聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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アテナと翔子を救うため、ついに立ち上がった黄金聖闘士たち。
正義や使命を越えて、今度は“自分の本音”と向き合うアイオロス。
かつてない危機の前で、仲間たちの答えは――まさかのツンデレ!?

冗談と本音、涙と決意が交錯する中、
彼らはそれぞれの想いを胸に、神殿の闇へと突入する!

次回――「黄金たち、決意の出撃!―友情と愛のために―」
“友情”と“愛”が奇跡を呼ぶ!

仲間と共に歩む一歩が、きっと未来を変える。


黄金たち、決意の出撃!―友情と愛のために―

(アイオロス視点)

 

 広間の空気が凍りついていた。

 胸の中で何かがこわばる。

 LINEの画面に浮かび上がるエリスからの挑戦状――

 「アテナの命が惜しくば、我が神殿まで来るがいい!」

 Googleマップの位置情報。誰もが冗談だと笑い飛ばせない命懸けの招待状だ。

 

 俺は迷わず立ち上がった。迷う理由など何一つなかった。

 

 「聞いたな、皆!一刻の猶予もない!アテナ様と翔子を救いに行くぞ!」

 

 この言葉に、誰もが当然のように続いてくれるものと疑いもしなかった。

 自分の隣にはいつも、誇り高き仲間がいた。

 戦いの最前線も、死地も、苦しい夜も、

 彼らとなら超えてこられた――そう、信じていた。

 

 だが、帰ってきたのは冷たい声だった。

 

 「……で?なんで俺様たちが行かなきゃならねえんだ?」

 

 デスマスクは、ふてぶてしい笑みを浮かべている。

 彼がこういう態度を取るときは、たいてい拗ねているか逆に何かを試している時だった。

 今はそんな意図すら見えない。

 ただ、こちらをあざ笑うかのような突き放す言葉。

 

 アフロディーテは、涼しい顔で手鏡をのぞきこみながら言い放つ。

 

 「そうだな。私たちの任務はあくまで仔馬座の聖衣を届けること。邪神退治なんて聞いていない」

 

 シュラが追い討ちをかける。

 

 「我々は聖域の聖闘士。教皇の許可なく、私的な戦いに関わることはできん」

 

 広間の空気が、肌を刺すほど冷たくなった。

 俺は一瞬、何かの冗談だと思った。

 だが誰も冗談であることを告げてはくれなかった。

 

 「何を言っているんだ!アテナのため、地上の愛と正義のためだ!

 聖闘士として、共に戦うのが我々の使命だろう!」

 

 自分でも声が震えているのが分かった。

 焦りと、恐怖と、苛立ちと――

 

 

 この世界には守るべきものがある。

 自分はそのために戦ってきた。

 だが――まるで壁に向かって叫んでいるようだった。

 

 デスマスクは鼻で笑った。

 

 「ケッ、くだらねえな。『正義』だの『使命』だの、そんな青臭え言葉で、この俺様が動くと思ってんのか?」

 

 彼の声は、本当に冷たかった。

 心のどこかで信じていた“戦友”としての姿は、

 今はどこにも見当たらない。

 

 俺は――言葉を失った。

 

 手が震える。

 

 こんなに無力だっただろうか。

 アテナを、翔子を守れないどころか、

 仲間にすら背を向けられる。誰にも想いが届かない。

 

 苦しい。

 絶望的な孤独が、胸を締め付ける。

 それでも、まだあきらめることはできない。

 

 その時だった。

 アフロディーテが鏡を閉じてこちらを見つめ、静かに口を開いた。

 

 「アイオロス。あなたの言うことは立派だ。でも、それは全部聖闘士としての建前だろう?…そうじゃない。あなた自身の望みは何だ?一人の男として、今、何を望んでいるのか、それをあなたの言葉で言ってみな」

 

 ――心が、激しく揺れた。

 

 今まで「正義」の名の下に「アテナのため」「地上のため」とだけ叫び続けてきた。

 

 本当は自分が一番守りたいものは、

 その奥にずっと隠していたのではなかったか。

 

 俺は気付いてしまった。

 

 “翔子の笑顔が好きだった。”

 “彼女の優しさに救われていた。”

 “あの穏やかな日々が、何よりも大切だった。”

 “この手で、彼女を守りたい。”

 “失いたくない。”

 

 自分がずっと「英雄」という鎧をまとい、

 本心を覆い隠していたことに。

 

 俺は、ゆっくりと息を吐き出した。

 そしてその鎧を静かに脱ぎ捨てた。

 

 「……頼む。力を貸してくれ」

 

 自然と頭が下がっていた。

 

 聖闘士のアイオロスとしてのものではない。

 ただの一人の男、ただの一人の人間として。

 

