聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
愛のため、根性のため、拳で未来を切り拓く「婿殿査定」バトルを!!
嵐吹きすさぶ両星道場、現れるは異国の黄金聖闘士・城戸アイオロス!
迎え撃つは武道一家の鬼父、そして常識を超えた最強の娘・翔子!
千本突き、巨石割り、山頂爆走……愛と筋肉の試練が、今ここに始まる!!
だが、それだけじゃ終わらない――
二人の拳が交わるとき、世界は“バカップル伝説”という新たな奇跡を目撃する!
壁を砕き、空を翔け、青春(コスモ)を燃やし尽くせ!
親の壁、常識の壁、すべての壁をぶち破り、
「これが俺たちの“普通”だ!」と叫ぶ超人カップル爆誕!!
さあ、次回――
『燃えよ婿殿査定!爆誕・超人バカップル伝説!!』
――この愛、この筋肉、誰にも止められないッ!!
「親父!千本突き、千回いきます!!」
「道場主の威厳も、娘の幸せの前にはひれ伏すのみ……!」
「翔子!明日は逆立ちで山を登ろう!!」
(翔子の父視点)
道場主――それは、娘の幸せを守るため、この身を賭して全ての男を試す者である。
我が両星道場は、かつて全国も制した武道一家。
その跡取り娘・翔子の連れてきた外国人彼氏など、わしの目から見れば「まずは体力試験を受けてから出直して来い」と言いたくなる優男でしかなかった。
最初から不安だったのだ。翔子の彼氏が“城戸アイオロス”という、いかにもマンガの主人公のような名前の青年で顔も美少年――しかも異国の血。
「娘は絶対にダマされておる。あんなヒョロヒョロの美形、どうせ口先だけだ!」
……そんな決めつけで、今日の婿殿査定を始めたのだった。
「アイオロス君。娘の婿として相応しいか、ワシが見極めてやる!」
翔子は「お父さん、やりすぎ!」と頬を膨らますが、これも親の務めだ。
【第一の試練『千本突き』】
道場の中央に巻藁をドンと設置し、「これを千回、正拳で突き切れ!無論、途中で力尽きれば不合格だ!」
普通なら半分で拳が腫れる。100回で皮が剥け、200回でギブアップ。1000回達成した者は、道場30年の歴史で一人もいない。
「……わかりました」
アイオロスは真剣な顔で構え、静かに拳を握った。
「行きます」
パン!パンパンパンパパパパパ――
まるで鉄砲の連射音。何が起きたのかわからん。
一秒も経たぬうちに巻藁が“粉”になって空中に舞っていた。
「……終わりました!」
目が点になる私。
「い、今のは……何発だ?」
「ちょうど千回、です」
横で翔子がケラケラ笑う。「お父さん、巻藁が足りなかったんじゃない?」
足りないのは巻藁ではない、ワシの理解力じゃ……?
【第二の試練『巨石割り』】
だがまだ終わらん。庭には武道家の魂・巨石が鎮座している。
「この岩を一撃で割ってみろ。できたらワシの負けを認める!」
石は重さ500キロ。並の格闘家なら歯も立たぬ。
アイオロスは静かに手刀を構え、目を閉じ気合を一点に集中させる。
「せいっ!」
ズバッ!
岩が――岩が豆腐のように真っ二つに割れた。
しかも切り口がつるりと滑らかで、スイカを割ったかのように瑞々しくすら見える。
「……ま、参った。何者なんだお前は」
「父さん、まだ続きがあるんだよね?」と翔子。
ワシの心も割れそうだ。
【第三の試練『山頂までの走り込み』】
「最後だ。道場裏の山頂まで、この薪束(40kg)を背負い、走って登れ!ワシはバイクで見届ける!」
アイオロスが薪束を肩に担ぐ。その横で翔子が「私も一緒に走る!」と手を上げる。
(まあ、翔子の実力は分かっておる。だが外国人のお坊ちゃんに山登りはきついはず……)
スタートの合図と共に――
「行ってきます!」
二人は走る。いや、爆走だ。
軽やかに林道を駆け、傾斜も難所も一切気にせず、
ついにはワシが原付バイクで必死に追いかけても見えない。
山頂で合流した時、二人は全く息が切れていない。翔子は「準備運動にもならなかったね」と涼しい顔。
アイオロスも「日本の修行は素晴らしいですね。次は逆立ちで登ってみますか?」
ワシの心は完全に折れた。
認めよう。アイオロスは強い。どんなに婿殿試験を課しても、驚異の身体能力と精神力でクリアしおる。
だがそれ以上に――あの娘が、心の底から楽しそうなのを初めて見たのだ。
今まで翔子は勝ち気で負けず嫌い、時に頑固で生意気だった。
けれど今日の翔子は、アイオロスと並んで走りながらまるで子供のように無邪気で、心の底から「この人と一緒にいたい」と思っている顔をしていた。
ワシは静かに、二人の前で頭を下げる。
「若者よ……お主……!娘を……娘をよろしく頼む……!」
アイオロスは真っ直ぐに、「必ず翔子さんをお守りします!」と答える。
翔子はワシの腕に抱きついて「ありがとう、お父さん!」と笑う。
……娘の幸せか、道場主の威厳か。今日は、幸せな方に負けてやろう。
―――その後――――
両星道場の一日が終わる夕暮れ。
本来なら静寂に包まれるはずの道場には、今も地鳴りのような音が響いている。
「はあっ!」
「そらっ!」
金属同士がぶつかるような音、床を蹴る音、そしてまるで空を切り裂くような風圧。
道着姿の二人――アイオロスと翔子。
二人は互いに本気で打ち合い、受け、攻め、回避し、道場の空間そのものを超高速で駆け巡っていた。
アイオロスは、翔子の一撃一撃に驚きと敬意を隠せなかった。
(これほどのスピード、正確さ、重さ――俺以外に感じたことがない!まるで聖闘士同士の本気の手合わせ……いや、それ以上だ!)
