聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
アイオロス「いや、僕もずっと不思議だった。白銀聖闘士なのに、普通に黄金並みに渡り合ってくるし。」
サガ「見た目もやたら小綺麗で、妙なスーツ着てるし、メロンソーダばっかり飲んでるし……油断してると足をすくわれそうになる。」
アイオロス「朝の鍛錬も、僕たちと同じメニューを平然とこなしてるしね。小宇宙の質も、どこか他の白銀と違う気がする。」
サガ「そもそも杯座って、必殺技は“コップを掲げる”くらいしか知らんぞ。なんであれで黄金と互角にやり合えるんだ……?」
アイオロス「しかも本人は“まだまだ模索中”とか言ってるけど、村の子どもたちからも“アッシュ兄ちゃんは無敵”って言われてる。」
サガ「――なんか納得いかないよな。」
アイオロス「うん、納得いかない。」
(アイオロス視点)
ロドリオ村の朝は、聖域とは違った静かな活気に包まれている。
澄んだ空気のなかで、僕たち三人――アッシュ、サガ、そして僕――は村の広場で汗を流していた。
この村に“近代化”の波が押し寄せてきてからというもの、訓練の場も一変した。
柔らかな芝生、どこか滑稽なほど立派なウッドデッキ。見学の村人たちが朝食のクロワッサンを片手に並ぶ中、僕たちの修行が始まる。
まずはサガとの軽いスパー。
サガは柔らかい表情で構える。
「さあ、いくぞ」
「受けて立つ」
拳と拳が交差し、小宇宙の火花が地面を走る。
サガの打撃は精密で重い。小宇宙がその一撃一撃に込められている。
僕も負けじと反撃に転じる。体幹を捻って繰り出すローキック――サガは難なく受け流し、逆に僕の死角へ踏み込む。
だが、長年の鍛錬で培った感覚が、次の一手を予測する。
互いの拳がすんでのところですれ違う。
「やっぱり君のカウンターは見事だ」
「そっちこそ、少しも衰えてないな」
軽口を交わしながらも、僕たちは限界を超えるつもりで技を繰り出す。
そこへ割って入るのが、白銀聖闘士・アッシュだ。
彼の動きは、僕たち黄金聖闘士とは明らかに違う。
筋肉の使い方、間合い、技の繋ぎ方。
一瞬一瞬で“最適解”を導き出しているかのような、自在な戦いぶり。
何より、小宇宙の質が他の聖闘士と根本的に異なる――圧倒的な“適応力”を持っている。
アッシュは、サガの攻撃を真正面から受け止めることもあれば、重心を滑らかに変え、無理なく力を逃していく。
僕が放ったボディブローも、彼の身体に吸い込まれるように消えてしまう。
「今の、どこで受け流した?」
「いや、ただ流しただけだよ」
本当に、彼の返事はどこまでも自然体だ。
そして不意打ち――
サガが一瞬、表情を緩めた隙をついて、アッシュの小宇宙が爆ぜる。
サガの首筋めがけて跳びかかり、極限まで圧縮した一撃を繰り出す。
黄金聖闘士であるサガが、わずかに息を呑んだ。
「やるな……」
「ふふん、今日のアッシュは攻めの姿勢だな」
僕が冷静を装いながらも、内心で驚嘆していた。
続いて僕との手合わせ。
アッシュは腰を低く落とし、ゆったりとした構えで間合いを測っている。
見たこともない立ち方だが、隙がない。
「いくよ、アイオロス」
合図と同時に、彼は右足で地を蹴り、低く速い軌道で僕の懐へ飛び込んでくる。
反射的にガードを固めると、そのまま足払い――しかし直前で角度を変え、肘打ちへと転じる。
「小宇宙の流れが読めない……!」
僕の防御がわずかに遅れ、アッシュの手刀が胸元にかすかに触れる。
これだけの手数、間合い、変化。
正直、黄金聖闘士でなければ捉えきれないだろう。
