聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
待ち受けるは、盾の誇りを宿す男ヤン。立ちはだかる神盾に、黄金の剣シュラの一閃は届くのか!?
そして、美の聖闘士アフロディーテに迫るは、伝説の吟遊詩人オルフェウス。
“美”と“死”を賭けた夜想曲――
死闘の果てに輝くものは、矜持か、それとも哀しき誓いか。
次回――「死線を超えて――黄金聖闘士の矜持」
戦士たちの魂が、今、火花を散らす!
(シュラ視点)
東の城壁を打つ冷たい風が、古(いにしえ)の神殿の石畳を鳴らす。
重い足取りで、その回廊を進んでいた。
任務は明白だ。アイオロス、デスマスク、アフロディーテと共に、女神アテナ、そして翔子の救出。だが今はそれすらも霞むほどに、俺の前に立つ男の存在感は圧倒的だった。
「……貴殿が山羊座のシュラか」
低く、重い声。その男の名は、盾座(スキュータム)のヤン。
彼の左腕には、神話の時代より伝わる“神盾”が光を弾くように輝いていた。
何より、その瞳には一切の迷いがない。
「聖剣(エクスカリバー)と謳われるその拳が、我が盾座の盾に通じるか。この身で、試させてもらいたい」
(この男……)
殺気でも敵意でもない。
戦士としての純粋な欲求、それだけでこの場に立っている。
その“純粋さ”こそ、最も厄介だ。
「下らん。感傷に浸っている暇はない。そこをどけ」
吐き捨てて通り過ぎようとするが、ヤンは返事も待たずに突っ込んできた。
盾を構え、堂々と自分が神話の時代の英雄であるかのような勢いで。
「来い!山羊座のシュラ!」
最初の一撃は、あまりにも直線的だった。
俺は軽く体を捻り、ヤンの拳をかわす。だが、盾の縁がほんの僅かに俺の腕をかすめた。
(……!)
まさか、俺が……?
黄金聖闘士である俺が、こんな格下――亡霊相手に、一撃を許すとは。
(油断……か)
自分が情けなかった。
“黄金”という自負が、判断を曇らせた。
だが、この男――ヤンは決して侮れない。
盾座。
白銀聖闘士の中でも、最も「守り」に特化した存在。
“最強の盾”の異名は伊達ではない。
俺は構えを改めた。
「……認めよう。貴様はただの亡霊ではない。盾座の戦士、ヤン――その覚悟、しかと受け取った!」
ヤンの目が誇らしげに輝く。
「ならば望み通り――受けるがいい! 我が聖剣、エクスカリバーを!」
全身の小宇宙を、両の腕に集める。
光が、刃となって漲る。
伝説の“聖剣”が、俺の腕そのものと化す。
「行くぞ――エクスカリバー!!」
渾身の一撃だった。
己の魂と誇り、黄金聖闘士の矜持すべてを、
ただこの一閃に込める。
ヤンは盾を正面に掲げ、真正面から俺の一撃を受け止める構えだ。
――その姿勢に迷いなし。
剣と盾、魂のぶつかり合い。
黄金と白銀、時代も運命も違えど、ここに集った戦士同士の意地。
聖剣の光刃が、神盾を叩いた。
雷鳴のような轟音。
回廊が激しく震え、石畳が音を立てて砕ける。
剣と盾が激突した瞬間、世界が白く弾けた。
俺のエクスカリバーは、いかなる聖衣をも切り裂くはずだった。
――だが、ヤンの“神盾”は砕けなかった。
拳が盾に叩きつけられた瞬間、信じられぬ反作用が腕に返ってきた。
「ぐっ……!」
手のひらから肩にかけて、痺れるような痛みが走る。
肉体だけではない。小宇宙同士のせめぎ合いが骨を軋ませ魂を焼く。
(この盾……本物か!)
