聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
総大主教ドルバル、笑顔の裏で胃を抱え、教育界をも支配する野望を燃やす!
そして獅子座アイオリア、日本行きを命じられ、兄の影を追い求めて旅立つ!
参謀長と聖人と獅子
(アッシュ視点)
俺の執務室は、聖域の新名所「情報管理棟」の最上階にある。ガラス張りの壁に囲まれ、ホログラムディスプレイが部屋いっぱいに展開。まるでSF映画の司令室みたいな光景だが、れっきとしたギリシャの聖域だ。神話の遺跡にLANケーブルを引き回したときは本気でゼウスに雷落とされるんじゃないかと震えたが、今のところ無事に稼働している。
ディスプレイには各地のパライストラからの定時報告が流れ続けている。候補生の小宇宙出力や心拍数、生活態度まで全部リアルタイムで。もはやスパルタ教育の近代化版。
そんな中、エレナが軽快に報告してきた。
「参謀長。日本パライストラより定時報告。候補生・星矢の小宇宙出力、計測上限を三度超過。機材の更新を申請します」
「はは、またか。許可しよう。まったく、城戸光政の子供たちはどいつもこいつも規格外だな」
俺が笑うと同時に、エレナの手元の端末が反応。次の瞬間、画面に数人の少年たちのデータが並ぶ。
紫龍――五老峰で老師直々のスパルタ。小宇宙の質が黄金級に到達しているとか、もうバグ。
氷河――北欧のブルーグラード支部。カミュから直接指導を受け、絶対零度の片鱗を見せ始めている。十一歳でそんな温度に触れていいのか。
瞬と一輝――アンドロメダ島とデスクイーン島の兄弟。特に兄・一輝の小宇宙は観測者泣かせ。爆発力がありすぎて機材が三度ほど吹き飛んだ。予算どうしてくれる。
俺はモニターを眺めながら、つい口元が緩む。
(いいぞ、いいぞ……! 原作通り、いや、それ以上に育っている! 俺の教育方針は間違ってなかった! このまま行けば、血塗られた銀河戦争なんて起こさずに済む!)
そう、俺は未来を知っている。聖闘士星矢という作品を読んで育ったオタクが、気づけば聖域の参謀長。最初は「夢オチ?」と思ったけど、胃痛と過労がリアルすぎて夢じゃないと悟った。
「参謀長? 何か面白いことでも?」
エレナの視線が刺さる。いかんいかん、今のニヤニヤ顔を見られたら「また怪しいこと考えてるな」って疑われる。俺は慌てて咳払いをした。
「いや、未来への投資が順調でね。実に喜ばしいことだ」
表向きは涼しい顔。内心は「俺、うまくやれてる! 原作修正プレイ順調!」と大興奮。
だが本当は毎日が綱渡りだ。黄金聖闘士たちはクセ強集団、神は気まぐれ、財団は腹黒。参謀長とか響きはかっこいいけど、実態は三方面の板挟みで胃が死にそうな中間管理職だ。
パライストラの設立にしても、「聖域の近代化だ!」って叫んで通したけど、実際は「原作キャラを早めに鍛えておけば地獄の銀河戦争カットできるだろ」っていうメタ視点からの改革。誰にも言えないけど。
その成果が今こうしてデータに出てるのを見ると、つい笑みがこぼれるんだよな。ニヤニヤ参謀長、今日も健在。
でも、まだ油断できない。原作イベントを避けるためには、この後も修正が山ほど必要。 カノンの野心? ハーデス戦? 全部待ち構えてる。胃薬がいくつあっても足りない。
……とはいえ、今はこの光景を素直に楽しもう。未来がどうなろうと、俺が盤面をデザインしたんだ。この世界線の責任者は俺。そう思うと、不思議な快感が込み上げてくる。
(参謀長アッシュ、今日も世界を救うために暗躍中……って言うと聞こえはいいけど、実態はオタクの原作回避RTAだからなぁ)
俺はホログラムの中で笑顔を浮かべる少年たちの顔を眺めながら、メロンソーダの缶をプシュッと開けた。
(ドルバル視点)
世間では「聖域総大主教」だの「アスガルドの聖人」だのと呼ばれているが、実態は胃薬を手放せない哀れな中年である。いや、中年と言っても自分ではまだ若いつもりだが、鏡を見るたびに「シワが増えたな」としみじみするのだから抗いようがない。
