう聖闘士養成施設兼エリート育成施設。その理事長室で、彼は椅子に深々と座りながら胃を押さえていた。

 

「『聖人』……か。民衆とは、かくも単純なものか」

 

 心の声がダダ漏れである。

 

 ええ、聖域総大主教であり、理事長でもあり、つまり世間的には「尊敬される人格者」なんだけど。裏では「あぁぁアッシュ殿がいない日本で、財団と聖域の板挟みとか聞いてないぃ!」と胃薬をポリポリしてるのを私は知っている。

 

 いやもう、キャラが崩壊してません? ってツッコミたいけど、あの人の本音は基本的に「胃痛」だから仕方ない。

 

 一方その頃、都心の高層ビル。グラード財団系列の企画会社で、ヤンさん――いや、今は「営業部長・矢野さん」――がプレゼンを終えたところだった。

 

「素晴らしい!矢野さん、ぜひその企画で進めてください!」

 

 クライアントが手を叩いて大喜び。で、返すヤンさんの一言。

 

「ありがとうございます。私は翔子様の『盾』ですので。御社をお守りするのも、我が使命です」

 

 はい出ました。「翔子様の盾」。営業で言うセリフじゃない。

 

 案の定、会議室の女性社員たちが「はぁぁ♡」ってうっとり。完全に「護衛系イケメン営業部長」のブランド確立。守ってほしいのは数字と契約書なんだけど!? 私の名前をマーケティングに使わないでください。

 

 そして夜。テレビをつけたら、そこにはオルフェウスさん。

 

「オルフェウスさんのそのお力は、一体どこから来るんですか?」

 

 司会者の質問に、彼は例の優雅スマイルを浮かべて答えた。

「ええ、私の奏でる音楽が、誰かの心を救うのなら……特に、大切な主君の心を癒せるのなら、これ以上の喜びはありません」

 

 観客「きゃあああああ!」

 

 もうね、会場が揺れてた。完全にアイドル。いや、元No.1ホストが若手実業家に転身してる時点で突っ込みどころ満載なんだけど、「主君=私」ってサラッと言うのやめて!? 全国ネットだよ!?

 

 私の顔が赤面で爆発しかけたその瞬間。

 

「(フン、それでこそ我が邪霊士〈ゴースト〉よ!)」

 

 はい出ました、エリス様。精神世界からのドヤ声援。しかもまたそのネーミング。

 

「邪霊士」って……なんかこう、RPGの下級モンスター感あるんだけど!? いや、響きがカッコいいと思ってるのはあなただけですよね!?

 

「(カッコ悪い? 不遜な小娘め。そなたの夫(仮)が誇るべき称号だぞ)」

 

 だからその「夫(仮)」って勝手に契約結婚みたいな扱いはやめて! 心の中で盛大にツッコミ入れてたら、テレビではオルフェウスさんがさらに追撃。

 

「私の会社のチョコレート事業も、愛と美をテーマに展開しています。もちろん、私の主君を想ってのことですが」

 

 観客「キャーーーー!」

 

 ……いやいやいや。バレンタイン商戦の裏で女神(ヴィーナス)と元ホストがタッグ組んでたって何そのカオス。ドルバルさんが胃を痛めるのも当然だ。

 

 で、オルフェウスさんとヤンさんがそろって「忠誠心を商売と筋トレに全振り」してる一方で、私はただの女子大生ライフを送りたかっただけなのに。

 

 結果、周囲は勝手にヒーロー営業部長とセレブ実業家を作り上げて、聖域と財団のバランスを取ってる。なんかもう、「私関係ないじゃん」って叫びたい。

 

「(関係大ありだ。そなたは女神と融合した存在。すべての中心にいるのだ)」

 

 いや、それを言うならドルバルさんの胃が中心だと思うんだけど……。

 

 私はリモコンを握りしめながら、ため息をついた。聖人、営業部長、実業家。みんな好き勝手に肩書きを増やして輝いてる。羨ましいけど、ツッコミ役としての私の胃袋もそろそろ限界なんですけど!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀座の高級ホテルのラウンジ。はい、もうその時点で場違い感ハンパない。庶民派女子大生の私には、正直「ミルクティー一杯で1,800円? え、これ学生食堂なら定食三つ頼めるよね!?」って頭の中で電卓叩いてる状態なんだけど、お姉ちゃんは堂々とした顔でメニューを開いていた。

 

「この『愛のチョコレート』、北欧でも展開しましょう! 絶対に成功させてみせるわ!」

 

 うん、さすが。声の張り方が完全に女神モード。

 

 そしてその瞬間、隣からお姉ちゃんの声で別人格が割り込んできた。

「ええ、キョーコさん。パッケージに北欧神話のルーン文字を刻印するのも素敵ですわね♡」

 

 ヴィーナス様、相変わらずのフリーダム。しかもルーン文字って、食べる前に呪文唱えないと開けられないチョコみたいになりません?

