聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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世界を揺るがす天変地異!
大地が裂け、海が怒り、空が軋む!

聖域と地上を結ぶ通信回線の先に現れたのは、
三柱の女神――アテナ、エリス、ヴィーナス!

その幼き声が、英雄たちの迷いを砕く時、
罪と赦し、そして新たな希望が生まれる!

神々の怒りに人の愛は勝てるのか!?
次回──『地上に降る、三柱の祈り』!

いま、聖域が再び燃え上がる――!!


地上に降る、三柱の祈り

神殿の空気が張り詰めたその瞬間、外の回廊を誰かが全力で駆け上がってくる足音が響いた。

それは急を知らせる音だった。

次の瞬間、扉が勢いよく開かれ、一人の文官が転がり込むようにして入ってきた。

 

衣の裾は泥と血にまみれ、額には汗が浮かび、顔面は蒼白だった。

彼は息を切らしながら、震える声で叫ぶ。

 

「きゅ、急報!教皇猊下、参謀長!世界各地より緊急通信!

大規模な地震、津波、火山噴火が同時に発生!

すでに犠牲者は数万人に及んでいるとのことです!」

 

場の空気が一瞬で凍りつく。

 

「なっ……」

サガの目が見開かれた。

「地震と津波が同時にだと?どこの地域だ!?」

 

「報告では、ギリシャ全土、南米、アジア、そして日本の太平洋沿岸も――」

 

そこまで言ったところで、文官の声が震え、息を呑んだ。

「聖域外周の港湾部でも大規模な崩落が発生!避難命令が出ています!」

 

シャカが立ち上がる。

「何……!?この地上に、これほどの厄災が一度に……!」

 

彼の小宇宙が揺らぐ。

黄金聖闘士として幾多の天変地異を経験してきた彼ですら、これほどの規模は前例がなかった。

 

「これは、自然現象ではない」

アッシュが低く呟く。

「ルシファーめ……!復活と同時に、これほどのことを……!」

 

彼の拳が震え、掌の皮膚が軋む音がした。

世界が悲鳴を上げている――それが何よりの証拠だった。

 

ムウが目を閉じ、全方位に意識を集中させる。

彼の精神は聖域を越え、地上の小宇宙の流れを探った。

だが――

 

「……地上の小宇宙が……乱れている。

人々の恐怖と絶望が、炎のように世界を覆っている。

このままでは、地球そのものが耐えきれない」

 

サガは目を見開いた。

「まさか……ルシファーは、地上そのものを壊すつもりか!」

 

アッシュは顔を上げた。

その表情には怒りよりも、焦燥が滲んでいた。

 

「いや――これは警告だ。

俺たちが神の秩序を拒んだ報いを、奴は世界に突きつけたんだ」

 

沈黙。

外では地響きが鳴り始め、神殿の天井の装飾が微かに揺れる。

地の底から唸り声のような低音が響き、まるで大地そのものが怯えているかのようだった。

 

エレナが端末を操作しながら叫ぶ。

「聖域全域に避難命令を発令します!

周辺のパライストラも通信断続状態!

衛星観測によると、空間そのものが不安定になっているとのことです!」

 

「空間が……不安定?」

ムウが息をのむ。

「時空そのものが歪んでいるというのか……!」

 

シャカは目を閉じ、深く息を吐いた。

「神々が怒りを露わにする時、世界は形を失う。

この現象は、人の理解を超えた領域だ」

 

アッシュは立ち上がり、拳を握りしめた。

「だったら、止めるしかない。

ここで立ち止まれば、何もかも飲み込まれる」

 

聖域中枢の通信ルームには、無数の警告灯が赤く点滅していた。

 

「全回線を優先的に日本・城戸邸へ繋げ。遅延を最小限に抑えろ」

 

エレナの指がキーボードを叩く。

「通信安定。出力を最大にします。……回線、開通!」

 

数秒後、モニターに映し出されたのは、日本の城戸邸の執務室だった。

その中心に立つのは、──アイオロス。

背後には城戸沙織、ヴィーナスの女神が控えている。

そして、アイオロスの隣には翔子の姿もあった。

 

彼の顔には、冷静さの奥に緊迫感があった。

 

「アッシュ!聖域の小宇宙が乱れているが、一体何が起きている!?」

 

