聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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童守町に太陽神が溶け込んでくると、日常はこうも明るく、こうも面倒くさくなるのか──。
駅前布教という神なのに生活臭あふれる活動を始めたアベルは、今日も人々に加護とツッコミどころを与えています。

そして、そんな彼の前に現れたのは、霊能力者・葉月いずな。
狐の霊獣と共に現れる強気な少女は、アベルにとって予想外の好敵手であり、後に運命の人となる相手です。

神と人間、布教と商売、理性と感情。
童守町の混沌が、また新しい物語を生み出します。

それでは、どうぞ。


太陽神、初めての人材スカウト

最近の童守町では、駅前で立っている僕の姿がちょっとした名物になってきたらしい。

 

「聞け、人間たちよ!僕は太陽神アベル!妹である智慧と戦いの女神アテナと共に、この地に住まうお前たちに加護を与えよう!信仰を捧げる者には、交通安全と商売繁盛と恋愛運アップのお守りを授ける!」

 

いつものセリフを言いながら、僕は視線をぐるりと巡らせる。最初はみんな怪訝そうだったが、今では足を止める顔ぶれもだいぶ増えた。小学生、高校生、仕事帰りの会社員、買い物袋を下げた主婦、定年後らしき夫婦。年齢層は幅広い。

 

「アベル様、こんにちは!」

 

買い物帰りっぽいおばさんが手を振ってくる。僕は軽く会釈して、詰所のクーラーボックスから炭酸飲料を一本取り出して渡した。

 

「暑いだろう?のどを潤していくといい」

 

「まあ、気が利くわねえ。アベル様、この前のお守り、本当に効いたのよ。自転車で車道に落ちかけたんだけど、車のほうが勝手にすっ転んでくれてねえ」

 

「それは良かった。多少派手でも、結果的に無事なら問題ないさ」

 

車の修理代は保険がどうにかしてくれる。人命優先、これは神として譲れないラインだ。

 

少し離れたところでは、スーツ姿の青年が深々と頭を下げてきた。

 

「先日はありがとうございました!アベル様のお守りを付けてから、プレゼンが全部うまくいって、部長に褒められました!」

 

「君の努力の結果だよ。僕はちょっと背中を押しただけだ」

 

お世辞ではない。加護を与えても、燃やす小宇宙がなければ成果は出ない。だからこそ、努力している人間に力を貸すのは悪くない仕事だと思う。

 

歩道の端では、アトラスとジャオウが無表情でビラを配っていた。あいつらはあいつらで、信者の整理と警備と、ついでに警察への道路使用許可の更新まで全部やってくれている。

 

「アトラス、今日の信者の伸びはどうだ?」

 

「昨日より二割増しです。配布物も残り三百。予定通りの推移かと」

 

「上出来だな。さすがだ、アトラス」

 

合理的に動く部下がいるというのは、実にありがたい。胸の内で光政にも感謝する。城戸邸の人間たちは、神と人の共存という点で、とても話が早い。

 

「アベル君、この書類、ちゃんと出しておいてくれたんだね」

 

近くに来ていたお巡りさんが、コピーした許可証をちらっと掲げる。

 

「当然だろう。法律は守るためにある。神が率先して違反してどうする」

 

「宗教団体のほうは、あんまり変な勧誘とかしないようにね。苦情が来ると、こっちも困るから」

 

「安心しろ。うちのはあくまで任意加入だ。ノルマもないし、壺も売らない」

 

お巡りさんは吹き出して笑い、「頼むよ、神様」と肩をすくめて持ち場に戻っていった。こういう現実的なやり取りも、嫌いじゃない。

 

「アベル様、恋愛成就のお守り、追加発注お願いできますか!」

 

制服姿の女子高生が数人、キャーキャー騒ぎながら近づいてくる。昨日渡した分では足りなかったらしい。

 

「いいだろう。だが、あくまで勇気を出すきっかけだと思いなさい。相手の気持ちをねじ曲げるような真似はしない」

 

「はーい!アベル様、真面目ー!」

 

からかわれている気もするが、楽しそうなので良しとする。神も多少は親しみやすいほうが信仰を集めやすいのだ。

 

改めて駅前を見渡した。以前に比べて、なんとなくゴミが減っている。落ちている缶も少ない。信者たちが自主的に清掃をしているおかげだろう。

 

ふふ、いい傾向だ

 

