聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
しかし、彼が見たのは神を崇める人々と、恐怖に震える一人の女官だった!
神の存在を信じない少年が、今、本物の大神オーディーンと対峙する!
果たして二人は分かり合えるのか!?
君は、小宇宙を感じたことがあるか!
私の名はジュリアン・ソロ。海商王ソロ家の跡取りである。
将来は家業を継ぎ、世界の海運と海洋資源に携わる。それが私の進むべき道だ。必要な教育も受けてきたし、その責任を引き受ける覚悟もある。
神になる準備は、していない。
ところが最近、側近たちは私を海皇ポセイドンと呼ぶ。あの三叉の矛に触れてからは、遠慮というものもなくなった。跪き、命令を待ち、少し褒めると感極まった顔をする。
私はジュリアンだ。
私の名前で、誰かに攻撃を命じられたらどうする。ソロ家の資金が武器の購入に使われたら。被害は取り消せない。
気味が悪いのは、私自身の端末に、覚えのない送信履歴が残っていることだ。寝ている間に誰が触った。私の言葉を偽って命令している者がいるのではないか。
その相手が、すぐ隣で私に頭を下げている可能性もある。
あの教団は、私に世界を支配させるつもりらしい。私自身は望んでいない。
立派な施設を持ちながら、信者を冷たい床で寝かせ、まともな給料も払わない連中の言う世界支配など、聞く気にもなれん。
そんなことを考える暇があるなら、先に生活環境を整えろ。
除湿機は、アメリカのダークプリズン社製を手配させた。あの湿気をどうにかするのは、海皇の神威ではなく、電源に繋いだ業務用機器だ。
それを設置した途端に御慈悲と平伏されるとはな、頭が痛い。
製造元を確認しろ。ダークプリズン社だ。ポセイドンの御手製ではない。
末端の者たちはソロ家で雇い入れた。温かい食事と部屋を与えると、涙を流して喜んでいた。
この反応も、おかしい。どれほど困窮していたのだ。
なぜ、仕事を探そうと思わなかった。
離れることに、何か罰があると教えられていたのか。
あとは、あの怪しげな教団から離れて暮らせるようにすればよい。急に信仰を捨てろと迫るより、仕事を覚え、自分で生活を選べるようになってもらおう。その方が穏便だ。
なぜ私が世話を引き受けるのか、と聞かれれば……放っておけなくなったのだな。
妙に気に入ってしまった。バイアンもアイザックも、仕事はできる。
私を気遣ってくれるのも、演技には見えない。
だからといって、安心はできん。
私が教団を離れると言ったら、どうする? 神殿へ戻れという命令が別の幹部から届いたら、誰に従う?
私のためと信じて、私の逃げ道を塞ぐこともあり得るのだ。
この二人には、まだ救出の計画を話せない。
好意を持つことと、判断を預けることを混同するな。
彼らを見捨てる気はない。だからこそ、教団の都合に従ってはいけない。
そして、まだ一人、助けを待っている者がいる。
セラフィナだ。二か月も指示を求め続け、まともな返答も得られず、女官として潜入を続けていた女性だ。彼女を連れ戻すために、私はアスガルドへ来た。
「ジュリアン様、ワルハラ宮殿正門前に到着いたしました」
「うむ。ご苦労だった、アイザック。では、宮殿へ向かうとしよう」
開いたドアから冷たい風が入る。寒いな。同じ服装で来なくてよかった。
運賃の領収書を受け取り、タクシー会社の番号を確認してから財布へ収めた。帰りの車を、宮殿側の厚意に頼るつもりはない。
執事には、ワルハラ宮殿の正門へ到着した旨を送っておく。同行者の名も添えた。
これなら、二人が勝手に行き先を変更しようとしても、屋敷には記録が残る。
飛行場には迎えを頼んでいなかった。出発を急いだのだから、それは仕方がない。
タクシー乗り場で行き先を告げれば、問題なく連れてきてもらえた。
運転手も神の名を叫ばない。料金を受け取って礼を言う。こういう普通のやり取りは、実に気が楽だ。
見上げると、巨大な鉄扉。ワルハラ宮殿だ。
正門へ向かったところで、近衛兵に止められた。面会の約束を問われ、こちらにはないと答えるしかない。
当然だな。
知らない人間が訪ねてきて、勝手に入れるようでは宮殿の警備として問題がある。
ソロ家の屋敷も、門を叩いた者を片端から父上の書斎へ通したりはしない。
少なくとも、門番は普通の仕事をしている。奥にいる者も同じとは限らないが、話を始める余地はありそうだ。手順を踏み、身分と用件を伝えよう。
まずはソロ家の名前で取り次いでもらおう。文化交流や産業について話す余地もあるはずだ。その席で、現地に滞在している女性の安否を――。
「――控えよ! こちらにおわすお方こそ、世界の海を統べる名門ソロ家の正統なる後継者、ジュリアン・ソロ様であられる!さらに畏れ多くも、数千年の時を経て蘇られた偉大なる海皇ポセイドン様の化身であらせられるぞ!直ちにヒルダ殿に取り次ぎ、平伏して門を開くがよい!!」
「………………」
バイアンよ。前半はよかった。多少大仰ではあったが、家名も私の名も間違っていない。そのまま、面会の取り次ぎをお願いしますと続けてくれれば、何の問題もなかった。
なぜ後半を足した。
お前なら、そんな訪問者を屋敷へ入れるか?