ヤンの盾は見た目こそ白銀だが、その“密度”と“質”は明らかに黄金にも引けを取らない。
俺の渾身の一撃すら通さない――
ヤン自身も盾を掲げ続けている。
「見事な腕だシュラ! だが、これで終わりだ!!」
声と同時に、ヤンの上空に飛び上がる。
「ボーン・クラッシュ・スクリュー!」
螺旋を描いた衝撃波が、俺の全身をなぎ払うべく襲いかかってきた。
(……これは……まずい!)
ただの打撃ではない。
盾の内側に込められた小宇宙が“螺旋”となって増幅し、骨の一つ一つを粉砕せんと襲ってくる。
紙一重でその場を滑るようにかわす――
それだけで、空気が腕を削り、全身の骨が“ギシッ”と音を立てた。
「……っ、く……!」
しびれた腕を押さえつつ、距離を取る。
だが背後はもう壁しかなかった。
ヤンは即座に距離を詰め、二撃目、三撃目を狙ってきた。
戦士として好機を見逃すような愚か者ではない。
(このまま正面から受ければ、確実に骨を砕かれる――!)
ヤンの盾が次の一撃を放つ。
「ボーン・クラッシュ・スクリュー!!」
――今度は左右のフェイントを混ぜてくる。
破壊力だけでなく、技の精度も高い。
さすがは「最強の盾」と呼ばれるだけのことはある。
冷静になれ。
俺は黄金聖闘士。
どんな危機でも決して冷静さを失ってはならない。
ヤンの盾から放たれた螺旋の衝撃波が、再び俺を襲う。
だが――正面から受ける必要はない。
力を“受け流し”相手の体勢を崩す。
それが「剣」の本質だ。
俺は僅かな隙を突き、ヤンの体を横へと誘導する。
盾が壁に食い込み勢いでヤン自身の体勢が崩れる――
(今だ――!)
「ジャンピング・ストーン!!」
鍛え抜いた脚力と剣術に通じる体捌き。
俺はヤンの巨体を足払いで翻しそのまま壁へと投げ飛ばした。
「ぐあっ……!」
ヤンの身体が、神殿の壁に叩きつけられる。
盾が石を砕き激しい音が響く。
だが、決着には程遠い。
ヤンはすぐに起き上がり、また盾を掲げている。
腕のしびれは、まだ抜けない。
だが気持ちは静かだった。
「……盾座の盾、見事だった」
ヤンは、息を整えつつ、満足げに笑みを浮かべる。
「シュラ……貴殿の“剣”も、神話の時代に比肩する威力だ」
お互い、まだ倒れはしない。
俺は再び拳を構える。
小宇宙を高め、もう一度だけ自分自身に誓う。
(黄金聖闘士――この称号に、恥じぬ戦いを)
戦いの幕はまだ下りていない。
「行くぞ、ヤン……!」
盾座の亡霊も盾を掲げ、再び立ちはだかる。
神殿の静寂に、二人の呼吸だけが響く。
◆
その頃、神殿の最奥を目指すアイオロスの身体を、確かな異変が蝕んでいた。目のかすみ、断続的なめまい、そして吐き気 。魔矢の矢が放った毒が、彼の小宇宙を内側から乱し始めていたのだ。だが、彼は足を止めない。翔子とアテナを救うという、ただ一つの目的のために。
◆
(アフロディーテ視点)
神殿の回廊――
私の足がふと止まった。
美しい。
夜空を裂くような静謐な旋律が、石造りの廊下にゆっくりと満ちていく。
その一音一音が、心の奥底に眠る記憶さえ優しく呼び覚ます不思議な魔力を帯びていた。
「…なんて、美しい曲なんだ」
思わず、ため息と共に本音が漏れた。
私は決して“ただの戦士”ではない。
この世で最も美しいもの、それを嗅ぎ分け見抜く美の聖闘士――魚座(ピスケス)のアフロディーテ。
“美”の名のもとに、私は人も神も――そして自らの運命さえも品定めして生きてきた。
――その美意識が、今この竪琴の調べに強く揺さぶられていた。
やがて闇の奥から男の声が響く。