信仰が増えれば、街も整う。人々の心が落ち着けば、犯罪も減る。僕の威光も高まり、地上の安定にも寄与する。神としても、管理職としても、実に効率がいい。

 

「アベル様、そろそろ一旦休憩を」

 

いつの間にか傍らに来ていたジャオウが、冷えたおしぼりを差し出してきた。

 

「ありがとう。じゃあ、十五分だけな」

 

マイクスタンドから少し離れ、信者たちに軽く手を振る。

 

「一旦休憩だ。また十分後に続きを話そう」

 

「はーい!」

 

「アベル様、無理しないでくださいね!」

 

あちこちから声が飛んでくる。近くのベンチに腰を下ろし、配布予定のアクセサリーを一つ手に取った。光政が用意してくれた素材は質が良く、そこに軽く小宇宙を込めるだけで、そこそこのお守りが出来上がる。

 

ベンチの向かい側では、中学生くらいの男の子がスマホで俺を撮っていた。撮影禁止にはしていない。勝手に切り抜かれて「駅前のイケメンお兄さん」とかいうタグで拡散されているのも知っている。

 

宣伝になるならいいか

 

コメント欄で「宗教っぽくて怖い」と言われることもあるが、「でも助かったから信じる」と書き込んでいる者もいる。人間とはつくづく感想の多い生き物だ。

 

沙織もだいぶ上達してきたな

 

昨夜、一緒に作業したときのことを思い出す。最初は文句ばかり言っていたが、完成したチャームをクラスメイトに配って嬉しそうにしていた。素直じゃないところが、あいつの可愛いところだ。

 

「さて、と」

 

おしぼりで顔を拭き、もう一度立ち上がろうとしたときだ。視界の端を、ひらりと白いものが横切った。

 

 

 

 

 

 

 

 ただの猫や犬なら放っておくが、今のは違う。ほんのわずかだけど、小宇宙とは別種の霊的な揺らぎがあった。

 

今の……土地神系の眷属か? それとも低級妖怪? どちらにせよ、調べないわけにはいかないな

 

 僕は信者たちに向き直る。

 

「少し休憩を取る。アトラス、ここは任せた。パンフレットの配布とアンケートの回収を続けておいてくれ」

 

「御意。では、信徒の皆さん、列を乱さないようお進みください」

 

 こういう時、有能な部下がいると本当に助かる。神の威光はチームワークで維持されるのだ。僕はマントを翻し、白い影の残り香を追って細い路地へと入った。

 

 昼でも薄暗い路地の奥から、ひそひそ声が聞こえてくる。

 

「で、どうだったのよ、管狐ちゃん。駅前のカリスマ美少年、財布の中身は?」

 

カリスマ美少年、か。表現としては正しい

 

 思わず頷きそうになるのをこらえつつ、壁の陰からそっと様子をうかがう。セーラー服の少女がしゃがみ込み、白い狐のような存在と向き合っていた。尻尾がふわふわしている。あれは触ってみたい。

 

 白い狐──さっき名前を呼ばれていた、管狐という存在が、声ではなく意識で答えているのが分かる。

 

「ダメダメ、あの人、現金持ってない。全部スマホ決済」

 

「ちぇっ。イマドキの若者はこれだから…。じゃあ、あの人の悩みは? 弱みは? 何かネタはないわけ?」

 

現金を持たないのは合理的な経済行動だ。そこを不満げに言われる筋合いはないな

 

苦笑しながら、一歩前へ出た。

 

「それは、僕のことかな?」

 

 少女がビクンと肩を跳ねさせて、勢いよく振り向く。大きな瞳が、僕と管狐を交互に見比べた。

 

「あ、あんた! いつの間にそこにいたのよ!」

 

「さっきからずっとだよ。君が管狐に『財布の中身チェック』を依頼したあたりから、だいたい全部」

 

少女は一瞬で顔色を変え、営業スマイルに切り替えた。切り替えが早い。

 

「えーっと、こんにちは! 私は葉月いずな、イタコでーす! 悪霊祓いから浮気調査、行方不明のペット探しまで、なんでも承ります! 今なら初回相談無料!」

 

「自己紹介が刑事ドラマの逮捕状みたいな内容なんだけど、自覚はあるかな」

 

「うるさいわね! で、あんた何者よ。名前と住所と弱みをどうぞ」

 

なかなか攻めた営業トークだ。嫌いではない。

 

