聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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射手座の勇者、アイオロス――
ギリシャの神話を背負いし若き英雄が、令和の荒波に挑む!

アロハシャツに身を包み、謎の「自販機」と激突!
満員電車の密林で修行の真髄を見出す――!?

だが、その真の試練は、女子高生たちとの“異文化交流”!
イケメン伝説、今ここに爆誕!

燃えよ、アイオロス!令和の聖域を翔けるその拳で、
新たな伝説の幕を切って落とせ!!

次回、
「アロハシャツの英雄、文明の波に乗る!」
燃え上れ!わが小宇宙よ!


アロハシャツの英雄――アイオロス、令和を翔ける

(アイオロス視点)

 

 

日本に来て、数週間が過ぎた。

 グラード財団――城戸光政殿の広大な屋敷で、俺は“特別な客人”として、まるで王侯のようにもてなされている。

 

 ……が、正直に言おう。

 俺には、この厚遇がつらい。

 

 ただでさえ祖国を追われ、女神アテナ様を託されている身。

 それなのに毎日毎日毎日毎日、美味い飯、柔らかな寝床、無駄に豪華なシャンデリア……

 (アイオロス、何もせずに贅沢を貪るだけの男になるのか?)

 

 

 

 ――否! 俺は射手座のアイオロス、誇り高き聖闘士だ!

 

 

 

 そうと決まれば即行動だ。

 ある朝、食堂でパンをもぐもぐしている執事さん達に、俺は高らかに宣言した。

 

 「どうか私にも、何かお手伝いをさせてください!“無為徒食”は聖闘士の恥です!」

 

 ん?みんな目が点だ。

 まあいい、まずは庭師の親方に直談判だ!

 

 

 

――庭師編――

 

 庭園の松。日本人にとって誇りの象徴だと聞く。

 「ここは俺の小宇宙(コスモ)で、一気に最高の姿に……」

 

 親方に見守られつつ、俺は両手を掲げた。

 

 「いざ――射手座流“神速盆栽剪定術”!」

 

 小宇宙を指先に集中し、パチン!パチン!と切っていく。

 するとあら不思議、松の枝葉は見る間に消え、たった数秒で“完璧な球体”……いや、球体を通り越して“つるつるの丸太”に。

 

 「できた……!」

 

 親方の顔が真っ白になった。

 

 「アイオロス様……あの……お気持ちだけで十分でございます……!」

 

 “お庭出禁”が確定した瞬間であった。

 

 

 

――厨房編――

 

 「ならば食事の手伝いだ!」

 

 料理長に直訴し、「まずはリンゴの皮むきから」と言われる。

 フッ……余裕だ。

 “神速の拳”を使えば、どんな難題も一瞬だ。

 

 「いきます――光速“スパイラル・リンゴカッター”!」

 

 ズバッ!

 

 ――あれ?

 

 気付くと、手元のリンゴは「跡形もなく消滅」していた。

 分子レベル、いや原子レベルにまで分解され、調理台の上にはわずかな香りだけ。

 

 料理長が絶句している。

 

 「……すみません、食材が消えますので……どうぞ表へ……」

 

 “厨房出禁”が確定した瞬間であった。

 

 

 

――アテナ様お世話編――

 

 「こうなればアテナ様(沙織様)のお世話を!」

 

 小さなアテナ様の寝室へ。

 ベッドの脇で俺が正座して待機していると、ベビーシッターの女性が困惑顔で入ってきた。

 

 「アイオロス様、もしよろしければオムツ替えを……」

 

 「心得ました!」

 

 (“女神の加護が宿る御体”だ、絶対に傷つけてはならん――)

 

 その真剣な顔と鋼の筋肉。

 俺が赤子の沙織様を抱き上げると、

 「……ふぇえええええええええん!!」

 大号泣である。

 

 焦った俺、「高い高い」であやそうとした――が、

 “聖闘士の腕力”をうっかり発動し、沙織様の頭が天井スレスレまで!