アッシュは短く息を吸い、冷静に答えた。

「説明は後だ。アイオロス、少し代わってくれ。……サガ、お前が話せ」

 

「……分かった」

 

アッシュに促され、サガがモニターの前に進む。

画面越しの再会は、長い年月の重みを帯びていた。

 

数年ぶりに顔を合わせる二人の英雄。

互いに語るべき言葉は山ほどあるはずだったが、

その沈黙が全てを物語っていた。

 

「久しぶりだな……サガ」

アイオロスの声には、懐かしさよりも痛みが混じっていた。

 

「……ああ。アイオロス……」

サガは短く答え、目を伏せる。

「すまなかった。あの時……俺は……」

 

「もういい」

アイオロスが遮った。

「お前の罪は聞いた。アッシュからも。

だが今は、誰を責める時ではない。──地上が、神々の怒りで裂けようとしている」

 

その一言で、場の空気が引き締まる。

アッシュは二人の間に立ち、静かに言葉を継いだ。

 

「ルシファーが復活した。

奴の要求は、地上にいる三柱の女神──アテナ、エリス、ヴィーナスを生贄として差し出すことだ」

 

一瞬、通信室の空気が凍りついた。

 

「何だと!?」

アイオロスが声を荒げる。

「ふざけるな!そのような要求、飲めるはずがない!」

 

「分かっている。だが、奴は実行力を持っている。

さっきの地震も津波も、すべて奴の手によるものだ」

 

アイオロスが歯を食いしばる。

「……こちらでも異変が起きている。

日本列島の地下小宇宙の流れが乱れ、まるで何かが地の底から這い出ようとしている」

 

その言葉に、アッシュの眉が動いた。

「やはりか……伏魔殿の影響は、すでに地上全域に及んでいる。

奴の狙いは三柱の捕縛だ。女神の小宇宙を鍵として使い、

地上を完全に魔界と接続させるつもりだ」

 

エレナが端末越しに報告を差し込む。

「現在、全ての聖域衛星が異常反応を感知。

伏魔殿は地球軌道上に浮上した状態で固定されています。

放たれているエネルギーは、アテナ神殿の防御結界の約十倍に相当。

このままでは……」

 

「地球そのものが崩壊する……か」

アッシュが低く呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通信回線の安定を確認したアイオロスは、背後に控える三人の女神へと振り返った。

アッシュとサガのいる聖域中央管制室では、緊迫した空気の中、誰もがその瞬間を見つめていた。

エレナが画面の輝度を調整する。

次の瞬間、スクリーンには三人の女性が映し出された。

 

響子――黒髪に紅の瞳を持つヴィーナス。

翔子――青髪に紅の光を宿す少女の身体を借りたエリス。

そして、まだ幼い少女の姿の沙織――アテナ。

 

彼女たちは、地上の希望と恐怖、愛と怒りを象徴する三つの存在だった。

 

最初に口を開いたのは、ヴィーナスだった。

彼女の声は艶やかでありながら、どこか冷静だった。

 

「話は聞かせてもらったわ。

ルシファーの復活――十中八九、オリンポスの過激派が裏で糸を引いているわね。

ゼウス派の一部が、神の秩序を保つために地上の再調整を望んでいた。

その動きと無関係だとは思えない」

 

彼女の分析に、アッシュが短く頷いた。

「俺も同意だ。伏魔殿の出現位置、天文座標、発生した時空歪曲の波形。

どれも人工的だ。偶然とは思えない」

 

ムウが小声でつぶやく。

「オリンポスの過激派……神々が人間に手を下す口実を、あえて作ったというのか」

 

ヴィーナスは肩をすくめた。

「神にとって人間なんて、せいぜい調整可能なノイズ程度よ。

でも、それを放置しておくと、こうしてルシファーのような存在が動き出す。

……皮肉な話よね」

 

その皮肉めいた言葉を遮るように、翔子の身体に宿るエリスが、苛立ったように声を上げた。

 

「そんな詮索より、今起きている天変地異をどうにかするのが先決ではないのか?

