聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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――聖域、最深部。積み上がるは、終わりなき書類の山――。

秘書を失い、絶望に沈むアッシュ参謀長。
しかし、その時、聖域に一陣の風が吹き荒れる。

「秘書は私です――エレナ、参上!」

百を超える改革案を携え、完璧無比の白銀秘書が現れた。
彼女の鋭い眼差しが、混迷の聖域を切り裂く。

書類は整理され、決裁は加速し、教皇サガの化学呪文も一瞬でクリア。
しかし、その完璧さは、果たして味方か敵か――?

アッシュの悲鳴はまだ止まらない。
だが、秘書エレナの伝説は、今、始まったばかりだ。

次回、
「書類聖戦の聖闘士たち 〜秘書エレナ降臨〜 アッシュ編」


書類聖戦の聖闘士たち 〜秘書エレナ降臨〜

(アッシュ視点)

 

 

 「だめだ……も、もう限界だ……!」

 

 聖域本部の執務室で、俺は絶望のうめき声をあげていた。

 机の上に山積みの書類。経理、稟議、物品調達、食堂の米びつの残量、教皇のスケジュール、行政改革案……

 次から次へと押し寄せるペーパーワーク、ペーパーワーク、ペーパーワーク!!

 

 

 

 (サガ――教皇陛下は今日も、隣室で化学の勉強中……俺に書類を全部丸投げしやがって……)

 

 「誰か……誰か! “超有能な秘書”が……欲しい……!」

 

 

 

 思わず天を仰いで絶叫する俺。

 このままでは、真面目に「ペーパーワークの山に埋もれて死ぬ」という聖闘士史上前例のない殉職を遂げかねない。

 

 

 

 そこで、俺は決断した。

 

 「――秘書、公募だ!!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 【聖域秘書採用・特別面接会場】

 

 

 

 ……が、集まってきた応募者は、一癖も二癖もある「聖闘士」ばかりだった。

 

 

 

 まず最初に入ってきたのは――

 

 

 

 ミロ(蠍座・黄金聖闘士)

 

 

 

 「俺の“光速の指捌き”で、書類仕事も秒速処理だぜ!」

 

 勢いよくデスクに座るや否や、稟議書の山を前に手を高速で動かし始めた。

 

 「スカーレッドニードルッ!!」

 

 ――ズババババババ!!

 

 ……書類の束が一瞬で“穴だらけ”になった。

 

 

 

 「ど、どうだ! ほら、一秒でハンコつけたぜ!?」

 

 俺は、白目をむいた。

 

 「……全部、書類の“証拠品”として無効になったぞ、バカヤロウ!!」

 

 

 

 続いてやってきたのは――

 

 

 

 アイオリア(獅子座・黄金聖闘士)

 

 

 

 「俺、兄さん譲りの正義感で、サポートするよ! 大丈夫、九九も言える!」

 

 意気込みは素晴らしいが、机の隅で猫の絵ばかり描き始める。

 

 「アイオリア、ありがとう。お帰りはあちらです……」

 

 

 

 お次は――

 

 

 

 アフロディーテ(魚座・黄金聖闘士)

 

 

 

 「秘書というのは、美しさと気品が命。“薔薇”で書類を仕分けて差し上げます」

 

 机の上に花びらを散らしながら、稟議書を“芳香剤”代わりに……。

 「香りはいいが、字が読めん!!」

 

 

 

 そして――

 

 

 

 デスマスク(蟹座・黄金聖闘士)

 

 

 

 「聖域の事務作業なら、積尸気で全部片付けてやらァ」

 

 気合いよく椅子に座るや、目がギラリ。

 

 「積尸気冥界波――稟議書、成仏!」

 

 書類の山が冥界に“送還”されていくのを見て、俺は盛大に頭を抱えた。

 

 「ちょっと待て、それ全部“この世”で必要なんだよォ!!」

 

 

 

 他にも、カミュ(氷結で書類凍結)、アルデバラン(力任せに書類を粉砕)、シャカ(瞑想しながら1枚も読まない)、シュラ(剣で裁断)、ムウ(紙をテレキネシスで浮かせてぐるぐる回す)……

 と、秘書向きどころか“事務妨害”しかいない。

 

 

 

 

 

 ――もうダメだ。

 

 

