聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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冥界の門番・デスマスク、神殿西回廊に立つ――
迫るは蘇りし南十字のクライスト!
不毛な意地と意地、誇りと誇りがぶつかり合う果てなき殴り合い。
「墓場の案内は任せな、蘇り損ねの亡霊ども――!」

魂を賭けたプライドの綱引きに、決着の瞬間は訪れるのか!?
次回、「意地のぶつかり合い!黄金と亡霊の果てなき死闘」
聖闘士の意地が、今、神殿に燃え上がる――!


意地のぶつかり合い!黄金と亡霊の果てなき死闘

(デスマスク視点)

 

 

 エリス神殿――西の回廊。湿った空気と禍々しい気配が足元にまとわりつくようだ。

 俺はスーツ姿のまま、ポケットに手を突っ込んで闊歩する。

どこからともなく血の匂い――いや死の気配が漂ってくる。悪くない。俺はこういう場所が性に合ってるんだ。

 

 不意に頭上で「ギシッ」と石の擦れる音がした。

 即座に身をひねって避ける。直後、俺のいた場所に巨大な石像が落下し、床を粉々に砕いた。

 「なぁにが歓迎の演出だよ。少しは品良くやれっての」

 皮肉めいた独り言を呟いた瞬間、回廊の闇がざわめき笑い声が響いた。

 

 「ハハハハハハハ!流石は蟹座のデスマスク!」

 

 声の主を睨みつける。

 「誰だ?陰でコソコソしてねぇで出てこい」

 

 闇が揺れ、男が姿を現す。十字架を模した赤い聖衣、嫌な色に染まった小宇宙――間違いない。

 

 「クライスト……南十字星のクライスト」

 

 「てめえが亡霊聖闘士か」

 

 「俺たちは、女神エリス様の力で蘇った!次に墓場へ行くのは――お前だ!」

 

 「墓場ねぇ……」

 

俺は肩をすくめ、鼻で笑う。

 

 「お前みたいな“蘇り損ね”の相手は初めてだ。だがな、俺は冥界の門番だぜ。墓場の使い方は、てめぇなんかより知ってる」

 

 クライストは聖衣の肩で十字を切り、俺に死を宣告する。

 

 「神をも冒涜した罪、その身で償うがいい!」

 

 「へっ、墓場の案内なら慣れてるさ。だがお前にはまだ聞きたいことがある。俺が知りたいのは――“あの女神の依り代”の場所だ。さっさと吐いてもらうぜ」

 

 クライストは一瞬、口元を歪めて不敵に笑う。

 「答えは――俺を倒してから聞くがいい!」

 

 俺は静かに手を掲げ小宇宙を高める。

 「なら――遠慮はいらねぇな」

 

 積尸気が俺の指先に集まる。燐気の青い炎。死を司る聖闘士の証。

 クライストも邪悪な雷光をまとって十字架の腕を広げる。

 

 「――積尸気魂葬波(せきしきこんそうは)!」

 

 「――サザンクロス・サンダーボルト!!」

 

 青い閃光と黒い稲妻、死の波動と邪悪な雷撃が激突する。

 回廊が爆音で震え石壁が一瞬で崩れ落ちる

 

 (……やるじゃねぇか)

 

 煙が晴れると、スーツの胸元から腹までが十字にざっくり裂けていた。

 「……ああ、気に入ってたんだがな」

 苦笑しながら切れた生地を払い落とす。だが肉体への傷はない。

 クライストも肩で息をしている。聖衣には俺の蒼い炎が深く食い込んでいる。

 

 「初撃は――五分ってとこか」

 

 クライストは血を啜りながら唇を吊り上げた。

 「蟹座は伊達じゃないか。だが――次はないぞ!」

 

 「ハッ、いいねぇ、その顔……死ぬ覚悟はできてるな?」

 

 俺はわざと余裕のある笑みを浮かべてみせる。

 

 (こいつの攻撃……ただの雷じゃねぇ。聖なるものを装いながら、内側は“呪い”そのもの。もし喰らえば……下手をすりゃ魂ごと焼き切られる)

 

 回廊に積もる死の気配。

 だが俺の居場所は――常にここだ。

 

 「さあ、続きといこうぜ……地獄の門は開いてる」

 

 

 拳を交え、炎と雷、死と死が絡み合う。

 相手の拳が俺の顎をかすめた。だが痛みなど感じない。

 こいつも生者じゃない。執念だけで動く亡霊。

 

