聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
蘇る亡霊聖闘士(ゴーストセイント)五人衆――
だが彼らを待ち受けていたのは、神話の戦慄か、それとも現代の育児か!?
迫りくる聖闘士たち、鳴り響くLINEの通知音、
そして静まり返る神殿に流れる、なんとも言えない昭和の気まずさ――
次回、争いの宴はオムツ替えから!?
神話と現代が入り乱れる、抱腹絶倒の大混乱が幕を開ける!
次回――
「亡霊聖闘士、集う!エリスの高笑いと昭和の気まずさ」
(エリス視点)
エリス神殿の玉座の間。
暗黒の柱が並ぶ広大な空間、その最奥で私は優雅に脚を組み金色のリンゴを手遊びしていた。
この場所――かつては神々の血と涙で濡れ、英雄たちが阿鼻叫喚を繰り広げた古の玉座。
今やその主は千年の封印を破り蘇ったこの私、争いと不和の女神エリス。
――にもかかわらず。
「ショーコ、LINEの返信はまだか?」
脳内の片隅でアイオロスからの“鬼電”がピコンピコンと鳴り響く。
まったく、現代の男はしつこい。
「はいはい、取り込み中ですので早く助けに来なさいと伝えておきなさい」
翔子の意識に冷静に伝言を打たせようやく静寂が戻る。
私は再び高い背もたれに身体を預け、薄く笑みを浮かべた。
――いよいよ舞台は整った。
禍々しい小宇宙(コスモ)が玉座の間を満たす。
その中から五つの影――男たちが静かに膝をついた。
「エリス様、我ら五名、ただいま馳せ参じました」
闇の帳を裂き、五人の亡霊聖闘士(ゴーストセイント)たちが揃い踏みする。
矢座(サジッタ)の魔矢――
盾座(スキュータム)のヤン――
南十字星座(サザンクロス)のクライスト――
琴座(ライラ)のオルフェウス――
オリオン座のジャガー――
私は満足げに頷き、「待ちかねたぞ、我がゴースト5よ!」と高らかに宣言する。
五人は声を揃え、「エリス様、すべては貴女のご意志のままに!」
――このノリの良さ、古代ギリシャにもなかった気がするわ。
私はひとつ咳払いをして、より荘厳な声を張る。
「さあ、貴様らの使命はただ一つ。日本で油を売る愚かな聖闘士たちを討ち果たし、その魂を私に捧げよ!」
五人は歓喜の声を上げる。
魔矢「矢を引く手が久しぶりに震えますぞ!」
ヤン「どんな攻撃も、この盾が全て受け止めてみせる!」
クライスト「南十字の星よ、今こそ舞い踊れ!」
オルフェウス「美しき調べで聖闘士どもを葬りましょう……ふふ」
ジャガー「ウオオオッ!喧嘩の相手はどこだ!」
(……なんという昭和感。いや、ここは平成も令和も超越しているはずなのだが)
私は小さくため息をついた。
「どうだショーコ。彼らこそ、お前の愛するアイオロスたちを処刑する執行人だ」
精神の奥底――
未だ抵抗を続ける少女に、私は意地悪く呼びかけてみせる。
“どうだ、ショーコ。可愛いお友だちを守る力は、もう残っていまい?”
(…………)
この千年で私が学んだことは、「可愛げのある少女」ほど面倒くさいものはない、ということだ。
私は腕の中の赤子――女神アテナ、沙織を見下ろし、林檎を高く掲げる。
「そして、私が真にこの肉体を得て復活するには、この林檎にアテナの生命力を吸い尽くさせる必要がある。アテナの死と同時に、私は完全に蘇るのだ!」
ここで気分を盛り上げるため、派手に高笑いを一発。
「フハハハハハハ!!」
ゴースト5も調子に乗り「フハハハ!」と微妙に合いの手を入れてくれる。
……ああ、やはり部下というのは多少頭が足りないくらいが可愛いものだ。
私はふと林檎を見つめ直す。
(しかし、何よ吸い尽くすって。具体的なやり方はどんなものなのかしら……?