 

 俺は机に突っ伏した。

 

 

 

 (サガ、助けてくれ……いや、こっちも忙しいんだった……)

 

 

 

 もはや万策尽きたその時だった。

 

 

 

 

 

 「失礼します」

 

 

 

 冷ややかで、どこか澄んだ声。

 部屋のドアが静かに開き、一人の少女が入ってきた。

 

 

 

 見た目は15歳くらい――俺と同い年。

 スラリと背が高く、黒髪をシニヨンにまとめ、顔立ちは……一言で言えば“美人”で、そして“こわい”。

 

 

 

 その鋭い眼差しに、俺は一瞬で背筋を正した。

 

 

 

 「アッシュ師範お久しぶりです。元・蟹座黄金聖闘士候補エレナです。どうぞ、よろしく」

 

 

 

 デスマスクと最終選考まで争った女の子、まさか面接に来るとは。

 

 

 

 「え、えっと……志望動機を、どうぞ」

 

 

 

 エレナは何の迷いもなく、A4サイズの分厚いファイルを取り出す。

 

 「本日は、『聖域行政業務効率化のための100の改革案』をパワーポイント形式でご用意しました。

 なお全スライドの配布資料と、ExcelによるKPI管理フレームもございます」

 

 

 

 パワポを開いた瞬間、完璧なグラフ、時系列チャート、合理化プロセス図がズラリ。

 資料だけで1000ページ超え。

 

 

 「聖域の現在のボトルネックは、申請プロセスの多重化と情報共有不足です。

 このフローで運用すれば、師範の決裁業務は月平均40%効率化できます。

 また教皇室の決裁承認システムを電子化すれば、教皇陛下が『ペーパーワーク地獄』に沈むことも……」

 

 

 

 (す、すごい……完璧だ!完璧すぎる!)

 

 

 

 「なお、職員の休憩制度や福利厚生にも改善の余地が……」

 

 

 

 (優秀すぎて、逆に怖い……)

 

 

 

 俺の背筋は冷や汗で濡れていた。

 

 

 

 「コーヒーはブラックですか? ミルクと砂糖は?」

 

 

 

 「ぶ、ブラックで……」

 

 

 

 「かしこまりました。なお、コーヒーの入れ方は“必ず温度90度以上、ステンレスフィルターで抽出”が最適です。誤ると……冥界で反省していただきます」

 

 

 

 (ちょ、冥界!?)

 

 

 

 この瞬間、俺の脳内には様々なフラッシュが走った。

 

 「コーヒーの入れ方を間違えたら、積尸気で魂抜かれる……!?」

 

 

 

 だが、彼女のプレゼン力と完璧な“秘書スキル”に、

 俺は震える手で採用通知を差し出す。

 

 

 

 「き、君を……秘書に……採用だ!」

 

 

 

 「ありがとうございます。では、まず本日分の書類をお預かりします」

 

 

 

 エレナは見事な手際で、机上の書類の山を整理し始めた。

 

 瞬く間に分類、重要度で仕分け、あっという間に4割減。

 

 

 

 「さあ、教皇室へサインをもらいに行きましょう。

 なお、教皇陛下の機嫌が悪い時は“生花”を持参すると効果的です」

 

 

 

 (な、なんなんだこの人材は……!)

 

 

 

 内心ガクブルのまま、俺はエレナについていく。

 

 

 

 (でも美人だな……こういう人が奥さんだったら……)

 

 (いや、でも朝ご飯を焦がしただけで積尸気で成仏コース!?)

 

 

 

 サガの部屋前に到着。

 

 

 

 「失礼します、教皇陛下」

 

 

 

 中ではサガが書類に埋もれながら呪文(化学式)と格闘していたが、

 エレナが資料を差し出すと、一瞬で正気に戻った。

 

 

 「……なに、この安心感。アッシュ、やっと“真の仲間”を手に入れたな」

 「いや、むしろ僕は今、命の危機を感じてる気がするんだけど……」

 

 「コーヒーはブラックでよろしいですね?猊下」

 

 

 「はい、ブラックでお願いします……(背筋が寒い)」

 

 

 こうして、聖域史上初――

 “積尸気流プレゼン美少女秘書”エレナの伝説が始まった。

 

 

 翌朝、机には美しく整理された書類と、

 淹れたてのコーヒーと、付箋付きの行政改革案が並んでいた。

 

 

 (俺、コーヒー一口飲むたびに魂抜けそう……でも、最高の秘書だ!)

