聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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サガ「……アッシュ、今日も聖域の広場で子どもたちに囲まれていたな。迷宮事件以来、村人も聖闘士たちも、彼を見る目が明らかに変わった。あの再現力、応用力……正直、僕でも惹きつけられるものがある」

アイオロス「おいおい、サガ。最近のお前、ちょっとアッシュに心酔しすぎじゃないか? 昨日なんか“アッシュ理論”とか言って、俺たちにExcelのショートカット講座まで強要してたし……」

サガ「いや、それは合理的な――」

アイオロス「“合理的”って言うな!聖域の伝統までアップデートされそうで怖いぞ? まあ……気持ちは分かる。彼のあの無邪気な探究心と、どこまでも飽きずに物事を掘り下げていくあの姿勢、俺もちょっと……うん、なんか可愛いな」

サガ「可愛い……いや、そういう話じゃないだろう!」

アイオロス「ま、それより大事な話がある。サガ、お前、最近アッシュに勧められた“水洗トイレ”もう試したか? あれ、本当に最高なんだ。人類文明の極致って感じだぞ」

サガ「……アイオロス、今その話を?」

アイオロス「だって見ろよ。サンクチュアリのトイレ、今やあちこちで“水流音”が聞こえる。パン屋のクロワッサンにも負けないくらい、みんな感動してる。これぞアッシュ革命の真骨頂!」

サガ「……まあ、清潔だし、確かに便利だが……」

アイオロス「それだけじゃない。“流せる”って、心も洗われる気がしないか? ほら、“過去の垢”を水に流す、とかさ。聖闘士にも必要なことだと思うぞ。アッシュはやっぱり天才だ」

サガ「……まったく。アイオロスまで……」

アイオロス「いいじゃないか。たまには肩の力を抜いて、アッシュのやり方に付き合ってみようぜ。俺は“水洗トイレ派”に寝返るよ!」

サガ「……そういう“寝返り”は、ほどほどにしておけよ。だが――確かに、アッシュのもたらした変革は、俺たちの想像を超えているな」

アイオロス「だろ? さあ、今日もトイレ掃除から始めるか! アッシュ流でな!」

サガ「……お前、絶対アッシュの影響受けてるぞ」


掴め!第七感(セブンセンシズ)への道 奇跡を呼ぶ魂の扉!

(サガ視点)

 

 

ロドリオ村の夕暮れは、不思議と心を落ち着かせてくれる。

 村の子どもたちの笑い声が遠く響き、風が丘を撫でる音が小さく耳に残る。

 僕はアッシュと並んで腰を下ろし、しばし無言の時間を楽しんでいた。

 

 彼は相変わらず、信じられないほど高い小宇宙を纏っている。

 迷宮事件を経て、杯座の力は聖域でも唯一無二のものとなった。

 だが、その背中には、どこか「届かない何か」への焦りの色が滲んでいた。

 

 「なあ、サガ」

 沈黙を破ったのはアッシュだった。

 「セブンセンシズって、何なんだ? 俺の小宇宙はここまで高まっているのに、その先が見えないんだ」

 

 彼の問いには、混じり気のない真剣さがあった。

 誰よりも理論的で、全てを「再現」できる彼だからこそ、なおさら「理屈で説明できないもの」が許せないのだろう。

 

 僕は一度目を閉じて、自分の胸の奥に問いかける。

 ――“セブンセンシズ”とは、何か?

 

 黄金聖闘士として、僕は確かに“それ”に触れたことがある。

 だが、それを言葉にするのは、いつだって難しかった。

 

 「アッシュ。お前の小宇宙は、すでに扉の前に立っている」

 静かに、できるだけ正直に答える。

 「だが、その扉は外から開けるものじゃない。内側から、お前自身の魂で開くものだ」

 

 アッシュは不満そうに口を尖らせる。

 「扉って言われても、ノブも鍵穴も見当たらないんだけど…」

 

 思わず、苦笑が漏れそうになる。

 ――ああ、そうだ。

 僕もかつて、師から同じような言葉をもらい、同じように戸惑ったのだった。

 

