聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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聖衣を運ぶ黄金聖闘士、降り立つは成田空港!
輝くスーツに身を包み、任務は“恋人の誕生日プレゼント配達”!?
だが、待ち受けるは日本の摩天楼、誘惑のメロンソーダ、
そして美と混沌の“共犯者”たち!

信念か、欲望か――
運命のギフトを手に、今、東京が星の伝説に染まる!

黄金たちよ、輝きを忘れるな!
次回「黄金たちの東京サプライズ ~運命を運ぶ男たち~」

俺たちの小宇宙(コスモ)は、まだ“成田”で燃え尽きちゃいねぇ!!


黄金たちの東京サプライズ ~運命を運ぶ男たち~

(シュラ視点)

 

 成田空港――。

 俺、山羊座の黄金聖闘士シュラは、今ここにいる。

 右手には重厚なパンドラボックス。中身は言わずもがな、神話の時代より伝わる“仔馬座の聖衣”。

 周囲の視線が痛い。いや、痛いのは気配じゃなくこの常識外れな任務そのものだ。

 

 (アッシュ師範……一体なぜ、俺なんだ……)

 

 回想。

 「シュラ、お前が一番信頼できるから頼む!絶対にサガには言うなよ!」

 信頼、ねえ……。

 光栄といえば聞こえはいいが、要するに「押し付けやすい奴No.1」に選ばれた気しかしない。

 

 ……それにしても。

 聖衣を誕生日プレゼントとして運ぶ任務とは何事だ?

 アテナの聖闘士たる者、時には命を賭して使命に挑む。だがその使命が友の恋人へのバースデーサプライズとは――

 (これじゃ、まるで海外に飛ばされた営業マンじゃないか…)

 

 ため息、三回目。

 俺は肩に力を込め到着ロビーを歩き出す。

 

 ――その時。

 空港の雑踏の中、異様な存在感を放つ二人組が近づいてきた。

 ……スーツ、ブランド物、キラキラの靴、髪の毛にバラでも挿しているんじゃないかと思うほどの色気――

 

 「よう、シュラ。ご苦労なこったな」

 低音の悪人ヅラ、デスマスク。

 「久しぶりだな、シュラ。相変わらず真面目そうな顔をしてるな」

 艶やかな微笑み、アフロディーテ。

 

 俺は思わずパンドラボックスを落としそうになった。

 「デスマスク、アフロディーテ……!貴様らこそ、なぜ日本に!?」

 

 二人は余裕しゃくしゃくと肩をすくめる。

 「俺たちも出張さ。師範に頼まれてな」

 「ビジネスってやつさ。まあ、空港にいるのはお前を出迎えに来たのだよ」

 

 ……嘘だろう。

 黄金聖闘士が三人、同時に日本にいる。

 その目的が「誕生日プレゼント配達」と「ビジネス」……

 (ここは本当は聖戦の本拠地、聖域の分室か?ただの日本支社なのか……)

 

 デスマスクが悪戯っぽくニヤリと笑う。

 「まあ、お前みたいなガチガチの真面目野郎が恋人の誕生日のために荷物運ぶとはな。黄金聖闘士も落ちたもんだぜ」

 アフロディーテが優雅に付け加える。

 「日本の空気はどうだい?重箱の隅をつつくような任務も、たまには悪くないだろう?」

 

 ……この二人、どうにも話が噛み合わない。

 だが、俺は心の中で決意する。

 (いいか、シュラ。お前は黄金聖闘士だ。どんな任務であろうと全力で遂行する。それが、信頼された者の責務――)

 

 ……と思った矢先、

 二人の手にはなぜか免税店の巨大な紙袋が。

 

 「なにやってるんだ、お前ら……」

 思わず素でツッコむ。

 

 デスマスク「お土産だよ、海外出張の定番ってやつだ」

 アフロディーテ「バラの香水、新作が出ててね。シュラも使うかい?」

 

 ……やはり、俺にはこのノリは理解できない。

 

 (俺の任務は“神聖”で“緊張感”に満ちているはずなのに、どうしてこうも“庶民的”で“間抜け”な空気になるのだろう――)

 

 俺は再び、深いため息をつく。

 

 

 

(デスマスク視点)

 

 

 まったく世の中ってやつは分からねぇ。

 ついこの間まで「冥界波がどうの」とか「小宇宙を燃やせ」とか、大真面目なことばっか言ってたってのによ――

 今の俺は何だ?スーツにネクタイ、ブランドのバッグ片手に空港。しかも横にはアフロディーテの王子様スマイル。

 こっちも似合わねぇなあ、と自分で思う。だが今日は違う。

 

 今日は俺たち聖域メロンソーダ外交団だ。

 

 シュラの奴、空港でパンドラボックス抱えて立ってるの見た瞬間は笑いそうになったぜ。

 「なんだよ、真面目な顔して。その重箱、誕生日ケーキでも入ってんのか?」

 

 いや違う、さすがにそれはねぇな。

 だが――こっちはこっちで世界の命運を賭けたビッグビジネス。黄金聖闘士の面目躍如ってやつだ。

 

 「仕事だよ、仕事。聖域の未来を左右する、超重要なビジネスだ」

 俺は胸を張った。何しろアッシュ師範直々のご指名だ。

 

 隣のアフロディーテも気取ったポーズで「ええ、繊細かつ大胆な交渉だった」とか言っちゃってる。こいつ、妙にハマってやがる。

 

 俺たちの任務?

