聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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歴史は今、血に濡れる!
教皇シオンの死、その影で交わされる決して許されぬ共犯の誓い。
サガとアッシュ、二人の知略が導くは、救済か、それとも破滅か。

友情は罪となり、正義は仮面を被る。
喪われた希望、分かたれた兄弟。
それでも二人は歩む――罪とともに、共に背負うは聖域の未来!

次回、聖域暗黒革命――誓いの共犯者!教皇シオンを継ぐ影

君は、友のために、どこまで闇に堕ちられるか――

小宇宙(コスモ)よ、灼熱せよ!




聖域暗黒革命――誓いの共犯者!教皇シオンを継ぐ影

(アッシュ視点)

 

 

俺は、淡々とデータチップを取り出し、小宇宙で空間にプロジェクターを展開した。

そこに映し出されたのは、俺自身が決して公にするつもりのなかった、冷酷な未来の設計図――プロジェクト・アリエス。

 

「使うつもりはなかった。ただの思考実験だよ」

 

画面に浮かび上がる、恐ろしいほど緻密な計画の数々。

シオンの死後、サガが教皇に就くための、あまりにも現実的なシナリオ。

黄金聖闘士たちへの根回し。文官たちへの政治的圧力。

各地の修行地の掌握。反抗的な勢力の漸次的排除。

法と秩序の名のもとに、「大義」として仕組まれるクーデター計画。

教皇の死を偶発的事故に偽装する、実行可能なタイムテーブル。

必要経費、物資、人的リソースの管理。メディア対策、噂工作、外部組織との連携…

ありとあらゆるリスク管理と、万が一の場合の予備プランまで。

 

それは、サガが自分自身の中で夢想していた「支配」を、完璧に現実へと昇華させるための「悪魔の書」だった。

いや、それ以上に――もしも本当に俺たち二人が手を組めば、あらゆる障害は排除できる。そんな、万能感さえ漂うプラン。

 

俺は、淡々とその全容を解説する。

 

「もし、お前が本気で聖域を掌握し、地上の秩序を塗り替えるなら、この順番で動く。

反発する黄金たちには、“正義”という名の仮面をかぶせてやればいい。

必要なら、俺が裏から全ての調整を行う。お前は、表に立ち、英雄であり続ければいい。

……だが」

 

そこで、一拍置く。

サガは、呆然と画面を見つめたまま動かない。

その瞳に浮かぶのは、畏怖、愕然、そして、救いのない絶望。

 

悪サガ『素晴らしいッ!これだ!これこそが我らが目指すべき道!この男は、やはり最高のパートナーだ!』

 

善サガ:項垂れている。ただ、ただ静かに、自分の無力を噛み締めて。

 

俺は、もう一度だけ、画面の内容を指で消し、サガの前に立った。

「――ただし。これは俺だけの計画だ。お前の支配したい“地上”は、こんなに血と恐怖でしか維持できないものなのか?」

 

その言葉に、サガは顔を伏せる。

 

静寂。

夜の冷たさが骨身に染みるほど、時間が止まったような感覚。

だが、その絶望の底で、サガは、ゆっくりと顔を上げ、俺をまっすぐ見た。

 

「頼む、アッシュ……」

 

その声は、かすかに震えていた。

だが、それはもう、あの万能感に酔った英雄のものではなかった。

 

「オレに、力を貸してくれ」

 

そう言って、サガは、深く、深く、頭を下げた。

プライドも、野望も、全てを捨てて――ただ、救いを求める、一人の“友人”として。

 

俺は、その姿を、真正面から受け止める。

かつて、こんなにも強く、そして脆いサガを見たことがあっただろうか。

その姿は、英雄でも、怪物でもない。

ただ、救いを求める、等身大の「少年」だった。

 

 

 

俺は、崩れ落ちたサガの背に、力強く手を置いた。

その感触は、想像よりもずっと脆く、だが、同時に、何か決定的な熱を帯びていた。

 

「お前以外に、教皇をやれるやつなど、いるものか」

 

それは、俺がこの場に辿り着くまで、何度も自分に問い直した“答え”だった。

血塗られた現実の前で、理想も、倫理も、全ては二の次だ。今ここで、友を肯定しなければ、誰が彼を肯定するのか。

 

サガは、顔を上げ、驚いたように俺を見つめた。

その目には、涙と後悔、そして――かすかな希望が入り混じっている。

俺は、あえて彼の弱さも闇も、全てを正面から受け入れた。

 

赦し。肯定。そして、共犯の誓い。

 

「なぁサガ。俺はお前がどれだけ歪んでいようと、どれだけ傷ついていようと、どこまでだって付き合うさ。

…お前が教皇になるなら、俺が全力でサポートしてやる。地上の秩序でも、世界征服でも、全部お前と一緒に考えてやるよ。だけど――」

 

言葉を切る。サガの肩を、もう一度ぐっと握る。

 

