聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
(シオン視点)
教皇の間に、重苦しい沈黙が落ちていた。
「――報告します」
謁見の扉が開き、白銀聖闘士が足早に進み出る。その顔は土気色に青ざめ、まるで死地から生還した兵のようだった。
報告を聞きながら、私は静かに玉座に腰を沈めていた。
だが、その心は決して平穏ではない。ここ数世紀の記憶を振り返っても、これほど異質な「危機」はなかった。
すべては数日前、エーゲ海の沖合にて起こった。
一夜にして海面から姿を現した、巨大な石造りの遺跡。
それは、失われた神話時代の遺産――鍛冶神ヘファイストスが、かつて己が叡智の粋を結集して造り上げたと伝えられる、「自動迷宮(ヘファイストス・ラビュリントス)」。
我が聖域が誇る文献を漁っても、その存在を確定するものはわずかしか残っていない。
「自己修復と自己増殖」「迷宮に侵入した者の意志を読み、空間そのものを変形・拡張する」
――記録の中には、にわかには信じがたい記述も多い。
しかし、現地からの急報はすべてそれを裏付けていた。
「迷宮は、まるで生き物のように動きます。攻撃すれば瞬時に再生し、内部構造も無限に変化します。我々の攻撃が全く効きません。……むしろ、攻撃を学習して成長しているように思えます」
派遣した聖闘士たちは、ひとり、またひとりと撤退を余儀なくされた。
中には、迷宮の“意志”に囚われ、自らの小宇宙を奪われる者もいた。
島々の住民たちもまた、原因不明の病や地殻変動に怯え、避難を余儀なくされている。
――これは、もはや聖域ひとつの問題ではない。
大地そのものが悲鳴を上げている。
私は、報告のたびに、自らの無力を噛み締めていた。
これほどまでの「神の遺産」が突如現れるとは――
現代の聖闘士にとって、もはや“伝説”の類でしかなかったものが、こうもあっさりと現実を侵すとは、想像すらしていなかったのだ。
「教皇様、被害は拡大しています。現地の聖闘士たちは再侵入を拒み、島民も怯えております……」
玉座の脇で、長年仕えてきた文官たちも苦悩の色を隠せない。
「このままでは、迷宮は更に拡大を続け、エーゲ海全域を呑み込むかと……」
私は静かに目を閉じた。
――鍛冶神ヘファイストス。神々の中でも異端の天才。
己の孤独と業を、迷宮の“知能”として刻み込んだと伝えられている。
遺跡の自己再生能力。空間操作。
そのいずれも、現代の科学や小宇宙の理屈だけでは説明がつかぬ。
“攻撃を受ければ受けるほど、進化し、増殖していく”
まるで人間の「悪意」を増幅し、世界そのものを蝕んでいるようだ。
私は、教皇として、長きにわたり聖域を導いてきた。
数多の危機、戦乱、内紛――どれも、この老骨と共に乗り越えてきた。
だが、今ここに立ちはだかった「ヘファイストス・ラビュリントス」は、
聖域のみならず、人類全体への挑戦状であるように思えた。
「……ならば、我らがどう応えるか。今こそ“知恵”を問われているということか……」
(アイオロス視点)
――呼び出しは、いつも唐突にやってくる。
僕とサガは、教皇シオンの命によって至急聖域本部に召集された。
「異変発生、エーゲ海沖」とだけ伝えられ、慌ただしく会議室へ向かう。
そこには、教皇シオン、文官、参謀たち、そして映像記録を映し出す投影機(アッシュの私物)――。
僕らは無言でその記録を見つめた。
最初は、荒波とともに突如現れた巨大な石造りの迷宮。
複雑怪奇なその構造は、見ただけで脳が悲鳴を上げるほどだ。
内部の空間は歪み、進む者を迷わせ、あらゆる物理法則すら捻じ曲げている。
迷宮に突入した聖闘士たちは、皆――
「攻撃は一切通じません。傷つけても即座に修復されます」
「この内部にいると、小宇宙が吸い取られる感覚が……」
「意識が混濁し、時が逆流するような錯覚を……」
――彼らの報告は、どれも異様だった。
サガが、腕を組み、深く息を吐く。
「……これは、力でどうにかなるものではないな」
その言葉に、僕も静かにうなずいた。
サガは続ける。
「感じるか?この迷宮から放たれる小宇宙……あれは、制御を失った巨大な“システム”だ。破壊すれば、被害が拡大するだけかもしれない」
サガの分析力にはいつも感心するが、今回ばかりは僕にも同感だった。
この迷宮は、聖闘士の拳や奥義で壊せるような“敵”ではない。
“神話の時代”に鍛冶神ヘファイストスが遺した――まさに「神の遺産」だ。
僕も意見を口にした。
「これは……神が人間に課した“試練”だ。力ではなく、我々の知恵と勇気が問われている気がする」
僕たちは、聖域の“最強”と呼ばれてきた。
どんな脅威にも小宇宙で立ち向かい、困難を乗り越えてきた。
だが――今回は違う。
“力”がまるで意味をなさない状況。
僕らが最も頼りにしてきた“力”そのものが、ここでは無力なのだ。
シオン様の顔には深い苦悩が浮かんでいる。
僕とサガは、改めて互いを見た。
そして、同時に頭を下げた。
「……教皇様、時間を頂けませんか」
「迷宮の正体と弱点、必ず見つけ出します」
それは敗北宣言ではない。
知恵と勇気こそ、聖闘士の誇り――今こそ、それを信じなければならない。
僕の胸に浮かんだのは、もう一人の友――
杯座のアッシュだった。
あいつなら、きっとこの迷宮を「読み解く」何かを見つけ出してくれるかもしれない。
だが今はただ、
この未曽有の危機に立ち向かう「人間」の強さを信じて、
静かに、再び迷宮の映像を見つめ直した。
(アッシュ視点)
「……杯座のアッシュを呼べ」
――はいはい、どうせまた教皇様の“哲学講釈”に付き合わされるんでしょ?