「翔子、次はこの技だ!」
跳躍して空中回転、真上からの渾身の振り下ろし!
だが翔子は余裕の表情で受け止め、逆にアイオロスの脇を抜けて華麗に反撃する。
(なんて身軽なんだ……日本の武道家、恐るべし!)
一方の翔子も、アイオロスの尋常ならざる動きに度肝を抜かれていた。
(道場の人たちも、全国の強豪選手も、誰一人この速さについてこれた人はいないのに……)
しかもアイオロスの攻撃は「筋力に頼らず、流れるように、最小限の動きで力を最大限に――」という、まさに武道の究極理論を体現していた。
「アイオロス君、今度は私の番!」
稲妻のような正拳突きが、アイオロスの顔面すれすれを通り過ぎる。
(すごい!どんな修羅場をくぐってきたら、こんな動きができるの!?)
――二人の組手は、もはや「見えない速さ」で繰り広げられている。
道場の外で見守る門下生たちは、ただ呆然。
「お姉ちゃん……今、壁すり抜けてなかった?」
「城戸先輩……腕、残像になってる……」
「人間の運動会じゃないよこれ……」
「ついに道場も“異能力バトル”か……」
「親父も見て見ぬふりしてるし……」
師範(翔子の父)は遠くから涙ぐみながら見守る。
(ああ、娘よ、若者よ……好きなだけやるがいい。だが壁の修理代は自分たちで払うのだぞ……)
やがて、汗だくの二人は同時に最後の一撃を放つ。
ピタリ、と正中線で拳がぶつかり合い、ドン、と床に着地。
同時に息を吐き、顔を見合わせ――
「ははっ!」
「ふふっ!」
互いに笑いあい、すっかり息もぴったりだ。
「アイオロス君、やっぱりすごいよ。あんな動き誰にも真似できない!」
「いや、翔子こそ……日本の武道家は、本当に規格外だ!」
二人とも、自分と戦える超人と信じて疑わない。
トレーニングの後はそのまま仲良くランニングへ。
道場から河川敷まで数キロを、時速40キロ超のスピードでジョギング。
他のジョガーたちが「自動車かと思った!」と二度見するが、二人はごく普通の会話。
「このくらいの距離、ウォーミングアップにちょうどいいね」
「うん。明日はもっと遠くまで走ろうか」
夕暮れの川辺。ベンチに座り、二人は並んで空を眺める。
「ねえ、アイオロス君……私、初めてなの。自分と同じくらい強くて、真面目で、変な人と出会ったの」
「俺もだ。こんなに心から尊敬できる女性に会うのは、初めてだ……」
「好きだよ」
「俺も、翔子が……好きだ」
――と、急に翔子の父が飛び出してくる。
「おいおい!そこのバカップル!汗拭いてから家に入れ!あと道場の壁、またヒビが入ってるからな!!」
「はーい!」
家に帰れば、アイオロスは夕食の手伝いを申し出る。
翔子と二人で米をとぎ、野菜を刻む。
だが、うっかり包丁の動きが速すぎて、キュウリが輪切りどころかペーストになってしまう。
「アイオロス君、普通にやっていいからね!」
「すまない、つい……」
翔子が味噌汁をかき混ぜれば、回しすぎて鍋が竜巻のように渦を巻く。
「翔子も加減しなさいって!」
「ご、ごめんなさい、お母さん!」
(お互いの“普通”がバグっている)
夜――道場の廊下で、二人はひっそり見つめ合う。
「また手合わせ、しようね」
「うん。いつでも受けて立つよ」
そして自然と手を握り合う。
互いの温もりと、互いへの絶対的な信頼と勘違いを感じながら――
「おやすみ、アイオロス君」
「おやすみ、翔子」
周囲がどれだけ呆れても、二人にとってはそれが普通。
もはや世界基準を遥かに逸脱した、超人バカップルの誕生である。
アイオロス「なあ、翔子……さっきの組手、明らかに普通じゃなかったぞ?君の拳――まるで聖闘士の小宇宙(コスモ)に目覚めているように感じたんだ。」
翔子「え? 小宇宙? なにそれ、アイオロス君がよく言ってるやつ?」
アイオロス「うん。小宇宙とは、体内に秘められた宇宙的エネルギーだ……まさか、気付いてないのか?」
翔子「……ああ、あの燃えてくる感じ?でも私ずっと“闘気”って教わってきたよ。『拳は心、闘志は力』って……。闘気と小宇宙、何か違うの?」
アイオロス「……いや、多分ほとんど同じだ……けど世界が違うだけできっと同じ奇跡なんだと思う。」
翔子「そっか。じゃあ私も今日から小宇宙を意識してみようかな。……あ、でもアイオロス君への愛で燃え上がってるだけかも?」
アイオロス「それも大事な小宇宙さ!……君と一緒にいると、俺もまだまだ限界を超えられる気がするよ。」
翔子「じゃあ、これからも一緒に燃えまくろう!――“バカップル”として!」
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