聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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聖域に走る不穏なざわめき!
黄金に挑むと宣言した白銀聖闘士たち!
その前に立ちはだかるのは蠍座のミロ!
二軍の烙印を押されし彼らは、誇りを賭けて立ち上がる!


白銀の宣戦布告! 二軍と呼ばれた日

(ミスティ視点)

 

私は蜥蜴星座(リザド)のミスティ。美と力を兼ね備えた、聖域の至宝。そう自分で言ってしまうあたり、謙虚さが足りない? いやいや、これは事実を述べているだけ。

 

 今、私は近代化された聖域の中央訓練場に立っていた。昔の聖域といえば石畳に砂埃、汗臭い男どもが延々と殴り合う昭和スポ根の巣窟だったらしいが、今は違う。アッシュ参謀長の改革によってホログラムが稼働し、候補生たちの小宇宙データがリアルタイムでスクリーンに表示される。ここはもはや「筋肉の砂場」ではなく「近未来型ジム兼アリーナ」

 

 私は模擬戦を終えたばかりだ。対戦相手? 同じ白銀の誰かだったが、正直名前すら思い出せない。私が放った空気の波に触れることもできず、地面に転がって眠っている。観客席の候補生たちは歓声を上げ、拍手を送ってくる。わかる、わかる。美しい上に強い私を目の前にすれば、心奪われるのも当然だ。

 

(やれやれ、これでは準備運動にもならないな)

 

 ため息をつきながら、私は髪をかき上げて仲間たちに微笑みかけた。汗? そんなものは一滴もかいていない。かいていたら美貌に悪影響だし。

 

「見たか、アルゴル、トレミー。もはや黄金聖闘士との実力差など、あってないようなものだ」

 

 自分で言いながら、我ながらいいセリフだと思う。美しく強い私が言えば説得力が違う。

 

 するとアルゴルが真剣な顔でうなずいた。

「ああ。アッシュ師範の教育改革は我々に力と教養を与えてくださった。ただ小宇宙を燃やすだけの猪武者ではない、真の力をな。我ら白銀こそが、次代の聖域を担うべき存在だ」

 

 ほら、出たよ。うちのアルゴル、妙に語り口が講義っぽいんだ。気を抜くと延々30分しゃべりそう。お前は白銀聖闘士じゃなくて哲学科の教授か。

 

 その横で、トレミーが元気よく拳を振り上げた。

「そうだとも! 何せ、我らが敬愛するアッシュ参謀長も、エレナ首席秘書官も、同じ白銀聖闘士なのだからな! 我々が黄金に劣る理由などない!」

 

 うん、わかるよその気持ち。でも言ってて恥ずかしくないのか? トレミーは目をキラキラさせているけど、横から見ると完全に新興宗教の信者。いやまあ、私もアッシュ参謀長の改革のおかげでこの華麗な舞台を得たわけだから感謝してるけどさ。

 

 三人でスクリーンを見上げる。そこには候補生たちのデータが次々と映し出されていた。星矢? 紫龍? 氷河? 未来の主役候補たちだ。だが正直、今の私からすればまだまだ青い。

 

「アルゴル、トレミー。我らの目標はただ強さを誇ることではない。十二宮の頂を見据えるのだ」

 

 私が言うと、二人の視線が自然と聖域の奥、十二宮へと向かう。あの雲の上にそびえる黄金の道。そこに座するのは黄金聖闘士たち。彼らは確かに強い。だが……。

 

(だが、もう時代は変わった。黄金が絶対? そんなの古臭い神話の残滓に過ぎない。我ら白銀こそが新時代の象徴。美と力、理知と品格。すべてを兼ね備えた存在……つまり私だ)

 

 ふふん。鼻で笑いながらも内心ちょっとワクワクする。

 