 

 慌てて降ろすと、ベビーシッターに本気で叱られた。

 

 「赤ちゃんを必殺技みたいに扱わないでください!」

 

 “女神お世話出禁”も確定である。

 

 

 

――完全敗北――

 

 完膚なきまでの大敗北である。

 

 庭もダメ、台所もダメ、赤子のあやしもダメ。

 俺は豪華な座敷の隅で正座し、「聖闘士は地上の役に立たぬのか……」と絶望していた。

 

 

 

 そこへ、グラード財団総帥――城戸光政殿が現れた。

 

 「アイオロス殿、ずいぶん落ち込んでいるようだな」

 

 「……何一つ、お役に立てていません。私にできることは……」

 

 光政殿は、ふっと微笑む。

 

 「気晴らしに日本の文化でも学んでくるといい。そうだ――これを持っていきなさい」

 

 そう言って、厚い封筒(中身は大量の現金)と、

 なぜか“派手なアロハシャツとサングラス”を差し出した。

 

 「この服で行けば、誰もアイオロス殿だとは思うまい」

 

 ……ああ、確かにこの国は奥が深い。

 

 

 

 ――俺の“日本偵察任務”が始まった。

 

 

 

 アロハシャツ、ショートパンツ、サングラス姿。

 鏡に映った自分が、どう見ても“聖闘士”というより“南国リゾートのお兄さん”だ。

 

 だが任務は任務、気合を入れて東京の街へと繰り出す。

 

 

 

 繰り出してから、まだわずかしか経っていないのに、俺の小宇宙(コスモ)は毎日が「未知との遭遇」で大荒れだった。

 見渡す限り、どこもかしこも信じられないほどの文明。摩天楼、列車、光る看板、人々の波――聖域やギリシャの片田舎とは何もかもが違う。

 「日本は現代文明の最前線」――城戸光政殿のその言葉が、今では実感を伴って胸に刺さる。

 

 

 

 

――自動販売機との遭遇――

 

 その時、道端に見慣れぬ金属の箱が並んでいるのを発見した。

 赤や青や黄色のパネル、無数のボタン――そしてガラス越しに並ぶ色とりどりの缶やペットボトル。

 

 「これは……何かの魔道具か?」

 

 近づくと、どうやら“金属の円盤”や“紙幣”を差し込むことで、中身がもらえるらしい。

 「まるで錬金術……!」

 試しに光政殿からもらった紙幣を挿入してみる。何やら機械が唸る音。

 恐る恐るボタンを押すと――“ガコン!”という音と共に、冷たい缶が転がり出てきた。

 

 「こ、これが日本の技術力……!」

 

 もう一度。今度は別のボタン。

 また違う飲み物が出てくる。

 面白くなってきて、お茶、ジュース、コーヒー、スポーツドリンク、謎の“コーンポタージュ”まで、次々と購入してしまう。

 

 気付けば両手に10本以上の飲み物を抱え、満面の笑みを浮かべていた。

 (見知らぬ通行人に「うわ、外国人すごい買ってる」と小声で言われた気がするが、俺には関係ない)

 

 

 

――満員電車という修行――

 

 次は、路地の先で人々が一斉に「鉄の箱」へ吸い込まれていく様子を発見した。

 城戸家の使用人から聞いていた“電車”だ。

 だが、その光景は予想を超えていた。

 

 車両の中、身動きできぬほど人が押し合いへし合い、ぎゅうぎゅう詰めになっている。

 「これは……何かの集団苦行では?」

 

 聖域での修行も厳しかったが、これほど密度の高い修行は見たことがない。

 “日本人、恐るべし”――俺も負けじと列に並び、電車に乗り込んだ。

 

 いきなり押し込まれて壁に張り付く。だが、ここは聖闘士の意地。

 「不動心――心を無にし、揺れにも怯まぬ」

 

 吊り革には手をかけない。

 仁王立ちのまま、ひたすら揺れに耐える。

 (もしかして、これが“日本式の新たな修行法”なのでは……?)

 

 揺れる車内で足腰を鍛え、姿勢を崩さず堂々と立つ俺。

 ちらちらと視線を感じる。

 (……どうやら周囲の乗客から、謎の尊敬のまなざしを浴びているようだ)

 

 「やっぱり、日本の修行者は礼儀を重んじるのだな……」

 

 

 

――逆ナンという名の尋問――

 

 電車を降り、商店街の公園でひと休み。

 先ほど自販機で買った“フランクフルト”を頬張っていると、

 突然、数人の女の子がこちらへやってきた。

 

 「ボク?超イケメン!どこから来たの?」

 

 ギリシャ人の彫刻のような顔立ちと、場違いなアロハシャツ。

 ……あきらかに“珍獣”扱いだ。

 