 

 

 ありがとう、エレナ。これで聖域は、いや、俺の心も――効率化されていくのだ。

 

 

 (なお、恋愛対象としてはやっぱり怖いので、しばらく距離を取ります)

 

 

 

 朝、机に座ると――

 「ん……昨日まで山積みだった稟議書、どこ行った?」

 そこには美しく仕分けされたファイルと、承認印が押された完璧な帳票の束が。

 未処理の仕事は、ゼロ。

 

 「すごい……あの量を一晩で? まさか、徹夜してくれたのか……?」

 (怖いけど、良い人だ……!)

 

 ――だが、その裏には戦慄の真実があった。

 

 夜半、聖域の文官たちが夢の中で「お前はもう半分冥界だ」みたいな状態にされ、エレナに囁かれる。

 

 「……承認、なさいますよね?」

 青白い顔で目覚めた文官たちは、翌朝には震える手で承認印を押し、

 「アッシュ様のためなら命も惜しくない」と噂を交わしていたらしい。

 俺はその事実を一切知らない。

 

 「彼女、いい人だな……でもやっぱり、ちょっと怖いな……」

 

 

 

 次に驚異のスケジュール管理能力。

 

 

 俺がある日、疲労困憊で「たまには休みが欲しいな……」と独りごちたら、

 翌日から、アポが一件も入っていない。

 

 「……どういうことだ?俺、何かやらかしたか?」

 まさかの“完全フリー”状態。

 誰も連絡を寄越さず、誰も会いに来ない。

 

 (俺……嫌われてるのかな……?)

 しょんぼりしつつ廊下を歩くと、物陰から「あいつの休息を妨げるな……魂が危うい……」という声が聞こえてきて、さらに落ち込む。

 

 ――だがその裏では、エレナが

 

 「アッシュ様のご休息を妨げる者は、魂の安寧を保証いたしかねます」

 と、冷徹に宣告して回っていたことを俺は知らない。

 

 

 そして、事件はやがて“食事会”に発展した。

 

 

 (いつも助けてもらってるし、たまには何かお礼をしないと……)

 

 俺は秘書としての慰労を名目に、エレナを食事に誘うことにした。

 

 

 「エレナ、もしよければ、昼食を一緒にどうだろう?もちろん“秘書として”だけど!」

 

 

 「かしこまりました、アッシュ様。……お待ちしております」

 

 

 食堂で待っていると、普段は事務的なスーツ姿のエレナが、今日は美しいワンピースに身を包み、

 いつもの仮面のような無表情を、ほんの少し緩めて現れた。

 

 

 (……やばい!美人すぎる!)

 

 

 俺の心臓はバクバクだ。

 

 

 (でも何を話せばいい?仕事以外の話題なんて思いつかない!)

 

 

 「え、えーと、今年度の聖域年間予算なんだけど、配分をもっと柔軟にしていきたいと思ってて……」

 気がつけば、年間予算計画の話題で20分。

 

 

 「このグラフを見てくれ。ここが“削減余地”で、こっちが“人員配置最適化”の見込みだ。いやー、積尸気を行政改革に応用できたら、どんなに楽か……」

 

 

 (やばい、話題が全部“仕事”だ!しかも俺、ずっと予算の話ばっかしてる!!)

 

 

 「……と、思うんだけど、どう思う?」

 

 

 「最高です。アッシュ様の“理想”を、必ず形にしてみせます」

 

 

 微笑みすら見せず、氷の視線で答えるエレナ。

 

 

 

 (怖い!でも優秀!そして美人!どうしたらいいんだこの状況!)

 

 

 俺の脳内は、仕事:9割、パニック:1割。

 (もしかして俺、ただの上司と秘書の“ランチミーティング”やってるだけじゃ……?)

 

 会話は終始「今年度の決算」「行政手続き電子化」「小宇宙を活用した職場改善」などガチ事務トークで終わった。

 

 ――その後。

 

 ある日、教皇サガの部屋で報告書をまとめていたとき、部屋の片隅の祭壇星座(アルター)の聖衣が、突如眩い光を放つのを目撃した。

 

 (え、えっ!?)