 「俺は、翔子を失いたくない。彼女を……愛する人を救いたいんだ。

 だから、お願いだ。俺一人の力では足りない。どうか、俺に力を貸してくれ……!」

 

 声が震えた。

 情けない、格好悪い。それでも――

 

 「……俺には、お前たちが必要なんだ」

 

 心の奥底から、ただそのことだけが、

 どうしようもなく溢れてきた。

 

 沈黙。

 永遠にも思える沈黙。

 

 俺は、俯いたまま、広間の床を見ていた。

 たぶん、涙が浮かんでいた。

 

 もう、一人で行くしかないのか。

 それでも、

 この想いだけは、

 どこまでも届くまで叫び続ける――

 

 その時、ふと気配が変わった。

 ゆっくりと顔を上げると、

 ――そこにいるはずの三人の仲間の姿は、もうなかった。

 

 「……え?」

 

 驚いて振り返ると、

 彼らはすでに、背を向けてエリス神殿の方角へと歩き出していた。

 

 デスマスクが、振り返りもせずに親指を立てて見せる。

 

 「ケッ…最初からそう言やあいいんだよ。手間かけさせやがって」

 

 アフロディーテが、優雅に微笑みながら後ろ手で手を振る。

 

 「全く。愛の告白はもっとスマートにしてほしいものだ」

 

 そしてシュラが、静かに、しかし力強く言い放った。

 

 「行くぞ、アイオロス。友の頼みを、断る聖闘士がいるものか」

 

 目頭が熱くなった。

 喉の奥が痛くなった。

 俺は、声にならない想いを必死に押し殺して、

 仲間たちの背中を追いかけた。

 

 「ありがとう……!ありがとう……!」

 

 小さな声で、何度も何度も呟いた。

 それしかできなかった。

 

 四人の黄金聖闘士は、

 もはや「アテナのため」でも「正義のため」でもなく、

 ただ一人の友のために、

 邪神が待つ神殿へと歩み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

――邪神の神殿、静かなる出撃――

 

 

 禍々しい闇をまとった巨大な神殿が山の中腹にそびえ立つ。

 かつてギリシャの地にあったはずの争いの女神エリスの神殿が今はこの日本の片隅で、

 異様な小宇宙を撒き散らしながら不気味に沈黙していた。

 

 山道を踏みしめ、ついに神殿の姿を肉眼に収めた四人の男たちがいた。

 

 アイオロス――射手座の黄金聖闘士。

 シュラ――山羊座の黄金聖闘士。

 デスマスク――蟹座の黄金聖闘士。

 アフロディーテ――魚座の黄金聖闘士。

 

 最初に沈黙を破ったのはアイオロスだった。

 

 「やはり…争いの神エリスの復活は、伝説ではなかったか」

 

 神話としてしか語られなかった邪神の復活。

 今目の前に広がる現実。

 アイオロスの声には、わずかな戸惑いと、

 それでも戦士として抗う決意が宿っていた。

 

 続いてデスマスクが苛立たしげに舌打ちをした。

 

 「けっ! だが黄金聖衣がないのが痛えな。日本の税関さえ仕事をしなけりゃな…」

 

 その言葉に、場の空気がわずかに和らぐ。

 

 アフロディーテは、他の三人とは別の場所を見ていた。

 彼の美しい瞳は、ただ神殿の頂点だけをまっすぐに捉えている。

 

 「翔子…無事だと良いのだけれど…」

 

 囚われの少女――翔子。

 彼女のために。ここまで来た自分たちの“個人”としての願いを静かに呟いた。

 

 その場に漂うためらいを断ち切ったのは、シュラだった。

 

 「ここでこうしていても始まらん。突入するぞ」

 

 その声は鋭く、迷いがない。

 新選組の一番槍のごとき率直さで、

 全員を“戦いの空気”へと引き戻した。

 

 アイオロスが小さく頷く。

 

 「…ああ。ここで迷っている時間はない。

 俺たちが止まれば、その分だけエリスの小宇宙は強大になる」

 

 デスマスクは、内心の不安を押し殺し口元に悪党の笑みを浮かべた。

 

 「どうせやるなら、ド派手にやるか。…ゴーストどももまとめて成仏させてやらぁ」

 

 アフロディーテは微笑みを消し静かに拳を握る。

 

 「ええ…私も、あの娘の涙だけは、絶対に見たくない」

 

 四人は最後の確認も言葉も要らなかった。

 

 互いに視線を交わし、わずかに頷き合う。

 

 神殿からは、既に亡霊聖闘士(ゴーストセイント)たちの不穏な気配があふれだしている。

 その奥で、翔子と沙織、

 そして争いの女神エリスが待っている。

 

 

 

 

 

(アイオロス視点)

 

 

 「おい、アイオロス。俺たちはともかく、お前だけでも黄金聖衣を纏ってきた方がよかったんじゃねえのか?お前の聖衣は、すぐそこの屋敷にあるんだろうが」

 

 デスマスクの意地悪な視線と問いかけに、俺は一瞬息が止まった。

 

 (しまった……!翔子のことで頭がいっぱいで、自分の聖衣のことなど、完全に忘れていた……!)