さて、その私が今日は日本に来ていた。理由は日本パライストラの卒業式。子供たちの門出を祝う大事なイベントだ。聖域の威厳を見せつけつつ、保護者の心をがっちり掴むまたとないチャンス。要は政治的営業活動である。
壇上に立ち、私はにこやかに言葉を紡いだ。
「聖闘士への道は、決して強制されるものではありません。ここにいる子供たちが、自らの意志で女神と人々を守る道を選ぶその日まで、我々は見守り、支えるだけです」
完璧なセリフ。自分でも「今の俺、NHKのドキュメンタリーで特集される人格者か?」と思うくらいの出来栄え。会場からは「はぁぁ」と感動のため息、そして惜しみない拍手。私は聖人、私は父、私は理事長。三拍子揃った完璧超人に見えているに違いない。
隣にいた城戸光政もにこにこと頷きながら言う。
「ドルバル殿の教育理念には、わしも感服しております。子供たちも、貴殿を父のように慕っておりますな」
光政よ、よく言った。その言葉、録音して毎朝目覚ましに流したいくらいだ。だが私は慌てず騒がず、聖人スマイルを崩さずにこう返す。
「いえいえ、これもアテナの御心と、アッシュ参謀長の導きがあってこそです」
完璧だ。謙遜と感謝を両立させたこの返答。聖域広報誌の見出しになってもおかしくない。
だが、式典が終わって控室に戻った途端、私はドッと疲れが押し寄せてきた。聖人スマイルの筋肉が引きつっている。頬がピクピクしている。鏡の前で口角を上げ下げしてリハビリしなければ、明日の朝は顔が攣るかもしれん。
「ふぅ……」
椅子に腰掛けて深呼吸。ここからが本音タイムだ。
(まったく、アッシュ殿の合理主義も悪くはないが、人心を掴むにはこういった『徳』が必要なのだよ。合理性だけでは民衆は動かん。数字や効率より、涙を流させる言葉、信じたくなる笑顔、それが人を操る本当の力だ)
私は自分の心の声に酔いしれながら、机の上に置かれた胃薬を手に取る。いや、本当に胃が痛い。卒業式で緊張する子供を前に優しい顔を保ちながら、「ああ、この子らも数年後には命を懸けて戦場に立つのだな」なんて考えると、胃に穴が空きそうになる。聖人も楽じゃない。
だが、私は確実に前進している。アッシュが盤面を設計するなら、私はその裏で人の心を掌握する。役割分担というやつだ。聖域の権威をサガとアッシュが握るのなら、私はここ日本で次代の聖闘士たちの『心』を握る。教育界に「ドルバル」というブランドを確立するのだ。
(アッシュ、あなたの駒が、いつまでもあなたの思い通りに動くと思わないことだ)
心の中でそう呟いた瞬間、我ながら悪役めいた笑みがこぼれてしまった。いかんいかん、聖人のイメージが崩れる。誰かに見られたら「ドルバル総大主教、闇落ち!」なんて週刊誌に書かれるに決まっている。
私は慌てて再び聖人スマイルの練習を始めた。口角を上げ、目尻を下げる。そう、まるで全てを許す慈悲深い父のように。だが、数分で頬がつり始める。情けない。
そのときノックの音。慌ててスマイルをキープしたまま「どうぞ」と声を掛けると、光政が顔を出した。
「ドルバル殿、素晴らしい祝辞でしたな。まさに総大主教の鑑。ところで、次の教育プログラムについて一案あるのですが――」
……胃がキリキリした。光政殿、お願いだから今はやめて。私の胃袋はもう戦場なのです。
私は「はは、それは興味深い」と聖人らしい相槌を打ちながら、心の中で「誰かアッシュを呼んでくれ」と叫んでいた。
(アイオリア視点)
俺は今日も訓練場で暴れていた。白銀聖闘士を相手に全力で殴り合い、蹴散らし、地面に沈める。周囲からは「さすが黄金聖闘士!」と歓声が飛ぶが、正直まったく晴れやかな気分になれない。
(まだだ……こんなもんじゃ足りない。兄さんなら、もっと強かったはずだ。もっと完璧だったはずだ。俺はまだ届いていない!)