 

 

 セブンセンシズ――第七感。

 聖闘士にとっては「奇跡の力」などと語られるが、その実態は極めて個人的な体験だ。

 

 僕が初めてその扉を開いたのは、絶体絶命の危機に直面した時だった。

 肉体が限界を超え、心がすべての雑念を焼き払った刹那――

 “己”と“宇宙”が完全に重なったような感覚。

 生まれて初めて、「世界が自分であり、自分が世界である」ことを、理屈抜きで“理解”した瞬間だった。

 

 ……だが、こうして言葉にしても、アッシュの「納得」には遠いのだろう。

 

 「サガ、俺は“理屈”がほしいんだよ」

 アッシュがぽつりと呟く。

 「扉があるなら、ちゃんと鍵穴を教えてくれよ。コツとか、公式とか、あるだろ?」

 

 「……ないんだ」

 僕は首を振るしかない。

 「むしろ、理屈や型に囚われすぎると、遠ざかるものなんだ。

 お前は他人の技を“再現”する天才だけど、それは“外”の世界を理解し、映し出す才能だ。

 でも、セブンセンシズの扉は“内側”にしかない。

 ――自分の魂と、どこまでも向き合うこと。それしかないんだ」

 

 アッシュは膝に肘をつき、遠い目をして空を見上げた。

 

 「魂……ね。俺、正直、自分の魂が何なのか、まだよく分からないや」

 

 その言葉に、少しだけ胸が痛んだ。

 

 彼は誰よりも多彩なものを映し、再現できる。

 だが、その分だけ“自分自身”という原点が見えづらいのかもしれない。

 

 

 

 沈黙が落ちる。

 

 風が吹き、村の外れの雑木林がざわめく。

 

 ふと、昔のことを思い出した。

 幼いころ、師からこう言われたのだ。

 

 ――「サガ。人は、どこまでいっても一人だ。だが、孤独を恐れるな。その孤独こそが、お前の宇宙だ」――

 

 「……アッシュ」

 僕はできる限りの言葉で、彼に伝える。

 

 「お前は、今までもこれからも、多くのものを映して生きていく。でも、たった一つだけ、誰にも真似できない“自分の宇宙”がある。それを見つけた時、セブンセンシズの扉は、きっと自然に開くはずだ」

 

 「俺の……宇宙」

 アッシュは、そっと目を閉じて、しばらく黙っていた。

 

 

 

 それでも、彼の才能が特別であることに、僕は疑いを持たなかった。

 

 多くの聖闘士は、血の滲む修行と、絶望的な闘いの中で、第七感へと“落ちて”いく。

 だがアッシュは、全く違う道から、扉の前にたどり着いた。

 

 模倣ではなく、再現。

 他人の理を内面化し、さらには自分の技へと昇華できる。

 その「応用力」は、まさに宇宙の秩序そのものだ。

 

 ――だからこそ、最後の一歩は、「自分の宇宙」への飛躍でなければならない。

 

 彼は、すでに全ての公式と型を身につけている。

 あとは、「公式のないもの」に出会うだけだ。

 

 

 

 村の西の空に、星が瞬き始めた。

 

 アッシュはまだ納得していない様子だったが、どこか少しだけ、肩の力が抜けている気がした。

 

 「……サガ。もうちょっとだけ、考えてみるよ。俺の“宇宙”ってやつを」

 

 「焦らなくていいさ」

 僕は微笑み、肩を叩いた。

 「お前なら、きっと見つけられる」

 

 アッシュは、にやりと笑った。

 

 「サガ。もし分かったら、今度は俺が教えてやるよ。“セブンセンシズの公式”をな!」

 

 その無邪気な強がりに、僕もつられて笑った。

 

 

 ――聖闘士は、いつも孤独だ。

 だが、その孤独の中でしか見つけられない「宇宙」が、必ずある。

 

 アッシュがいつか、自分自身の“公式”を見つけ、扉を開く日を――

 僕は信じて、隣で見守り続けるつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(シオン視点)

 

 

 