そう思いながら、僕は今日も聖域の教皇の間へと呼び出された。
ドアを開けると、そこにはおなじみ教皇様――二百年生きてる割には現役バリバリの老害、もとい爺さん――が、威厳たっぷりに鎮座している。
その背後では、側近たちがなぜかオロオロしてる。これは事件の香りがする。
「アッシュ。よく来てくれた」
「お疲れ様です。あの、今日は掃除の件でなく――?」
「違う。今日はな、もっと深刻な話だ」
シオン様は、すごーく重い顔で話し始めた。
エーゲ海に神話級の大迷宮が現れたとか、ヘファイストスだの自己修復型だの、自動迷宮だの。要約すると「神様が作ったロボダンジョンが暴走して世界ピンチ!」ってことらしい。
ここで僕の中の少年心がザワつく。「まるでRPGのラスボス前イベント!」
しかし、話はさらに深刻。
「サガの破壊力も、アイオロスの正義の拳も、この神の遺産の前では無力やもしれん。これは力で打ち砕く“敵”ではなく、理(ことわり)を解き明かすべき“謎”なのだ。
アッシュよ、お前は万物を映し、その理を再現する力を持つ。この神が創りし“機械”の構造を理解し、その動きを止められる者がいるとすれば、それはお前をおいて他にない」
シオン様、やたら褒めちぎってくる。でもこの「君にしかできない」ってワード、普通は美少女ヒロインがピンチのときにだけ許される特権じゃ……?
「つまり僕に、“神様の出した難問パズル”を解いてこいってことですね!?」
「うむ」
あっさり肯定。
あまりにも堂々と世界の命運を託されて、ちょっと笑いそうになる。
「いや、無理ゲーじゃないですか、教皇様!攻略Wikiもないんですよ!?YouTubeに解説動画も落ちてませんって!」
側近さんたちが「なにそれ……」という顔で固まってる中、シオン様は「案ずるな。そなたならできる」とか全幅の信頼オーラ。
え、僕いつから“聖域のスーパーAI”扱いになったんだろう。
まあ、これでNOと言ったら聖闘士の名折れだし、断ったらアイオロスに「男らしくない!」サガには「興味深い」とか冷静に突っ込まれそうだし――
「よし、分かりました。ロボダンジョンの解体ショー、僕がやりましょう!」
ガッツポーズとともに、気合十分。
「うむ、その意気や良し!」
教皇様がニッコリ。
その瞬間、なぜか側近たちがめちゃくちゃホッとした顔をしていた。
……まあ、冷静に考えると、人類の未来がこんな軽いノリで託されてるのもどうかと思うけど――
かくして、聖域の希望は“万能コピーロボット”――じゃなくて、杯座のアッシュに託されたのだった。
はいはい、来ました「神の遺産」!
その名もヘファイストス・ラビュリントス! 古代ギリシャの鍛冶神謹製・自己修復型オート迷宮です。しかもバグって絶賛暴走中!
