聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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玉座の闇を裂き、現れしは教皇にして最凶の双子座(ジェミニ)!
友を庇い、敵を嘲り、宇宙(コスモ)そのものを握り潰す男の一瞥が、神殿の時間を止める――!

瀕死のアイオロス、五感を蝕む毒!
ジャガーが踏み潰さんと迫る刹那、
空間はねじれ、星々が悲鳴を上げる――。

「隕石ごときが、銀河に及ぶものか。」

解き放たれるは破滅の星群爆砕――
銀河爆発(ギャラクシアン・エクスプロージョン)‼
同時に走る三条の黄金光――山羊・蟹・魚、戦場へと翔ぶ聖衣!

女神エリスよ、戦慄せよ。
「黄金の矢」は必ず来る――運命は、もう射られた!


双子座の咆哮!銀河爆発(ギャラクシアン・エクスプロージョン)‼

(サガ視点)

 

 

 ――やはり、生きていたか。

 

 玉座の間に足を踏み入れた瞬間、血の匂いが鼻を刺した。

 視線の先には、床に崩れ落ちた黄金の弓手。

 息は荒く、聖衣も纏わず傷だらけで……それでも、まだかすかに小宇宙が揺らめいている。

 

 俺は表情を変えなかった。

 だが胸の奥で長く燻っていた疑念が、確信に変わる音を聞いた気がした。

 

 2年前――聖域の政務室。

 退屈な書類を片付ける合間に、教皇執務用端末のニュースフィードを流し見していた時のことだ。

 画面の片隅に小さな見出しが躍っていた。

 

 「全日本中学弓道大会、外国籍転校生が初出場で優勝」

 

 普段なら、そんな話題に目を留めることはない。だが、添えられた映像の構え――。

 左足のわずかな開き、弦を引く腕の角度、視線の定め方。

 俺の記憶に刻まれた、かつての友のそれと寸分違わなかった。

 

 さらに記事には「城戸アイオロス」などという名前。目の奥の光、筋肉の張り――数多の戦場で共に死線をくぐった者の匂いは、画面越しでも消えはしない。

 

 善き人格――あの偽善者のサガは気にしないようにしていた。

 知ればどうなるか分かっている。

 奴は「秩序」や「正義」を都合よく振りかざし、この友を「聖域の秩序を乱す危険因子」として葬るだろう。

 理由は簡単だ。奴は自分の正しさを証明するために、かつての友ですら利用し切り捨てることを躊躇わないからだ。躊躇えば崩壊するだろうから。

 

 ――そんなこと、俺が許すはずがない。

 

 だからこそ、俺は密かに情報を集めた。

 写真、映像、噂。

 そして今日、確信を得た。

 ここで血を流し、意識を失っているこの男は、紛れもなくアイオロス。

 俺が知る唯一無二の戦友だ。

 

 狼狽するオリオン座のジャガーには、一瞥もくれない。

 今はどうでもいい。

 視界にあるのは、ただ一人――友の姿だけだ。

 

「……フン、愚か者が。この程度の者に、ここまでやられるとはな」

 

 口をついて出たのは、あえての侮蔑。

 

 床に膝をつく。

 右手の指先で、的確に「心央点」を突いた。

 血流が抑えられ、失血による衰弱は最小限に止まるはずだ。

 

 

 言葉は冷たいまま、指先の動きは驚くほど慎重で、正確で、そして……優しい。

 

 ――安心しろ。

 善き人格のサガには、お前の生存は絶対に知らせない。

 奴の意識が届く前に、俺は戦場から引き上げる。

 

 処置を終え、立ち上がる。

 次にすべきは、この戦場の均衡を整えることだ。

 

 虚空に小宇宙を放ち、次元の扉を開く。

 空間がひび割れ、その奥から黄金の輝きがあふれ出す。

 

「……お前たちの聖衣を、今ここに送る。さっさと勝ってこい」

 

 亀裂から解き放たれたのは、山羊座、蟹座、魚座――三つの黄金聖衣。

 流星のごとき速度で玉座の間を突き抜け、壁をも破り、それぞれの主のもとへと飛び去っていく。

 

 その光景を前に、ジャガーが歯噛みする気配が背後から伝わってくる。

 

「双子座のサガ……! 聖域の支配者が、なぜここに……!」

 

 俺は視線も向けない。

 その瞬間、ジャガーが拳を構えようとする気配が走る。

 

 ――だが、無駄だ。

 

 俺はただ、静かに振り返った。

 その一瞥が、重力のように全身を圧し潰す。

 身体を覆う黄金聖衣の煌めきは微動だにしないが、その内に渦巻く小宇宙は、星々の軌道すら握り潰すほどの密度を持っていた。

 

