聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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聖域の胃袋が吠える!
住宅ローンに揺れる白銀、昔気質に叱るシリウス、そして牛乳で全てを繋ぐ黄金の大地!
笑いあり!葛藤あり!SNS拡散の危機あり!

「守るものはパンケーキでも構わねえ!俺は牡牛座のアルデバランだ!」


戦士の誇りと分譲マンション

(アルデバラン視点)

 

俺はアルデバラン。牡牛座の黄金聖闘士で、聖域の食料消費量ナンバーワン。いや、最近は「食堂の番人」とか「胃袋の守護者」とか呼ばれているが、まあ強いには強い。…強いんだが、今の聖域は昔みたいに「強さだけが正義!」ってわけじゃなくなっちまって、俺もちょっと肩身が狭い。

 

その日、非番だった俺は、麓の街にできた新しいカフェにふらっと立ち寄った。オープンテラスに座ると、向かい側には白銀聖闘士のダンテとアルゲティが陣取っていた。奴ら、タブレット端末を広げて、やけに盛り上がってやがる。

 

「見たか、アルゲティ!このパライストラ近郊の新築物件!俺たちの給料3ヶ月分を頭金にすれば、手が届くぞ!」

 

ダンテが鼻息荒く画面を突き出してきた。アルゲティも「おお!」と声を上げる。二人とも完全に住宅ローン検討中のサラリーマンだ。

 

俺はカプチーノを啜りながら、内心で突っ込んだ。

「(お前らの小宇宙の炎は、住宅ローン審査に使うために燃やすもんじゃねぇだろ…)」

 

アルゲティは画面を覗き込みながら感慨深げに言った。

「これもアッシュ師範と、俺たちの待遇改善を訴え続けてくださるドルバル総大主教のおかげだな!」

 

ダンテは満面の笑みで頷く。

「ああ!昔みたいに石の寝台で雑魚寝なんて、もうごめんだぜ。俺は休日はふかふかのソファで昼寝がしたい!」

 

…こいつら、完全に庶民の夢を語ってるな。かつての白銀聖闘士は、誇り高く戦いに身を投じる存在だったのに、今や夢は「分譲マンション購入」進歩したのか、堕落したのか、判断に困るところだ。

 

俺は溜息をつきながら、心の中でぼやいた。

「(これだから近代化ってやつは怖ぇ…。強さを競って血を流すより、家を買うために残業を競う時代になるのかもしれん)」

 

しかし、白銀たちを笑ってばかりもいられない。実際、やつらは今、本当に強い。すでに白銀聖闘士の半数がセブンセンシズに目覚めているって話だ。訓練場では黄金顔負けの小宇宙を放つ奴も珍しくない。俺のポジションも安泰じゃなくなってきている。

 

「アルデバラン殿!」

不意に声をかけられた。見ると、隣の席の新人候補生がスマホで俺を撮影しようとしている。慌てて俺は手で顔を隠した。

 

「やめろ!SNSに上げるんじゃない!『黄金聖闘士、カフェで優雅にティータイム』なんて拡散されたら、俺の威厳が地に落ちるだろ!」

 

候補生は「すみません!」と平謝りしながらも、しっかり連写していやがった。…くそ、これでまた翌朝のニュースフィードに俺の顔が載るんだろうな。「黄金聖闘士、ラテアートにご満悦」とか。

 

ダンテはそんな俺を見て大笑いしている。

「ははは、アルデバラン様も時代の波からは逃れられませんな!」

 

「笑うな!お前らも数年後には『住宅ローンが火の粉より怖い』とか言って泣くんだぞ!」

 

アルゲティは「ふかふかソファに座って泣くなら本望だ」と真顔で言った。こいつ、意外と筋金入りだ。

 

カフェの隅では、別の白銀たちが株価チャートを睨みながら議論している。訓練よりも投資に熱を上げる姿は、黄金の俺からするとツッコミどころしかない。だが、そんな彼らがいざ戦場に出れば、黄金に匹敵する力を見せるのだから、時代は本当に変わった。

 

俺はカプチーノを飲み干し、大きく伸びをした。

「(まあいい。こいつらがどんな夢を追おうと、俺は俺で強さを守るだけだ。俺は聖域の壁、牡牛座のアルデバランだ)」

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた矢先、テーブルに影が差した。振り返ると、そこに立っていたのは、おおいぬ座のシリウス。古参の白銀聖闘士で、真面目を固めたような男だ。腕を組み、険しい顔で俺たちを見下ろしていた。

 

「貴様たち、任務でもないのに随分と浮かれているな。家だと?ソファだと?我々聖闘士は、不便に耐えてこそ魂が磨かれるのではなかったのか」

 

…うわぁ。来たな、この手合い。俺は内心で「やべぇぞ」と呟いた。こういう時は聞き流すに限るんだが、ダンテが立ち上がってしまった。しかも、やたら真剣な顔で。

 

