聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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世界は悲鳴を上げていた。
大地は裂け、空は滅びの色に染まり、神々でさえその崩壊を止められない。

祈りの神殿では、アテナ、エリス、ヴィーナス――三柱の女神が奇跡を紡ぐ。
だがその祈りを裂く、茨と堕天の影。

聖域の守護者たちが立ち上がり、
アッシュとエレナは、地上最後の門番として堕天の階段を封じる!

人の祈りは、神をも超えるか――

次回、『堕天の階段 ――祈りの継承者たち』
光は、まだ消えてはいない。


堕天の階段 ――祈りの継承者たち

地響きが止まらなかった。

海は逆巻き、空には無数の亀裂が走り、世界そのものが悲鳴を上げていた。

 

その中心、日本。

北の地にあるエリス神殿の最奥で、三柱の女神が並び立っていた。

 

ヴィーナス、エリス、アテナ。

彼女たちの放つ小宇宙が絡み合い、足元の方陣が淡く光を放っている。

それは、ルシファーが引き起こした天変地異を抑えるための巨大な防御陣だった。

 

外界では人々の祈りが交錯し、泣き叫ぶ声が風に溶けていく。

だが、神殿の内部には、ただ三つの心臓の鼓動だけが響いていた。

 

「うぅ……!」

幼い声が震えた。

中心に立つ沙織の身体が、光の奔流に押し潰されそうになっている。

女神アテナとしての力を完全に制御できるほど、彼女はまだ成熟していない。

 

ヴィーナスが振り向いた。

「沙織、しっかりなさい!小宇宙の波長が乱れています!」

彼女の声は鋭かったが、焦りを隠せていない。

 

沙織の額から汗が滲み、唇が震える。

「ご、ごめんなさい……頑張ってるのに……止まらない……!」

 

ヴィーナスは即座に自身の小宇宙を強め、沙織の流れに合わせて波長を整える。

三人の力は一つの柱として天に伸び、その光が雲の裂け目を貫いた。

地上では、荒れ狂っていた海が一瞬だけ静まり返る。

 

だがその反動もまた激しかった。

空気が震え、神殿全体が軋む。

 

エリスが眉をひそめる。

「フン……まだ神の力に慣れぬ小娘には荷が重いか。仕方あるまい」

言葉は冷たく聞こえたが、彼女の小宇宙は誰よりも強く燃えていた。

その力が、沙織の背を支えるように流れ込んでいく。

 

ヴィーナスがそれに気づく。

「エリス、あなた……自分の負担が倍になるわよ。無茶をしないで」

 

「黙れ、ヴィーナス。……我が娘の苦しむ顔は、見ていられんのでな」

エリスの声は低く、静かだった。

 

沙織の瞳が揺れた。

「……ママ……」

 

ヴィーナスは短く息を飲んだ。

「……あなた、本当に変わったわね」

 

エリスは答えず、目を閉じた。

「母親だからな。それだけだ」

 

彼女の身体を通して、冷たく鋭い小宇宙が流れ出す。

それは、かつて破壊と混乱をもたらした争いの女神のものだった。

だが今、その力は人々を守るために使われている。

 

神殿の壁が震え、光が奔流となって天井を突き抜けた。

外の空は再び明るくなり、雲の切れ間から陽光が差す。

地上では、避難する人々がその光を見上げ、祈るように手を合わせた。

 

ヴィーナスは息をつき、周囲の状況を見回す。

「抑え込みはできています。けれど、これ以上は長く持たないわ」

 

エリスが短く答える。

「分かっている。……十二時間だ。それが限界」

 

三人の視線が交わる。

それだけで、互いの意思が伝わった。

 

沙織が小さな手を胸に当てた。

「……アッシュさんたち、きっと勝ってくれるよね」

 

エリスが目を細める。

「人間の戦いは、人間が決めることだ。私たちは、それを見届けるだけでいい」

 

「でも……」

沙織は唇を噛んだ。

「私、怖いの。もし……この祈りが途切れたら、みんなが……」

 

ヴィーナスが膝をつき、沙織の肩に手を置いた。

「大丈夫。貴女は一人ではありません。

私も、エリスも、あなたを支えている。……それに、あの人たちは決して負けないわ」

 

エリスが小さく鼻で笑った。

「フッ……お前がそう信じるなら、きっとそうなるだろう。

神の言葉よりも、人の祈りの方が強いものだ」

 

三人の手が重なった。

光が再び走り、方陣が強く輝く。

その光は大地へと伸び、地震の震源を覆うように広がっていく。

 

