聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
その正体は――電子決裁の未読通知と、止まらぬSlackアラート!
玉座はゲーミングチェアへ進化し、聖衣はLANケーブルの海に沈む。
頼れるのは、参謀長アッシュの“メロンソーダ同期機能”と、無表情すぎる鬼秘書・エレナの積尸気スケジューリング。
書類の山が消えても、次に現れたのは“未読”と“腰痛”という新たなる敵――!
次回!
「サンクチュアリDX!教皇サガのIT地獄とメロンソーダ参謀」
――サンクチュアリの明日はどっちだ!?
小宇宙もメロンソーダも、ピコピコ通知も爆発だ!!
サンクチュアリDX!教皇サガのIT地獄とメロンソーダ参謀
聖域改革から、すでに二年の月日が流れていた。
かつて神話の時代のまま、古びた石畳と羊皮紙に満ちていたサンクチュアリは、今や驚異的な変貌を遂げていた。アッシュとサガが主導した近代化の波は、全土を呑み込み、聖域はもはや“理想郷”とも“テクノユートピア”とも呼ぶべき姿へと進化していたのである。
その道程は決して平坦ではなかった。
改革に反対した古参の文官たち――伝統を守り、変化を恐れた者たちは、アッシュの“物理的説得”、サガの“幻朧魔皇拳”による意識改革、そしてエレナの“積尸気”による早期退職勧告という、三段階の容赦ない改革ドライブに飲み込まれ、一人また一人と表舞台から姿を消した。
その結果、聖域は伝統と最先端が混在する、前代未聞のハイテク組織として、世界の中心で静かに息づき始めていた――。
(サガ視点)
私はサガ、聖域の教皇である。
神話の時代より続くこの聖域――サンクチュアリ――を治める者、最高権力者である。
……はずだった。
それが、今。
なぜ私は、巨大マルチモニターの前でブルーライトカット眼鏡をかけ、
“電子決裁未読件数:58”という赤い通知に小刻みに震えているのだろうか。
おまけに足元は無数のLANケーブル。コードを踏み抜くたび、どこからか「ピコン」と警告音が鳴る。
振り返れば――あれから2年。
聖域は、アッシュと私が主導した改革によって、かつての古代王国から“テクノユートピア”へと生まれ変わった。
紙とペンは消え去り、すべてはデータ化された。
教皇の間の玉座も――今や巨大なゲーミングチェアにアップグレードされている。
かつて黄金の甲冑に身を包み、星空の下で威厳を保っていた自分はどこへ行ったのか。
だが、こんなにも文明が発達したというのに――私は今日も管理画面とにらめっこだ。
「アッシュ……私は地上の支配者になったはずでは……?
なぜ部下の勤怠管理とサーバーメンテナンスに追われているのだ……?」
現代の聖域において、書類という敵は滅びた。
だが、それに代わる“新たな災厄”が現れた。
それは、未読メール・エラー通知・深夜に送られてくるシステムメンテのアラート、そして――
「教皇猊下、ビデオ会議の時間です」
エレナの無表情ボイス。
あの女、積尸気で魂を冥界送りにしなくても、Googleカレンダーで私の予定を一日24時間埋め尽くす。
冗談抜きで、一度“冥界会議”の招待通知が飛んできた。
(思わず「私はまだ死んでいない」と返信した)
ビデオ会議が始まる。
映し出されるのは、ギリシャ、イタリア、エジプトの分室――みんなオンライン背景に神殿の写真を使っているが、
バーチャル背景のせいで、半分は首が透けている。
「猊下、決裁書類のデータベース、もう一度ご確認を」
「新しいクラウドサービス、予算が……」
「今期の黄金聖闘士給与計算、端数は切り上げで……」
「Slackの通知が止まりません!」
私はもはや“神”ではなく、“IT中間管理職”である。
アッシュに「これからは業務効率だ!」と熱弁され、
「書類はスキャン!スプレッドシートでKPI管理!AIによる戦闘力予測!」
と言われるがままに改革を進めてきた結果――