 ただ、正直なところを言えば不安もある。黄金聖闘士って、あの十二宮の一角でいまだに筋肉ゴリラ的に修行してるらしいし。うっかり挑んで返り討ちにあったら、今のかっこいいセリフ全部パー。候補生たちから「やっぱ白銀は噛ませ犬」とか囁かれたら立ち直れない。

 

 いや、大丈夫。私はミスティだ。汗ひとつかかない完璧な蜥蜴。絶対に格好を崩さない。……たぶん。

 

 そんなふうに強がりを胸に、私は仲間に微笑んだ。

「さあ、行こう。我ら白銀の夜明けは、もう始まっている」

 

 候補生たちが拍手で答える。ああ、なんて美しい光景だ。これだから私はやめられない。

 

(黄金よ、震えて待て。私がその座を奪い、聖域の歴史を塗り替えてやる……! ただし、まずは美容パックを済ませてからな!)

 

 

 

 

 

 

 

 

この私が一言放つだけで、空気は変わる。いや、これは誇張でもなんでもない。周囲の候補生や白銀たちの目が一斉にこちらに注がれるのだから。美貌と実力を兼ね備えた私に、人々が吸い寄せられるのは自然現象。重力の法則と同じで抗えない。

 

 案の定、ケンタウルス座のバベルが大股でこちらに歩み寄ってきた。あの筋肉ダルマ、炎をまとえば確かに迫力はあるが、汗だくでゼェゼェ言ってる時点で美しさはゼロ。

「ミスティ、お前たちの言う通りかもしれん。俺の炎も、今や黄金聖闘士の小宇宙に匹敵するほどの熱量を帯びている」

 

 ふむ、言うね。まあ炎の規模だけなら確かに派手だ。だが私は余裕の笑みを浮かべて返す。

「力だけではない、バベル。我々はアッシュ師範から教養と戦略眼をも学んだ。聖域の運営、次代の育成……黄金聖闘士たちが旧来の『強さ』に固執している間に、我々は真の支配者となる準備を整えるべきだ」

 

 おお、周囲がざわついたぞ。候補生たちの目が「かっけええ!」とキラキラしている。わかる、わかる。美と知性の私が堂々と言えば説得力が違う。

 

 するとすかさずアルゴルが眼光鋭く口を挟む。

「ならば、まずは我々の力を聖域全土に知らしめる必要があるな。例えば、黄金聖闘士との公式な模擬戦を教皇猊下に上申するのはどうだろうか?」

 

 やれやれ、アルゴルよ。お前はすぐに理屈っぽくまとめたがる。だがその冷静さが彼の持ち味でもある。教授キャラは一人くらいいてもいい。

 

 横からトレミーが勢いよく飛び出した。

「模擬戦など生温い! 参謀長や秘書官殿のように、実務と実力で黄金を凌駕していると証明するのだ! 我々が聖域の中枢を担う!」

 

 こいつはこいつでテンションが高すぎる。まるで体育会系の勧誘担当。候補生が「入部届けどこに出せばいいですか?」みたいな顔をしている。いやいや落ち着け。まだ政変は起こしてない。

 

「そうだ!」「俺たちの時代だ!」

 

 おいおい、一気に合唱になったじゃないか。なんだこのライブ会場みたいな盛り上がりは。私は一応リーダー格として両手を上げて場をなだめた。

 

「落ち着け、皆の衆。革命は一日にして成らず、だ」

 

 我ながら名言。いや、これは後世に残してもいい。

 

 でも正直なところ、ちょっと不安もある。黄金聖闘士たちって地味に全員おかしいくらい強いんだよな。サガ? あの人の目が光ったら一秒で心を握り潰されそう。アイオリア? まだ若いけど獅子の本能で噛み殺されそう。カミュ? 涼しい顔で「絶対零度です」とか言って私を氷漬けにしそう。

 

 ……いやいや、怖気づくな私。ここで腰が引けたらせっかくの名スピーチが台無しだ。

 