 その間にも、俺の意識の一部は、床に横たわる友へと向かっていた。

 まだ息はある。

 善き人格の目が届く前に、この状況を終わらせねばならない。

 

 

「命拾いしたな、亡霊よ」

 

 声に込めたのは、侮蔑と、そして……揺るぎない信頼だ。

 俺が認める者は限られている。その中でも、アイオロスは唯一、「互角」と呼べる存在だ。

 

「本来であれば、この男、アイオロスはこの俺と互角の力を持つ。彼が万全であったなら、お前は自分が死んだことすら認識できずに消滅していただろう。彼が手心を加えたか、あるいは毒にでも侵されていたか……いずれにせよ、お前は分不相応な幸運に恵まれたのだ」

 

 事実を突きつける。

 ジャガーの頬がわずかに痙攣した。怒りか、恐怖か、その両方だろう。

 だが、それは揺るがぬ現実だ。俺もまた戦場で培った感覚でそれを断言できる。

 

「しかし――」

 

 胸の奥が、静かに熱を帯びる。

 俺の視界に、血に濡れた友の姿が焼きついている。

 

「我が友をここまで傷つけた報いは、受けてもらおう」

 

 その瞬間、俺の中の小宇宙が深く沈み、底から炎のように立ち上がった。

 金縛りを解かれたジャガーは、屈辱を噛み殺すように吠える。

 

「ぬかせぇっ! メガトン・メテオ・クラッシュ!!」

 

 巨大な隕石の如き一撃。

 蹴撃の衝撃波が空気を裂き、玉座の間の空間そのものを押し潰す。

 破壊力だけを見れば、確かに一級の技だ。

 だが、俺からすれば――。

 

「愚かな……」

 

 俺は微動だにしない。

 目の前に迫る隕石の幻影を、まるで流れ星でも眺めるように見つめる。

 

「隕石ごときが、銀河の星々が砕け散る、この技にかなうはずもあるまい」

 

 両腕を広げ、小宇宙を解き放つ。

 

 瞬間、足元から背後まで、全方向にわたって空間が震え、星々の悲鳴にも似た波動が響き渡る。

 

 俺の内側に存在する二つの極――善と悪、光と闇。

 それらが均衡を保ったまま融合し、限界を超えて膨れ上がる。

 炎でも氷でもない、純粋なエネルギー。

 その密度は、銀河一つを圧縮して掌に収めたかのようだ。

 

 視界が暗転する。

 だが、それは光を失ったのではない。

 あまりにも強大な小宇宙が、周囲の光をねじ曲げ、全てを自分の中心に引き込んでいるのだ。

 床の石は粉塵となって浮き、壁の彫刻は線状の光になって流れ出す。

 

「ギャラクシアン・エクスプロージョン!!!」

 

 叫びと同時に、全方向へ解放される。

 空間が弾け、玉座の間の天井は存在そのものを消し飛ばされる。

 圧力は光速を超え、隕石の幻影など一瞬で粉砕した。

 

 ジャガーの肉体が、技の奔流に呑み込まれる。

 その瞬間、彼の五感はすべて遮断されたはずだ。

 熱も冷気も感じない。ただ、己という存在が解体されていく感覚だけが残る。

 

 銀河の爆発――それは破壊ではなく、「存在の消去」だ。

 星々を構成する原子すら、境界を失い、宇宙の塵へと還元される。

 ジャガーの鎧は分子単位で分解され、魂の輝きさえも、星間物質に溶けていった。

 

 最後に残ったのは、微かな震動と、耳の奥で消えゆく心音のような感触。

 それもやがて消え、玉座の間に残ったのは、俺の小宇宙だけとなった。

 

 ……終わった。

 

 

 静寂。

 俺は微動だにせず立っていた。

 呼吸は乱れていない。だが、内心では小さく息を吐く。

 

 足元の血溜まりが、かすかな熱を帯びて蒸気を立てている。

 そこに横たわるのは、聖衣を纏わぬまま戦い抜き、なおも生きている――アイオロス。

 その胸が、わずかだが確かに上下しているのを確認し、俺はほんの一瞬だけ目を細めた。

 

 踵を返し、視線を逸らす。

 エリスの紫の小宇宙が、背にまとわりつくように揺れているのが分かった。

 神の威圧――しかし、俺には通じない。

 

「待て、双子座のサガ! どこへ行く気だ!」

 

 玉座から放たれた声には、怒りと……わずかな焦りが混じっていた。

 俺は足を止めるが、振り返りはしない。

 

「もはや、ここに俺が留まる理由はない」

 

 短い言葉。

 だがそこに込めたのは、絶対強者としての余裕と、この女神に対する徹底した無関心だ。

 俺にとって、ここは通過点でしかない。

 守るべきものはすでに守った――それだけだ。

 