我が神殿――日本も揺れて迷惑しているのだ。

地盤は割れ、海が荒れ、火山がうなる。

このままでは人の世界が持たぬ!」

 

その激しい物言いに、モニター越しのムウがわずかに眉をひそめた。

だが、アッシュは静かに言葉を返す。

 

「分かっている。

だが、これは天変地異じゃない。

地球そのものが神の干渉で歪められているんだ。

一時的に抑えたとしても、原因を断たなければ意味がない」

 

エリスは口を噤む。

その横で翔子の身体が小さく震えた。

 

 

「……だが、神が神を裁くことなど、容易ではない」

シャカが静かに言った。

「ルシファーの力は、善悪を超越したもの。

神話の秩序そのものに亀裂を入れている。

我々人間がそこへ踏み込むことが、正義と言えるのか……」

 

「ならば何もしないのか?」

ムウの声が鋭く響いた。

「神が沈黙し、人が立ち止まる間に、世界は滅びる。

それを黙って見ていることが正義だと?」

 

シャカは目を閉じた。

「……それもまた、悟りの一つだ」

 

一瞬、空気が凍る。

だが、その緊張を溶かしたのは、幼い声だった。

 

「……わたし、よくわからないけど……いけにえはいやです」

 

沙織――まだ十歳ほどの少女が、震える声で言った。

アイオロスがその肩を抱き寄せ、静かに見守る。

 

「アテナ……」

ムウが思わず名を呼ぶ。

 

沙織は画面越しのアッシュを見つめた。

「みんな、難しい話をしてるけど……

誰かがいけにえになって、みんなを守るのは……違うと思う。

それなら、みんなで守ればいいんじゃないの?」

 

その言葉に、誰も返せなかった。

子供の無垢な意見――だが、それこそがこの世界の根幹を突いていた。

 

アッシュはゆっくりと息を吸い、モニター越しに小さく笑った。

「……アテナ。お前の言葉が、すべてだ。

それが、俺たちが神を超えられなかった理由でもある。犠牲を選択することに、俺たちは慣れすぎていたんだ」

 

ヴィーナスが小さく頷く。

「ふふ……子どもの言葉って、時々すごく核心を突くわね。

犠牲を前提にした平和なんて、結局どこかで破綻する。

だからあなたたちは戦うんでしょ? アッシュ」

 

「そうだ。

俺たちは戦う。だが、もう誰かの代わりにではなく、

誰かと共にだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムウは、拳を握りしめたまま立っていた。

彼の胸には、あふれ出る怒りと悲しみ、そして長年抱えてきた苦悩が渦巻いていた。

目の前のモニターには、十歳の少女――アテナの転生体、城戸沙織の姿が映っている。

そのあどけない表情が、彼の心をさらに揺さぶった。

 

「……アテナ!」

ムウの声が震える。

「貴女が不在の間に、聖域はどうなっていたか、ご存じですか?

我が師シオンは殺され、教皇の座は奪われ、聖闘士たちは混乱の中で戦い続けたのです!

この男――サガが、貴女の玉座を奪い、聖域を支配していたのですよ!

何か言うことはないのですか!」

 

声が神殿の中に響いた。

シャカがわずかに目を開き、サガは顔を伏せる。

誰もが息を呑んだ。

 

だが、モニターの向こうで、少女は首をかしげていた。

 

「ムウさん、私はまだ城戸沙織です」

彼女は柔らかな声で言った。

「アテナはね、大きくなったらなるかもしれないお仕事かな。

だから、今の私は、ただの小学五年生。

聖域のことは……正直、よくわかんない」

 

あまりに拍子抜けする言葉だった。

だが、その無邪気さには、誰も反論できなかった。

 

沙織は少し考えるように唇を噛み、それから真っすぐムウを見つめた。

 

「でもね、ムウさん。

神様のこととか、罪とか罰とか、そういうのはよくわからないけど――

許せないなら、無理に許さなくてもいいと思うよ?」

 

ムウの表情が動く。

 

「え?」

 

「だって、心が追いついてないのに許しますって言っても、

それってウソになっちゃうでしょ?