 

 その光は、エレナに吸い寄せられるように包み込み――

 彼女は眩しい銀色の聖衣(クロス)を纏って立っていた。

 

 「エレナ、お前、まさか……!」

 

 「はい。教皇陛下を補佐する者を守護する、祭壇星座の白銀聖闘士として認められたようです」

 

 サガ「いや、こんな逸材がアッシュの秘書でいいのか……!」

 

 俺は震えた。

 

 (すごい……! とうとう聖域の“人材効率”が神レベルに達した……!!)

 

  ますます逆らえない。

 いや、仕事面では信頼できるし、もはや俺はこの人に一生頭が上がらない気がする。

 

 

 (それにしても、俺とエレナって、なんか変な関係になったりしないよな……? いや、ないよな。だってあくまで“秘書と上司”だし……)

 

 

 その後も、エレナの神がかった秘書能力は聖域全体を包み込み、

 俺の仕事は激減し、コーヒーも最高、文官たちの顔色は毎日青白い。

 

 

 (でも……やっぱりちょっとだけ、怖いなあ……)

 

  

 「秘書って、最高に頼れるけど、同時に人生で一番手強い敵かもしれない」と震え続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(エレナ視点)

 

 

 聖域の空は、今日も青い。

 この世界のどこかで、アッシュ様はきっと、書類の山に埋もれて苦しんでおられるのだろう。

 ああ、アッシュ様……。私が、必ず――必ずお救いします!

 

 私はエレナ。

 元・蟹座黄金聖闘士候補。現在は“ただの”事務特化型女子。

 でも、この魂の本当の所属先は――そう、アッシュ様、あなたのためだけにあります!

 

 幼いころから、聖域で「積尸気の申し子」などと噂され、友達は少なかった。

 けれど唯一、遠くから私を見守ってくださったのが、あの優しい瞳の少年――アッシュ様。

 

 

 きっかけは些細なことだった。

 候補生時代、道場で派手に転んだ私に、そっと手を差し伸べてくださったあの日――

 「大丈夫か?」

 あの一言、あの笑顔……それだけで、私は「一生この人に尽くそう」と誓ってしまったのです。

 

 以来、私の努力の全ては「アッシュ様に役立つため」。

 小宇宙も、事務も、積尸気だって、全ては彼に褒めていただくため。

 

 なのに……。

 肝心のアッシュ様は、今日も書類の海に溺れているという噂。

 

 ――ここで動かなければ、乙女の名がすたる!

 

 

 

 

 

 聖域本部・秘書採用面接日。

 

 

 私は入念に準備したスーツで、会場に向かう。

 書類フォルダを両脇に抱え、手汗で資料が湿りそうなほどド緊張。

 

 (落ち着けエレナ……これまで何百回も積尸気で敵も公文書も眠らせてきたではないか……!)

 

 面接会場の前、既に数人の応募者がいた。

 ……というか、全員顔見知りの聖闘士。

 ミロ様が「スカーレットニードルで判子を押す」と叫んでおり、

 アイオリア様は「九九言えるよ!」と元気アピール。

 デスマスク様は「積尸気で未処理書類を冥界送りにしてやる」と息巻いている。

 

 (全員、不採用決定ですね)

 

 自分の番が来ると、ドアノブに手が震えた。

 この扉の向こうに、アッシュ様がいる――

 (……深呼吸……心拍数130……でも全然冷静なフリできます!)

 

 

 ドアを開ける。

 そこには、理知的な眼鏡と、やや疲れた顔――

 アッシュ様!!

 

 「元・蟹座黄金聖闘士候補エレナです。どうぞ、よろしく」

 

 (※本当は“アッシュ様大好き号泣少女”ですが、表情筋を一ミリも動かさず、徹底的にクールビューティーで押します!)

 

 アッシュ様は少し戸惑っていらっしゃる。

 (可愛い……! いや、違う、今日は“業務能力”で勝負!)

 

 「本日は、聖域行政業務効率化のための100の改革案をパワーポイント形式でご用意しました。全スライドと配布資料、ExcelでKPI管理フレームも……」

 

 

 

 (アッシュ様が真剣な目で資料を見てくださっている! この日のために毎日徹夜して準備してきて良かった……!)