鍛錬が終わると、三人で肩を並べて木陰に腰を下ろすのが日課だ。
サガは水筒を傾けながら、僕の方を見て言った。
「アッシュ、君の強さは本物だ」
「いやいや、まだまだだよ」
「だが、君だけの必殺技というものがないな。小宇宙の応用は見事だが、全てがアドリブに見える」
僕も頷いた。
「確かに。お前を象徴する一撃があれば、格上の相手にも通用するだろう」
アッシュは頭をかきながら、苦笑した。
「そういえば、考えたこともなかった。僕の戦い方って、結局“ごっこ遊び”の延長だったからな……」
「模倣じゃない、“お前自身”の技。見てみたいものだ」
僕の心からの言葉に、アッシュは珍しく神妙な顔で頷いた。
午後の修行、僕たちはもう一度本気でぶつかり合った。
サガと僕が同時に仕掛け、アッシュは右に身をかわし、地面を滑るように動く。
僕が左から拳を放てば、アッシュは空気を読むかのように重心を浮かせ、僕の腕の中をすり抜けていく。
サガが回り込んで蹴りを見舞うが、アッシュは最小限の小宇宙を集中させてその一撃を空中でいなした。
そして、彼の瞳にふと迷いが浮かぶ。
「……やっぱり、僕の“オリジナル”って難しいな」
サガが肩で息をしながら笑う。
「お前らしいな。だが、その課題が“お前だけの道”になるさ」
僕も、心の底からそう思った。
「焦ることはないよ、アッシュ。お前は今まで、すべてを自分で作り直してきただろう? なら、技も自然と生まれるはずさ」
夕暮れ、村の広場の空が茜色に染まる中、僕たちはそのまま木陰で語り合った。
アッシュは、新しいノートを取り出して、何やら“必殺技のアイデア”を描き始めている。
きっと、彼ならやってくれる。
聖闘士という枠に収まらない、“アッシュ”だけの闘い方を。
僕はその誕生を、心から楽しみにしていた。
(サガ視点)
僕たち三人は、それぞれの汗と埃と達成感をまといながら、地面に腰を下ろしていた。
アッシュは真剣な顔でノートを開き、何やら細かい図と数式を書き連ねている。
黄金聖闘士としての僕やアイオロスですら、つい目を細めるほど、彼の模索は独特だ。
「……どうすれば“技”って生まれるんだろうな?」
アッシュの問いは、真摯な疑問だった。
ただ“強い一撃”や“真似した大技”ではなく、自分の中から湧き上がる“オリジナル”を探している。
その葛藤の色は、ここにいる誰よりも濃い。
僕は、アイオロスの答えにまず耳を傾けることにした。
「僕の場合は――」
そう言って、アイオロスは静かに立ち上がり、自分の聖衣に触れる。
射手座の聖衣は夕日の光を受け、どこか神聖な輝きを放っていた。
「この聖衣と共に小宇宙を燃やすと、星々を射抜く『光の矢』のイメージが自然と湧き上がってくる。……聖衣が道を教えてくれる感覚に近いんだ」
その言葉に、僕は深く頷いた。
黄金聖闘士であることの実感。
聖衣との一体感。それは、幼い頃から“継承者”として育った僕たちだけが知るものだ。
アッシュはじっとアイオロスの手元を見つめ、羨ましげに息を吐く。
「なるほど……。でも、それって“感覚”だよね。何となく、ってやつ」
アイオロスは笑って肩を竦めた。
「そうだね。理屈じゃない、心の奥から来るものさ」
次に、アッシュは僕に目を向ける。
「サガはどうなんだ?」
僕は腕を組み、しばし思案した。
ギャラクシアンエクスプロージョンやアナザーディメンション――
どちらも“技”というよりは、双子座の聖闘士に代々伝わる“遺産”のようなものだった。
「ギャラクシアンエクスプロージョンもアナザーディメンションも、“型”がある。