 

 さらにテーブルの向かいではフレイさんが柔らかく笑っていた。

「はは、お二人といると、ビジネスの話も神話のように壮大になりますね。ですが、素晴らしいアイデアだ」

 

 イケオジスマイルをラウンジのシャンデリアの下で輝かせないでください。店員さんがガチで見惚れてトレイ傾けてますよ。

 

 三人で「北欧進出! ルーン文字! 愛と美の女神ブランド!」って盛り上がってる横で、私はただのモブ。いや、むしろ財布係。心の中では「どうせ私が試食要員になるんでしょ……太るわ……」ってブツブツ言ってた。

 

 で、少し離れた席。そこにはフレアさん。兄であるフレイさんと女神コンビの楽しげな様子をじっと見つめていた。

 

(兄上は楽しそうだ…。あの女神…ヴィーナス様といると、本当に…。だが、あの御方は本来、アスガルドを…いいえ、私達の■■■であったはず…)

 

 ああ、心の声が重い。ラウンジのピアノ生演奏とまったく合ってない。場違いな哀愁。

 

 私はストローでアイスカフェラテをぶくぶく泡立てながら、隣に座るアイオロス君に小声でささやいた。

「ねえ、これ、なんか昼ドラみたいになってない?」

 

 アイオロス君は真顔でうなずいた。

「昼ドラというより、大河ドラマに発展しそうだ」

 

 うん、言い得て妙。神話級の昼ドラ、確かに怖い。

 

 お姉ちゃんはそんな裏の空気には気づかず、また勢いよく企画を推し進めていた。

「それで! 北欧展開のPRはフレアちゃんに任せるわ!」

 

「え、私ですか!?」とフレアさんが椅子からずり落ちそうになる。

 

「そう! 『氷の女戦士と女神のチョコ』ってキャッチコピーでいきましょう!」

 

 やめて。絶対SNSでバズるけど、フレアさんの尊厳が全部溶けるやつだから。

 

 フレアさんが真っ赤になって固まる横で、ヴィーナス様はご満悦。

「素晴らしいですわ! では北欧限定フレーバーは『塩サーモンチョコ』で!」

 

 ……絶対まずいやつ!!

 

 私は思わずテーブルに突っ伏した。高級ラウンジで「もうやだ!」って叫びそうになったの、人生初だよ。

 

 それでも、フレアさんは兄の笑顔を見ると少しだけ表情を和らげた。結局、兄の幸せを一番に願ってるんだよなぁ、この人。ちょっとだけ羨ましい。私のお姉ちゃんは、幸せよりネタ優先だから。

 

 ……そんなこんなで、銀座のラウンジは今日も神話とビジネスとギャグがごちゃ混ぜに炸裂したのでした。

 

 

 

 

 

 

 城戸邸のリビングで、私は大学のレポートをパソコンで打ち込みながら、「なんでこんな状況に?」と頭を抱えていた。横ではアイオロス君が真面目な顔で財団の資料を読んでる。彼は黄金聖闘士兼婿養子兼パパ業。私は大学生兼ママ兼女神融合体。いや、もう肩書きがカオスすぎる。

 

 そのとき、リビングの真ん中で積み木をカチャカチャと積んでいた沙織ちゃんが、パッと顔を上げて元気よく叫んだ。

「ママ、パパ、できた!」

 

 ……うん、可愛い。ほんと可愛い。

 

 でも待って。結婚する前から子持ち。しかも娘は全知全能の女神様。私の大学生活、どこで間違ったんだろう。ゼミ合宿より保護者会のほうが出席率高いとか、絶対おかしい。

 

「すごいな、沙織。もうこんなに高く積めるようになったのか」

 

 アイオロス君が柔らかい笑顔で沙織ちゃんの頭を撫でる。その姿が「理想のパパ」すぎて、ママ友界隈に出したら絶対ランキング1位取れる。いや、もう写真集出せる。

 