 だが俺は真剣だ。

 「敵か!?尋問か!?」と一瞬身構えそうになったが、

 (いや待て、これは“日本流の友好表現”かもしれん)

 

 「ええと……ギリシャ出身です。今は日本で“偵察任務”を――」

 

 「偵察?なにそれ、超ウケる!ねえ、カラオケ行こうよ!」

 

 (カラオケ……これも何かの儀式だろうか)

 

 

 

 ――少女たちに囲まれ、アイオロス14歳、まさかの“モテ期”到来である。

 

 

 

 

 

 日本という国には、日々、驚かされてばかりだ。

 だが、まさか“女子高生3人に密室へ連れ込まれる”という事態が、この十四年の生涯で訪れるとは思ってもいなかった。

 

 

 

 「アイオロスくん、こっちこっち!」「すごい、めっちゃ外人モデル!」「カラオケ初めてなんでしょ?教えてあげる!」

 女子高生たちの勢いは、嵐のようだ。

 導かれるまま、俺は薄暗い“カラオケボックス”の扉をくぐる。

 

 

 

 この小さな部屋――まるで異次元の異空間。

 壁にはポスター、テーブルにはリモコン、そして……何より、

 「これは……何だ?」

 手渡された銀色の「マイク」。

 形状、重み、材質――完全に「新型の武器」か、あるいは呪具の類。

 

 

 

 「アイオロスくん、まずは私たちから!」

 女子高生たちがマイクを手に、次々と歌い始める。

 流れるは当時のJ-POP、ヒットソングの数々。

 「こんな呪文めいた詠唱で、何を召喚するつもりなのか……」

 

 

 

 俺は壁際で目を細め、真剣な顔で“歌”を分析する。

 

 (リズムに合わせて体を揺らす――これは、自己小宇宙の活性化か?

 歌詞には「君が好き」「せつなさ」「君に会いたい」――

 これは愛の告白だろうか?何やら聖域の儀式に通じる部分も……)

 

 だが、女子高生たちはキャッキャと笑い、まったく緊張感がない。

 (そうか、これは敵対行為ではないのだな)

 

 

 

 「アイオロスくんも、歌ってみて!」

 

 

 

 俺の番が回ってきた。

 

 何を歌えばいいのかわからない……

 いや、待て。かつてアッシュに「“異国で生きるには歌が武器になるぞ”」と教わり、何曲か暗記させられたはずだ。

 

 “アッシュ師範直伝の名曲”――洋楽の有名なバラード。

 そっとマイクを握りしめ、鼓動を整える。

 

 

 

 「Let it be, let it be…」

 

 

 

 歌い始めると、女子高生たちの顔が一瞬ぽかんと固まった。

 だがすぐに「うますぎる!」「ちょ、アイオロス、ガチ歌手じゃん!」

 全員が爆笑――いや、拍手と混じった笑いだ。

 

 (なぜ笑う? 俺は真剣だぞ……だが、楽しんでいるのならいいか)

 

 

 

 続いて、アニメの主題歌らしきものを女子高生たちが選んでくれた。

 「これ絶対似合うから!」「“正義の力で悪を討て”だって!」

 リモコンのボタンを押され、流れ出すイントロ。

 

 

 

 “守るべきもののため、正義の拳を高く掲げ――”

 

 このフレーズに、俺の魂が反応した。

 

 

 

 (これは……聖闘士の誇りだ!)

 

 小宇宙(コスモ)が燃え上がる。

 拳を突き上げ、全身全霊で熱唱する俺――

 「君のために戦う!命燃やし続ける――!」

 

 ビブラートが小宇宙に共鳴し、部屋の空気を震わせる。

 あまりに熱が入りすぎて、手元の「デンモク」と呼ばれるリモコンを握り締めてしまい――

 「バキッ」

 

 静かに、リモコンの液晶が崩壊した。

 

 

 

 女子高生たちは大爆笑。

 「すごい!リモコン壊した外国人初めて見た!」「伝説作ったよ、マジで!」

 

 

 

 ――すっかり意気投合してしまった。

 

 

 

 「じゃあ、せっかくだから次はショッピングしようよ!」

 「アイオロスくん、絶対原宿似合うって!」

 

 

 