杯座のアッシュは、再び私の前に現れた。

 

 彼の目は、少年らしい輝きと、どこか苛立ったような色を併せ持っている。

 その背後には、比類なき才能と、絶え間ない向上心――まさしく「新時代の息吹」が渦巻いているのが、はっきりと見て取れた。

 

 「教皇様、どうか、教えてください。セブンセンシズ――第七感に至る道筋を」

 

 アッシュは遠慮のない、真っすぐな声でそう告げた。

 なるほど、やはりここまで来ると、彼ほどの男でも壁に突き当たるものなのだな、と私は密かに頷いた。

 

 聖闘士の“究極”――第七感、セブンセンシズ。

 黄金聖闘士にこそ与えられた奇跡の感覚。

 たしかに、時には一部の白銀や青銅すら、命を賭してその扉に触れることがある。

 だが――

 

 アッシュの問いに、私は、あえて穏やかな口調を選んだ。

 

 「焦るな、アッシュよ。そもそも、白銀聖闘士がセブンセンシズに目覚めることなど、歴史を通してもごく稀なことなのだ」

 

 彼の肩の力が、すっと抜ける気配があった。

 だが、その顔には決して安堵ではなく、納得のいかぬ不満と、諦めきれぬ情熱が、微かに滲んでいた。

 

 私は続けた。

 

 「お前は、今のままで十分に聖域の宝なのだ。誰もその実力と働きを疑う者はおらぬ。気にするでない」

 

 本心からの言葉だった。

 アッシュの才覚、応用力、そして前例に囚われぬ発想――

 それらが、どれだけ聖域の進歩と安定に寄与してきたか、私は知っている。

 

 ――だが、それでも。

 

 “黄金”と“白銀”の間には、超えることのできぬ「壁」がある。

 それは実力や人格の問題ではなく、運命――あるいは星の巡りとでも呼ぶべき、何か。

 私自身が長い時を生き、数多の聖闘士を見てきたからこそ、無意識のうちに、こう言ってしまうのかもしれない。

 

 (アッシュよ、お前の小宇宙は誰よりも眩しい。だが――)

 

 私は、彼が去っていく背中を見つめながら、静かにため息をついた。

 

 聖域は、変革を求める若者を歓迎しながらも、どこかで“限界”という名の檻を用意してしまう。

 私も、結局その一人なのだ。

 

 ――「宝であれ」と声をかけたつもりが、「お前はそこで満足せよ」と言ってしまったのかもしれぬ。

 

 だが、それが“聖域”というものだ。

 伝統、星の定め、役割――

 そうしたものに守られ、縛られながら、私たちはこの聖域を未来に繋げてきた。

 

 

 だが、私は。

 いや――私は、まだ、お前を「そこまでの存在」とは、心のどこかで信じきれずにいる。

 

 教皇としての、長き人生の“重み”が、

 またひとつ、若き逸材の背中に影を落とす。

 

 

 

 

 

(アイオロス視点)

 

 

 僕が聖闘士として日々を過ごす中で、こんなにも悩み深い友を見るのは、初めてだったかもしれない。

 

 アッシュは、誰よりも強く、聡明で、僕たち黄金聖闘士にも臆せず意見を言える存在だ。けれど――今の彼は、まるで遠くを見つめているような顔をしていた。

 

 「アイオロス、頼みがあるんだ。セブンセンシズって、何だと思う?」

 

 彼がそう口にした瞬間、僕の胸の奥は不思議な高鳴りに包まれた。なぜなら、それは僕自身が、ずっと憧れてきた「小宇宙の真髄」を問う言葉だったからだ。

 

 僕は、難しい理屈は分からない。でも――こういうときこそ、胸を張って言えることがある!