気づけば、目の前の白銀が二人ほど倒れて泡を吹いていた。おい、俺そんなに本気出してないんだけど……。救護班が担架を持って走ってきて、「またですかアイオリア様!」って顔をしている。すまん。
そんな俺を横目で見ていたのが参謀長アッシュ。あの人はどこからともなく現れて、どこからともなくメロンソーダを取り出す。今日もストローをくわえて涼しい顔をしていた。
「アイオリア、執務室に来い」
いや、あの、俺まだ訓練の途中なんですけど……。けどアッシュ師範の声は絶対で、断ろうものなら「黄金聖闘士でも書類仕事を任せるぞ」って脅されるから逆らえない。俺は渋々、執務室に向かった。
広い部屋に入ると、壁一面にホログラムが浮かび上がっている。あれはパライストラの候補生のデータらしい。数字とかグラフとかがずらずら並んでいて、見ているだけで頭が痛くなる。
「で、なんの用なんですか」
俺は腕を組んで睨む。するとアッシュ師範は、ストローを外して静かに言った。
「お前を日本へ派遣する」
「は? なんで俺が? 聖域の本拠地こそ、俺が守るべき場所じゃないんですか!」
勢い余って机を叩いたら、机の上に置かれていた資料が全部床に散乱した。うわっ、やっちまった。アッシュ師範の眉がピクリと動く。やべぇ。次の瞬間、俺の目の前に追加の資料がドサッと置かれた。
「拾え。ついでに整理もしろ」
あ、はい……。気づけば俺はしゃがみ込んで紙を一枚一枚拾い上げていた。黄金聖闘士とは思えない仕事である。
散らかした資料を机に戻したところで、アッシュ師範が改めて口を開いた。
「落ち着け、アイオリア。これはお前にしかできない重要な任務だ」
「重要な任務……?」
「ああ。それに日本に行けば、お前が本当に求める『答え』が見つかるかもしれん」
答え? 俺が求めている答えといえば一つだ。兄さん――アイオロスのこと。
「答え……兄さんの?」
俺の問いに、アッシュ師範はわずかに口角を上げて頷いた。
「そうだ。お前の兄の足跡を辿るための第一歩になるかもしれない」
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。瞳がギラリと輝くのを自分でも感じる。
(兄さんの足跡……! あの偉大な兄の背中に、少しでも近づけるのか!)
思わず机に身を乗り出した俺に、アッシュ師範は冷静な声で付け加えた。
「ただし、勘違いするな。これは『修行の旅』じゃない。現地での教育支援、候補生の管理、保護者対応……お前には教師兼営業マン兼雑用係をやってもらう」
「えっ」
一瞬、耳を疑った。今なんて言った? 教育? 営業? 雑用? ちょっと待って、それ黄金聖闘士の仕事じゃないよね?
「……師範、それってただの出張ですよね」
「その通りだ」
あっさり認めやがった。くそ、逃げ道がない。俺が頭を抱えていると、アッシュ師範は追い打ちをかけるように言った。
「それに、お前は聖域にいると『英雄の弟』という鎖から逃れられん。日本に行けば、お前自身の価値を試せる」
ぐ……痛いところを突かれた。兄さんの影。ずっと俺を苦しめてきた呪縛。たしかに日本なら、少しは違うかもしれない。
「……わかりました。行きますよ、日本」
俺がうなずくと、アッシュ師範は「良い返事だ」と笑みを浮かべた。だがその笑顔の奥に、「ようやく人員配置完了」とでも書いてあるように見えたのは気のせいか。
こうして俺の日本行きが決まった。だが俺はまだ知らなかった。そこに待ち受けるのが、聖域以上にクセの強い仲間たちと、保護者対応という名の地獄であることを。
(兄さん……見ててくれ。俺は必ず答えを見つける! ……ただし最初の壁は、保護者説明会らしいですけど!)
アッシュ「ふぅ、久々に俺が目立った気がするな。胃薬ネタに押されがちだったからな」
ドルバル「ふん、目立ったのは貴殿ではなく私の聖人スマイルだ」
アイオリア「いやいや! ここは俺だろ! 兄さんへの想いと日本行きで、一番アツかった
のは俺じゃないか!」
アッシュ「……結局みんな自己主張か。まあいい、ここは読者の感想で決めてもらおうじゃないか」
ドルバル「そうだな。ぜひコメントで教えていただきたい。“誰が一番輝いていたか”をな」
アイオリア「お前ら、そこまで感想に飢えてるのか……」
アッシュ&ドルバル「もちろんだ!!!」
この物語の着地点は‥‥。
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十二宮編までで十分
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ハーデス編で終わらせて
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ΩやNDまで続けて欲しい
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エピソードGの世界線も欲しい
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黄金魂とか海皇再起も手を出そう
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もうつまらない。今すぐ完結