警備責任者を呼んで終わりだろう。警察を呼ばれる可能性もある。私は北欧へ来て最初の訪問先を、警察署にしたくはないのだが。
横目で見ると、実に堂々としている。自分の言葉のどこにも問題を感じていない顔だ。
……まずいな。公衆の面前で、私と教団の関係を宣言されてしまった。
門には兵士がいる。監視カメラもあるかもしれない。これを記録されれば、後で私は無関係だと主張するのが難しくなる。
バイアンにそこを狙う意図はないのだろう。おそらくは。
更生が進んだと喜んだのは早計だった。私の話を何一つ理解せず、都合よく信仰に結びつけていた可能性がある。
ここで言い争っても、兵士を余計に不安にさせるだけだな。とにかく、敵意がないことを説明しよう。
そう思った時には、門番は青ざめて奥へ駆けていた。
……間に合わなかった。
困ったぞ。こちらを危険人物だと報告されているかもしれん。次に出てくるのは、人数を増やした警備兵か。
バイアンに任せず、私が説明するべきだった。
どう名乗るか、事前に確認しておかなかったのは失敗だな。
数分ほど待つと、鉄扉が開き始めた。
兵士の集団ではない。短く切りそろえた緑の髪が見える。細身の女性が、小走りでこちらへやってきた。
「えっ……とと! ようこそおいでくださいました! ジュリアン・ソロ様御一行様ぁぁっ!!私は、アスガルドの地上代行者・ヒルダ様の身の回りの補佐を務めております女官のカリスと申しまぁぁぁす!!」
もしや、この女性が……いや、カリスと名乗ったな。私が探しているのはセラフィナだ。
女官という言葉に反応しすぎた。宮殿に一人しか勤めていないわけではあるまい。
それにしても、元気のよい娘だ。よく通る声だ。少し音量を落としてほしい。
この歓迎を、そのまま好意と受け取ってよいのか。
私が何をしに来たか、まだ説明していない。神の化身だという触れ込みを聞いて、こんなに早く門を開けたのか?