「聖域メールBOX整理術」「最速エクセルピボット講座」「神話の時代に学ぶパワポデザイン」など、
教皇らしからぬサジェストが検索バーに並んでいる。
最近の悩みは眼精疲労だ。
夜な夜なブルーベリーサプリを摂取し、眼鏡を新調する日々。
黄金聖衣よりも、ブルーライトカットの方がよほど大事に思えてくるのは悲しい。
もう一つ、最大の敵がある――“腰痛”だ。
教皇の間の玉座もリモートワーク仕様に。だが、どれだけ椅子をアップグレードしても腰は痛い。
(アッシュに「次はスタンディングデスク導入です!」と宣言されているが、断固拒否したい)
業務の合間、私は唯一の癒やし――ネットサーフィンに手を伸ばす。
猫動画。
“現代日本の癒やし・弓道美少年特集”。
聖域レトロゲーム実況チャンネル――
時々、アッシュが作った「聖域社内SNS」に愚痴を書き込む。
「電子決裁、なぜ承認ボタンが3つもある?」
「通知音、もうやめてほしい」
「そもそも私は教皇なのだから、休みを申請する相手がいないはずでは?」
そんなとき、デスマスクが即座にリプライしてくる。
「上司(アッシュ)が怖いんでしょ?」
「今月の勤怠、提出期限切れてるぞ!」
アフロディーテは「バーチャル背景、バラにしてみてください」と言ってくる。
部下は全員リモートワークで自宅神殿からログイン。
「黄金聖闘士全員出勤!」と言っても、「ネットワーク障害で接続できません」と一斉既読スルーだ。
……それでも、私は教皇だ。
すべての混沌の責任を負う者。いまやタスク管理アプリにすべての“予定”を握られている。
昼休み――
「アッシュ、サーバーが落ちたのだが」
「大丈夫です、教皇猊下。リモートから再起動かけておきます」
「頼む……」
仕事終わり――
「エレナ、明日の会議、資料のフォルダが見つからん」
「“アッシュ様フォルダ”の中、三階層目にございます」
「多すぎる……」
そして深夜、すべての作業が終わった後――
玉座(ゲーミングチェア)にもたれて天を仰ぐ。
「これが、現代の聖域か……」
勤怠表に追われ、伝説の教皇が、OutlookとGoogleカレンダーの狭間で迷子になる。
ブルーライトカット眼鏡を外し、しみじみと溜息をつく。
「やはり、アナログの方が良かったのでは……?」
だが、その瞬間、アッシュから新たな通知。
「教皇、次回のIT改革会議、スケジュール調整をお願いいたします」
嗚呼、終わらない。
私の“ハイテク聖域”の憂鬱は、まだまだ続くのだ。
(アッシュ視点)
俺は杯座の白銀聖闘士、今や聖域改革の象徴――“聖域参謀長”である。
……なんて言えば聞こえは良いが、実態は聖域ITインフラの生きたメインフレームだ。
今日も執務室の中央で、例の聖衣――もはや“神話級パソコンラック”と化したそれが、
数十本のケーブルと光ファイバーに繋がれ、ビカビカ明滅している。
昔は“聖衣を身に纏い戦場に立つ勇者”だったはずだが、今や“LANポートの精霊”である。
「メロンソーダ補充完了、全システム正常稼働」
――そう。聖衣のエネルギー源は神聖な小宇宙……ではなく、なぜか“メロンソーダ”だ。
俺もこの緑の炭酸が大好きなので、机の上には業務用ペットボトルが十本単位で並んでいる。
「参謀長、中央サーバーに新しいパッチが届いております」
「よし、メロンソーダ注入してから適用だ」
「またですか……」
部下の雑兵君が呆れ顔で見てくるが、
「メロンソーダがなければ、俺は死ぬ」と主張したら全員黙った。
(まあ、実際高級肉よりこっちの方がやる気が出る)
たまに“聖衣を着て会議に出てくれ”と頼まれるが、
「重いしケーブルで動けない」と断る。今や完全に“サーバールームの置物”だ。
聖衣の肩パーツは冷却ファン、背中はUPS(無停電電源装置)、膝にはUSBハブ。
「杯座の聖衣、ガチで近未来家電」とデスマスクに囁かれるが、俺は誇りを持っている。
(だってメロンソーダのボトルホルダー、左右両方に付いてるんだぞ!?)