 と、感動していたら――私の身体が勝手に動いた。

 

「よいかアテナ!」

 

 来た。エリスだ。

 

 彼女はずいっと沙織ちゃんの前にしゃがみ込み、積み木を指差して熱弁を始めた。

「積み木とは小宇宙の基礎! バランスと構造力学を学ぶ最初の一歩なのだ!」

 

 うん、まあここまでは教育っぽい。問題はその次。

 

「ついでに、この限定版フィギュアのポージングの素晴らしさも学ぶのだ!」

 

 バッと彼女が取り出したのは、どこから出したのか分からないアニメのフィギュア。しかも限定版。しかもドヤ顔。

 

 沙織ちゃんはきょとんとしながらも、キラキラ光るフィギュアに興味津々で手を伸ばす。いやいやいや、2歳児の手に限定版フィギュア触らせるとか勇気ありすぎだから!

 

「ちょっとエリス! 英才教育にオタク文化を刷り込むのやめて!」

 

 私は精神世界で全力抗議した。でも彼女は涼しい顔で返してきた。

「何を言うか。美少女フィギュアの造形美を理解できぬようでは、この子は真の女神にはなれん」

 

 いや、アテナの条件そこじゃないから! 戦略とか知恵とか勇気とかそういうやつだから!

 

 横でアイオロス君は困った顔をしている。

「エリス……それは本当に教育なのか?」

 

「当然だ!」とエリスは胸を張った。

「この躍動感あふれる髪の造形、この布のひだの再現度! 人類の叡智が詰まっている! これぞ小宇宙の昇華!」

 

 熱弁しながらフィギュアを積み木の横に鎮座させるエリス。沙織ちゃんは「きゃあ!」と拍手して喜んでる。ああもう、この子にとって初めての推しが美少女フィギュアになったらどう責任取るの!?

 

 さらにエリスは追撃。

「アテナよ、見よ! このキャラは限定生産ゆえ、後年には市場価値が十倍にもなる可能性が――」

 

「株か!? 教育どころか投資指南じゃないの!」

 

 私は必死に突っ込んだ。沙織ちゃんは何も分からずに「ポーズかっこいいー!」と喜んでる。やめて、それを感想の第一歩にしないで!

 

 でも結局、私の叫びもむなしく、エリスはフィギュア講座を延々と続けた。沙織ちゃんは積み木の横に「謎の美少女キャラ像」を並べて満足そう。アイオロス君は「……これでいいのか」と遠い目をしていた。

 

 ……こうして我が家の教育方針は、戦士の父とオタク教育係の女神と、胃痛を抱える母によって、混沌の道を歩み始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日も城戸邸はカオスだった。沙織ちゃんは積み木で「謎の神殿もどき」を建築してるし、アイオロス君は横で真面目に財団資料を読んでる。私は大学のレポートに追われて「締め切りまであと三日、やばい」って現実逃避してた。そんな時だ。

 

 玄関チャイムが鳴る。

 

「やあ、みんな」

 

 ふらりと現れたのはアッシュ君。片手にはスーツケース。中身はお約束の――そう、メロンソーダがダース単位でギッチリ詰まってた。

 

「日本の湿度はメロンソーダの炭酸を弱らせる。実に遺憾だ」

 

 開口一番それ。挨拶より先に炭酸の憂いを語るあたり、さすがはアッシュ君である。世界の行く末よりソーダ優先。ある意味ブレない。

 

 私とアイオロス君が「お、おう…」としか言えない中、アッシュ君はまっすぐ沙織ちゃんのところへ。

 

「沙織ちゃん、いいかい。おにいさんと一緒に言ってみよう。『刻(とき)が、見える』」

 

 ……また始まった。

 

「とっき、みーう?」

 

 沙織ちゃんは首をかしげながらも頑張って復唱。無邪気すぎて逆に怖い。

 

「そう、上手だ。いい子だね」

 

 アッシュ君は満足げに沙織ちゃんの頭を撫でる。私とアイオロス君は顔を見合わせて「え、これって教育? それとも呪文?」って無言のアイコンタクト。

 

 いやもう、何なんだろうね。毎回意味不明なワードを沙織ちゃんに教え込んで、得意げに去っていくんだよ。本人は絶対「未来を見据える訓練」とか思ってるんだろうけど、こっちからすれば完全に中二病。

 

 私は内心で頭を抱えながら、別のことを考えていた。

 

(そういえば、アイオロス君って高卒で財団に就職したとき、めっちゃ馬鹿にされてたよなあ…。でも今や黄金聖闘士で財団の期待の星で、しかもパパ業までこなしてる。馬鹿にしてた人たち、今頃どんな顔してるんだろ。ざまあみろだわ!)