うっかり過剰摂取して女神ごと爆発でもしたら面倒ね)
などと考えていたら、
オルフェウスが、やけに気障ったらしいポーズで進み出た。
「エリス様、お耳を拝借……。この機会に、新作の詩を献上させていただきとう存じます」
私は微妙な顔で手を振った。
「……その前に、やつらを始末してからにしてちょうだい」
オルフェウスはがっくり肩を落としたが、クライストとジャガーが「俺たちに任せろ!」と拳を突き上げている。
(……いいチームワーク。
でも、あなたたち“本気で戦ったら仲間割れしそう”なのが玉に瑕よ)
私は静かに玉座に腰を下ろし、改めて五人を見渡す。
「では、我がゴースト5よ。
聖闘士どもが神殿に辿り着いたら、各自好きなように迎え撃て。
ただし――勝手に美術品を壊したり、台所の食料に手を出すのは厳禁よ?」
「心得ております、エリス様!それをやって大変なことになりましたから……」
「あの時の罰、いまだに夢に見ます……」
私はうっとりと微笑み、玉座のアームレストをなぞった。
(これぞ、女神の気分――舞台を整え、役者を揃え
後は主役の聖闘士どもがどんな顔で登場するかをゆっくり楽しむだけ)
私は林檎を優雅に回しながら翔子の心に囁きかけた。
“さあ、見届けるがいい。この世界の“平和”など、どれほど脆く儚いものか。
愛も希望も、争いの嵐に呑みこまれて消えていくのだから――”
私は余裕たっぷりに微笑み、ゴースト5を手で制した。
「聖闘士どもが到着するまで、
余興にカラオケでもどう?
敗者の魂が揺れる歌声――期待しているわよ、オルフェウス」
「御意!」とノリノリで立ち上がる琴座の詩人。
私は林檎を片手に、悪の女神らしく不敵な高笑いを響かせる。
“さあ、聖闘士たち。
お前たちの愛と誇り、どこまで持ちこたえられるか――
この争いの宴存分に楽しませてもらうわ!”
(翔子視点)
――「ショーコ!聞いているのか、ショーコ!!」
どこかで誰かが怒鳴っている。
私はぼんやりとした光の中で、うつらうつらしていた。だって現実世界(?)の玉座の間ではエリスさんが「この世に新たな争いを!愛も平和もこの林檎で吹き飛ばしてくれるわ!」とか壮大な演説を延々やっているのだ。正直、話が長い。
私は精神世界で足をブラブラさせて、神殿の椅子(イメージ)に座っていた。
(こういうの、社会の授業で「先生の話が長い時」現象に似てる……)
あ、何かまた怒鳴ってる。
「ショーコ!聞いているのか、ショーコ!!」
ハッと我に返って、慌てて背筋を伸ばす。
怖い顔をしたエリスさんが、私のほうを睨んでいる。
でも恐怖とかじゃなくて、私はふと純粋な疑問が湧いてきた。
「ねえエリスさん。この亡霊聖闘士さんたちって、元々はどの聖闘士だったの?青銅(ブロンズ)?白銀(シルバー)?それとも黄金(ゴールド)?」
――沈黙。
エリスさんの顔が、一瞬だけ固まった。
その間に私は考える。
(漫画だとラスボスの話の途中で主人公が素朴な疑問をぶつけて場が和むやつだ……)
「えーと……」
エリスさんは威厳たっぷりの顔で、
「おい、貴様ら。生前は何の聖闘士だったのだ?」
と部下たちに問いかけた。
亡霊聖闘士五人が、膝を揃えてぴしっと答える。
「はっ!我ら、いずれも白銀聖闘士にございます!」
エリスさんはすっかりドヤ顔だ。
「ほう、白銀か!見よショーコ。死してなお蘇った“白銀聖闘士”の精鋭ぞ!」
(……うん、分かった。分かったよ、エリスさん。でもさ――)
アイオロス君やシュラ君たちは「黄金聖闘士」だった。
なんか、漢字のグレードが違う気がする。
(たしかゲームだと、ブロンズ<シルバー<ゴールドって感じだったよな……)
そもそも、ゴースト聖闘士の人たち、
ちょっと見た目も“昭和の悪役”っぽいというか、
黄金聖闘士たちと並んだら戦隊モノのやられ役……いや失礼、
特別出演の豪華キャスト枠みたいな。
……いやいや、彼らもきっと強いんだろうけど。
私は思わずエリスさんに聞いてみる。
「ねえ、エリスさん。黄金聖闘士って、白銀聖闘士よりも強いの?」
エリスさんは、やや不機嫌そうに眉をひそめた。
「ふん……黄金はたしかに最強の戦士たち。だが、死者の恨みは時に神すらも倒すのよ!このゴースト5は、あの優男たちには負けない戦闘力を――」
その後ろで、ゴースト5の一人、
サジッタの魔矢さんがそっと手を挙げた。
「ええと、エリス様……生前、一度も黄金聖闘士には勝てませんでしたが――」
「黙れッ!」
エリスさんがものすごい剣幕で叫ぶ。
部下たちがびくっと肩をすくめた。
(……うん、やっぱりそうなんだ。ゲームバランス的にも……)
私は、内心で「勝てるかも」という希望がむくむく湧いてくる。
(だって、黄金(ゴールド)って主人公やラスボスが身につけるやつで、
白銀(シルバー)は“強敵だけど結局やられ役”のポジションだし――
たぶんアイオロス君たちなら大丈夫……だよね?)