「僕はアベル。太陽神だ。住所は今のところ城戸邸。弱みは、妹に恋愛をさせたくないという兄心だ」

 

「最後のだけ情報量が多いんですけど」

 

 いずなが頭を抱える。管狐が僕の周りをぐるぐる回りながら、好奇心をぶつけてくる。霊的な鼻息がむずむずする。

 

「管狐ちゃん、あんた何やってんの。…で、本当に神様なわけ? 霊感商法じゃなく?」

 

「逆だね。霊感側が商売をしているところに、ちゃんとした神が来た、という状況だ」

 

「ちゃんとしたって自分で言ったわね、この神」

 

ツッコミのキレは悪くない。僕は管狐に指を伸ばした。

 

「ふむ……珍しい波長だ。人間の小宇宙とは別系統。けれど、完全な神でもない。いわゆる土地の精霊と人間のあいだ、というところか」

 

「ちょ、勝手に解析しないでもらえる!? その子達、うちの大事な相棒なんだから!」

 

 いずなが僕の手を払いのけて、管狐を抱き上げる。管狐は僕の指をちょんと舐めてから、いずなの胸元に潜り込んだ。少しだけくすぐったい感覚が残る。悪くない。

 

「ともかく、さっき言ってたろう。人の悩みや弱みを探るって。あれは正直、あまり感心しないやり方だ」

 

「うっ…。だって、こっちは生活がかかってんのよ。依頼人なんて来ない月は来ないんだから、こっちから営業かけないと、ご飯食べられないの」

 

「ふむ。つまり、人間界でいうところの自営業の苦しみ、というやつだね」

 

「そうよ。こちとら零細イタコ業よ。神様なら景気上げてよ、ほんとに」

 

 路地の上に広がる空は狭く、ビルの隙間から差し込む光は弱い。

 

「ところで、一つ聞いていい?」

 

いずなが管狐を撫でながら、遠慮がちに口を開く。

 

「何だい」

 

「さっき、あんたの悩み、って言ってたやつ。妹さんの恋愛のこと、本気でそんなに気にしてるわけ?」

 

「当然だ。あの子はまだ小学生だ」

 

「いや、それは分かるけどさ。あんた、さっきから『恋愛をさせたくない』じゃなくて、『恋愛をさせたいけど、相手に条件を付けたい』って顔してるよ」

 

 図星だった。思わず言葉に詰まる。

 

「……そんなに顔に出ているかな」

 

「出てる。まあ、兄バカの神様ってネタ、わりと嫌いじゃないけど」

 

いずなが肩をすくめる。

 

「それはそれで心配だ」

 

「ほんと、神様って大変ね」

 

 

 

 

 

 

 

この国の信仰構造は、なかなか面白い。八百万の神、仏教との習合、陰陽道、土地ごとの祟り神。あれもこれもまあいっかで受け入れてしまう柔軟さ。僕と沙織の信仰を根付かせるには、これほど都合のいい土壌もない

 

 駅前での布教も、順調だ。だけど、外来の神だけで攻めるより、この土地の事情に詳しい案内役がいたほうがいい。ぬ〜べ〜のような教師属性も頼りにはなるが、彼は基本的に人間側だ。僕の側に立つ、現地協力者が欲しい。

 

 目の前の少女は、どう見てもその候補だ。妖怪と普通に話せる霊能力。金の匂いに敏感そうな目。打算も計算も、きっと嫌いじゃないタイプ。

 

それに――

 

 ちらりと観察する。背丈は沙織より少し高いくらい。ツリ目気味の瞳は気が強そうだが、泣いたらたぶん可愛い。将来性も悪くない。

 

僕の妻候補リストに、仮登録してもいいかもしれないな

 

 計算終了。所要時間、約〇・二秒。僕は、神々しい笑みを浮かべて口を開いた。

 

「どうだい、君。その力、僕のために使ってみる気はないか? 人の悩みを聞き、導き、時に救う。神の仕事はやりがいがある。君が仕えるに値する相手としては、悪くないはずだよ」

 

「は?」

 

 少女は、綺麗な「は?」をくれた。なんだろう。

 

「だいたいさあ、あんたさっきから上から目線すぎんのよ。『僕のために力を使え』なにそれ。アンタ、どこのマルチ商法?」

「マルチではない。宗教だ」

「余計やばいわ!」

 

 この反応、嫌いじゃない。むしろ好感が持てる。へらへら媚びてくるより、よほど健全だ。

 