 女子高生たちの友達が合流し、なぜか一行は“ハーレム”状態。

 店に連れ込まれるたび、「これ着てみて!」「その筋肉、超映える!」

 シャツ、ジーンズ、キャップ、そしてサングラス――次々と流行ファッションを試着させられる。

 

 

 

 「おお、これが……日本の現代の聖衣(クロス)……!」

 

 大きな鏡の前に並び、俺は自分の姿をまじまじと見つめる。

 アロハシャツの観光客スタイルから、すっかりイマドキの“ストリート系男子”に変身している。

 (肩幅の広さは隠せないが、女子高生たち曰く「そのアンバランスさが逆に最高」らしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れ時、グラード財団の屋敷。

 その正門に、まるで戦場から帰還した英雄のような男が現れた。

 

 ストリート系の最新ファッションに身を包み、サングラスをキラリと光らせ――

 両手には山ほどのお菓子、そして巨大なぬいぐるみ(しかもクレーンゲームで物理的にガラスを貫通させてゲット!)。

 その正体は、他でもない、射手座のアイオロスその人であった。

 

 

 

 「た、ただいま戻った!」

 

 

 

 出迎えたのは、総帥・城戸光政と執事の辰巳。

 

 光政は一瞬、言葉を失う。

 

 「……1日で随分と日本の文化に染まられたのですな…?」

 

 

 

 辰巳は目を輝かせて叫ぶ。

 

 「あ、アイオロス様が……イカしておられる……!」

 

 

 

 アイオロスは満面の笑みで、お菓子の袋やらぬいぐるみやらを周囲のスタッフたちに配りまくる。

 「みんなへのお土産だ!日本のクレーンゲームの勝利品、心して受け取ってくれ!」

 

 

 

 続いて、ポケットから誇らしげに“プリント倶楽部(プリクラ)”を取り出す。

 そこには女子高生たちに囲まれ、なぜかキメ顔でピースするアイオロスの姿。

 

 

 

 「日本の文化、しかと学んできた!明日からは、この新しい聖衣(クロス)で、アテナ様をお守りする!」

 

 

 

 ――その堂々たる決意表明に、光政も辰巳も言葉を失うほかなかった。

 

 

 

 そんな折、アイオロスのスマートフォンがブルブルと震え出す。

 画面には、女子高生たちから次々に送られてくる“LINE”――

 

 「明日また会おうね!」

 「渋谷でショッピングしよ!」

 「焼肉も行こう!」

 「次はプリクラ3連続で!」

 

 

 

 アイオロスは大真面目な顔でポチポチ返信を打つ。

 

 「もちろんだ。食事も買い物も修行の一部と心得ている。必ず参加する」

 

 

 

 隣で辰巳が「アイオロス様、あれはデートのお誘いで……」と小声で耳打ちしようとするが、アイオロスは真剣な顔で「異文化交流は、聖闘士のたしなみだ!」とまったく意に介さない。

 

 

 

 そして、任務を思い出したアイオロスは、沙織(赤子アテナ)のベビーベッドへ。

 「沙織様、今日からはこの新しい聖衣で――」

 近づいた瞬間、

 

 「ふぇえええええええええええええん!!!」

 

 盛大な大泣き。

 ベビーシッターが廊下からすっ飛んできて絶叫。

 

 「だから!近寄らないでください!」

 

 

 

 英雄の“異文化適応力”も、女神のご機嫌には敵わぬようだ。

 

 

 

 ――こうして、射手座の英雄・アイオロスの「日本カルチャー修行」は、

 まだまだ前途多難な船出となるのであった。




光政「アイオロス殿、日本の文化は気に入りましたかな?」

アイオロス「ああ、光政殿。未知の文明の数々、実に刺激的で心躍る日々です。」

光政「それならば、一つ提案がある。折角の機会、こちらの学校に通ってみてはどうだろうか?」

アイオロス「学校……ですか?学びは聖闘士の剣と同じく鍛錬の一環。ぜひとも挑戦いたしたい。」

光政「そうこなくては。若き聖闘士よ、知識もまた強さの糧となる。さらなる成長を期待しておるぞ。」

アイオロス「承知しました。沙織様を守るため、そして己が未来のため、全力を尽くします。」

聖域はこの後どんな世界線に??

  • 本編でこそ水洗トイレが輝く!
  • 黄金聖闘士達のオリジナル短編が見たい。
  • セインティア翔ってあるんだぜ!
  • 他の作品とコラボしたいよね!
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