日本列島を包む光の防壁が完成した。

それは、地上を守るための最後の祈り。

神の力ではなく、三人の意思によって生まれた結界だった。

 

ヴィーナスが静かに呟いた。

「この力が尽きる前に、どうか……あの人たちが希望を掴んで」

 

エリスが瞳を閉じた。

「娘の願いを、母が否定する理由はない」

 

沙織の身体がふらつく。

エリスがすぐに支えた。

その手は、かつて憎しみを握りしめていた時よりも温かかった。

 

三人の小宇宙が再びひとつになる。

紫、緑、白――三色の光が混ざり合い、夜空を包むように広がっていく。

 

その光は遠く聖域にも届き、伏魔殿へと向かう黄金の戦士たちの背を照らした。

 

「アッシュ……」

ヴィーナスが微かに微笑む。

「あなたたちの選んだ人間の正義、見せてもらうわ」

 

彼女たちは祈り続けた。

誰かのために、ではなく、自分たちの選んだ生のために。

 

そして、神殿の光は、再び夜を裂いた。

 

 

 

 

 

 

聖域の上空には、もはや空と呼ぶには相応しくない景色が広がっていた。

蒼ではなく、黒と紫が混ざり合ったような空間。

稲妻のような裂け目が、時折、世界そのものを引き裂く音を立てている。

 

その中心に、巨大な城が浮かんでいた。

それが、堕天使ルシファーの居城──伏魔殿。

外壁は血のような黒紅に染まり、無数の翼のような影が蠢いている。

生き物のように鼓動し、聖域の空を覆うその姿は、まるで神への嘲笑そのものだった。

 

アッシュ率いる五人の黄金の戦士たちは、城の下層に到達していた。

聖域から飛翔してきた際に張られた光の道が、ようやく途切れ、

その先には、空へと続く階段がゆっくりと現れていた。

 

階段と呼ぶには異様な造形だった。

光でも石でもなく、凝縮された魂のような物質で形成されており、

一歩踏みしめるごとに、誰かの悲鳴のような音が響く。

 

ムウが小さく息を呑んだ。

「これが……ルシファーの伏魔殿……。

空気が重い。まるで、空間そのものが嘆いているようです」

 

彼の小宇宙が揺れる。

ここに至るまで、数多の次元結界を突破してきた。

 

シャカが目を開け、静かに言葉を続ける。

「この階段を登った先に、ルシファーがいる。

だが、道中、何もないはずがない。

おそらく、ここが試練そのものだ」

 

風が吹き抜けた。

風のはずなのに、冷たさではなく、熱を感じる。

アッシュは手を伸ばし、その空気を確かめた。

「……熱気か。いや、違う。魂そのものが燃えているようだ」

 

サガが一歩前に出る。

「グズグズしていてはアイオロス達がもたない! 急ぐぞ!」

彼の目には、既に迷いはなかった。

 

アッシュが頷き、声を張る。

「おう!」

 

エレナもその背に並び、静かに続けた。

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

大地が鳴動した。

祈りの方陣を中心に、周囲の空間そのものが歪み始める。

空気が裂け、冷たい風が吹き抜けた次の瞬間――漆黒の茨が無数に現れた。

それらは大地を突き破り、天へと伸び、まるで世界を締め付ける鎖のように絡み合っていく。

 

日本の女神殿に集う三柱の女神――アテナ、ヴィーナス、エリス――の祈りを阻むように、茨は方陣へと迫った。

 

その異変を、最前線で見張っていたアイオロスが即座に察知した。

彼の目は鋭く光り、翼がはためく。

 

「来たか……!ルシファーの妨害だ!」

アイオロスの声が響くと同時に、神殿の外に控えていた四人の守護者たちが即座に武装を整えた。

 

ヤンが先陣を切る。

彼の盾が空を裂き、迫り来る茨を切り払う。

その縦には稲光のようなエネルギーが走り、切断面から青白い火花が散った。

 

続いて、オルフェウスが竪琴を構えた。

「――ストリンガー・コスモス!」

銀色の弦が震え、音の衝撃波が広がる。

音の壁が押し寄せ、茨の群れを吹き飛ばした。

だが、その断ち切られた部分から、また新たな茨が生えてくる。

 

「これではきりがありません!」

オルフェウスが歯を食いしばる。

 

ドルバルがその隣に立ち、両腕を組み上げた。

「うむ!ならば防ぐしかあるまい!」

彼の全身を青い光が包み、地面に複雑な紋章が浮かび上がる。

「オーディーン・シールド!」

 