 「どうしたデスマスク、貴様の名を冠した“死”が、その程度か!?」

 

 「ふざけるなよ……!」

 

 拳が唸る。互いの必殺がまたも正面で激突する。

 積尸気の炎がクライストの胸を抉り、

 サザンクロス・サンダーボルトが俺の肩を焼く。

 どちらも譲らず、どちらも退かない。

 

 「これが、死者の意地ってやつだな……!」

 俺は舌先で血を舐めニヤリと笑った。

 

 (冥界の門番。蟹座のデスマスク。死を操り、魂を地獄へ導く者――だが、こいつら亡霊に“死”は効かない。なら、どうする――?)

 

 クライストは嬉々として叫ぶ。

 「お前の積尸気が死をもたらすなら、俺の十字架は呪いをもたらす!冥界で悶え苦しむがいい!」

 

 十字架の腕が空間を裂く。

 無数の雷撃が壁を貫き、俺の足元に突き刺さる。

 (速ぇ……!)

 

 間一髪で身を翻すが、稲妻の一撃が脇腹を掠めた。

 ジリジリとした痺れが身体に広がる。

 

 「ククク……どうした蟹座!俺の力の前に、もう動けまい!」

 

 「へっ、まだまだこれからだぜ……!」

 

 

回廊に青白い炎が揺れた。

 ――積尸気冥界波。魂を冥府へと直送する、俺だけの“死神の鎌”だ。

 

 「終いだ。観念しな」

 

 構えた指先から、小宇宙が音もなく立ちのぼる。

 クライストは闇の向こうで歯を剥き、俺を睨みつけてきた。

 

 「フン、肉弾戦で勝てぬと見て、魂に直接干渉するか。貴様、それでも聖闘士か! 卑怯者め!」

 

 小気味良い罵声だった。俺は鼻で笑う。

 

 「ケッ、死人に卑怯もクソもあるかよ。……だが、面白ぇ。お前の土俵に乗ってやる」

 

 あえて積尸気冥界波の構えを解いた。

 燐気がスッと収まり、代わりに拳に力がこもる。

 

 (こいつみたいなゾンビ野郎に「逃げた」とか思われるのは、胸糞悪い――)

 

 「いいだろう。俺の拳が届くか、お前の呪いが俺を斃すか……純粋に試してやるぜ!」

 

 クライストの顔が歪む。挑発にまんまと乗せられたのだろう、

 「ならば、聖闘士として相応しい決着をつけるまで!」

 

 ふざけた正義感だ。亡霊にしては律儀なもんだぜ。

 

 「さあ来い、南十字星!」

 

 俺が叫ぶと同時に、クライストが十字架の腕を閃かせて突っ込んできた。

 拳と拳、膝と膝。死者同士の意地のぶつかり合い。

 

 雷のような打撃が何度も飛んでくる。だが、その全てがスローモーションに見えた。

 「……おせぇよ」

 軽く体を捻って、クライストの拳をひらりと躱す。

 

 (……所詮、白銀か)

 

 相手の小宇宙も動きも、黄金に比べれば話にならない。

 俺の拳がクライストの顎をかすめ、彼の聖衣の亀裂がまた一つ増える。

 

 「どうした。女神の使いだか何だか知らねぇが、魂だけで動いてるゾンビじゃ俺の相手はできねぇだろ」

 

 クライストは必死に吠える。

 「貴様の拳では、俺は倒れん!死してなおエリス様のために――!」

 

 やけに律儀な亡霊だ。

 

 膠着――それはじわじわと苛立ちを増す最悪の展開だった。

 

 「チッ……面倒な奴だ……!」

 

 こっちは聖衣もなし、本気でやると相手が壊れすぎて情報も引き出せない。

 かと言って手加減してもキリがない。

 

 殴っても殴っても、倒れる気配がない。相手の聖衣にいくらヒビを入れても、クライストの動きは鈍らない。

 

 クライストの目がギラギラと光る。

 「死んだ身に、失うものなど何もない。お前のような俗物に、エリス様の理想は分かるまい!」

 

 「うるせぇな。宗教の勧誘か?」

 

 あざけり混じりに言い捨てて、サイドステップで攻撃を外す。

 だが――終わらない。まるで永遠の死合だ。

 