普通の聖闘士なら、「敵だ!」って突撃しそうなもんだけど――
僕には、こいつがどう見ても「古代OSの自動アップデート失敗しました」的なシステム障害にしか見えない。
「はーい、杯座のアッシュ、出張サービス参上でーす!」
サガとアイオロスも「ついていく!」って言ってくれたんだけど、ここは最新の“バグ取り”には現代っ子一人の方が効率的。
「ごめん、ここは僕一人で行ってくる。君たちは大人しく現地実況頼むよ」と、まるでラジオ番組のDJみたいなノリで現地入り。
まず、エーゲ海に浮かぶ迷宮を前にして思ったのは、
「でっか!映えスポット!……いや、でも入る人、絶対帰ってこれないやつじゃん」
――この辺のノリで、危機感ってなんだっけ。
現場に到着して、聖衣ボックスを開放。中からは「今日もメロンソーダ?」みたいな顔した杯座の聖衣。
「ごめん、今は無糖で!」と無理やり着込んで、いざ迷宮へ。
さて、普通の聖闘士なら、ドアが開かないと体当たりしてみたり、壁を殴ってみたり、何なら必殺技の一発でもぶっ放すものだけど――
僕はまず、「敵意ナシ!こちら現場スタッフ!」と、にこやかに手を振る。
でも、迷宮の方は「不審者発見、即・迷子コースにご案内」とばかりに、床がグニャリとねじれて、壁がうねうね。
「おっと、バグったファミコンみたいだなぁ。こりゃ再起動も効かんわ」
そこで取り出すは“小宇宙の針”。
――というか、どう見てもプログラム解析用プローブ(探査針)モード。
目を閉じて、迷宮の壁や床、天井を触りながら、小宇宙を送り込む。
「えーっと、今ここの壁の波形がこうで、床の波長がこう……ほうほう、自己修復はこのコード……って、バグってるわ、これ。仕様通り動いてたらむしろヤバい」
そしたら迷宮内部から、謎のエネルギーの流れがどんどん可視化されてくる。
「こりゃ、昔のカセットビジョンみたいなシステム構造だな……昭和か!」
パターン解析を進めていくうちに、だんだん分かってきたぞ。
迷宮さん、自己修復機能のクセが強い!
一定周期で“特殊な管理モード”が走ってて、要するに「正しいID」さえ持ち込めば、管理者権限で中を案内してくれるって寸法。
「なるほど、パスワードを入力してくださいってことね?」
そこで、僕は迷宮の自己修復波形をそのまんま“再現”。
片手を迷宮に当てたまま、波長をピッタリ合わせて、「どうもどうも~管理者です~、本日バグフィックスに参りました~」と心の中で話しかける。
すると――
床がサッと真っ直ぐに!
壁がガバッと開いて、まるで「ようこそ管理者様!」って電子レンジみたいなサービスモード。
「おおっ……これが古代ギリシャ式『おもてなし』か!? やるなヘファイストス!!」
遠くでこっそり見ていたサガとアイオロスの驚愕顔が、なんか漫画みたいにデカく見える。
サガ「え、何が起きた?」
アイオロス「そもそも何してるの?あいつ、道を作らせてる……?」
――はい、正解!
まさか自分が神の遺産の「システム管理者」として迷宮をカスタムできるとは、思ってなかったでしょ?
僕の小宇宙による「認証コード」は完璧だった。
しかも迷宮、僕の案内に従って自分でドアを新設、エレベーター(?)まで起動してくれる。
これもう、バグ修正というより「神の家電リフォーム」だよ。
途中、迷宮内部の警備システム(巨大な石像)が現れたけど、そいつにも「管理者権限です」と波形を送り込んだら敬礼されて通してくれる。
「よっしゃ、神話的RPGなのにエンカウント回避RTA成功!」
「もしもし教皇様?現場到着、バグ修正中。今のところ敵はいません、みんな親切です。あと、エレベーター直しときました」
――というわけで、迷宮の謎解きは「破壊」でも「激闘」でもなく、
「バグった神システムのサポートセンターを独占運用」することになりました。
――これぞ杯座流・神話バグ修正RTA!(笑)
アッシュ「教皇様、ヘファイストス・ラビュリントスの自己修復アルゴリズム、無限ループ化してましたけど、波形プロトコルを現代式に書き換えたら管理者権限でデバッグ可能でした!」
シオン「……ほう?」
アッシュ「内部構造は自己増殖型で、時空間アーキテクチャをリアルタイムで書き換える可変型システムですね。しかもバグフィックス信号が旧プロトコル準拠で――」
シオン「……プロトコル?」
アッシュ「はい、外部インターフェースも対応していたんで、僕の小宇宙でAPI認証しました!あと、管理者IDの再現には自己同期型コスモ波を用いまして――」
シオン「……API……?」
アッシュ「最終的に迷宮自体を『友好的システム』として認証させたので、以後メンテナンスも自動化可能です!あと、ついでにエレベーター直しておきました!」
シオン「……エレベーター?」
アッシュ「ちなみに迷宮内のセキュリティAIは全部手動リセットしてますから、もう暴走しませんよ!」
シオン「……手動リセット……?」
アッシュ「あ、今度またバグったら、直接迷宮内Wi-Fiで繋いでおきますね!」
シオン「…………Wi-Fi?」
アッシュ「じゃ、報告は以上です!シオン様、どうぞご査収ください!」
シオン「……老いは、辛い……」
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