でもね、キライって言う前に、相手の話をちゃんと聞くこと。

それは、学校で先生に教わったよ」

 

彼女は指を一本立て、どこか誇らしげに言った。

「クラスでケンカが起きた時は、学級会を開いて、お互いの気持ちを言葉で話すんだよ。

泣いたり怒ったりしてもいいけど、最後はどうしたいかを話すの。

ムウさんも、そうしてみたらいいと思う」

 

その言葉に、室内の空気がわずかに和らいだ。

だが、エリスがすかさず口を挟む。

 

「フン。さすが我が娘ながら、猫を被っておるな」

画面の右端で腕を組み、冷ややかに笑う。

「学校ではいじめっ子を小宇宙でぶっ飛ばして、『バーサーカー少女』と呼ばれておるくせに!」

 

「ママ!!」

沙織の顔が一気に真っ赤になる。

「みんなの前で言わないでって言ったじゃない!

あれは……あれは、その子がいじめてたから……助けただけで!」

 

「ほう。助けるために机を吹き飛ばしたと?」

 

「ちょっと勢いがついただけだもん!!」

 

通信の向こうで口論が始まり、ヴィーナスが吹き出した。

「ふふっ……平和なものね」

 

聖域側では、ムウが完全に言葉を失っていた。

怒りの矛先が、一瞬でどこかへ消えてしまったのだ。

 

そして今、目の前で拗ねて頬をふくらませる女神の姿。

 

「……君は……本当に、アテナなのか?」

気づけば、そうつぶやいていた。

 

沙織は笑った。

「うん。そうかもしれないし、違うかもしれない。

でもね、ムウさん。

アテナって、きっと誰かを守りたいって思う気持ちのことだよ」

 

それは、十歳の子どもの言葉だった。

だが、その響きには、神の威厳でも、哲学でもない、ただまっすぐな人間の優しさがあった。

 

サガが顔を上げた。

その瞳に光が戻っていた。

「……アテナ様。いや、沙織さん。

あなたの言葉、胸に刻みます。

私が犯した罪も、あなたが作る学級会の中で裁かれたい」

 

「え、えっと……学級会で裁くっていうのは、そういう意味じゃ……」

沙織が慌てて手を振る。

「サガさんが反省してるなら、それでいいと思うよ!

次はちゃんと、話し合ってから動こうね!」

 

シャカが微笑む。

「……まるで悟りの境地です。

言葉を交わすことこそ、争いを止める最初の一歩」

 

ヴィーナスが呆れたように笑う。

「悟りっていうか、小学五年生の生活指導よね」

 

アッシュはその光景を黙って見ていた。

彼の目に映るのは、どんな哲学者よりも強い現実の姿だった。

怒り、涙、笑い――その全部を抱えたまま立ち上がるのが人間。

そして、それこそが神にはできないこと。

 

「……これが、人間の答えなのかもしれんな」

アッシュが小さくつぶやく。

 

 

 

 

 

 

「学級会はそこまでにしましょう」

 

通信画面の向こう、ヴィーナスの表情は引き締まっていた。

 

「作戦を提案するわ。私とエリス、そしてアテナの三人で小宇宙を合わせる。

この天変地異を一時的に抑え込むことができるはず。でも、全力でやっても猶予は十二時間。

それを過ぎれば、私たちの力は尽き、地上は崩壊する」

 

アッシュの眉が動いた。

「十二時間……つまり、それが我々のタイムリミットというわけか」

 

「そういうこと。あの堕天使は神すら滅ぼす存在。

完全封印は不可能。倒すか、封じるか、どちらにしても十二時間が限界よ」

 

アイオロスが画面越しに頷いた。

「その十二時間の間に、俺たちがルシファーを討つ。

……簡単な話じゃないな」

 

「ええ。でも、それしかない」

ヴィーナスの声は冷静だった。

「しかも、ルシファーは必ず妨害を仕掛けてくる。

彼の手勢――聖魔天使が、再び動き出すはずよ。

こちらも守りを固めなければならない。だから、日本からの増援は出せない。

あなたたち聖域の戦士だけで、やり遂げなさい」

 

その言葉は厳しかったが、同時に信頼でもあった。

 

エリスが腕を組んだまま口を開く。

「地上の防衛は私たちに任せろ。

アテナの小宇宙は穢れを浄化し、私の力は地脈を抑える。

ヴィーナスは天体軌道を制御して、月と地球の重力を固定する。

地上が安定すれば、お前たちは安心して戦えるだろう」

 

「だが……それほどの負荷を三柱が同時に負うなど、危険すぎる」

サガの声に、ヴィーナスはわずかに笑った。

 