バイアンと先に話がついていたのではあるまいな。
「えーっとですね! 今はヒルダ様はですね、奥の神様の前で土下座をしててめちゃくちゃお忙しい最中なので!!とりあえずお客様を客間までお通しするようにとのことでした……で、あってますよね!?」
「……私に聞かれても困るのだが。――これは、突然の非礼な訪問にもかかわらず、ご丁寧な案内をありがとうございます。ところで、その『神様』というのは……日本でいうところの『お客様は神様です』といった類いの、高名な大口取引先を歓迎する比喩表現ですかな?何か、重要な先客でもいらっしゃったのでしょうか?」
そうであってほしい。
多忙なところへ押しかけたのは、こちらだ。先約があるなら待とう。待つのは構わない。
ただ、最高指導者が客の前で土下座しているという説明は、聞き捨てならない。
何か不祥事があったのか。重要な取引を失いかけているのか。
あるいは、この娘の言い方が大げさなのか。できれば、それであってほしいのだが。
「へ?? あ!! ジュリアン様って、もしかしてそういうの全然わからない『一般人』の人なんですね!? そうだった! 普通の人にオーディーン様とか神様の話をしちゃいけないんでした! すいません忘れてください!えーっと、そうです! 大切なお客さまでぇぇぇす!!」
……そうか。こちらはオーディーンか。
やはり、セラフィナを一人にしておくべきではなかった。
相手も神を自称する集団だったとは。
それぞれに趣向を凝らしているようだが、私には同じ手口に見える。
人間ではないから疑うな。神なのだから従え。
そうして権威を作り、従う者を増やしていくのだろう。
アスガルドにオーディーン信仰が根づいていることは知っている。その信仰を利用すれば、他所で始めるより容易に信用を得られるはずだ。
しかし、一国の代行者を床へ跪かせるとは。
ヒルダ殿の姿は、式典映像で見た覚えがある。銀の髪が美しい、若い女性だった。大勢を前にしても落ち着き、堂々としていたはずだ。
……まさか、信仰を口実に精神を支配されているのか?
若い領主を言いなりにし、宮殿を占拠しているのではあるまいな。
神の望みだと称して、身体さえ好きに扱うような男だったら……。
偉そうに座り、周囲へ服従を強いる巨漢。若い使用人を侍らせ、疑問を口にすることさえ許さない。
……警察へ知らせれば済む話なのか、これ。
ここで捕まったら、誰が私の訴えを取り上げる?
神への無礼を働いたと言われ、近衛兵に押さえ込まれたら。
コートの上から端末の位置を確かめた。まだ連絡はできる。
取り上げられるような場所には置くな。
神について外の者へ話してはいけない、という指示もあるらしい。
今、この娘はそう言った。伏せているなら、後ろめたい事情があるのだろう。
尋ねた途端に口を閉ざされる恐れもある。
セラフィナを呼び出しても、監視役がついていたら本心など聞けない。本人が帰りたいと言える状況を作らなければ。
◇◇
セラフィナのメールを思い返す。
同盟の条件を求む。至急指示されたし。
なるほど。単に交渉が難航していたのではないな。
二つの教団の間に立たされ、どちらにも逆らえなくなっていたのだろう。
逃げようにも、戻る先もまた教団だ。まともな指示も資金も得られなければ、自力で抜け出すのは難しい。
そこで私の端末へ、必死に連絡していたのか。
待っていろ。帰る場所なら用意する。ソロ家には仕事も部屋もある。
お前がカルトの利権争いにつきあう必要はない。
「……そうですか。ならば、客間で待たせていただきましょう。バイアン、アイザック。トランクと荷物を頼む」
「はっ……!」
声は落ち着いて出た。よし。このまま相手の説明を聞こう。
客間へ入ったら、まず出入口を確認しよう。端末を預けろと言われたら断る。
歓待を理由に長く引き留められたり、同行者と離されたりするのも避けたい。
このカリスにも、目的は明かさない。気のよさそうな娘だが、私の話をそのまま上へ報告するかもしれない。自分では悪いことをしているつもりもなく。
相手の目を見て微笑み返す。こちらの警戒を悟らせるな。
「ジュリアン様、トランク内の我々の『鱗衣(スケイル)』は、隠密裏に持ち込みます」
持ち込まなくていい。
何を耳打ちしているのだ、アイザック。
そんな重いものを入れていたのか。トランクの扱いが妙に慎重だとは思っていたが。
武装して宮殿へ侵入したと告発されたら、ソロ家も簡単には助け出せない。
そこにつけ込まれ、不利な約束を強いられるかもしれん。
そもそもお前たち、この訪問を平和的な交渉だと理解しているのか?