「一人で全部背負うな。これからは、俺を使え。俺たちは“同罪”だ。

お前が地獄を見たいなら、一緒に地獄へ行く。天国を目指すってんなら、そいつも付き合う。

要はさ――“友達”ってのは、そういうもんだろ?」

 

夜のスターヒルに、風が吹いた。

星々が、俺たちを見下ろしている気がする。その視線の中で、俺は少しだけ自分の運命を呪った。

だが、後悔はなかった。

 

ここに、聖域史上、最も知的で、最も強力で、そして最も歪んだ、教皇とその補佐役が誕生した。

俺たちがこれから築く世界が、理想郷になるのか、闇に沈む独裁国家となるのか――それは、俺たち自身にも、まだ分からない。

 

でも、どちらに転んでも、絶対に「一人きり」にはしない。

それだけは、今ここで、星に誓える。

 

―――全ては、俺とサガ、二人の手で決める。

そして、その“始まり”が、今ここに刻まれた。

 

 

 

 

「サガ、お前は…本当に馬鹿だよ…」

 

そう呟いた声は震えていたが、俺の思考はすでに“次善の策”を探し始めていた。

 

プロジェクト・アリエス。

本来なら、シオン様は誰にも悟られずに“行方不明”となり、そのまま聖域の権力構造は一切の軋轢なく移行するはずだった。

誰も死なず、誰も傷つけず、「聖域」という巨大な組織の損失を最小限に抑えるための、冷徹な現実主義――それが、俺の計画だった。

 

だが、現実はこうだ。

シオン様の足取りは、衛兵たちの間でも明白。サガがスターヒルへ向かったことも、すでに目撃されている。

ここでシオン様が「行方不明」になれば、真っ先に疑われるのはサガ――俺たち自身だ。

 

もはや、完全犯罪の道は絶たれた。

ならば、残る選択肢はただ一つ――“罪”そのものを“制度”で塗りつぶすこと。

 

俺は、シオン様の亡骸から、教皇の法衣と黄金のマスクを外すと、ためらいなくサガへと差し出した。

 

「―――お前が、教皇シオンとして生きろ」

 

自分でもぞっとするほど冷静な声だった。

その判断に、もう一片の迷いもない。

 

「いいか。誰にも、絶対にバレるな。完璧にシオンを演じきれ。お前にしかできない罪滅ぼしだ。…本来、ここまで破綻した計画は選びたくないが、他に選択肢はない。…やるしかないんだ」

 

そして、俺はもう一歩先を考える。

 

「双子座の聖闘士が不在になれば、それもまた不自然だ。カノンはどうしている?

あいつなら、お前と瓜二つ。聖域の誰も見分けはつかない。お前が教皇役をやっている間は、カノンに“サガ”をやらせろ。必要があれば、二人で役割を入れ替えればいい。

――これはアリバイの確立だけじゃない。今後、教皇の権威を“揺るぎないもの”にするための重要な布石になる」

 

自分の口から出る言葉が、冷酷なまでに合理的なのを自覚している。

でも、今この瞬間、情に流される余地はどこにもなかった。

 

「いいか、サガ。

――俺も、お前も、もう一線を越えた。

…だったら、この破滅的な状況を、“勝利”に塗り替えるしかない。

絶対に、俺たちが“聖域の未来”を掌握する。そのためなら、何だってやる。

お前は、今から“シオン様”として生きろ。俺が全力で裏から支える」

 

 

 

 

 

「カノンは…いない」

 

――何だと?

 

「自分の手で、スニオン岬の牢に幽閉した」とサガが続けるその声には、後悔と自責が滲んでいた。

 

冗談じゃない。カノンは、この最悪の状況を“逆転”できる唯一の切り札だった。

俺は一瞬で、最悪の未来の一つを直感した。

 

「すぐに助けに行くぞ!」

 

俺はサガの肩を掴み、小宇宙を爆発的に燃やしてテレポートを発動した。目指すはスニオン岬の断崖絶壁、聖域の罪人を幽閉する岩牢。

 

暴風と荒波が容赦なく吹きすさぶ中、俺たちは必死でカノンの姿を探した。しかし――

 

そこにあったのは、ただの「空の牢獄」だった。

 

「…そんな、まさか」

 

俺は冷静さを装いながらも、焦りを隠しきれずに周囲の小宇宙の痕跡を探った。

かすかな――だが強烈な、小宇宙の「抜け殻」が残っている。しかも、それはどこまでも深く、どこまでも暗い――海底へと続いている。

 

「…間に合わなかったか。これは、ポセイドンの気配だ。カノンはもう、海底神殿へ――」

 

自分でも情けないほどに、唇を噛みしめた。

もう「双子座の入れ替わり」という奇跡のアリバイ工作は使えない。

俺たちは、最後のジョーカーを失ったのだ。

 