たまに業務の合間にメロンソーダを一気飲みして「ぷはぁ」とやると、
サーバーの稼働ランプも連動してピカピカ光る。部屋中が緑色に染まる。
「メロンソーダ同期機能」と命名したが、まだ誰にも理解されていない。
「アッシュ様、午後の会議の前に“冷蔵庫補充”のタスクが――」
エレナの厳しい声に、「あ、メロンソーダ在庫チェックね!」とすぐ立ち上がる。
会議資料のパワポも、データベースも、全部“メロンソーダ・グリーン”のテーマカラー。
黄金聖闘士から「目が痛い」とクレームが来るが、譲らない。
昔は聖衣=テレビ機能だけだった。
今はケーブルまみれ+炭酸まみれ=近未来のルーターだ。
新しい聖域を守るのは、小宇宙とテクノロジーと、何より“メロンソーダ愛”――
……今日もまた、俺と聖衣(メインフレーム)は緑色に輝きながら、聖域の未来を見守っている。
(エレナ視点)
私はエレナ。祭壇星座の聖闘士にして、教皇補佐官――表向きは聖域改革の最前線、有能秘書だが真の目的はただ一つ。
「アッシュ様の貞操を、この手で射止める!」
……まあ、日々の業務はあまりに忙しく、そんな色気も吹き飛ぶほどだ。
朝はアッシュ様の執務室から始まり、午後は教皇猊下のスケジュール管理、会議資料作成、部下の魂の管理までこなす日々。
つい最近まで反抗していた文官たちも、アッシュ様の物理的“説得”、サガ様の謎の精神攻撃(※幻朧魔皇拳とは知らされていない)、そして私の積尸気による“早期退職”の三連コンボで、皆すっかり従順だ。
「積尸気で退職勧告」――今や聖域で一番恐れられるフレーズである。
だが、どれだけ有能でも、私の内心は懊悩に満ちている。
アッシュ様のメロンソーダまみれの唇、メインフレームと化した聖衣を掃除する姿、ブルーライトに照らされる横顔……
(この指で、コップから直接メロンソーダを飲ませてあげたい!ついでにそのまま唇も……)
「補佐官、明日の会議資料――」
「はっ、はい!すぐご用意いたします!」
(くっ、つい妄想に浸ってしまった!)
最近はアッシュ様も、私のことを「有能だ」「エレナがいて助かる」と褒めてくださる。だが、それ以上踏み込もうとすると、必ず何かに邪魔されるのだ。
先日は二人きりの夜間作業。
「エレナ、今日はありがとう。疲れてない?」と優しく声をかけられた瞬間――
通信エラーでサーバーが落ち、緊急対応!
せっかく肩に手を置かれたのに、アッシュ様はサーバールームにダッシュ……私はケーブルを抱えて呆然。
またある日は、彼が不意に顔を近づけて「エレナ、君のこと、最近頼りにしてるんだ」と囁かれ、
「きゃ……」と心臓が跳ね上がった瞬間――
会議室のドアが開いて、デスマスクが「師範、イキのいい新人が入ったんだ。ちょっと見てくれ」と乱入。
(お前の魂も退職させてやろうかと思った)
私はもっと……もっとアッシュ様に迫りたいのに。
私こそ今や全聖域のスケジュールを牛耳る女、どんな会議も寝食も一緒に設定できるはずなのに、なぜか“ベッドイン”だけは叶わない。
これでは“秘書”ではなく“生殺し担当官”だ。
だが、諦めない!
明日こそ、二人きりの夜勤を仕込んで、メロンソーダを二本冷やし、薄暗いサーバールームで……
(ああ、背後からそっと抱きしめて、データ転送と一緒に愛も送信――!)
……などと妄想していたら、またサガ様からビデオ会議の招待通知。
「教皇補佐官エレナ、至急教皇の間まで」
(また邪魔が入った!くっ、いつになったらアッシュ様の心とカラダを征服できるの……!?)
嗚呼、私の聖域・恋愛改革は、まだ始まったばかり――
(執務室の片隅。会議後のブレイクタイム――エレナとシャイナ)
エレナ(17)「……はぁ。今日もアッシュ様に全然距離を詰められませんでした……。」
シャイナ(8)「……ふーん。悩んでるわりに、進展ゼロだね、お姉さん。」
エレナ「ゼロ……は、痛いです。だって、私、こういうの初めてで……。」
シャイナ「その割に、いつも睨んでばっかり。たまには素直に笑ってみたら?大人の余裕ってやつ。」
エレナ(真顔)「“大人の余裕”ですか……?」
シャイナ(腕組みして得意顔)「そーだよ。“恋愛”ってのは、駆け引きとギャップ。あんまりガチガチだと相手も緊張するでしょ?」
エレナ「ギャップ……。私のどこに……?」
シャイナ「例えばさ、いつもクールなのに、たまにドジっ子ムーブかましたりとか!“アッシュ様の前でコーヒーこぼしちゃいました!”みたいな。」
エレナ(絶望)「魂ごと成仏したくなります……」
シャイナ(ため息)「はぁー。ホント、奥手って損だよねー。今度あたしが直接、アッシュに“エレナお姉ちゃん、めっちゃ良い子だよ”って推薦してあげよっか?」
エレナ(顔真っ赤)「や、やめてください!……でも……もし、お願いできるなら……」
シャイナ(ニヤリ)「まかせなって。8歳は恋愛も人生経験も、意外と深いんだよ?」
エレナ(しみじみ)「……シャイナさん、私より恋愛偏差値高そうです……」
シャイナ(勝ち誇り)「当然でしょ♪ ま、がんばりなよ、お姉さん!」
エレナ(そっと拳を握る)「はい……!明日は、笑顔の練習から始めてみます……!」
(――こうして今日も、聖域の片隅で「恋愛成長セミナー」は静かに幕を閉じたのであった。)
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