 ――「メロンソーダの安定供給ルート確保」。

 

 笑うだろ?けどな、冗談じゃねぇ。

 聖域の近代化ってのは本気だ。師範がAI導入した途端、皆の嗜好が一気に“現代日本”寄りになった。特にアッシュ師範のメロンソーダ愛ときたら、もはや宗教。

 毎日消費量が右肩上がりで、個人輸入じゃ追い付かねぇってワケだ。

 

 そこで俺とアフロの出番。

 なんで俺たちかって?答えはシンプル――

 「欲望に忠実、面の皮が厚く、金にがめつい。こういう腹黒い交渉にはもってこい」

 ……ってのがアッシュ師範の弁らしい。まったく、お褒めの言葉だぜ。

 

 それでな、俺たち日本の大手飲料メーカーと直談判したんだ。会議室のVIPルーム、通訳もビビるスーツ軍団の中に黄金聖闘士。交渉相手は一流のやり手だ。だがな――

 

 こっちは「聖域限定メロンソーダフレーバー」と「俺様たちへの生涯無料提供」の契約までしっかり勝ち取った。

 

 「どうだ、すごいだろ?」

 俺は堂々と胸を張る。シュラは絶句してる。

 

 「メロンソーダ…のためだけに、黄金聖闘士が二人も…?」

 

 あたりめぇよ。

 どんな時代だって、組織を動かすのは“欲望”だ。正義だの大義だの語るのは簡単だが、本当に世界を動かすのは“これが欲しい!”って気持ちだろ?

 

 俺はアフロにウインクを送る。

 こいつも分かってる。

 おかげで会議終わりにはメーカーの社長とスパークリング・メロンソーダで乾杯までしたんだぜ。

 「乾杯、黄金聖闘士――日本経済に栄光あれ!」

 ってな。

 

 まあ、聖衣運搬なんていう地味な任務に比べりゃ、こっちは華やかなもんだ。

 

 だが、忘れちゃいけねぇ。

 俺たち黄金聖闘士――何をやっても、どこにいても世界の“要”なんだよ。

 聖戦も、ビジネスも、人生も。全部俺流で輝いてやるさ。

 

 そう言いつつ、空港の自販機で新発売のメロンソーダを三本買い込んで、成田のロビーで勝利の美酒(?)に酔いしれる――

 今日も俺たち、最高にイケてるぜ。

 

 

 

 

(シュラ視点)

 

 パンドラボックスを肩にかけ直し、俺は無言で空港の出口へ歩き出そうとした。

 この仕事は、誰にも邪魔されずに――静かに、迅速に終えたい。

 だがその刹那、がっしりと両肩に“人外の力”が食い込む。

 

 「まあ待てよ、シュラ」

 声の主はデスマスク。

 アフロディーテも、俺の左肩を優雅な微笑みでガッチリロックしている。

 

 「俺たちの仕事は終わったんだ。で、お前がその物騒な箱を、〝あの〟アイオロスの恋人に届けるって話、師範から聞いたぜ?」

 「ええ、聞いたわ。伝説の英雄が生きていて、日本の女子大生と恋仲だって?面白すぎるじゃないか」

 二人の目が、好奇心と悪戯心でギラリと光る。まったく、黄金聖闘士とは思えない下世話さだ。

 

 デスマスクは露骨にニヤニヤしながら、「あのクソ真面目な英雄様が、どんな顔してデートしてんのか、からかいに行くに決まってんだろ!」

 アフロディーテは髪をかきあげつつ、「私は、その翔子という娘がこの私より美しいのかどうか、確かめなければ気が済まんのだ!」

 もう空港の空気すら湿度を増した気がする。

 

 俺はついに本日何度目かの――いや、間違いなく一番深いため息をつく。

 「やめておけ。これは師範からの個人的な頼みだ。貴様らが首を突っ込むことでは……」

 それでも食い下がる二人。しつこい。実にしつこい。

 

 ――そのとき、デスマスクが俺の耳元に顔を寄せ、悪魔のごとき囁きを落とす。

 「おいおい、シュラ。忘れたのか?〝アイオロスが生きてる〟って事実は、教皇サガ様には絶対の秘密なんだぜ?その秘密を知ってて、今この日本にいる黄金聖闘士は、俺たち三人だけだ」

 

 アフロディーテも、同じように微笑む。「そうさ。万が一、サガ様の耳に入ったら、どうなる?これは、私たち“共犯者”で処理すべき案件じゃないか?」

 