 

 城戸邸にある、射手座の聖衣――本来ならどんな強敵を前にしても、俺の身体と魂を守る、黄金聖衣。それを置いてきてしまっただなんて……もしや一生の不覚ではないか?いや、今さらそんな弱みは見せられない。

 

 咄嗟に咳払いを一つ。

 俺はプライドと見栄をすべて総動員して、口を開いた。

 

 「ふん、わざとに決まっているだろう!黄金聖衣を纏えば、その絶大な小宇宙で、エリスに我々の接近を即座に気づかれてしまう!今回は奇襲が目的だ!あえて聖衣を纏わずに来たのは、敵の警戒を解くための高等戦術だ!」

 

 ……自分でも「ちょっと無理がある」と思ったが、

 幸い、誰も突っ込まなかった。

 いや、突っ込まれなかっただけでデスマスクとアフロディーテのジト目が痛い。

 視線で「まあ今さら戻れないしな」とでも言いたげだ。

 

 シュラは淡々と話をまとめる。

 

 「戦術だろうが忘れ物だろうが、もはや関係ない。我らは今ある力で戦うのみだ」

 

 俺は気を取り直し、目の前の神殿を見据えた。

 静かに、胸の中で呼吸を整える。

 英雄としての鎧はもう捨ててきた。

 けれど、戦士としての誇りは、今も胸に宿っている。

 

 「正面から四人で突入するのは愚策だ。敵の戦力を分散させ、翔子とアテナ様を救出する時間を稼ぐ。手分けして神殿に突入する!」

 

 その言葉が口をつくと、胸の内に眠っていた聖闘士としての本能が目を覚ました。

 

 「シュラ。お前は東門から。エクスカリバーで道を切り開け」

 

 「了解した」

 

 「デスマスク。お前は西からだ。その積尸気の力が、亡霊聖闘士には有効かもしれん」

 

 「上等だ。死体どもは俺様の出番だな」

 

 「アフロディーテ。お前は神殿の裏手にある庭園から侵入しろ。お前の毒薔薇が、エリスの結界に穴を開けるやもしれん」

 

 「ええ、お望み通りに。美しく咲かせてみせましょう」

 

 「俺は正面から突入し、敵の主力を引きつける!」

 

 作戦は簡潔だが、無駄がない。

 今この状況でできる最善の選択だ。

 

 三人は俺の言葉に無言で頷いた。

 互いに信頼と覚悟の視線を交わす。

 誰もが、自分の役目を理解しそれに命を懸ける覚悟があった。

 

 (頼む、みんな――俺たちは必ず、翔子とアテナ様を連れ戻す)

 

 心の中でそう誓いながら、俺は最後に、力強く皆に呼びかけた。

 

 「行こう。すべては、俺たちの“願い”のために!」

 

 四つの小宇宙がそれぞれの道へと燃え上がる。

 

 俺たちは、各々の想いを胸に、

 愛する者と友のためこの神殿の闇を切り裂くべく、

 四方に散った――。




【そのころエリス神殿】

エリス「ふう……。これでオムツ交換も完璧。やはり女神といえど、育児は修羅の道ね」
翔子(精神内ツッコミ)「私のおかげでしょうが!」

沙織「……(すやすや)」

エリス「……さて!ゴースト5!お前たち、そろそろ出陣のときだ!」

魔矢「はいっ!」
ヤン「御意!」
クライスト「いざ!」
オルフェウス「心の準備は万全です!」
ジャガー「うぉおお、やったるで!」

エリス(玉座にどっかり座り直しながら)「よろしい!全員出動しなさい!……ふふふ、ついに黄金聖闘士との全面対決――」

……沙織「ふにゃぁぁ……(また泣き出す)」

エリス「ちょ、また!?ちょっと待ってまだオムツ替え……え、なんで!?ええい!誰か交代!」

亡霊五人(全員目をそらす)

エリス「………………」

――どこまでも締まらないまま、女神の戦いは続くのであった。

この先の物語は

  • もっとギャグに振りきってくれ‼‼
  • シリアスな熱血が聖闘士星矢だ!
  • バランスよくどちらも見たい
  • 全部盛り込んでぶっ飛べばいいと思うよ
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