ここで、精神世界の私の想像内会議が始まった。
《司会:翔子》「では本日の議題、黄金vs白銀でどちらが勝つのか?」
《アイオロス君(脳内イメージ)》「俺たち黄金聖闘士は、小宇宙の究極、セブンセンシズを極めている!」
《シュラ君(脳内イメージ)》「拳の力も、防御も、すべての面で黄金が上だ」
《デスマスク君(脳内イメージ)》「要するに、楽勝ってことだな!」
《エリスさん(脳内イメージ)》「コラ!余計な楽観は禁物だ!!」
私は一人でうんうん頷きながら、
「……いける!」と確信した。
精神世界のエリスさんが、ふいに私を睨みつけた。
「なぜ貴様はそんなに余裕なのだ!?
私は神で、手下は死者の軍勢、しかもアテナを手にしているのだぞ!」
私は正直に答える。
「いやだって、階級差でいけば普通に……」
「やかましい!」
エリスさんは、
「この世でもっとも恐ろしいのは、説明が長すぎて途中でボケっとする主人公よ……!」
とよく分からない呪詛を放ってきた。
部下たちが困ったように私を見ている。
琴座のオルフェウスさんが、おそるおそる訊いてくる。
「……あの、翔子さん?もしかして私たちのあいては、黄金聖闘士なんでしょうか?負けたらもう一度地獄に戻されるんでしょうか……?」
私はつい同情してしまい、
「たぶん成仏できると思いますよ」と慰めた。
サザンクロスのクライストさんが、嬉しそうに拳を握る。
「それなら思い残すことはない。全力で散ります!」
私はどんどん応援したくなってしまう。
なんか、かわいそうな人たちだなぁ……。
エリスさんが、やけになって大声で叫んだ。
「いい加減にしなさい!!
私は神なのよ!世界に不和と混沌をもたらす女神、
絶望と恐怖を思い知らせてやるわ!!」
私はまた素直な疑問が湧いてきて、
「じゃあ、現代日本に不和と混沌をもたらす一番の方法って何だろう?」
エリスさんは一瞬真剣に考え込む。
「……消費税率を上げる、とか……?」
ゴースト5が思わず「やめてくれ!」と悲鳴を上げた。
そんなことをしているうちに、アイオロス君からまたLINE通話が来た。
「翔子!無事か!?」
私は気軽に応答する。
「大丈夫、取り込み中ですので早く来てください」
エリスさんは眉をひそめたが
「……まあいい。いずれこの肉体も、女神アテナも、私のものとなるのだ――!」
でも私は内心
(なんとかなる、たぶん黄金聖闘士たちなら……)
そんな根拠のない自信に包まれて、
ちょっとだけニヤニヤしてしまうのだった。
(エリス→翔子→亡霊五人視点)
「ふにゃあぁ……」
玉座の間に響く、不協和音。
それは、女神アテナ(沙織)の赤子特有の泣き声であった。
私――争いの女神エリスは、悠然と玉座に座り黄金の林檎を手に「新たな聖戦の幕開けよ!」と高らかに演説していた。
その最中、腕の中で赤子が突如ぐずり出すとは――まったく想定外である。
「な、何だ!?なぜこの赤子は不穏な声を出すのだ!泣き止め、泣き止めと言っているのだぞ!!」
ゴースト5の視線も一斉に集中。
だが私は神である。神たる女神のカリスマでもって、赤子一人など静めてみせ――
「……ふにゃ……ギャアアア……!!」
――無理だった。
神の威光も、天罰も、千年分のカリスマも赤子のおしっこには通用しない。
アテナの小宇宙がまさか「オムツ交換の催促」で発動するとは――
(想定外すぎる……!)
