聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
アテナの加護も、黄金聖衣の加護も、脳筋には通じない学力の荒波――
今、聖域は史上最大の危機を迎えていた!
サガ教皇、化学式で爆発!
シャカ、九九と宇宙の真理で迷走!
アイオリア、答案用紙の裏に猫を描きまくる!
そしてミロは、スカーレッドニードルで解答用紙を貫通――
だが、ここに立ち上がるは聖域の頭脳・アッシュ師範!
燃え上がれ小宇宙!
答えは拳じゃなくて、まず九九からだ!
次回――
『燃えろ!アッシュ塾――聖域黄金小学校・脳筋からの逆襲』
黄金魂よ、鉛筆を握れ!
九九が言えない黄金聖闘士たちに、明日はあるのか!?
乞うご期待!!
(アッシュ視点)
地中海の陽は高く、聖域の石畳に燦々と降り注いでいた。
だが、その朝聖域の片隅にひっそり設けられた“臨時教室”には未知なる恐怖と混乱が渦巻いていた。
俺――杯座のアッシュ、十五歳。表向きは聖域参謀長、裏では地上支配の頭脳。その俺が今最も危惧しているのは敵の襲来でも、サガの分裂でもない。
「……教え子たちの“学力”が、絶望的に低いという事実だ」
ことの発端は先日の出来事だった。
サガのシオン成り代わりも軌道に乗り、教皇の間では日々次世代黄金聖闘士たち(7~10歳)を相手に、俺が総師範として鍛錬を施していた。闘技場に響く、覇気、掛け声、そして飛び交う光速の拳。
ここまではいい。むしろ黄金の未来は明るい――はずだった。
しかし、何かがおかしい。戦闘力は全員カンスト、だが休憩中のあの会話、無邪気すぎないか……?
「なあアッシュ!“アンドロメダ銀河”ってどこにあるんだ?食べられるのか?」
「今日の給食、サンドイッチじゃなかった?なぜ!?」
恐怖を覚えた俺は、深夜こっそり全員分の基礎学力調査票を回収。
結果、想像を絶する事実に直面した。
「IQ測定不能。生活力、小学生低学年。九九、全滅――だと……!?」
こうして“緊急事態”は宣言された。
――第1回 聖域統一学力テスト、開幕――
朝から教皇の間は異様な緊張感に包まれていた。
「お前ら全員、着席!私語厳禁!鉛筆は投げない!」
ミロは「えー、なにこれ戦闘訓練じゃないの?」と反抗的だが、容赦なく解答用紙を配る俺。教室最前列は、あのムウが淡々と座っている。……いや、既に消えている。瞬間移動か?(あとで説教だ)
さて、出題は――
1.九九を暗唱せよ
2.1+1は?
3.ペルセウス神話を書きなさい
4.ギリシャの首都は?
5.「生きるとは何か」200字以内で
設問は極めて基礎的だ。これが解けないようでは地上支配どころか、明日の昼飯の献立すら危うい。
だが、始まって30秒――
「ミロ!何してる!?」
目の前の解答用紙には、「俺の答えはこれだ!」の一言とともに、スカーレッドニードルの穴が30個。しかも「九九」の欄はまるでピタゴラスイッチのように直線状に貫通。手品か。
「アイオリア!1+1の答えが“兄さんと俺”って何だその発想!?」
しかも彼はそれ以降、答案用紙の裏で猫のイラストを無限に描き続けていた。
天真爛漫を通り越して、これぞ聖域一の“純粋バカ”。ある意味才能。
「シャカ……、これは……?」
全教科0点。しかし唯一「生きるとは何か」の問いだけ、「それは、目を開かずとも見える真理。問いそのものが答えであり、答えそのものが問いである」と記述し、俺の心に不可解な余韻を残す。
なお、九九は一切言えない。本人曰く「昨夜、仏と対話していた」とのこと。
…仏は九九を教えなかったのか。悟りの道は遠い。
一方で意外な優秀者も。
「カミュ、全問正解。理由は?」
「師の教えは絶対です。なお、全ての問題は氷で解けます」
いや、氷で解くな。だが完璧。まさに規律の人。教育の鑑。
「ムウ……テスト中に消えるな。だが全問正解。理由は?」
「テレキネシスで教皇の間の参考書を全部見ておきました」
ズルだが頭はいい。ズルいが頭はいい。(大事なので二回言った)
「デスマスク……お前まで全問正解?」
「積尸気で冥界の賢者に全部答えを聞いてきたぜ。あっちは九九もギリシャ史もプロだ」