 

 「アッシュ、難しく考えることはない!小宇宙の神髄、それは己の内なる宇宙を感じることだ!我々人間も、遥か昔のビッグバンによって生まれた宇宙の一部なのだから、体内の原子を燃やせば、それはビッグバンに匹敵する奇跡を起こす力となる!それこそがセブンセンシズだ!」

 

 自分でも思わず熱くなって、師から教わったあの名セリフを、堂々と胸を張って言った。

 

 アッシュは、最初、ぽかんとした顔で僕を見ていた。だけど――

 

 「う…うう…」

 

 と、突然、目の前の彼の目から、涙がぽろぽろと溢れ始めた。

 

 「えっ!? ど、どうしたんだアッシュ!?」

 

 僕は本当に焦った。まさか、僕の説明が難しすぎたのか?それとも、何かひどいことを言ってしまったのか?

 年上の彼が、まるで子供のように泣き始めるのを見て、僕の方がどうしていいか分からず、思わず肩をバシバシ叩いてしまった。

 

 「そんなに思いつめることはない!大丈夫だ、アッシュ!君なら、きっと出来る!絶対に出来る!」

 

 ――でも、アッシュは首を振って、泣きながら僕に笑いかけてくれた。

 

 「アイオロス……ありがとう。本当に……ありがとう……!」

 

 その涙は、悲しみでも、挫折でもない。

 ずっと遠い夢だったものが、今ここで「本物」として届いた――そんな感動が、僕にも伝わってきた。

 

 僕は、思わず胸を張った。

 

 「大丈夫だ、アッシュ。君は僕たちの誇りだ。僕たちの誰よりも、君なら“小宇宙の神髄”を極めることができる!」

 

 不器用だけど、全力で励まそうとするしかなかった。

 こんな時、人は理屈より、ただ「信じてくれる誰か」が必要なのだと、僕ははじめて知った気がした。

 

 夕陽に包まれたロドリオ村の空の下で、僕は、年上の友の肩を抱きしめるように強く叩きながら、ただまっすぐに「信じている」と繰り返し伝え続けた。

 

 その涙と笑顔は、きっと僕の心にもずっと残る、大切な宝物になるだろう。

 

 

 

 

 

(アッシュ視点)

 

 

 「なあサガ、セブンセンシズって、一体何なんだ?」

 

 鍛錬の合間、僕は思い切ってサガに聞いてみた。いや、正確に言えば“問い詰めて”みた。なぜなら、この数日間、ずっと悶々としていたのだ。僕の小宇宙、もう黄金聖闘士レベルってみんな言う。なのに――

 

 「……その先」が、見えない!

 ていうか、感じられない!

 

 サガは相変わらず美少年スマイルを浮かべ、しばらく黙って僕の顔を見つめていた。

 その後、静かに語り出す。

 

 「お前の小宇宙は、既に扉の前に立っている。だが、その扉は外から開けるものではない。内側から、お前自身の魂で開くものだ」

 

 ……え、何それ、禅問答?

 まさかの“パワーワード”に、僕の脳内BGMは『宇宙戦艦ヤマト』から一気に“ご本尊様ありがたや~”に切り替わった。

 

 「扉って言われても、ノブも鍵穴も見当たらないんだけど…」

 

 ここは現代人らしく突っ込むしかないだろう。

 

 僕は必死で頭の中の設計図(いつもなら新しい装置とかシステムをイメージするのに便利なやつ)を広げてみる。

 

 ――セブンセンシズ扉設計図ver.1.0――

 

 ・材質:未知(鋼鉄?魂?)

 ・ノブ:なし

 ・鍵穴:なし

 ・ドアベル:ピンポン音も鳴らない

 ・暗証番号:謎

 ・スマートロック機能:未搭載

 ・Wi-Fi:圏外

 ・「気合い」で開く?

 ・Google先生も困惑

 

 うん、どこからどう見ても、ITの力じゃ開かない。

 これはもはや“手動”というレベルじゃない、“魂動”だ!

 

 「サガ、なあ、これ、どうしたらいいんだ?」

 「……自分で考えろ」

 無慈悲な一言。やっぱり禅問答だった。

 

 ここで僕の脳内サポートAI(名前は“合理主義くん”)がヒントをくれた。

 「扉に鍵穴がなければ――そう、ドア自体が幻想という可能性もあるのでは?」

 

 そうか、最初から“扉”なんてなかった!