「諸君。確かに黄金は強い。だが、我らは違う強さを持つ。実務能力、知性、美貌――」

 

 ここで一瞬、全員の視線が「美貌?」と突っ込んできた気がする。失礼な。私が言えば正しいに決まっているだろう。

 

「――そう、総合力だ。我ら白銀こそが聖域の新たな秩序を築くのだ」

 

 拍手喝采。やっぱりな。候補生たちは完全に私たちに憧れている。黄金? はいはい、強いのは知ってる。でも政治力? 知性? カリスマ? それは我ら白銀の専売特許。

 

 気分が良くなった私は、髪をサラリと払ってさらに続けた。

「まずは教皇猊下に直訴しよう。模擬戦でも、実務の評価でも構わん。我らの力を全土に知らしめるのだ」

 

 アルゴルが満足げにうなずき、トレミーは「よっしゃあ!」と拳を振り上げる。バベルは背中で炎をぼわっと出して、危うくスクリーンを燃やしかけた。おい、最新式の設備だぞ! アッシュ師範に怒られるからやめろ!

 

 そんなドタバタを横目に、私は心の中で密かに思った。

 

(アッシュ師範よ、あなたはきっと私たちの野心を予見しているのだろう。だが心配は無用。我ら白銀が未来を掴み、聖域に新たな秩序を築いてみせる。その先頭に立つのは、もちろんこの私だ!)

 

 

 

 

 

 

 私たち白銀の熱気は最高潮に達していた。あのアルゴルですら珍しく声を荒げ、トレミーは半分泣きながら「俺たちの時代だぁ!」と叫んでいた。バベルなんて炎を背中から吹き出していて、訓練場の観客席の候補生たちが「わぁぁ熱い!」と逃げ惑うほど。完全に祭り。いや革命前夜。いやもしかしたらただの暴走族の集会。

 

 そのときだ。

 

 コツン。

 

 乾いた音が訓練場全体に響いた。誰かが砂利を踏んだわけでもない。もっとこう、わざとらしい、注意を引くための音。まるで「お前ら今の話、全部聞いてたぞ」と告げるような合図。

 

 嫌な予感がして視線を向けると、柱の影から悠然と歩み出る人影があった。

 

 ――蠍座の黄金聖闘士、ミロ。

 

 よりにもよって黄金。それもあの毒舌蠍。訓練場が一瞬で冷凍庫になったみたいに静まり返る。バベルの炎すらシュンと消えて、煙だけがもくもくと漂った。

 

(うわー最悪のタイミング! よりによって今!? 私たちの「黄金越え宣言」を一字一句聞かれた気がする!)

 

 ミロは腕を組んでこちらを見下ろし、口の端をわずかに吊り上げている。完全に「面白いものを見つけたぞ」って顔だ。

 

「ほう……随分と景気のいい話をしているじゃないか。白銀が黄金を凌駕する、ねぇ」

 

 終わった。これは完全に終わった。私の美しい未来計画が今ここで崩壊する音が聞こえる。

 

 けれど私は動揺を見せない。優雅に髪をかき上げ、微笑みを浮かべて口を開いた。

「……これは、蠍座のミロ殿。我々の訓練をご覧になっていたのですか」

 

 声は穏やか、笑顔は完璧。内心? 心臓がバックバクで胃液が逆流しそう。だが美貌を守るために必死でポーカーフェイスを維持する。

 

 周囲の白銀たちは完全に固まっていた。アルゴルは石像みたいに動かず、トレミーはさっきまでのテンションが嘘のように口をパクパクさせている。バベルなんて今にも「すみませんでした!」と土下座しそう。

 

 

 奴は柱に寄りかかったまま、挑発的な笑みを浮かべてこう言った。

「ああ、見ていたとも。随分と腕を上げたようだな。アッシュの教育の賜物か。だが……勘違いするなよ、二軍ども」

 