だが、それは双子座の聖闘士として、何世代もかけて受け継いできたものだ。
僕自身が一から作り上げたわけじゃない。……小宇宙を燃やし、聖衣と呼応することで技は自然に発動するが、正直、理屈では説明しきれない」
アッシュはノートの端をパタパタとめくりながら、少し困った顔をした。
「やっぱり“イメージ”や“感覚”かあ。うーん……それだと僕、ピンと来ないんだよな」
僕とアイオロスは思わず顔を見合わせた。
聖闘士の“強さ”や“技”――それは大抵、直感と心で掴むものだと思い込んでいた。
しかしアッシュは違う。彼は何事も“理屈”で腑に落ちなければ納得できない。
戦い方も、鍛錬も、すべての根拠を自分の中で見つけようとする。
「アッシュ、お前の“理屈”って、たとえばどういうことなんだ?」
「んー……」
アッシュはしばらく黙りこみ、地面に線を描いた。
「僕が今まで使ってきた技は、全部“模倣”だったんだよ。
本当に自分だけの一撃って、どういうものなのか分からない。
もしそれが“偶然”とか“感覚”とかで出てくるなら、僕は一生それを掴めない気がするんだ」
僕はそっと彼のノートを覗き込んだ。
そこには、軌道計算や衝撃波の伝播式、人体の可動域の分析――まるで科学者の研究ノートのようだった。
「これは……お前の“必殺技開発ノート”か?」
「そう。僕は“こうすれば、こう動く”って道筋がないと落ち着かない。
……理屈で納得したいし、誰にでも説明できるものがいい」
アイオロスが苦笑した。
「それはそれで、お前らしいよ」
だが、僕は思った。
技の“生まれ方”は、きっと聖闘士一人ひとり違う。
伝承や聖衣との対話から得る者もいれば、アッシュのように“理屈”の果てに答えを見つける者もいる。
「アッシュ」
僕は静かに呼びかけた。
「僕たち黄金聖闘士は、代々の聖衣や伝承の力で“イメージ”を形にしてきた。でも、お前の強さは模倣から始まっているかもしれないが、それだけじゃない。
お前だけの“答え”が必ずどこかにあるはずだ。
……理屈を突き詰めていけば、きっと“理屈が感覚に変わる瞬間”が来る」
アッシュは小さく息をつき、夜空を見上げた。
「理屈が感覚に変わる……か。
じゃあ、もうちょっと突き詰めてみるよ。答えが出るまで、試し続けてみる」
彼の瞳には、どこか闘志と、不安と、僅かな期待が混じっていた。
アイオロスが優しく微笑んだ。
「焦るなよ。お前はお前のやり方で進めばいい」
僕も静かに頷いた。
「“型”や“伝承”に頼らず、自分だけの理屈で辿り着いた一撃――
それこそが、お前のオリジナルなんだろう」
アッシュは照れくさそうに頭を掻いた。
「ありがとう、二人とも。しばらく研究生活になりそうだ」
(アッシュ視点)
正直なところ、「オリジナル技」なんて全然ピンと来ない。
聖闘士星矢の世界ではみんな「必殺技」ってやつがあって、原作主人公の星矢くんなんて「ペガサス流星拳!」「ペガサスローリングクラッシュ!」とか叫ぶだけでなんかバシバシ強いし、サガは「ギャラクシアンエクスプロージョン!!」とかカッコよく叫んで宇宙を爆発させてる(いや、爆発しすぎじゃない?)。
一方僕はと言うと――
杯座(クラテリス)って、どんなイメージよ?
……正直、コップ?お椀?
いや、僕の持ってる杯座のイメージって「家電の便利な相棒」か「メロンソーダ専用タンク」くらいしかないんだよなあ。聖衣の箱には“最新式ドリンクホルダー付き”のシールでも貼りたいくらいだ。
せっかくだから考えてみるけど、「杯座の必殺技」と言われて、まず浮かんだのが
――メロンソーダ・スプラッシュ!!