「誤解しないでほしい。僕はただ、君の力を正しく評価しているだけだ。あの教師――ぬ〜べ〜だっけ――もそうだが、この町には優秀な人材が多い。君も、その一人だ」

 

「お、おだてても何も出ないからね!? だいたい、さっきからアンタの周り、変な光ばっかりで目が疲れるのよ。発光系のコスプレ? それとも新手の精神攻撃?」

 

「これは神の小宇宙だ」

 

「説明になってないから!」

 

 会話がかみ合っているようで、全然かみ合っていない。だけど不思議と、嫌な感じはしない。星矢のときにも思ったが、人間相手にここまで真っ向からツッコミを食らうのは、案外新鮮だ。

 

ふむ……この少女と親しくなれば、沙織が星矢と出かけるとき、僕も「ダブルデート」という名目で同行できるな。安全のための付き添いとしても理にかなっている。僕の監視のもとでなら、星矢との接触も手限定で済ませられる

 

素晴らしい。妹の安全のためだ。

 

「で、あんた。結局アタシに何してほしいわけ?」

 

「単刀直入に言おう。君の情報網と管狐を、僕の布教活動の補佐に使わせてほしい。もちろん対価は払う。金も物も、それなりに用意できる」

 

「お金払うの!?」

 

「当然だ。神であっても、労働には正当な報酬を払うべきだろう?」

 

「うっわ……今まで会ったどんな依頼人よりホワイト……」

 

いずなの目が、ぐらりと揺れた。管狐も、空中でコクコク頷いている。

 

そこで彼女は、じろっと僕をにらみつけると、ため息をついた。

 

「……いいわよ。アンタの話、ちょっとだけ聞いてあげる。どうせロクでもないこと企んでんでしょ?」

 

「人聞きが悪いな。僕が望むのは、地上の安定と、ささやかな信仰心と、妹の安全な恋愛だけだ」

 

「最後のが一番重いわ!」

 

 思わず笑いそうになる。なるほど、この少女は、僕の計算の何手か先にあるボケを引き出してくれるタイプかもしれない。

 

 いずなは腕を組んで、じろじろと僕を観察する。

 

「でもさ、アンタみたいなの見てるとさ。ほんとに神様っているのかなって思うわ。見た目はイケメン、頭は良さそう、力もヤバい。でも、やってることが駅前で辻説法って、微妙に生活感あんのよね」

 

「生活基盤の安定は重要だ。信者が増えれば、お布施も増える。お布施が増えれば、この町への還元も増える。僕は理想主義者である前に、結構な現実主義者なんだ」

 

「うわ、数字に強い神様……税務署と仲良くしてそう……」

 

「納税は市民の義務だ」

 

「ガチでしてるんだ……」

 

 彼女はそこで、ふっと表情をゆるめた。さっきまでの警戒心が、少しだけ和らいでいる。

 

「まあいいわ。とりあえず、アタシに変なちょっかい出さないって約束するなら、協力してあげる。ナンパだったらお断りだけど」

 

「誓って言おう。僕の第一目的は布教で、第二目的は沙織の恋愛監視で、第三目的が君の将来性の観察だ」

 

「最後のが結局ナンパじゃないのよ!」

 

「違う。人材スカウトだ」

 

「その顔で言われると説得力あんのが腹立つわね……」

 

 僕は思わず笑ってしまった。星矢のときといい、どうも最近、人間相手に笑わされることが増えている。

 

(神のくせに、だなんて、以前の僕なら絶対に言わなかっただろうな)

 

 路地裏の上を、夕焼けがオレンジ色に染めていく。太陽神としては、そろそろ退勤時間だ。

 

「では、詳しい話はまた今度。連絡先を交換しておこう。信仰相談窓口として、いつでも開いている。仲良くしてほしい。男性と女性として、ね。」

 

「はいはい。既読スルーしたら神罰とかナシよ?」

 

「さすがにそこまではしない。たぶん」

 

「たぶんって言った!? 今、たぶんって!!」

 

 いずなのツッコミを背中で受けながら、僕は空へと視線を上げた。

 この国の神々は数が多い。人も妖も、ごちゃごちゃに入り混じっている。それでも、どうにかこうにか共存している。そんな場所で、僕たちオリンポス組がどう居場所を作るか。

 

悪くないゲームだよ、これは

 

 太陽神アベルとしてではなく、一人の少年としての僕が、そう思っていることは、誰にも言わないでおこうと思った。

 