轟音とともに、巨大な結界が展開された。

壁が方陣を取り囲み、魔界の茨の侵入を防ぐ。

触れた茨は瞬時に凍結し、砕け散った。

しかし、結界の外から次々と新たな裂け目が生まれる。

空が裂け、大地が軋み、茨は止むことなく湧き出した。

 

ヤンが地を蹴り、空中で交差斬りを放つ。

「増え続けるか……だったら根を絶つ!」

雷光をまとった一撃が、裂け目の中心を貫いた。

だが、その奥から吹き出す黒い霧が、彼の視界を覆った。

 

「……くそっ、魔力が濃すぎる!」

ヤンは後方に跳び、体勢を立て直す。

 

フレイが彼の肩を支えた。

「焦るな。お前が倒れたら、誰が前線を支える!」

氷の神の血を引く男の手から、冷気が流れ出る。

彼は両手を天に掲げ、祈るように呟いた。

「――氷槍よ、天を穿て」

 

無数の氷柱が上空から降り注ぎ、茨の群れを貫いた。

それは一瞬、世界の動きを止めたかのような静寂を生んだ。

 

しかし、その静寂を破るように、茨の奥から低い呻き声が響く。

「……アァ……アァァ……」

それは生物ではない。

人の声のようでありながら、感情を持たない怨嗟の音。

その音と共に、茨の根元がうごめいた。

 

「くっ……! これまでの茨とは違う!」

アイオロスが叫び、弓を構える。

黄金の弓から放たれた矢が光の軌跡を描き、中心の根を狙い撃つ。

だが、矢は途中で止められた。

まるで空間そのものが矢を拒んだかのように、光が消える。

 

アイオロスは歯を食いしばり、次の矢を番える。

「怯むな! 俺たちの役目は時間を稼ぐことだ!」

彼の声が神殿全体に響いた。

「十二時間……何としても持たせるぞ!」

 

その号令に、仲間たちは一斉に頷いた。

戦う理由はただひとつ。

三柱の女神の祈りを守り抜くこと。

その祈りが絶えれば、世界は終わる。

 

ヤンが再び前線に立ち、双剣を交差させる。

「ここは地上だ! 天の連中に負けるわけにはいかん!」

 

オルフェウスが微笑んだ。

「いいな。君のそういう直情的なところ、嫌いじゃない」

そう言って弦を強く弾く。

音が爆ぜ、次元の裂け目を一瞬閉じる。

 

ドルバルの結界が軋む。

壁に亀裂が走り、気が逃げ出した。

「……長くは保たぬ!」

「ならば私が補強する!」

フレイがすぐさま前に出て、氷槍を突き立てた。

その槍が柱となり、結界の裂け目を塞ぐ。

 

その間にも、無数の茨が再び伸びてくる。

動きは速く、まるで意思を持っているかのようだった。

彼らは女神たちの小宇宙に引き寄せられている。

 

エリス神殿の奥では、三柱の光が揺れていた。

沙織の声が、震えながら届く。

「パパ……みんな……大丈夫ですか……?」

 

アイオロスは振り返らずに答えた。

「心配するな、沙織。俺たちはここを守るためにいる。

お前たちは、自分の使命を果たせ!」

 

その言葉に、沙織の小宇宙がわずかに強くなる。

再び光が走り、方陣が輝きを増した。

その光が守る限り、茨は届かない。

 

だが、魔界の力は止まらなかった。

裂け目の奥で、何かが動く。

形のない闇が集まり、人のような影を形作る。

それは天使の輪を持ちながら、翼が黒く腐敗した存在だった。

 

「……ルシファーの眷属……!」

フレイが目を細める。

 

空に黒い羽が散り、影たちは次々と姿を現した。

無数の聖魔天使が、祈りの光へと殺到する。

 

アイオロスは弓を引き絞り、声を張り上げた。

「全員、陣形を崩すな! 茨と天使を同時に相手取るぞ!」

 

五人の戦士の小宇宙が爆発的に燃え上がる。

金、青、銀、白、そして紅。

五色の光が空に交差し、夜を昼に変えた。

 

オルフェウスの旋律が戦場を包み、ヤンの盾が空を裂く。

フレイとドルバルの結界が地を固め、アイオロスの矢が天を貫く。

そのすべてが、ひとつの意思へと集束していた。

 

「守り抜け――! この十二時間、命を賭してでも!」

 

誰も答えなかった。

声を出す暇も、祈る余裕もなかった。

ただ、戦いが続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

伏魔殿の大階段を駆け上がっていたアッシュたちは、突如としてその足を止めた。

霧の向こうから、二つの影が立ちはだかる。空気が震え、階段全体が低く唸り声を上げた。

 