 ……なんてね、理屈で割り切ったらサガに「それじゃダメだ」って真顔で返されるし。

 

 結局、扉の前でウロウロ、うろたえる僕。

 でも、ここでひらめいた!

 

 「そうだ!ノブがなければ蹴破ればいい!」

 

 小宇宙を最大限に燃やしてイメージする。蹴破る僕、破れる扉。……でも現実は、何も起きない。

 

 「……魂の扉は、蹴破れません」

 「知ってるよ!!」

 

 最終的に村の子供たちにも「アッシュ兄ちゃん、トイレのドアと間違えてない?」と真顔で心配される始末。

 いや違う、これは宇宙的な問題なんだ!と説明したけど伝わらなかった。

 

 サガは最後に一言だけ残した。

 「アッシュ、お前なら“見つけられる”はずだ。理屈じゃなく、魂の声を聞いてみろ」

 

 ……魂の声ってどんな音だろう?もしかして、また村の放送スピーカー壊れた?

 

 こうして僕は、“聖闘士星矢あるある”の禅問答ループにはまり込むのだった。

 

 

 

業を煮やした僕は、意を決して再び“老害オブ老害”、いや、聖域の偉大なる最高権威・教皇シオン様のもとへ殴り込んだ。

 

 「教皇様、単刀直入に聞きます!セブンセンシズ、どうやったら目覚めるんですか?」

 

 真顔で尋ねる僕。ドアノブは今日もなかった(自動ドアでもない)。

 シオン様は穏やかな笑みでうんうん頷き――

 「焦るな、アッシュよ。そもそも白銀聖闘士がセブンセンシズに目覚めること自体、歴史上でも稀有なこと。お前が今のままでも、十分に聖域の宝なのだから、気にするでない」

 

 ……って、はい、出たよ!“老賢者お得意・意味深慰めフレーズ”!

 いやそれ、要するに「無理だよ」ってことじゃん!?

 現代日本のブラック企業と同じ、やたら「君はそのままでいい」って言って昇進させてくれないパターンだよ!

 

 「お前は宝」って、これ、宝箱のフタを閉めとけって意味じゃない?

 まさかのガラスの天井ここにも!

 

 僕は苦笑いで頭を下げるしかなかった。

 「ありがとうございます、教皇様。精進します(※心の声:はいはい老害め……限界を勝手に決めるな!僕はやる気満々なんだぞ!!)」

 

 帰り道、教皇の間の長い石廊下をトボトボ歩きながら、自分の中で“老害コール”がこだまする。

 

 (いやマジで、この聖域、あちこち“前時代的アップデート不可”すぎる!)

 

 ・水洗トイレ→NG

 ・Wi-Fi→NG

 ・エスカレーター→NG

 ・小宇宙による革命→「魂が鈍るぞ」

 ・第七感→「君には難しいかな?」

 もう、どうしろってんだ!

 

 途中ですれ違ったサガに「どうした、アッシュ、ため息が深いぞ」と聞かれたが、「いやちょっと天井が低くて頭ぶつけそうなだけ」とごまかすしかなかった。

 

 部屋に戻ってからも、頭の中は“セブンセンシズ自動ドア化プロジェクト”でぐるぐるだ。

 Google検索:「聖闘士 セブンセンシズ 目覚め方」→「該当するページはありません」

 Amazonで「扉 開け方 魂」って検索しても出てこなかった。

 

 (……こうなったら、もう開き直るしかない!)

 

 僕は今日も、小宇宙(コスモ)でカップラーメンを温めてやけ食いしながら、心の中で叫ぶのだった。

 

 「絶対に見てろよシオン様、俺は必ず扉をぶち破る!……できれば自動ドアで!」

 

 

正直、僕は絶望していた。

 どれだけ小宇宙を燃やしても“扉”は開かず、教皇シオン様には「宝でいい」と宝箱の蓋を閉じられ、サガには禅問答をかまされ……。

 

 ラストチャンスは、聖域が誇る「純粋さの権化」、アイオロス11歳(※黄金聖闘士)しかいない!