「私の曲を気に入ってくれたようだね、魚座よ」
私はわずかに目を細め、闇の向こうに視線を送る。
現れた男の身に纏われたのは、伝説の聖衣――琴座(ライラ)の聖衣。
「なぜ私の名を……その聖衣……まさか、伝説に謳われた吟遊詩人……」
男は優雅に微笑み、竪琴の弦を爪弾いた。
「そう、私は琴座(ライラ)、オルフェウス。そしてこの曲は、君への鎮魂曲(レクイエム)だ」
私は、皮肉な笑みを浮かべてみせた。
「なんだと?……笑えない冗談だ」
警戒する間もなく、オルフェウスが竪琴を鳴らす。
その音色は、まるで目に見えぬ鎖のように私の全身を絡め取り、
気づけば私は、腕も脚も全身が絹糸のような小宇宙の“弦”で縛られていた。
「……ッ!」
首に食い込む感触が、呼吸を奪う。
胸が苦しい。視界が狭まり意識が薄れていく。
「さあ、安らかに眠り給え、我がストリンガー・レクイエムで!」
美しい曲に包まれて、死ぬ。それは一見悪くない最期だ。
だが――
「これで君も終わりだ、魚座」
喉元の弦がより強く食い込んでくる。
――私はこんな所で、終わるつもりはない。
美しいものは、ただ“美しい”だけで良いわけではない。
真の美は絶望の中でなお輝きを放つ“強さ”だ。
(私の美学は、敗北の中で死ぬことなど決して許さない――
醜くあがき、泥にまみれても“美”を掴むためなら私はどこまでも強く在り続ける)
呼吸が苦しい。
目の前が歪みオルフェウスの姿が滲む。
だが、私はゆっくりと口の端を上げた。
「……見事な音色だ、オルフェウス」
苦しげな声で、私はかすかに笑った。
「だが、美しきものに眠りを強いるなど、君こそ“美”を冒涜しているとは思わないのか?」
オルフェウスの指がぴたりと止まる。
「……何?」
私は絞り出すように続けた。
「真の美は、決して静寂など望まない。
命を懸け、醜くもあがき続けてこそ――その輝きは永遠に消えない。
君の鎮魂曲は確かに美しい。だが私の“薔薇”は死の淵ですら咲き誇る――」
絶体絶命のはずだった。
だが――私は、追い詰められてなお微笑んでいた。
闇に絡めとられた肉体。
竪琴の弦が首に、手首に、足首に絡みつく。絞め殺される窒息感。
(美しきものよ、死の瞬間まで油断をするな)
闇の中、妖艶な微笑みを浮かべた瞬間私の周囲の空気が一変する。
「余計な抵抗をしなければ、楽に死なせてやれたものを…」
オルフェウスの言葉を、私は鼻先で笑い飛ばす。
「私には、まだ死ぬ予定はないのでね――死ぬのはお前の方だ」
次の刹那。
私の身体を縛る小宇宙の弦が、何かに食い破られる音がした。
真っ黒な影、闇に溶け込むほど深い漆黒の薔薇――
それが無数に咲き乱れ、ひしめき合いながら見えない弦を噛み砕いていく。
「ピラニアンローズ…!」
闇の捕食者――全てを喰らい尽くす黒薔薇。
美と死とを両立させる、私の“薔薇”が姿を現した。
弦は片っ端から粉々にされ、私の自由が戻る。
私はその余韻を纏いゆったりと立ち上がる。
「さて……伝説の吟遊詩人よ。君の鎮魂曲(レクイエム)は、まだ私には早すぎるようだ」
オルフェウスの瞳に、わずかな狼狽が走る。
だが、私はその隙を逃しはしない。
「ロイヤルデモンローズ――!」
指先から放った真紅の薔薇が、夜風に舞い上がり甘美な香りを一帯に満たす。
その香りを吸った者は夢とうつつの狭間で五感を奪われ静かに“死”へと誘われる。
「赤い薔薇の香りを吸った者は、五感を奪われ陶酔のうちに死に至る。さらばだ、伝説の聖闘士」
そう囁いた瞬間、オルフェウスの瞳にかすかな陶酔の色が浮かんだ。