 

 

 

 「コーヒーのご希望は?」

 

 「ブラックで……」

 

 「かしこまりました」

 (わかってます!温度90度、ステンレスフィルター、豆は朝摘みエチオピアでしょ!全部研究済みです!)

 

 

 アッシュ様の手が、少しだけ震えていた。

 (やはり、私の威圧感が効いているのでしょうか……でも、気付いてほしいのは“好き”という気持ち……!)

 

 

 

 (……いや、だめだ、顔がこわばりすぎてるかも……笑顔……笑顔……“怖い笑顔”になってないよね!?)

 

 

 「き、君を……秘書に……採用だ!」

 

 ――でたあああああ!!

 アッシュ様が!私を!見てくれてる!!

 「ありがとうございます」

 (内心はバンザイ三唱ですが、表面はクールビューティーで)

 

 

 翌日からの快進撃は、まさに“愛の積尸気モード”。

 

 

 アッシュ様のために、書類の山は全て分類&仕分け!

 担当文官の夢枕に立ち、「承認……なさいますよね?」と圧をかけて、

 冥界に半分送りかけながら説得!

 (だってアッシュ様の睡眠時間確保が最優先なので!)

 

 スケジュール調整も完璧!

 「アッシュ様、お休みになりたい」と思われた日には、聖域中の全アポ予定者に氷の視線と積尸気で牽制。

 「アッシュ様のご休息を妨げる者は、魂の安寧を保証いたしかねます」

 皆さん、どんどん青ざめてくれます。

 (怖がらせてごめんなさい。でも、アッシュ様の健康が第一なの!)

 

 

 ……なのに、アッシュ様ご本人は

 

 「もしかして俺、みんなに嫌われてるのかな……」と寂しそう。

 

 

 (ちがうよ!誰よりも愛されてますよ!私が愛してます!!)

 

 

 ある日、思い切って“感謝の食事会”に誘っていただいた。

 

 

 (これは……まさかデート!?デートですよね!?)

 

 

 

 普段はカッチリスーツの私も、最大限の“乙女力”で私服を選び抜き、

 メイクもばっちり、髪もふんわり……。

 (アッシュ様、私の美しさに気付いてくれますか……!?)

 

 

 席に着くなり、

 

 「え、えーと、今年度の聖域年間予算なんだけど……」

 

 

 (あっ、やっぱり予算の話題か~~!でもそれがアッシュ様の魅力なんだもん!!)

 

 

 

 「どう思う?」

 

 

 「最高です。アッシュ様の理想を、必ず形にしてみせます」

 (心の中では“最高に可愛い!”って叫んでるんですけど、どうしても真顔ですみません)

 

 

 

 ――そして、ついに訪れた奇跡。

 

 祭壇星座(アルター)の聖衣が私に降臨!

 「アッシュ様を補佐し守る」という祈りが認められて、白銀聖闘士となることができました!

 

 

 (やったあああああああ!!!!!)

 

 でも、アッシュ様は……

 

 「ますます逆らえない……」

 

 (ちがう、そうじゃない……!もっと“好き”って、ちゃんと伝えたいのに~~!)

 

 

 明日も私は、

 “冷徹事務能力”と“激重ラブ”の両立を目指して頑張ります!

 

 

 

 (アッシュ様、気付いて……!でも怖がらないで……!)

 

 

 




アッシュ「なあ、エレナ。お前、女性聖闘士だけど――仮面、かぶらなくていいのか?」

エレナ「はい。私は一度“蟹座黄金聖闘士”の座を諦めましたので……聖域の掟からは外れております。」

アッシュ「あ、そうか……。いや、それはよかった……のか?(複雑な気分)」

エレナ(無表情でじっと見つめ)
「……ですが、今回“白銀聖闘士”に選ばれたので、また掟が適用されるかもしれませんね。」

アッシュ「え、マジで?ってことは、“男に顔を見られたら殺す”ってやつ!?」

エレナ「はい。掟ですので。」(真顔)

アッシュ「お、俺……ついさっきまで普通にお前の顔見てたんだけど……。死ぬの!?死刑コース!?」

エレナ「……大丈夫です。好きな人なら、掟に従わなくてもいいと思っています。」

アッシュ「…………ん? え、今……?」

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