私はテンパった。
部下たちが心配そうに見つめる中思わず小声で叫ぶ。
「だ、誰か!この生き物を黙らせろ!なぜだ、なぜ私の神々しいオーラで効かぬのだ!?」
その時。
――ズンッ!
私の内奥から、強烈な“逆流”がやってきた。
(……この程度、任せておきなさい!)
あっけなく、身体の主導権を取り返したのは封じ込めたはずのショーコだ。
内心の叫び声が、私の精神世界に木霊する。
「ちょっと代われ、このド素人!!」
ド素人……神に向かって何という口の利き方か――
だが気付いたときには、身体は“ショーコモード”だ。
私は(いや、ショーコは)何の迷いもなく沙織ちゃんを抱き上げる。
体の動きがスムーズすぎて、私自身、ややショックだ。
(すごい…人間の女というものは、なぜこうも育児に手馴れているのだ…)
ショーコは余裕の表情で、神殿の廊下をスタスタと歩き始める。
向かう先は――なぜか、奥に設置されている最新鋭のトイレ(TOTO製ウォシュレット付!)。
(なぜ、千年前の神殿に最新トイレがある!?)
(現代リフォームだよ!トイレは文明の基本なの!)
翔子の精神とエリスの精神が内面で押し問答しているうちに、
彼女はあっという間に沙織ちゃんをオムツ替え台にセットし、
神速の手つきでオムツ交換&おしりふき。
(……なんという人間技。いや、これこそ聖闘士の母性?だめよ。意味が分からない……)
沙織ちゃんは、あっという間に機嫌を直し、
翔子の腕の中で、ニッコリと笑った。
「はい、よくできました!」
翔子は満面の母性スマイル。
エリスは内心で謎の敗北感。
(……敗北……女神として最大の敗北感……!)
――その頃。
荘厳な玉座の間には、復活したばかりの亡霊聖闘士たち――
サジッタの魔矢、スキュータムのヤン、サザンクロスのクライスト、ライラのオルフェウス、オリオンのジャガー――
五人の男が、微妙に気まずい空気の中、ただポツンと立ち尽くしていた。
最初は聖戦の高揚感があった。
エリス様の復活!
主君への忠誠!
「世界を争いに染めてやるぜ!」
くらいのノリだった。
だが、その主君が「オムツ交換」で退場してしまった今――
沈黙。
魔矢が、やけに気まずそうに咳払い。
「……その……えー……」
ヤンは重々しく盾を床に置き、
「主君も大変なんですね……」と遠い目。
ジャガーは、自分の手をじっと見つめながら、
「俺、赤ちゃんって、どうあやせばいいか分からない」とポツリ。
クライストは赤いマントを直しながら、
「これが神話の真実――“オムツを制する者が世界を制す”か……」
オルフェウスは、琴を爪弾きながら、
「この状況にぴったりの哀歌が浮かびました……」
――静かすぎて、誰かの胃の音が鳴りそうだ。
やがて、クライストが誰ともなく問いかけた。
「これ、あとどれぐらい待つんだろうな……」
「さあ……主君は、育児で忙しそうだしな……」
「……アイオロスたち来る前に戦意が失せそうだ……」
みんな、目が合うと小さく会釈して、また黙る。
“昭和の商店街みたいな気まずさ”が、神話の玉座の間を満たしていた。
その頃トイレの翔子&エリス。
(……育児が、世界最強の争いの舞台だったなんて……)
(次はミルクあげてから、神話の続きしようね)
女神と現代女子の謎コラボで、
世界の命運は今日もどこかズレ続けている――。
翔子「ねぇエリスさん、あなたも神話時代は子供とかいたんじゃないの?子育て全然やってなかったの?」
エリス「ふん、神は子育てなどしない。全部乳母やら家来に任せてきたわ。私は“生むだけ”の存在だったのよ。」
翔子「え~!? そんなの無責任すぎるでしょ!それに、育児ってすっごく大事なんだから!」
エリス「ふん…お前のその“母性アピール”、羨ましいのかしら? どうせショーコみたいに胸が小さい女は結婚も難しいでしょうに。」
翔子「はぁ!? 何それ!? ちょ、そこ関係ないでしょ!! 私だって、いつか…いつか絶対ビッグになるんだから!」
エリス「ビッグ…(ぷっ)」
翔子「笑うなぁーっ!」
この先の物語は
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もっとギャグに振りきってくれ‼‼
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シリアスな熱血が聖闘士星矢だ!
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バランスよくどちらも見たい
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全部盛り込んでぶっ飛べばいいと思うよ