 

 意を決して質問をぶつける僕。「セブンセンシズって何?」

 返ってきたのは――

 「アッシュ、難しく考えることはない!小宇宙の神髄、それは己の内なる宇宙を感じることだ!我々人間も、遥か昔のビッグバンによって生まれた宇宙の一部なのだから、体内の原子を燃やせば、それはビッグバンに匹敵する奇跡を起こす力となる!それこそがセブンセンシズだ!」

 

 …これだよ!これが聖闘士星矢だよ!

 思わず僕の脳内では「ペガサス幻想」が爆音で再生された。

 

 が――

 

 感動のあまり、いきなり涙腺が爆発する僕。

 

 「う…うう……」

 涙、ぽろぽろ。

 いやこれ、どう見ても“イタリアのマフィアのボスが小学生に人生相談して泣かされてる”の図。

 

 アイオロスが本気で慌ててる。「ど、どうしたんだアッシュ!そんなに思いつめることはない!大丈夫、君ならきっと出来る!だから、泣かないでくれ!」

 ……ねえ、これギリシャ神話だよね?

 間違って「学園ドラマの卒業式」みたいになってない?

 

 肩をぽんぽん叩かれ、「……ああ、年下に慰められるってこういう気持ちか」と妙な冷静さも芽生える。

 

 でも、分かったんだ。

 理屈じゃない。小宇宙でも、セブンセンシズでも、何でもいい。

 僕は今、「本物の聖闘士星矢の世界」で、

 本物の黄金聖闘士に「大丈夫!」って背中を押されてる。

 これこそ、憧れ続けた“リアル”だ。

 

 泣き顔のまま、僕はニヤリと笑った。

 

 「ありがとう、アイオロス。…これ、ホントに最高だよ」

 

 伝説の英雄とポンコツ転生者。年齢も立場もバラバラだけど、

 今だけは、同じ時代の“仲間”だ――

 それで十分。

 答えなんて出なくても、前に進める。

 

 ――さて、次はセブンセンシズの“自動ドア化”計画でも立ててみるか!




アッシュ「あ、もしもしルカ師匠? 久しぶり!」

ルカ「ようアッシュ。元気にしてるか? なんか聖域が大騒ぎだって、聞いたぞ。今度は“迷宮バグ取り”やってたんだってな」

アッシュ「いやー、RPGみたいな案件でさ。しかもラスボスは“動力炉”。最後はサガと一緒に“魂で殴って”解決! いやぁ、師匠に教わった“何でもネタにしろ”精神が役に立ったよ」

ルカ「そりゃ良かった。…でもお前、また変な機械持ち込んで、聖域の結界壊してないだろうな?」

アッシュ「ちょっとだけ……(小声)てへぺろ。アイオロスにはバレてる」

ルカ「やれやれ。お前らしいな。でもまあ、お前の“再現”の力、世界中で一番面白がってるのは、きっと俺だぞ。昔から“コピーじゃなく、オリジナルになれ”って言ってきたけど…最近は“コピーの天才”も悪くないと思えてきた」

アッシュ「えっ、それ褒めてる?」

ルカ「もちろん。自分のやり方で突き抜けるやつが一番強い。……で、今度は“第七感”に悩んでるんだって?」

アッシュ「師匠も知ってる? みんな禅問答で困るんだよなあ。“扉は魂で開け”とか。正直、Googleで検索したくなるわ」

ルカ「俺の答えはひとつだ。“とりあえずやってみろ”。分からなかったら、そのまま次の面白いこと探せ。それで十分さ」

アッシュ「…あいかわらず、雑な励ましだなあ。でも、なんか元気出てきた。ありがとう師匠!」

ルカ「おう、たまには顔出せよ。今度会ったら、俺が直々に“第七感”を伝授してやる……かもな」

アッシュ「まじで!? じゃあ次の聖域大掃除イベント、一緒に参加してよ!」

ルカ「やめとく。それじゃな、アッシュ。好きに暴れて、好きに悩め。俺の弟子なら、何でも楽しんでこい」

アッシュ「はい! じゃあ師匠、また!」

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