「お前は何を目指しているんだ……」
惨状はまだ続く。
「アイオロス兄さんがいないから、もう僕全部兄さんの名前書いてもいい?」(byアイオリア)
「ムウ、今度はテストの紙ごと空間転移しないでくれ」(俺)
「デスマスク、解答欄に“冥界でも通用する答案”って自慢するな」
もうやめて。俺のライフはゼロよ。
気づけば昼休み。
あちこちで「九九ってなに?」「スカーレッドニードルで九九表作ろうぜ!」と物騒な会話が聞こえる。教室の隅ではシャカが静かに瞑想している。たぶん何も考えていない。
俺は、山のような採点答案を抱えて教皇の間に走った。
「サガ!まずい!このままじゃ聖域の未来は“脳筋エリート小学生”で埋め尽くされるぞ!」
だが、サガ――新教皇(14)は、机にうずくまり、中学化学の教科書と格闘していた。
「アッシュ……これは何だ、“C₂H₅OH”……?呪文か……?」
「……エタノールだよ。それくらい覚えろよ教皇」
「アッシュ、頼む。俺はこれ以上未知の呪文(化学式)と書類の山には耐えられん……」
俺は天を仰いだ。
最強の聖闘士たち、その中身は“無敵の脳筋小学生”――いや、もはや小学生未満。
戦闘力に全振りした進化の果てに、知性が脱落していた。
これでは地上支配どころか、明日の献立も決められない。
決めた。“全員、もう一度教育し直す”
そしてその夜、俺は静かに新たなカリキュラムと、さらに小学生用の宿題の山を作成したのだった――。
――聖域よ、これが教育革命だ。
俺はついに決断した。
「本日より、『聖闘士のための現代教養講座』を開講する!教皇も候補生も関係ない、全員参加だ!!」
告げるや否や、聖域の石畳が震えた――いや、実際にはアルデバランが足を滑らせて机を割った音だが、そんなことはどうでもいい。
こうして、前代未聞の“アッシュ塾”が幕を開けた。
まず最初の受講者は――サガ。
教皇の法衣のまま、まさかの最前列着席。
俺の問いに即座に反応するあたり、流石は聖域最高頭脳……と思いきや、数学はスラスラ解くのに、化学の時間になると顔色が変わる。
「さて、教皇殿。H₂SO₄の分子式は?」
「……あ、あー、えーと、その……」
突然、フラスコから立ちのぼる怪しい煙。
善サガは「す、すまない……!」と小声で謝罪し、悪サガが「フン、支配者は全てを知らなくても務まるものだ!」と逆ギレ。
机上には微量の焦げ跡と何故か“教皇のマスク”だけが取り残されている。
まったく、地上最強の二重人格も化学反応の前にはひとつになれないらしい。
続いて、謎の迷走を始めるのはシャカ。
算数の時間。九九の唱和中に瞑想ポーズに入り込む。
「答えは……私の中の宇宙が教えてくれる……」
「おい、シャカ!足し算に宇宙は関係ない!1+1は!?」
「“一なるもの”はすべてに通ず。二であって、また二でなく、しかして……」
「黙って2って言え!!」
それでもシャカは静かに目を閉じ、クラスメイトに“あわれみの視線”を投げかける。
「アッシュ殿……貴殿には、まだ真理が見えていないのですな」
俺はこの先“宇宙”と“九九”の共通項を考え続ける羽目になる。
次に、物理法則の壁をぶち破る猛者たち――アイオリアとミロだ。
理科の授業「作用・反作用の法則」。
俺が黒板に式を書き始めると、ミロが叫ぶ。
「俺の拳は法則を超える!」
「物理なんか光速拳には通じないぞ!」とアイオリアも机ごと拳を振り下ろす。
バキッ
机は二つに割れ、教室の隅からアルデバランが「俺の机返して……」と涙目で覗く。
「アッシュ師範、どうして拳で説明しないんだ?」
「お前ら全員、次は俺の小宇宙で叩き込むぞ!」
さらに困ったことに聖域には“自分の知能を疑う勇気”がある聖闘士が少ない。
「アッシュ師範、本当に頭いいのか?」とアルデバランが腕組みして睨んでくる。
「失礼な!俺はアテネ大学まで出てるんだぞ!卒論は“戦士のための効率的家計管理”だぞ!」
ムキになった俺は、小宇宙全開で黒板に高次方程式を刻みつける。
“E=mc²”の下に“愛=小宇宙×努力”と書いてやった。