……だめだ、全然強そうじゃない。
むしろ相手がお腹を壊すか、村の子どもたちがアイスの後にゲップするくらいのイメージしかない。
想像するだけで勝てる気がしない。きっと教皇様も苦笑いしてくれるレベル。
そもそも僕は「何となく強そうな技」を真似するのは得意だ。ペガサス流星拳だって、アニメで見た記憶を頼りに「えいや!」って打てば“らしき”ものは出せる気がするし、小宇宙でパンチの回転数を上げるとか、そういう理屈ならまあ分かる。
でも……実物をちゃんと見たことないから「これで合ってる?」って自信が持てない。
試しに、「アッシュ流星拳!」と叫んでみたけど、ただのパンチ連打だし。
拳が痛いだけ。
横で見ていたサガが「……お前、流星には見えないな」と呟いていたけど、そりゃあ本家には敵いませんよ!
他にも、何かそれっぽい技名を考えようとしたけど――
「クロス・ブレンダー!」(聖衣でジュースを混ぜるだけ)
「メロン・ウェーブ!」(ただの炭酸水を振りまく攻撃)
「リモコン・スラッシュ!」(家電感が強すぎて逆に哀しい)
うーん、もういっそ聖域の台所で働いた方がいいのかもしれない。
だって僕の“杯座の聖衣”、水を入れると未来が映るって言われてるけど、今や完全に「メロンソーダ専用」になってるし。
それで未来を覗いたら、「太るぞ」って警告された。余計なお世話だ!
でもさ、サガやアイオロスみたいな「聖衣の霊感」みたいなのが僕にはどうしても感じられないんだよなあ。
聖衣に語りかけてみても、返ってくるのは「ピコーン!(炭酸の音)」だけ。
オリジナル技って、僕の場合どこから湧いてくるんだろう?
考えすぎて、ちょっと脳がシュワシュワしてきた。
この際、村人みんなを集めて「必殺技コンテスト」でも開いてアイディアを募ろうか?
婦人会から「お尻冷却スプラッシュ!」とか、パン屋さんから「クロワッサン・ブレイク!」とか、とんでもないネタしか集まらなさそうで怖いけど……。
いや待て。
本気で僕の必殺技が「メロンソーダスプラッシュ」になったら……
絶対、星矢くんに会わせる顔がない。
――そうだ。
オリジナル技って、やっぱりカッコよくないと!
そう心に決めて、今日も僕は炭酸をシュワシュワさせながら、頭を抱えるのであった。
アッシュ「いやー、やっと僕にも“必殺技”ができました! その名も――『メロンソーダ・スプラッシュ』!!」
サガ「…………」
アイオロス「…………」
アッシュ「え、ちょっと無言にならないでよ。ほら、爽快感といい、清涼感といい、戦場のオアシスって感じでしょ?」
サガ「いや、どう見ても“お遊び”だろう。相手がコーラ派だったらどうするつもりだ?」
アッシュ「安心して、ペプシにも対応済み!」
アイオロス「それより、君、本気でその技を大会で披露する気かい?婦人会のおばちゃんにウケても、冥界の亡者にはウケないと思うけど……」
アッシュ「大丈夫。“お尻冷却スプラッシュ”も開発中だし。」
サガ「やめてくれ、そのうち聖域がカフェになる……」
アイオロス「それはそれで悪くないかもしれない……(クロワッサン片手に)。」
アッシュ「というわけで、僕の必殺技は読者のみんなからも募集中です!オリジナル技コンテスト、応募待ってます!」
サガ「二度と“スプラッシュ”系はやめてくれ……」
アイオロス「でも、まあ……君らしいよ、アッシュ。」
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章ごとに作品を分けてほしい・十二宮編など
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