 エリスの小宇宙が、苛立ちと警戒を孕んで揺らいだのが、背中越しに分かる。

 それでも俺は、歩みを再開する前に、ひとことだけ言葉を残すことにした。

 

「……だが、安心するのは早いぞ、女神エリス」

 

 俺の声が、玉座の間の冷えた空気に落ちていく。

 未来を見通したかのような響き。

 これは警告ではない。預言だ。

 

「お前を貫く『黄金の矢』が、すぐにここにやってくる」

 

 その言葉に、彼女の呼吸が止まったのが分かった。

 自分が神でありながら、不可避の未来を告げられたときの反応――それは人間と変わらない。

 俺は口元にわずかな笑みを浮かべ、再び歩き出した。

 

 アナザーディメンションの亀裂が、目の前に静かに揺らめいている。

 この扉の向こうは、時間も空間も意味を成さぬ異界。

 一歩踏み込めば、聖域にも、どこへでも、瞬時に移動できる。

 

 足を中へ進める。

 背後で、エリスの小宇宙が微かに震えた。

 それは恐れか、怒りか……おそらくその両方だろう。

 俺にとっては、どちらも興味はない。

 

 俺の役割は終わった。

 アイオロスを生かし、仲間たちに道を開いた。

 後は、信じる者たちが戦場を制す番だ。

 

 境界を越える瞬間、背後の空気が変わった。

 俺が立ち去ったことで、玉座の間の圧力はわずかに緩み、女神は安堵の息を漏らしたに違いない。

 ――愚か者め。安堵など、束の間だ。

 

 俺が送った三つの黄金聖衣は、すでにそれぞれの主のもとに届いている。

 山羊座シュラ、蟹座デスマスク、魚座アフロディーテ――それぞれが戦場を制し、その証として小宇宙を天へと放つだろう。

 そして、地に伏すアイオロスもまた、魂は決して屈していない。

 彼の黄金の小宇宙が再び燃え上がるとき、それは女神を射抜く「矢」となる。

 

 俺は異次元の闇に完全に足を踏み入れた。

 だが、背後の玉座の間に広がる光景が、まざまざと脳裏に浮かぶ。

 

 ――四方から立ち上る黄金の光柱。

 神殿を包囲するようにそびえる四本の小宇宙。

 それは仲間たちの勝利の証であり、同時に反撃の狼煙。

 

 女神エリスよ、お前はまだ知らぬだろう。

 この黄金の矢は、一度放たれれば決して止まらぬ。

 その未来を変えられる者は、この宇宙に存在しない。

 

 異界の闇が、俺の全身を飲み込む。

 音も光も失われた静寂の中、俺は聖域へと歩みを進めるだった。

 

 




善サガ「……ん? 今、何時だ……午後の執務はまだか……眠い……」

悪サガ「問題ない。すべて順調だ。銀河も爆発していない」

善サガ「机の上の“半日休暇届”は……俺の字に見えるが?」

悪サガ「貴様の模範的筆跡だ。誇れ」

善サガ「“日本”ってメモは? 寿司……出張?」

悪サガ「スシは宇宙の比喩だ。ギャラクシー・にぎりという詩的表現」

善サガ「……血と火薬の匂いがするのは気のせいか?」

悪サガ「線香だ。厄払いだ」

善サガ「さっき、一瞬だけアイオロスの小宇宙を感じたような……」

悪サガ「気のせいだ。エア・アイオロスという新気象だ」

善サガ「アッシュが『勝手に半休置いて消えた』って怒鳴ってたが?」

悪サガ「彼は夢遊病だ。全員の」

善サガ「床に砂金……これ、黄金聖衣の粉塵では?」

悪サガ「金運の盛り塩だ。縁起がいい」

善サガ「右手に薔薇のトゲが刺さって……痛っ」

悪サガ「観葉植物だ。“ロイヤル・デモン・ローズ・ミニ”」

善サガ「……まあいい。今日は静かに過ごそう。日本には――行っていない、な?」

悪サガ「断じて行っていない。仮に行ったとしても我々ではない。双子座のもう一人の
我々だ」

善サガ「もう一人の……我々?」

悪サガ「そう、善行に熱心な方だ」

善サガ「それ、俺だよ!」

悪サガ「なら問題ない。おやすみ、執務に励め」

善サガ「待て、この『銀河爆発注意』って付箋は――」

悪サガ「季節の挨拶だ。春の銀河は爆ぜやすい」

この先の物語は

  • もっとギャグに振りきってくれ‼‼
  • シリアスな熱血が聖闘士星矢だ!
  • バランスよくどちらも見たい
  • 全部盛り込んでぶっ飛べばいいと思うよ
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