やがて、影が形を持つ。黒き翼を広げ、光を歪めるように漂う男――熾天使ベルゼバブ。

その隣に、白銀の甲冑を纏い、冷たい輝きを放つ智天使アシタロテが立っていた。

 

「待っていたぞ、聖域の愚者ども」

ベルゼバブの声は地を這うように低く響く。

「我が名は熾天使のベルゼバブ。堕天の王に仕えし、最初の剣だ」

 

アシタロテは、氷のような眼差しでアッシュたちを見下ろす。

「教皇殺しとその共犯者。貴様らの罪、この智天使アシタロテがここで裁かせてもらう」

 

ムウが一歩前に出ようとしたが、その肩をアッシュが押さえた。

「下がれ、ムウ。こいつは俺がやる」

アッシュの瞳は鋭く光っていた。

 

「ちょうどいい。地上での一撃の借り、ここで返させてもらうぞ、ベルゼバブ」

 

ベルゼバブが口の端を吊り上げた。

「いいだろう。聖域の参謀長。前回のように地面を舐める覚悟はできているか?」

 

そのとき、エレナが一歩前に出た。

「アッシュ。一人は私が。その智天使とやらの相手は、私が引き受けます」

 

アッシュは彼女を見やり、短く頷いた。

そして、背後の仲間たちに振り返る。

 

「サガ! シャカ! ムウ! お前たちは先に行け!」

「ここは俺とエレナで食い止める!」

 

その言葉に、サガの表情が険しくなる。

「しかしアッシュ! 相手はあのシュラ達を一撃で倒した連中だぞ!」

 

アッシュは不敵に笑い、肩をすくめた。

「時間がないと言ったのはお前だろ、サガ。それに――こういうのは『様式美』ってやつだ。先に行かせるために仲間が残る。熱い展開じゃないか。そして、大抵そういう役回りのやつは、ギリギリで生き残るもんだ」

 

エレナが横から淡々と付け加える。

「死亡フラグとも言いますけどね」

 

アッシュは顔をしかめた。

「エレナ……このタイミングでそれを言うか?」

 

「アッシュは今まで、その手のフラグを折りまくってきましたから。きっと大丈夫でしょう」

 

その軽口に、一瞬だけ張り詰めた空気が緩む。

だが次の瞬間、ベルゼバブの翼が広がり、闇の衝撃波が走った。

 

アッシュが振り返り、叫ぶ。

「行け!」

 

サガ、シャカ、ムウが即座に反応し、駆け出す。

階段の奥へ向かう三つの黄金の光。

 

だが、その背後を狙ってアシタロテが手をかざした。

「逃がすものか!」

 

掌から放たれた光が、矢のように三人へ向かう。

アッシュが両腕を突き出し、小宇宙を爆発させた。

 

「行かせん! オーロラエクスキューション!!」

 

絶対零度の凍気が放たれ、アシタロテの光を弾き飛ばす。

階段全体が凍りつき、アシタロテの足元が瞬時に氷の牢に閉ざされた。

 

「……チッ、氷結系か。面倒な」

アシタロテが眉をひそめ、力ずくで氷を砕く。

 

サガが振り返り、叫ぶ。

「アッシュ……! わかった、先に行く! 必ず追いついてこい!」

 

アッシュは笑みを返した。

「任せとけ。頭を凍らせてから、すぐ追いかける」

 

三人が階段の先へと消える。

アッシュとエレナは背中合わせに立ち、敵を見据えた。

 

アシタロテの前に立ちはだかるエレナ。

「あなたの相手は、私です」

 

「女が……? よかろう。まずは貴様から血祭りにあげてやる!」

アシタロテの拳が光を帯び、刃のように変化する。

その一振りで空気が裂け、床が抉れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルゼバブの瞳が、冷ややかに細められる。

「退け、雑兵ども。我らの狙いは貴様らではない。地上の聖域ごとき、塵のようなものだ」

 

アシタロテが続く。

「愚か者が。ルシファー様の御前に立つことなど、貴様らごときには許されぬ」

 

二人は、アッシュたちを視界の端にしか捉えず、階段を駆け上がろうとした。

だが、その進路を塞ぐように、アッシュとエレナが同時に動く。

二人の影が交差し、まるで門のように立ちはだかった。

 

「通す気はないぞ」

アッシュの声は低く、静かだった。

 

ベルゼバブが眉をひそめる。

「ならば、蹴散らしてやろう!」

 