 

 

 

 

 

「……え? 今なんて言った? 仲良く、って」

 

「そう。仲良くしてくれないか、いずな。さっきまでは、君の力を『僕のために使え』なんて言い方をしてしまったけれど、訂正しよう。僕は城戸アベル。大神ゼウスと人間の娘の血を引く半神だ。君の力に興味があるし、君自身にも興味がある。だから、もっと話がしたい」

 

 自分で言っておきながら、少しだけむず痒い。俺は普段、ここまで丁寧に人間に自己紹介などしない。神は祈られる側であって、頭を下げる側ではないからだ。

 だが、この国で暮らして分かった。日本人は、祈る相手が神かどうかよりも、「ちゃんと挨拶できるか」「近所付き合いができるか」を重視するらしい。ならば、太陽神といえど、最低限の礼儀くらいは覚えるべきだろう。

 

 いずなは、俺の差し出した手をじっと見つめ、狐の霊獣――管狐というらしい――とひそひそ相談を始めた。

 

「ねえ管狐ちゃん……駅前のカリスマ美少年が、なんかすごいこと言ってるんだけど。半神?アベル?中二病?」

 

(声は綺麗だし力も本物だから、たぶん中身は本物だと思うよ)

 

「本物て何よ……」

 

 こそこそと人の目の前で相談するとは、なかなか度胸のある少女だ。普通なら、俺の小宇宙に当てられて膝から崩れ落ちていてもおかしくないのに。

 

「聞こえているぞ、いずな。中二病ではない。本当に神だ」

 

「……マジ?」

 

「マジだ」

 

 俺がにっこり微笑むと、いずなはじっと俺の顔を見つめ、そして小さくため息をついた。

 

「はぁ……まあ、童守町だしね……。先生は鬼の手持ってるし、妖怪と結婚しかけてるし、今さら神様の一人や二人増えても驚かないわ」

 

「受け入れが早いな、この少女」

 

「諦めとも言う」

 

 肩をすくめるいずなに、思わず苦笑が漏れる。なるほど、環境というやつは、人間の順応力を恐ろしく鍛えるのだな。

 

 

「具体的な依頼内容は、後でゆっくり話そう。この町の妖怪事情や、ぬ〜べ〜という教師のことも、色々教えてもらいたいしね。僕としては、日本の土着の霊や神々と、できるだけ敵対したくない。せっかく妹が『共存』などと言い出したのだから、兄としても努力してみるつもりだ」

 

「ふうん……。じゃあまあ、『情報提供』くらいなら、考えてあげなくもないわよ。タダでとは言わないけど。私も、それなりに苦労して生きてるんだから」

 

 いずなはそう言って、ようやく俺の手を握り返してきた。小さくて、温かい手だった。そこに宿る霊力は、人間としては上々。だが、俺から見ればまだまだ伸びしろだらけだ。

 

「決まりだな。これからよろしく、いずな」

 

「……よろしく、アベル」

 

 

 

この時のアベルは、まだ知らない。 この少女との出会いが、やがて彼を、神々の思惑を超えた、とてつもなく面倒で、危険で、そして最高にバカ騒ぎに満ちた冒険へと導くことになることを。

 

 

そして、この二人が、神代が去りし現代において、記録に残る初めての「純粋な神と人間の婚姻」を果たすことになるという運命を、まだ誰も知らなかった。

 




アベル「いずな、今日の出来事について何か感想はあるかい?」

いずな「まず最初に言わせて。駅前での布教……あれ本当にやってんの?」

アベル「もちろんだ。人間界における信仰獲得の基本だよ。行政許可も取っている。」

いずな「神様が道路使用許可……ほんとに時代が変わったわね」

アベル「やれやれ。神も労働する時代なのだよ。君もいずれ、わかる日が来るだろう。」

いずな「いや、巻き込まれる未来が見えたんだけど!?ていうか最後の仲良くって何だったのよ」

アベル「そのままの意味だよ。霊能力者としても、人としても、興味深い相手だからね。」

いずな「……変な意味じゃないでしょうね?」

アベル「変な意味だよ。」

いずな「即答!?もう!!管狐ちゃん、助けて!!」

管狐(アベルくん意外とイケメンだから悪くないと思うよ)

いずな「裏切ったわねぇぇぇぇ!!」

十二宮編の最後は誰と誰の対決に?

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