私が一言腹を立てただけで、敵を排除すると暴れ始めたりはしないだろうな。
……落ち着け。
こいつらは私を守ろうとしている。本人たちにとっては、神に仕える戦士として当然の備えなのだろう。その考え方を、今から直していくのだ。
ここで怒鳴れば、相手の教団に何かを察知される。こちらの足並みが乱れていると知られるのも得策ではない。
幸い、二人とも頭はよい。自分たちの信じているものになると判断が鈍るが、他人の行動なら冷静に見られるかもしれない。
この宮殿で何が行われているのか、一緒に確かめよう。
神を名乗る者が他人を跪かせる。そういう光景を目にすれば、何か感じるはずだ。
その後で、自分たちの教団と何が違うのか尋ねてみる。
最初から信仰を否定するより、本人たちに考えてもらう方がよい。
私は神ではないと百回告げるより、目の前の事実を一度、自分の頭で検討してほしい。
ただ、それを今日のうちに期待するのは危険だ。
機内で私は一度、理解してくれたと思い込んだ。その結果が門前の大演説だぞ。
二人が相手を同じ神の信徒として信用し始めたら、私の判断で帰る。
教祖同士の握手を迫られても、同盟の書面を出されても、安易に応じるな。
何に名前を使われるかわからん。
それにしても、ひどい話だ。
◇◇
「ひっ……!? な、何ですかこの……押し潰されそうなほど重たい小宇宙は……!?」
カリスが振り返った。身体を強張らせ、こちらを見ている。顔色もよくない。
どうした? 急に具合が悪くなったのか。走ってきたせいだろうか。
それなら、無理に案内を続けなくてもよいのだが。
「はい? もしもし……あ、そうなんですね!! りょーかいです!!」
……誰と話している。
頭へ手を当て、上を見て返事をしている。受話器はない。トランシーバーも見えない。
こちらに向けた返答ではないことは確かだ。
小型の通信機をつけているのだろうか。耳元にも、それらしいものは見つからない。
もし通信しているなら、こちらの会話は奥へ筒抜けか。
私の発言を聞かせて、返答を指示されている可能性がある。
逆に、何も聞こえていないのに返事をしているとしたら……それも恐ろしい。
神の声を聞いたと言えば、周囲が認める。そのような振る舞いを繰り返すうちに、本人も本当に受信しているつもりになったのだろうか。
この娘は、どれほど長くここにいる。
「……念話か」
「そうだな。宮殿にいる何者かと交信している。一介の女官に見えて、かなり小宇宙の扱いができると見えるぞ」
小宇宙。念話。どちらの教団にも通じる言葉なのか。
そういう専門用語を並べれば、説明したことになると思っているのではあるまいな。
私も、矛に触れて以来、人の周囲に妙な光が見える。だから普通ではない感覚を、頭ごなしに否定したいわけではない。
しかし、何かを感じることと、相手の言葉を無条件に信じることは別だろう。
それを確かめる前に、神の力だと納得してしまうから利用されるのだ。
教祖に人の心が読めると思い込めば、内心で疑うことさえ怖くなる。誰かに助けを求めることも、自分から諦めるかもしれない。
悪質だな。本当に。
「ポセイドン様ぁぁぁっ!!奥にいらっしゃるオーディーン様が、『直接ここへ連れてまいれ』とおっしゃってまぁぁす!!もう〜〜〜! あんな凄まじい神様のオーラを出してるのに、一般人のフリなんて酷いじゃないですかぁ〜〜!!」
「……は?」
今度は私を拝み始めた。
待て。一般人のふりなどしていない。私は最初から一般人だ。お前もさっき、そう言ったではないか。
……奥から指示を受けた、ということなのか。何らかの方法で私の肩書を確認し、扱いを変えた?
ソロ家の跡取りとしてならわかる。だが、呼び方はポセイドンだった。
……まずい。両者の対立を前提に考えていたが、裏で繋がっている可能性がある。
ここで私を神として迎えれば、バイアンたちは一層信じ込む。
私が否定するほど、神が身分を隠しているのだと解釈するのか?
本人が何を言っても、否定を認めない。そうやって私を教団から抜けられなくするつもりか。
直接奥へ来いというのも、気にかかる。
こちらに考える時間を与えたくないのでは。
「こちらです! すぐにご案内します!!あ……! あの……私、精一杯頑張ってもこれくらいの案内しかできないので、どうかお気に召さなくても、津波で流したり水死させたりして殺さないでくださぁぁぁい〜〜〜〜っっ!!!!」
殺す? 案内が気に入らないという理由で?