 

 思い出したら妙にスッキリした。大学の課題もその勢いで片付けられそうな気がしてきた。

 

 その間もアッシュ君は沙織ちゃん相手に謎のワークショップを展開中。

「よろしい、では次は――『人は変わってゆくねの。私達と同じように』」

 

「ひとはかわってゆくのね!」

 

 沙織ちゃん、飲み込み早すぎ。未来の女神に妙な方向の才能を植え付けるのやめて。

 

 横でアイオロス君が苦笑い。

「……アッシュは本当に何者なのだろう」

 

 私も答えに詰まる。ほんと何なんだろう。相談役なのか、ソーダ評論家なのか、預言者なのか。全部微妙に正解っぽいし、全部違う気もする。

 

 でも沙織ちゃんは「アッシュおじさん!」って懐いてるから、なんか止められないんだよね。

 

 結局その日も、メロンソーダのケースだけ置いてアッシュ君は去って行った。玄関先で「湿度を憎め」とか意味不明なことを言い残して。

 

 ……いや、ほんと誰か彼の取扱説明書作って。

 

 

 

 

 

 

 アッシュ君が「湿度を憎め」とか意味不明な台詞を残して帰ったあと、私はふと思い出してしまった。そう、一年前の、あの夜のことを。

 

 あれはエリスがやたらテンション高くて、私の体を勝手に乗っ取りながらアイオロス君を問い詰めたときのこと。

 

「どうなのだアイオロス! この我の愛を、受け入れるのか、否か!」

 

 はい、直球すぎる告白タイム。相手は黄金聖闘士。状況は深夜の城戸邸。しかも私の身体を使って言ってるんだから、こっちとしては「おい勝手にラブコメ始めんな!」って叫びたかった。

 

 でもアイオロス君は真剣そのもの。全然動揺しない。普通こういうとき「えっ、いや、その…」ってどもるでしょ? なのに彼は真顔で言い放ったのだ。

 

「俺は……翔子を愛している」

 

 はい、ここまではいい。少女漫画的展開。私もドキッとした。けどそのあとが問題。

 

「だが、翔子の中にいるお前……エリスも、放ってはおけない。翔子が、お前ごと受け入れろと言っているんだ」

 

 ……ちょっと待って? 今なんて?

 

 頭がフリーズした私を置き去りに、彼はさらに続けた。

 

「だから、二人まとめて、俺が愛する!」

 

 どこのハーレム主人公だよおおお!!

 

 私の心のツッコミは夜空に虚しく消えた。

 

 エリスは一瞬ポカンとしたあと、めっちゃ笑ってた。

「ふはは! 面白い! 我を妻とするかと思いきや、まとめてとはな! よかろう!」

 

 え、よかろうなの!? 普通もっと拗れるでしょ!? いやいやいや、これじゃあ私が「二股了承ヒロイン」みたいになってるじゃん!

 

 私は精神世界で机を叩きながら叫んだ。

「ちょっとエリス! なんでそこで喜ぶの!?」

 

「当然だ! 愛を告白されて喜ばぬ女神がいるか!」

 

 はい論破。いや論破じゃないけど、勢いで負けた。

 

 その日以来、エリスはアイオロス君を「我が夫」と呼ぶのをやめて、普通に「アイオロス」と呼ぶようになった。なんか照れ隠しっぽいんだけど、本人は絶対認めない。

 

 で、私? 私は困った子を好きになってしまった自分を呪ったよ。本当に。

 

 でも、あの途方もない答えを聞いたとき、心のどこかで「まあ、これがアイオロス君らしいな」って思っちゃったのも事実なんだよね。初めて会ったときから変わらない真面目さと、妙な直球の強さ。

 

 ……って思い出してたら、隣のアイオロス君が「翔子、どうした? 顔が赤いぞ」って心配そうに覗き込んできて、私は思わず叫んだ。

 

「いやいやいや! ちょっと回想してただけだから! 今は大丈夫だから!」

 