 二軍。黄金を一軍とするなら、我々白銀はその下という意味だ。いや、文字通りの侮辱だ。トレミーが案の定、顔を真っ赤にして飛びかかりそうになる。やめろ、馬鹿。今ここで蠍に喧嘩売ったら即・スカーレットニードル全弾食らって救急搬送だぞ。

 

 私は素早く手を伸ばし、トレミーの肩を押さえた。

「二軍、ですか……面白いことをおっしゃる」

 

 ここで取り乱したら完全に格下認定だ。優雅に微笑みながら、私は一歩前に出る。髪をサラリとなびかせ、会場の視線を総取りしながら。

 

「ならば、その言葉が真実かどうか、いずれ証明される機会もあるでしょう。我々は、もはやあなた方の影を踏むだけの存在ではない、ということです」

 

 自分で言っておきながら、心臓はドラムのように鳴っていた。だが表情は完璧。私は美貌の仮面を崩さない。

 

 それは静かな、しかし紛れもない宣戦布告。黄金に喧嘩を売る? 普通なら狂気の沙汰だろう。だが今の我々には野心がある。アルゴルもバベルも頷き、トレミーは鼻息を荒くして「ミスティ最高!」と心の中で叫んでいる顔をしている。

 

 ミロの口元がニヤリと緩んだ。

「いいだろう。いつでもかかってこい。その増長しきった鼻を、俺の針でへし折ってやる。……アッシュに泣きつくなよ?」

 

 くっ、最後に師範の名前を出すとは。完全に「どうせお前ら参謀長の庇護下だろ?」という皮肉だ。心を読まれた気分だ。否定したいが、否定すれば余計に図星感が増す。黙るしかない。

 

 ミロはひらりと身を翻し、回廊の影へと消えていった。その背中には余裕しかなく、俺たち白銀全員の怒りをまとめて燃料にして笑っているように見えた。

 

 残された我々は沈黙した。だが沈黙は屈辱ではない。敵意に満ちた沈黙だ。アルゴルの拳は白くなるほど握り締められ、バベルの背中からは再び炎が漏れそうになっている。トレミーは矢を持ったまま震えていた。いや、それ単なる手汗だろう。

 

 私は深呼吸し、仲間たちに向かって言った。

「見たか。これが黄金の余裕だ。我々を二軍と笑う。だが……笑わせておけ。必ず奴らに思い知らせてやる。白銀は、ただの控え選手ではないと」

 

 候補生たちがざわつき、こちらを見ていた。彼らの目は「かっこいい……」と憧れに染まっている。よし、観客の心は掴んだ。こうして支持基盤を築くのがリーダーの仕事だ。

 

(ふふ、ミロよ。あなたは今、聖域に火種を投げ込んだのだ。その炎を一番美しく燃やすのは、この私。そう、蜥蜴座のミスティだ!)

 

 私は優雅に笑い、髪を払いながら背を向けた。仲間たちがついてくるのを感じる。野心はもはや思い上がりではない。黄金聖闘士に向けた、明確な敵意へと姿を変えていた。

 

 ――聖域に、新たな戦いの幕が上がったのだ。




ミスティ「ふふん、完璧だったな。これぞ美と力を兼ね備えた宣戦布告!」

アルゴル「いや正直、胃が痛かったぞ……ミロ相手に無傷で帰れたのは奇跡だ」

トレミー「でも俺、感動しました! 二軍なんて言わせない! ミスティ最高!」

バベル「……炎でスクリーン燃やしかけて怒られたの、まだ誰も触れてないよな」

ミスティ「しっ! それは忘れろ。あと、感想欄で『ミスティ様かっけえ!』って叫んでおくのだ!」

この物語の着地点は‥‥。

  • 十二宮編までで十分
  • ハーデス編で終わらせて
  • ΩやNDまで続けて欲しい
  • エピソードGの世界線も欲しい
  • 黄金魂とか海皇再起も手を出そう
  • もうつまらない。今すぐ完結
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