瞬間、黒い翼が広がり、風圧と共に闇の拳が飛ぶ。

アッシュがそれを腕で受け止めた。

鈍い衝撃音が響き、彼の体が数メートル後退する。

同時に、アシタロテの一撃がエレナを襲う。

黄金の蟹座の聖衣が火花を散らし、金属音を響かせる。

 

「ッ……!」

エレナは足を滑らせながらも踏みとどまった。

その瞬間、背中越しにアッシュの声が届く。

「生憎だが、ここから先は一方通行でね。上りはない」

 

エレナが微笑み、息を整えた。

「ええ。この先は、通行止めですわ」

 

天使たちの攻撃は苛烈を極めた。

それでも二人は、ひとつも退かない。

何度吹き飛ばされても、何度血を吐いても、再び立ち上がり、立ちはだかる。

 

通すことも、逃げることも、許さぬ覚悟。

 

ベルゼバブが舌打ちを漏らす。

「人間風情が……なぜそこまで抗う!」

 

アッシュは血を拭いながら答えた。

「簡単な話だ。俺たちは、地上の門番だ。お前らみたいなのを通したら、後輩に顔向けできん」

 

その返答が癇に障ったのか、アシタロテが激昂した。

「戯言を! 下等な生命が神の使いを止めるなど、思い上がりも甚だしい!」

 

ベルゼバブが低く唸る。

「……アシタロテ、遊びは終わりだ。あの二人を消せ」

 

アシタロテが頷き、腕を広げる。

二人の聖魔天使が同時に小宇宙を解き放った。

その圧力だけで、階段が軋み、崩れ落ちる石片が宙に舞う。

 

アッシュは一歩前に出て、息を整えた。

「やれやれ……まったく、人間の言葉は通じないな」

 

エレナが口元を吊り上げる。

「天使なだけに、頭の中もお花畑なのかもしれませんわね。単純な命令も理解できないようですし」

 

その皮肉に、ベルゼブブの表情が歪んだ。

「抜かせぇっ! 人間風情が!」

 

怒りに燃えた聖魔天使たちの攻撃が同時に放たれる。

光と闇が交錯し、衝撃波が階段全体を吹き飛ばした。

だが、アッシュたちは消えていなかった。

 

「エレナ、立てるか!」

 

「ええ、まだいけます!」

エレナは頷き、盾を構えた。

 

二人の小宇宙が、共鳴するように輝きを増す。

光が絡み合い、黄金の残光が天井まで届いた。

 

アッシュがベルゼバブに視線を向ける。

「お前たちの狙いはサガたちだろう。だが、もう遅い。

あいつらは、お前らの届かないところに行った」

 

ベルゼバブが歯を食いしばる。

「ほざけぇっ!」

 

再び拳が放たれる。

アッシュが迎え撃つ。

拳と拳がぶつかり、空気が爆ぜた。

互いに吹き飛ばされながらも、アッシュは笑った。

 

「いいな……神の使いってのは、こうでなくちゃな!」

 

彼の瞳に、確かな光が宿る。

 

エレナがその背中を見ながら、小さく息を吐く。

「……本当に、あなたって人は。合理性のかけらもない」

 

そして再び立ち上がる。

「でも、だからこそ――私はあなたの隣に立つのです!」

 

エレナの小宇宙が、さらに燃え上がった。

黄金の光が広がり、アッシュの冷気と重なって輝く。

二人の力が重なった瞬間、階段全体が振動し、天使たちの攻撃を弾き返した。

 

ベルゼブブが顔を歪める。

「人間ごときが、我らと同等の光を放つだと……?」

 

アッシュが口元を拭い、にやりと笑った。

「同等? 違うな。俺たちは、神に仕えるための光じゃない。

地上を照らすための光だ」

 




ヴィーナス「ふぅ、なんとか収まったわね。方陣も安定したし」

エリス「まだ油断はできん。……それにしても、貴様、戦いの最中によくも化粧直しなど」

ヴィーナス「女神は常に美しくあるべきなのよ。ね、沙織?」

沙織「えっ? あ、はい……。でも、エリスママも、ちょっと綺麗になった気が……」

エリス「ほう、貴様まで口が上手くなったな」

ヴィーナス「ふふっ、母娘って似るのね」

エリス「誰が母娘だ! ……いや、間違ってはいないが……」

沙織「(こっそり)あ、今ちょっと照れてる」

ヴィーナス「ほんと可愛いわね、沙織。次の戦いが終わったら、温泉でも行きましょう
か」

エリス「……私は酒があればそれでいい」

沙織「それ、温泉行く気あります?」

この次の映画編はどちらがいいですか?

  • 真紅の少年伝説編(日本編)
  • 最終聖戦の戦士たち編(聖域編)
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