彼の指は竪琴の弦から離れ身体がほんの僅かに揺らぐ。
今この瞬間、彼の世界は薔薇色の夢に包まれている――はずだった。
私の油断――それが、死の薔薇の美学に裂け目を作った。
「……夢を見ている暇はない!」
オルフェウスの叫びとともに、小宇宙が爆発する。
竪琴の弦が金色の光となり空間そのものを震わせる。
幻覚が破られ、私の意識が鋭く現実に引き戻される。
「ストリンガー・ノクターン!!」
竪琴の弦を打ち鳴らすその音は、もはや静かな旋律ではない。
破壊的な音波――美の夜想曲(ノクターン)が私の身体を容赦なく貫いた。
「――ッ!!」
息が詰まる。
防御する暇すら与えられず、私の身体は壁にたたきつけられた。
強烈な衝撃が内臓を揺らし、身体中の骨が軋む。
私は――思わず呻き声を漏らした。
情けない。
私は魚座の黄金聖闘士。
なのに……白銀聖闘士の一撃を真正面から食らった。
この屈辱、この痛み……自らの慢心に私は心底苛立っていた。
(……何をやっている、アフロディーテ)
私は、美を、誇りを、勝利を、たやすく信じすぎた。
もう二度と、油断はしない。
立ち上がる。
膝を押さえ吐き出した血を袖でぬぐう。
「……やるじゃないか、オルフェウス」
私はまだ終わらない。
「今のは、見事なノクターンだったよ。
だが、“美”を見届けるのは、私の役目だ。
私の薔薇も、君の竪琴も、
どちらがより気高く、より深く“死”を奏でられるか――」
オルフェウスは竪琴を再び構え、爆発的な小宇宙を放つ。
その目は、かつてないほど真剣だ。
「……いいだろう、アフロディーテ。
今度こそ、君の“美”の極致を見せてもらおう!」
「望むところだ。
美の聖闘士は、死の淵でこそ、最も鮮やかに咲くものだ」
小宇宙が燃え上がる。
私の指先には再び、黒薔薇と紅薔薇が咲き乱れる。
美しきものよ――
その最期まで、私の美学を見届けてみせろ。
これより先は、小手先の技巧では届かない。
ただ、命を懸けて美と死を奏でるだけだ。
神殿の一角、月光に照らされた石畳の上で、
美の聖闘士と伝説の吟遊詩人、
最後の死闘がいま、静かに幕を開ける――。
(その頃のアイオロス)
アイオロス「……ん、またふらつく……。めまい 吐き気 原因……っと。(スマホで検索中)“脱水、ストレス、毒物”……毒か、やっぱり……常備薬、ええと……(ゴソゴソ)胃薬か、頭痛薬か、ビタミン剤か……まあ、何か効くだろ(パキッ、ゴクリ)。……頼むぞ、オレの胃袋。」
(その頃の翔子とエリス)
翔子「暇すぎるんだけど……ねえ、しりとりしよ」
エリス「よかろう。退屈しのぎも神の嗜み……“リンゴ”」
翔子「ごま油」
エリス「ラピスラズリ」
翔子「リス……えっ、今の、微妙に反則っぽくない?」
エリス「ふふふ、神に反則など存在しないのだ。さあ、そなたの番だ」
翔子「(……暇だな……早く助けてよ、アイオロス君……)」
この先の物語は
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もっとギャグに振りきってくれ‼‼
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シリアスな熱血が聖闘士星矢だ!
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バランスよくどちらも見たい
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全部盛り込んでぶっ飛べばいいと思うよ