「危険? それはあなたたちの仕事でしょ。

私たちは命を懸ける。だから、あなたたちも死ぬ気で勝ちなさい」

 

通信の背後で、沙織が小さく手を挙げた。

「じゃあ、わたしはがんばって祈るね。パパがいてくれるから、安心して行っていいよ、アッシュさん」

 

アイオロスが笑い、彼女の頭を優しく撫でた。

 

「護衛の配置も決めるわ」

ヴィーナスが言葉を続けた。

「アテナにはアイオロスと……ヤン。

エリスにはドルバルとオルフェウス。

そして私のもとにはフレイをつける。

アイオリアとアルデバランは遊撃ね。

これで地上の守りは盤石。あとはあなたたちが、天の門を破る番よ」

 

「了解した」

アッシュが短く答える。

その声に迷いはなかった。

 

通信が切れ、モニターが暗転した。

エレナが深呼吸をし、静かに立ち上がる。

「十二時間……それが世界の命綱ですね。

参謀長、作戦を」

 

「簡単だ」

アッシュは天井を見上げ、低く言った。

「ルシファーを倒す。それだけだ」

 

 

再び聖域に沈黙が戻る。

残されたのはアッシュ、サガ、ムウ、シャカ、そしてエレナ。

 

重苦しい空気を破ったのは、アッシュだった。

「ムウ、シャカ。君たちには思うところもあるだろう。

俺たちがしてきたことを、全て受け入れろとは言わない。

だが今は、この地上を守るために――力を貸してほしい」

 

ムウはしばらく黙っていた。

彼の視線は、アッシュとサガの間を往復する。

かつて信じ、裏切られ、そして今、再び並び立つことを求められている。

 

「……正直、まだ納得はしていません」

彼は静かに言った。

「師を殺された事実は、消えない。

けれど、アテナが……沙織が、あの笑顔で語った教えを信じたい。

許せなくても、話し合うことはできる。

それが、私の選んだ答えです」

 

「ムウ……」

サガが小さく呟く。

 

ムウは頷き、目を閉じた。

「この話の決着は、ルシファーを倒した後に。

それまでは、アテナの聖闘士として、貴方方に協力しましょう」

 

アッシュがわずかに微笑んだ。

「……ありがとう。君の誇りは、誰よりも正しい」

 

そしてシャカが立ち上がる。

「私も異論はない。

貴方がたが歩んできた道が、正義か悪かは私には分からぬ。

だが、私は今の貴方がたを正義だと信じている」

 

アッシュが軽く笑った。

「君にそう言われると、少し気恥ずかしいな」

 

「フッ……褒め言葉のつもりだよ。

それに――」

 

「この十数年、まあまあ楽しかったからな。ただ、算数の授業はもう勘弁してほしいがね」

 

エレナが思わず吹き出した。

「まさか、聖域一の賢者が算数嫌いとは」

 

「桁数が多すぎるんだ。経理書類の方がよほど難解だ」

シャカの冗談に、場の空気が少し和んだ。

 

アッシュは仲間たちを見渡し、ゆっくりと頷く。

「……いいな。

この空気が、戦いの前にはちょうどいい」

 

 

 

 

 




エリス「ふぅ……さて、夜の順番を決めるか」

沙織「えっ、夜ってなに!? また変なこと言ってるでしょママ!」

ヴィーナス「夜っていうのは神々の交信タイムのことよ。……たぶん」

エリス「嘘をつくな、ヴィーナス! 我は正式に言ったのだ、アイオロスのベッドを占領する順番と!」

沙織「ちょっ、ちょっと待って!? それ絶対違う会議だから!」

ヴィーナス「……まあ、愛の女神としては参加しないわけにはいかないけどね」

沙織「参加しないで!!!」

エリス「フン……冗談だ。だが、あの男がまた地獄に行くなら、見送るのは我の役目だ」

ヴィーナス「……奇遇ね。私も、祈るのは嫌いじゃないのよ」

沙織「……じゃあ、わたしはお弁当作る!」

エリス&ヴィーナス:「……平和ね、ほんと」

この次の映画編はどちらがいいですか?

  • 真紅の少年伝説編(日本編)
  • 最終聖戦の戦士たち編(聖域編)
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