サガは、俺の隣で、ただ俯いたまま動かなかった。その横顔は、ついさっきまで見せていた「決意」ではなく、また「絶望」に近いものだった。

 

…仕方ない。

 

俺は、瞬時に思考を切り替える。

現実を受け入れ、最善ではなく“次善の策”を最大限まで洗練させる。それが、今の俺の役割だ。

 

「戻るぞ、サガ」

 

小宇宙で再びスターヒルへ。シオン様の亡骸は、そのまま時が止まったように静かに横たわっている。

 

俺は、黙って法衣とマスクをサガに手渡した。

「仕方ない。カノンのことは、後で考えよう。今は、お前がシオンとして、教皇の間に戻るしかない」

 

サガは、深くうなだれながらも、俺の差し出す法衣とマスクを受け取る。その手は震えていたが、それでももう「後戻り」はできないと悟ったのだろう。

 

俺はその様子を確認しながら、さらに事務的に指示を出す。

 

「教皇としての動きは俺がサポートする。すべての記録や証拠は、徹底的に俺が“最適化”する。…大丈夫だ、お前が堂々とシオンを演じていれば、聖域の誰にも気付かれはしない」

 

だが、心の奥底で俺は、カノンという「もう一人のサガ」を失った痛みをひしひしと感じていた。

 

「カノンのことは、必ずあとで何とかする」

 

俺は、自分に言い聞かせるように呟いた。

 

(運命がどれだけ残酷でも、友がどれだけ愚かでも、俺は必ず…この聖域と、お前たち兄弟を“最適化”してみせる。そうじゃなきゃ、俺がここに転生してきた意味がない)

 

全てが計画通りに進むことなど、最初からなかった。だが、俺は何度でも、状況を“最善”へと更新し続ける。それが、俺にできる唯一の贖罪なのだから。

 

 

 

 

 

(悪サガ視点)

 

 

――この瞬間、俺(悪サガ)は、ついに完全な「教皇」となった。

 

黄金のマスクを装着した刹那、意識の奥底からせり上がるのは、もう一人の「俺」の、どうしようもない動揺と絶望。その波を、俺はあざ笑うように押し殺す。

 

この全てを制御するのは、今や「俺」――悪のサガだ。

 

目の前のアッシュに問いかける。

「アッシュよ。アテナとアイオロスは、どうする?」

 

この問いは、計画の成否を左右する、最大の不確定要素だった。

正統な女神と、その守護者。どちらも、俺――いや、俺たちの“闇”にとっては最大の脅威だ。善の俺はもちろん、カノンですら、この問いに最後まで迷っていたはず。

 

だが、アッシュは――

 

ゆっくりと振り返り、まるで冷徹な経営者が「不要な部門のリストラ」を語るかのような、明るい笑顔で、こう言い切った。

 

「アテナとアイオロスには、死んでもらう」

 

……なんという清々しさだろう。

 

俺は、その瞬間、本当に心から「こいつが味方でよかった」と思った。

今まで俺がどれほど策略を巡らし、計画を練っても、必ず最後の一手で善の心が足を引っ張った。だが、アッシュは違う。

「聖域のため」「友のため」「改革のため」――その名目の下に、どんな手段も迷いなく選べる男だ。

むしろ、俺よりも冷静に、合理的に、そして美しく「悪」を肯定してみせる。

 

ああ、俺は今、この上ない安堵と快楽に包まれている。

 

この聖域の暗黒は、ついに真の「王」と「参謀」を手に入れたのだ。

サガとしての俺に迷いが生まれれば、アッシュが導いてくれるだろう。アッシュが暴走しそうになれば、俺が最適な線を引くこともできる。

この「共犯関係」さえ続けば、どんな未来も最適化できる。

 

――ついに、この瞬間から、真の「聖域支配」が始まる。

そして、その物語の主役は、俺と、アッシュだ。

 

そう思うと、心の底から――嬉しくて、たまらなかった。

 




アッシュ「……お前らにだけ、正直に話す。シオン様はもう戻らない。サガが、この聖域を導くことになった。
今後も色々と厄介なことが増えると思う。だが……お前たちの力が必要だ。俺の頼みを、聞いてくれるか?」

デスマスク「へっ、今さらだなァ、師範。お前のためなら、地獄の底まで付き合ってやるぜ!
どうせ俺も、綺麗事だけじゃ生きてねぇしよ。面白くなってきたじゃねえか!」

アフロディーテ「もちろんです、師範。
私も――この美しき聖域の未来のためなら、どこまでもお力添えいたしましょう。
シオン様のことは……残念ですが、サガが導く新たな時代、私なりに守ってみせます。」

アッシュ「……ありがとう。頼りにしてる。
これから、俺たち三人で――いや、“仲間”全員で、聖域を支えていこう。」

デスマスク「まっかせときな、師範!」

アフロディーテ「お任せください。師範のためなら、いかなる闇も恐れません。」

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