 ……俺は、再び深いため息をつく。

 “共犯者”。

 なんて響きだ。黄金聖闘士の名が聞いて呆れる。

 

 だが、確かに、サガに知られるわけにはいかない。

 この機密――いや、この厄介事――を分かち合える奴が、よりによってこの面倒な二人しかいないのが、最大の不幸だ。

 

 アッシュ師範への忠誠心。

 任務の重さ。

 そして、目の前の強烈な二人――。

 

 俺は心の中で天秤を振り切り、静かに敗北を認めるしかなかった。

 

 「……好きにしろ。ただし、騒ぎは起こすなよ」

 自分でも情けないくらい、投げやりな声になっていた。

 

 すると、デスマスクが大声で笑う。

 「いいねえ、共犯者!黄金三人組、成田潜入ミッションだ!」

 アフロディーテはうっとりした表情で「“美と謎の共犯者たち”……それも悪くない響きだわ」とか言っている。

 

 ……ため息が、また一つ、重なった。

 

 

 

 

 

(アフロディーテ視点)

 

 成田空港からのリムジン――しかも、デスマスクが手配した、やたらけばけばしいピンクのストレッチ仕様。

 運転手もサングラスにヒョウ柄シャツ。まるでギリシャ神話の仮装舞踏会だ。

 私は窓の外に広がる“日本”という異国の景色を流し目で眺めつつ、手鏡で自分の顔をチェックする。

 

 ふふ、完璧だ。黄金聖闘士アフロディーテの名に恥じぬ美貌。

 けれど――今日はそれだけじゃ物足りない。

 

 横で、デスマスクがいやらしくニヤニヤしている。

 「なあアフロ、アイオロスの奴、どんな顔でイチャついてんだろうなァ!」

 全く品がない。けれど、それもこの男の“味”だろう。

 

 私の視線は、腕の中でパンドラボックスを抱きしめるシュラに向く。

 その顔がまるで、日本中の苦労を一身に背負ったような渋面だ。

 けれど、シュラ。貴方がいくら渋くキメても、私は止まらないぞ。

 

 だって今日は“共犯者”――

 禁断の好奇心という名の花を咲かせる日。

 

 私は、唇を軽く歪めてみせる。

 「まずは美の格付けから始めないとね」

 日本の大学生?いいえ、“英雄の恋人”だって?

 伝説に美はつきもの。英雄譚のヒロインがどれほどのものか、世界最高のバラと並べてみる価値がある。

 

 (ねえ、翔子――お嬢さん。貴女は本当に、アイオロスが選ぶほどの美と誇りを持っているかな?)

 

 私は思わず、鏡越しに微笑みかける自分に囁く。

 

 「今日の勝負は、あくまで優雅に――そう、薔薇のように鮮やかに。

 もし私より美しいなら、祝福しよう。けれど、黄金聖闘士のプライドも、ただじゃ下げないぞ?」

 

 デスマスクの笑い声、シュラの絶望の溜息。

 リムジンの車内は、混沌と美、そしてちょっぴり悪意の入り交じるカクテル。

 

 いいね、楽しくなってきた――。

 美と混乱、そして禁断の出会い。その幕開けに、私はワクワクが止まらない。

 

 さあ、どんな“ヒロイン”が私たちを待っている?

 城戸邸での最初の挨拶、しっかりと美の採点表を用意しておくつもりさ。

 

 

 




デスマスク「なぁシュラ、さっきの免税店、つまんねぇお土産ばっかだったなぁ。日本ならもっと派手なもん売ってんだろ?」

アフロディーテ「シュラ、次は銀座でバラの限定香水を買いに行こうと思うんだが君も付き合ってくれるか?」

シュラ「……頼むから、少し静かにしてくれ。俺は今、本当に疲れてるんだ……」

デスマスク「おいおい、何だよその顔。これからアイオロスの彼女に会いに行くってのに!共犯者ならもっとシャキッとしろって!」

シュラ「共犯者で結構だ。だが俺は、ただ静かに任務を遂行したいだけなんだ……はあ……(ため息)」

アフロディーテ「そう言えば、君も聖衣は持って来てないんだな?私もデスマスクも置いてきたんだ。あんな重くてキラキラしたもの、空港で手荷物検査に引っかかったら困るじゃないか?」

シュラ「……いや、それ以前に聖衣の輸入申告なんてしたら、税金で目玉が飛び出すぞ。あれは有事以外、経費で落ちないんだ。“神話遺産・時価不明”扱いだからな。現代社会って、本当に世知辛い……」

デスマスク「マジかよ!?オレの黄金聖衣も経費NGか……。だったら余計、メロンソーダは経費で落としてもらわねーとな!」

アフロディーテ「まあまあ。世知辛さも共犯者の証――美しい秘密よ、シュラ」

シュラ「(…俺は一体、何のために日本まで来たんだろうな……)」

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