「シリウスさん…。ですが、アッシュ師範は仰いました。『心身の健康なくして、最高の小宇宙は燃やせない』と。それに、守るべき『日常』があるからこそ、俺たちは強くなれるんじゃありませんか?」

 

おい、正論を持ち出すな。相手は昔ながらの根性論世代だぞ。火に油を注ぐだけだって。

 

案の定、シリウスの眉間のしわが深くなった。

「フン…甘い考えだ。その『日常』とやらに溺れ、牙を抜かれた狼になるのがオチだ。聖闘士の誇りを忘れたか」

 

やべぇぞ、この空気。カフェの客までシーンとしてるじゃねぇか。アルゲティも負けじと声を張り上げる。

「忘れてなどいません!ですが、誇りだけでは腹は膨れない!腹が減っては戦はできぬ、とも師範は…!」

 

…お前ら、どうして正面からぶつかるんだよ。こういう時は、俺みたいな「でっかい兄貴分」が場を和ませるのが筋だろうが。仕方ねぇ、俺が口を出すか。

 

「まあまあ、シリウス。そうカリカリすんな。腹が減っては戦はできねぇってのは確かだ。俺なんか腹が減ったら小宇宙どころか意識すら燃やせねぇからな」

 

と、軽口を叩いて笑いを誘ったつもりが、シリウスは真顔のまま俺を睨んでいた。うっわ、全然通じてねぇ。

 

「アルデバラン。貴様までそんなことを言うのか。黄金聖闘士ともあろう者が…」

 

はい来ました、「黄金ならこうであれ」説教コース。これに捕まると3時間は抜け出せねぇ。俺は焦って追加の一手を打つ。

 

「ちょっと待てよ。シリウス、お前、俺たちを叱る前にコーヒー一杯くらい頼めよ。立ったまま説教されたら、カフェの雰囲気ぶち壊しだろ」

 

店員の姉ちゃんも「あの人頼まないで立ってるなぁ」って顔してるしな。すると、周りから小さな笑いが漏れた。どうやら効果はあったみたいだ。

 

シリウスは少しだけ言葉を詰まらせ、渋々席に座った。

「……では、ブラックを」

 

おお、折れた!俺は心の中でガッツポーズした。これで場は何とかなる。

 

ダンテとアルゲティも安心したのか、すぐにまた「住宅ローンがどう」とか「家具は北欧ブランドがいい」とか言い始めた。シリウスは「理解できん」と首を振っていたが、少なくとも怒鳴る雰囲気じゃなくなった。

 

俺は大きく息を吐いて、カプチーノを飲み干した。

「(まったく…。世代間ギャップってのは小宇宙の差より埋めるのが難しいんじゃねぇか?)」

 

でも、俺は嫌いじゃない。このギャップがあるから聖域は面白い。昔気質のシリウスと、新しい考えを持つダンテたち。その間に立って胃を痛める俺。…これが今の聖域の「日常」ってやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

俺は牛乳の大ジョッキを片手に、のっそりとテーブルに腰を下ろした。椅子が「ギシッ」と悲鳴を上げたが、気にしない。

 

「まあまあ、シリウス。そう固いことを言うな。俺も、この街の牛乳がうまいから、毎日頑張れているようなもんだ」

 

ぐびぐびと豪快に飲み干し、口の周りに白い髭をつけたまま笑ってやった。これが俺流の場の和ませ方だ。

 

シリウスは一瞬、呆れたように目を細めたが、表情の端に小さな笑みが浮かんだ。やれやれ、牛乳で人心掌握できる俺もなかなかのもんだろう。

 

ダンテとアルゲティは安心したのか、また住宅の話を再開しかけたが、俺は手を上げて止めた。

 

「お前たちの気持ちも分かる。家が欲しい、美味いものが食いたい。それは人間として当たり前の感情だ。それを否定することはない」

 

二人は「そうですとも!」と身を乗り出す。俺はうんうんと頷きつつ、次はシリウスの方を見た。

 

「だがな、シリウス。お前の言うことも間違いじゃない。俺たちは戦士だ。その牙を忘れてはならん。問題は、その牙を何のために振るうか、だ」

 

シリウスは口を閉じたまま、俺の目を見返してきた。その視線に「どう答える?」という問いがあったが、俺は答えを急がなかった。牛乳をもう一口飲んでから続けた。

 

「俺は腹が減ると何もできねえ。戦士としても人間としてもな。だから飯も家も大事だ。だが、それで強さを失ったら意味がねえ。結局、俺たちは『守る』ためにここにいるんだろ?」

 

ダンテとアルゲティは神妙に頷き、シリウスも腕を組み直した。どうやら頭ごなしに否定する気はなくなったようだ。

 