頭を下げた顔は涙目だった。先ほどはあれほど元気だったが、命乞いをしている。
神と認めた相手には、人を殺す権利があると考えているのか。不興を買えば処刑される。それを当然として受け入れ、許してほしいと頼むのか。
私はそんなことをするつもりはない。思いつきもしなかった。
冗談であってほしかった。しかし、この娘は本気で怯えている。
この娘が先ほどからやたらと元気に振る舞っていたのも、叱られまいとしていたのかもしれん。
セラフィナも、同じように怯えて暮らしているのだろうか。
仕事を間違えないように。機嫌を損ねないように。海界へ戻ることもできず、指示が来るのを待ちながら。
私の端末からは、寒いのは嫌だという返事が送られていた。
あれを受け取った時、どんな気持ちだったのか。
笑い事では済まない。私の知らないところで送られたメールであろうと、私の名前でこの状況を長引かせたのなら、責任を感じる。
ここから連れ出そう。
職を失うのが怖いなら、雇用を約束する。帰りの旅費がないなら、こちらで出す。
教団に恩があると言われれば、その恩と今受けている仕打ちは別だと、時間をかけて話そう。
「……ジュリアン様。どうか、お怒りをお鎮めくださいますよう」
「はっ。御威光……小宇宙が、いささか外へ漏れ出てしまっております。このままでは宮殿の一般兵が気絶しかねません」
だから、小宇宙とは何なのだ!
私はただ、理不尽な暴力に腹を立てている。声を荒らげることもせず、黙って話を聞いていたのだぞ。
バイアン。この宮殿へ入ってから、お前たちの言葉が少しも安心に繋がらないぞ。
……いや。
怒りを鎮めろという忠告自体は正しい。今の私は、顔に出していたのかもしれない。
カリスが私を怖がっているなら、そこは改めねば。
この娘を怯えさせても、何も解決しないからな。
握っていた指を緩める。肩から力を抜き、息をゆっくり吐いた。熱くなっていた頬に、廊下の冷たさが心地よい。
落ち着こう。
奥の男が欲しいのは、ソロ家の金か、名前か。あるいは両方か。
こちらから資産の話はしない。セラフィナの居場所を確認できれば、今日は十分だ。
彼女を危険に晒して、格好のよい救出劇を演じる気はない。
端末を取り出し、ソロ家へ短い追記を送った。これから宮殿の奥で面会に入る。終了後に連絡する、と。
会わせてもらおうではないか。そのオーディーンとやらに。
名門ソロ家の人間が、神を名乗られた程度で跪くと思うなよ。
【アッシュの用語集】
■ジュリアン・ソロ
地中海の海商王ソロ家の跡取り。
十六歳になったばかりの青年だ。
俺の知る物語では、この年齢が海皇ポセイドンの覚醒に関わっている。
しかし現在、どうも様子が違うらしい。
……まあ、本人が普通に暮らしているのなら、それが一番なんだがな。
■海皇ポセイドン
ギリシャ神話に登場する海の神。
海皇軍を率い、強大な小宇宙を持つ存在だ。
今回の動向には十分な警戒が必要になる。
ただ、必ずしも俺の知る展開どおりに動くとは限らない。
■海馬のバイアン
海皇軍の海将軍の一人。
非常に強力な小宇宙を持つ戦士だ。
ソロ家ではジュリアンの側近として働いているらしい。
表向きの経歴も相当優秀だとか。
海将軍が一般企業へ就職するとは、俺も予想していなかったぞ。
■クラーケンのアイザック
パライストラ・シベリア校の卒業生。
氷海で友人を救った過去を持つ青年だ。
現在はソロ家の警備に関わっているらしい。
その能力が評価されるのは喜ばしい。
しかし、よりによって海皇の依り代の家とはな。
■アスガルドの宗教
北欧神話に由来する信仰を持つ国だ。
主神はオーディーン。
その地上代行者を務めるのがヒルダだな。
信仰と政治が深く結びついている以上、外交には慎重さが必要になる。
もちろん、他国の神が相手だからといって、無条件に従う必要はない。
■小宇宙の威圧
強大な小宇宙を持つ者は、力を解放するだけで周囲へ大きな圧力を与えることがある。
戦闘中ならともかく、一般人の近くでは注意が必要だ。
本人に威圧するつもりがなくても、周囲が無事とは限らないからな。
力を持つ者ほど、扱いには責任を持ってほしい。