更に歴史の授業では「古代ギリシャ史」を語りながら、ホログラムでソクラテスとプラトンを召喚。
「教皇猊下、質問してみてください」
「そ、その……“人はなぜ酒を飲むのでしょうか?”」
「ワインと哲学はセットである(byソクラテス)」
講堂の後ろで、デスマスクが「おーい、冥界の賢者も混ぜろ!」と手を挙げている。混沌が混沌を呼ぶ。
――カオスはまだ終わらない。
【読解の時間】
アイオリア「兄さんが主人公の話なら全部正解だろ?」
ミロ「主人公が最後に勝つのは当然だろ?(脳筋ロジック)」
シャカ「この物語の本質は、“無”です」
ムウは問題用紙ごと空間転移、カミュは氷で紙を固めて“永久保存”した。
【体育の時間】
みんな既に黄金聖闘士。逆立ち歩き競争は空中浮遊合戦へ。サガはなぜか三重人格で“みんなと一緒に鉄棒”
「ぐるぐるバットで小宇宙を鍛えよ!」の号令で、シャカが“宇宙回転”して止まらなくなり、アフロディーテがバラで回転を止める。
【道徳の時間】
「正義とは何か?」の問いに、
デスマスク「力こそ正義だろ」
アフロディーテ「美こそ正義」
シャカ「正義もまた空」
ミロ「一番パンチが強い奴が正義」
カミュ「師の教えに従うのが正義」
アイオリア「兄さんが正義!」
全員、アテナを信じてはいないらしい。
授業中、問題児たちはあらゆる方法でカンニングや現実逃避に挑戦してくる。
・ムウ、ノートごと消すな。
・デスマスク、冥界で答えを聞くな。
・シャカ、問答無用で瞑想に逃げるな。
・アイオリア、答案の裏に猫を描くな。
・ミロ、紙にパンチで穴を開けるな。
・アフロディーテ、お前は何でバラで漢字を書いてるんだ。
そして休憩時間。
サガ(法衣のまま)は一人、理科室の片隅で小爆発の後始末。
善サガが「すまない……」と呟き、悪サガが「フン、教皇の威厳は爆発ごときで揺るがぬ」と断言。
シャカは一人宇宙と会話中。
ミロとアイオリアはどちらが光速で九九を言えるか、拳で勝負。
ムウは答案用紙を空間転移させて回収不能。
カミュは「先生、氷でチョーク作ってきました」と真顔。
アフロディーテは鏡で自分の花冠を直している。
アルデバランが再び腕組みして、
「アッシュ師範、次はどんな授業なんだ?」
「社会――“現代ギリシャの経済危機と聖域予算”だ!」
「それって拳で解決できるのか?」
「できるか!!」
こうして、聖域は次第に「悲鳴」と「爆笑」と「ツッコミ」が響き渡る奇妙な学舎と化していく。
廊下には「九九は一に始まり、宇宙に終わる」「正義とは兄さんである」と書かれた謎の標語。
職員室ではアッシュ(俺)が新たなカリキュラム作成のために頭を抱え、サガが「アッシュ、頼むから爆発しない実験にしてくれ」と土下座。
小宇宙(コスモ)はどこまでも高まり、学力はどこまでも不安定なまま。
これが聖域、これがアッシュ塾。混沌の中にも未来への希望は――ある、かもしれない。
つづく?
――その頃、はるか東方の島国・日本。
聖域の混沌をよそに、射手座、サジタリアスのアイオロスは、なんとグラード財団の手引きで日本の中学校に転校することに!
初登校の日、金髪碧眼の超絶イケメンが現れるやいなや――
「キャーッ!誰!?」「すごい……王子様みたい!」
「……え、なんかマンガの世界から来たの?」
「えっ、ギリシャから!?すごーい!」
教室中、黄色い声と好奇の視線の嵐!
その爽やかな微笑みに、学年中の女子が一瞬で陥落。
(※なお男子からは「なんだアイツ……」という嫉妬の視線)
アイオロス本人は、「えっと、日本語はまだ勉強中なんだが……」と、やや戸惑い気味。
しかも、お昼ご飯におにぎりを差し出されて「これが噂の“ニッポンの米”か!」と感激し、クラスの笑いをかっさらう始末。
――聖域では教皇が書類と爆発に追われ、アッシュ師範が脳筋エリートたちの教育に頭を抱え、
その一方で、伝説の英雄アイオロスは日本の学園生活で新たな伝説を築いていた――
そんな“日常”こそ、平和の証なのかもしれません。
また聖域で会おう、アイオロス!
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