そこで俺は、ちょっと場をほぐすために冗談を混ぜた。

「まあ、俺の場合は守るものがパンケーキだったりステーキサンドだったりするけどな!」

 

ダンテが吹き出し、アルゲティが腹を抱えて笑い出す。シリウスも一瞬だけ口角を上げた。成功だ。

 

「結局のところよ」俺はまとめに入る。「牙を研ぐのも、家を買うのも、全部『誰かを守りたい』って気持ちに繋がるんだ。牙を研ぐのは戦場で。家を買うのは日常で。どっちも無駄じゃねえ」

 

シリウスは少し黙っていたが、やがて深く息を吐いた。

「…お前の言うことにも、一理あるな。俺は時代に取り残されているのかもしれん」

 

「取り残されちゃいねえさ」俺は即答した。「ただ、時代が広がっただけだ。戦士の生き方は一つじゃねえ」

 

そう言ってジョッキを空けると、カフェの店員がタイミングよくおかわりを持ってきてくれた。俺は「ありがとよ」と笑い、再びぐびぐびと飲んだ。

 

その姿を見て、ダンテが言った。

「アルデバラン様…。やっぱりあんたが一番頼りになります!」

 

アルゲティも大きく頷く。シリウスは何も言わなかったが、表情はもう険しくなかった。

 

こうして、黄金も白銀も一緒にカフェで牛乳を飲みながら語り合う。これが今の聖域の日常だ。強さと日常、どちらも大事にする。それがアッシュの言う「新しい聖闘士」の形なのかもしれない。

 

俺は最後に牛乳の髭を指で拭いながら、心の中で呟いた。

「(まあ何にせよ、俺は牛乳が切れない限り戦える。結局そこに行き着くんだけどな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッシュ師範がやっていることは、俺たちから牙を奪うことじゃない。むしろ逆だ。俺たちに、命を懸けて守るべき『温かい場所』を与えてくれているんだ」

 

俺は窓の外に目をやった。そこには近代化された聖域の街並み。子どもたちが走り回り、カフェからは焼き立てパンの匂いが漂ってくる。戦いしかなかった頃とは違う、確かな「帰る場所」があった。

 

「考えてみろ。何もない石ころの荒野を守るのと、自分の帰る家、仲間が待つこの街を守るのと、どっちが本気で小宇宙を燃やせる?」

 

俺の問いに、シリウスは押し黙った。頑固な奴だから「認めん」と言うかと思ったが、しばらくして肩の力を抜き、ふっと息を吐いた。

 

「…フン。一理、あるかもしれんな」

 

その瞬間だ。ダンテがバッと立ち上がり、満面の笑みで叫んだ。

 

「だろ!アルデバランさんの言う通りだ!よし、決めた!俺、ローン組む!そして、シリウスさんもアルデバランさんも、新築祝いには絶対に招待しますからね!」

 

アルゲティも拳を突き上げる。

「俺はベランダにバーベキューセットを置くぞ!聖域で一番美味い肉を焼いてみせる!」

 

お前ら、さっきまで「誇りがどう」とか言ってたのに、切り替え早すぎだろ。俺は思わず腹を抱えて笑った。

 

「がっはっは!楽しみにしているぞ!」

 

俺の笑い声がカフェに響く。周りの客たちもつられて笑っていた。シリウスは顔をそむけたが、口元には小さな笑みが浮かんでいた。

 

…その時だ。隣のテーブルにいた一般人の青年が、スマホを取り出してパシャリとやりやがった。「黄金聖闘士が牛乳ジョッキで乾杯!」ってネットに上げられる未来が目に見える。俺は慌てて手で顔を隠した。

 

「やめろ!俺の威厳がまたネットミームにされる!」

 

ダンテとアルゲティは爆笑。シリウスですら「くだらん」と呟きながらも肩を震わせていた。

 

けれども俺は思ったんだ。こうして笑い合える今があるからこそ、牙を研ぐ意味がある。戦士の誇りも、帰る場所も、両方が揃って初めて本当に強くなれる。アッシュ師範が言った「日常を守る力」ってのは、案外牛乳よりも腹にしみる言葉かもしれない。

 

…いや、やっぱり牛乳には勝てねえな。

 

「よし決めた。新築祝いの乾杯は、この牛乳ジョッキだ!」

 

俺が高々と掲げると、三人も「おおっ!」と声を合わせた。




アルデバラン「やっぱ牛乳は最強だな。あれさえあれば小宇宙が3割増しで燃える」

ダンテ「俺はふかふかソファがあれば小宇宙倍増です!」

アルゲティ「俺は新築マンションのベランダバーベキュー!」

シリウス「くだらん……と言いたいところだが、牛乳ジョッキ乾杯は少し羨ましいぞ」

アルデバラン「おっ、やっと分かってきたな!新築祝いはみんなで牛乳だ!」

全員「おおっ!」

十二宮編の最後は誰と誰の対決に?

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