 エリスの声が心の中で笑って響く。

「(ふふふ、照れておるな翔子。やはりあの夜のことを思い出していたのだな)」

 

 うるさいよ! あんたのせいで人生ラブコメ修羅場なんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの城戸邸。縁側に座って、私はオレンジ色の空を見上げながらしみじみ思った。

 

(姉は女神と同居する敏腕キャリアウーマン。元敵幹部は私のSP兼No.1ホストと営業部長。彼氏は高卒エリートで、娘は女神で、私の身体にはもう一人女神がいる。……うん、私の人生、情報量が多すぎる)

 

 普通の大学生ライフを夢見ていたあの頃の私に教えてあげたい。「君は二年後、縁側で彼氏と娘(女神)とメロンソーダのケースに囲まれて暮らすんだよ」って。絶対信じない。信じたら逆にやばい。

 

「どうしたんだ、翔子? 難しい顔をして」

 

 横から声がする。アイオロス君だ。夕日を背にして真剣な顔で私を見つめる。黄金聖闘士なのに浴衣姿で縁側に座ってるっていうギャップ萌え。

 

「ううん、なんでもない。ただ、幸せだなって」

 

 笑って答えたら、彼もにっこり。ああ、絵になる。写真集出せる。帯には「黄金聖闘士、休日の素顔」ってキャッチコピー。絶対売れる。

 

 でもその瞬間、心の中から声が割り込んできた。

「(ふん、青春ごっこか。だがまあ、我もこの縁側の夕日とやらは嫌いではない)」

 

 はい出ましたエリス様。縁側文化を即座に評価する女神。次の瞬間には「縁側とは宇宙のバランスを象徴する建築様式!」とか講釈垂れそう。

 

「ちょっと黙ってて! 今いい雰囲気なんだから!」

 

 私は心の中で全力抗議。エリスは「(わかっておる、我は空気が読める女神だぞ)」と胸を張る。いや、絶対読めてないから!

 

 そんな私の心の葛藤を知ってか知らずか、アイオロス君はのほほんと笑って、私の頭をポンと撫でた。

「翔子とこうして並んで座ってると、不思議と心が落ち着く」

 

 ああ、ずるい。そのセリフ、夕焼け効果で3割増しで響くんですけど。胸がドキンってなるんですけど。

 

「(くくく、赤くなっておるな。やはり乙女よのう)」

 

 エリスの笑い声が精神世界に木霊する。やめて! 今一番バレたくないタイミング!

 

 私は顔をそらしてごまかす。

「そ、そうだね。私も落ち着くよ。……ただ、なんか変なことばっかり起きるからさ、この静けさが逆に怖いなって思う」

 

 本音がポロリ。そしたらアイオロス君は真剣な顔になって、空を見上げた。

「大丈夫だ。何があっても、俺が守る」

 

 おおお……! かっこいい。惚れる。いや、もう惚れてるんだけど! でも改めて惚れる! やばい、心臓が持たない!

 

「(ふむ、確かに悪くない男だな。だが我も守るぞ。いや、主にメロンソーダを)」

 

 最後の一言で全部台無しだよ!!

 

 

 

明日は私と、アイオロス君の・・・・結婚式だ。




翔子「……ねぇエリス。結婚式って、普通は新郎新婦が二人で夜を過ごすんだよね?」

エリス「当然だ。アイオロスは、まず我と過ごすのが筋であろう!」

翔子「はあ!? アイオロス君は“私”の彼氏だから! 最初は私に決まってるでしょ!」

エリス「ふん、そなた一人では成り立たぬ。そなたの肉体に我もいる以上、順番は我が優先だ!」

翔子「……ちょっと待って、それって結局“同時進行”になるんじゃ……!」

エリス「良いではないか。三位一体の愛よ! まさに新しい神話の幕開けだ!」

翔子「やだやだやだ! 変な神話作らないで!!」

――そんなふたりの精神世界バトルをよそに、当のアイオロスは布団の端で、真っ赤になりながら「どっちでもいいから早く寝てくれ……」と震えていたのであった。

この物語の着地点は‥‥。

  • 十二宮編までで十分
  • ハーデス編で終わらせて
  • ΩやNDまで続けて欲しい
  • エピソードGの世界線も欲しい
  • 黄金魂とか海皇再起も手を出そう
  • もうつまらない。今すぐ完結
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