 (まいったな……)

 

 俺の苛立ちは頂点に達しつつあった。

 こっちは本気を出せば、すぐにでも魂を冥府へ送ってやれる。

 だが、それはこいつの“逃げ”を認めることにもなる。

 

 (……プライドの張り合いが、一番めんどくせぇ)

 

 

 拳と拳がぶつかり合い、だが、決定打が出ない。

 互いに汗を滲ませ、息を荒げるが、それだけだ。

 

 「どうしたデスマスク!お前の拳も、もうガス欠か!」

 

 「……いいや。単に飽きてきただけだ」

 

 俺はわざとあくびをしてみせる。

 (こいつ、そろそろ何か策を講じてくる頃だろう……)

 

 この膠着がどれだけ続いたか分からない。

 石畳を何度も転がり、血と汗と小宇宙の匂いが、回廊に充満していた。

 

 クライストは呼吸を荒らしつつも、異様な生命力を保っている。

 「どうした、蟹座の黄金聖闘士!女神のために命を懸ける誇りもないのか!」

 

 「誇り?ああ、あるぜ」

 俺は笑って、再び拳を振るう。

 

 (だが、くだらねぇ宗教と一緒にされたくはねぇんだよ)

 

 俺の拳がクライストの顔面を捉えるが、やはり倒れない。

 (……ちっ、いよいよ本当に、終わりの見えねぇ戦いになってきたな)

 

 冗談じゃねぇ、こんなゾンビと不毛な殴り合いを続けるために、

 俺は冥界の門番やってんじゃねぇ――!

 

 戦いながらも、頭の中では既に「どうやって終わらせるか」を考えていた。

 

 このままプライド勝負を続けても、埒があかない。

 本気で魂ごと消し飛ばせば情報も聞き出せねぇ。

 しかし、半端に殴り続けて、どっちも倒れないままじゃ、先に進めねぇ。

 

 (やれやれ……つくづく性に合わねぇ舞台だな)

 

 クライストが、再び無数の雷撃を振りかざして突っ込んでくる。

 

 「うおらぁっ!!」

 

 俺は咄嗟に側転で回避。すれ違いざま、背中に一発カウンターを入れる。

 手応えはある。だが、やはり倒れない。

 

 「はっ、そんなもんか黄金聖闘士!」

 

 こっちの小宇宙が本気で燃えれば、こんな亡霊など一瞬だ――

 でも、それでは“負け”だ。こいつに“逃げた”と言わせるのが一番シャクに障る。

 

 拳を握り直す。

 

 回廊には、俺とクライストの息遣いだけが響いていた。

 石壁が砕け、床には十字の焦げ跡と積尸気の黒い焼け跡が残る。

 苛立ちと誇り、意地の綱引き。

 黄金と白銀、聖闘士同士の執念だけが、回廊を満たしていた。

 

 (……そろそろ決着をつけてやるさ)

 

 俺は冷たく笑い、もう一度、拳に小宇宙を込める。

 

 「……クライスト、てめぇもそろそろ、冥府への片道切符を用意しとけよ」

 

 だが、その声はまだ届かない。

 不毛な膠着は、まだ続く――

 決着の瞬間を、神殿の闇がじっと見つめていた。

 

 




ヤン「……しかしさぁ、いつも気になってたんだけどよ。お前、あの矢、聖衣のどこに仕込んでんだ?」

クライスト「いや、俺も気になってたんだ。あの一発、絶対どこかに隠してるだろ?」

魔矢「へへっ、実はな――“仕込んでる”んじゃねえんだよ」

クライスト「ん?じゃあどこに?」

魔矢「戦場に来る前に、そこら中に“矢”を隠しておくんだ。壁の裏とか、柱の影とか、いざって時に拾うだけさ」

ヤン「お、お前それ……卑怯というか、もはや……」

魔矢「勝てばよかろうなのだ!これが“冥府流”よ」

クライスト「いやあ、やっぱ亡霊は発想がフリーダムだな……」

魔矢「うるせぇ!今度からお前にも一本貸してやるよ!」

クライスト「いらん!俺は雷だけで十分だ!」

この先の物語は

  • もっとギャグに振りきってくれ‼‼
  • シリアスな熱血が聖闘士星矢だ!
  • バランスよくどちらも見たい
  • 全部盛り込んでぶっ飛べばいいと思うよ
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