聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
(ルカ視点)
聖域という組織は、つくづく古めかしい。
それは私のような元・聖闘士ですらしばしば感じることだ。現代の科学技術や合理主義がどれほど進歩しても、肝心なところは変わらない。
アッシュが聖衣を得てしばらく、正式な“聖闘士認定”のための試練を受けるよう、聖域から使者がやってきた。
この話を伝えると、アッシュは「使者なんて前時代的すぎません?」と、眉をひそめてぼやいていたが、内心私も同感だ。
だが、伝統というのは容易に捨てられるものではない。
……もっとも、偉そうなことは言えない。
気がつけば、私の生活もずいぶん現代的になっていた。
高級車にサングラス、仕立てのいいスーツ。自宅はローマ郊外の豪邸――これはすべてアッシュの“人脈”と“経済力”によるものだ。
聖域から派遣された使者が、うちの家の前まで来て二週間も私に気づかなかったのも、無理はない。
「いったいどこに“隠居の聖闘士”が住んでいるのか?」
目の前にいるサングラス姿の私がルカ本人だとは思わなかったのだろう。
伝統と現代の間で、揺れ動くのはみな同じらしい。
さて、アッシュの“卒業試練”についてだ。
聖域からの正式な通達に従い、私はローマ名物のコロッセオ型円形闘技場を用意した。
そこに用意したのは「十二の課題(プローヴェ)」。
歴史になぞらえて、十二宮ならぬ“十二の難問”だ。内容の詳細はここでは省くが(あまりにアッシュらしさ全開のものばかりなので、あの子の名誉のためにも)、どれも並の候補生ならば数日、数週間かけて挑み続けるものばかりだった。
アッシュは……信じられないほどあっさりと、これを突破してしまった。
たとえば、知力を測る課題では、私は古代からの聖闘士哲学書から引用した難問を用意したが、アッシュは一読して「……いや、これはロジックのすり替えですよ」とか「時代背景が違うから現代的にアレンジするとこうなります」と軽妙にツッコミを入れてくる。
鍛錬課題も「小宇宙の応用力」も、すでに身体に染みついている。
しまいには現代文明を応用して――「最新のデジタル機器を用いて任務を達成」など、聖域の伝統をも超える対応を見せた。
ああ、これはもう“私の弟子”という枠を超えて、“新しい聖闘士”なのだと痛感する。
最後の課題。
私は師匠として、あの子に問いかけた。
「アッシュ、お前はこれから“現代の聖闘士”となる。そのリーダーに必要なものは何だと思う?」
アッシュは一瞬、ふざけてみせようかとしたが、意外なほど真面目な顔でこう答えた。
「自分の頭で考えること。時代や神の言葉に従うだけじゃなくて、自分の目と耳で感じて、みんなのために動ける人間が必要だと思います」
「あと――“楽しくなければ意味がない”とも思います」
私は、その言葉に胸を打たれた。
神々や伝統、聖域の名誉だけではなく、現代社会を生きる人間として、自分で道を切り開く覚悟。
アッシュは、もう私の想像の遥か先にいるのだろう。
使者は試練をすべて見届け、深く頭を下げて「聖域本部より、杯座アッシュを新たな白銀聖闘士として認めます」と宣言した。
アッシュは少し照れくさそうに、でもどこか満足げに頷いていた。
夜。
闘技場の帰り道、私はアッシュと二人で歩いた。
「……本当に立派になったな」
思わず口をついて出る。
アッシュは笑って、「師匠がいなかったら、絶対ここまで来られませんでしたよ」と言った。
ああ、
たとえ現代っ子で、理屈屋で、生意気な弟子であったとしても、
私はこの子を心から誇りに思う。
聖域の伝統は、これからも変わらず続いていくのだろう。
だが、新しい時代の聖闘士は、確実にここから生まれていく。
これからも、師匠として――いや、一人の大人として。
この子の歩む道を、ずっと見守り続けたい。
アッシュ、お前は、私の自慢の弟子だ。
(アッシュ視点)
「聖域から使者が来るぞ」と師匠が言ったとき、僕はつい苦笑いしてしまった。
「いやいや、使者って……前時代的すぎない?いまどきメールかZoom会議でいいじゃん」
だけど師匠は「伝統は簡単には変わらん」と、渋く言い返してきた。
それもそうかもしれない。実際、師匠も今はローマ郊外の大豪邸暮らし。高級車にサングラス、高級スーツ姿で出迎える姿は、もはや「伝統」どころか近未来のマフィア幹部みたいだ。
そのおかげで、聖域の使者が二週間も「このあたりのどこに聖闘士が?」と迷子になっていた。人のことは言えない。
使者はようやく僕の前に現れると、やたらと格式張った言い回しで指令を伝えてきた。
「杯座アッシュ。お前の聖闘士候補生としての力を正式に試す“卒業試練”が命じられた。合格後、聖域へ来たれ」
僕は、心のどこかでくすぐったい気持ちを感じつつも、「来たか」と拳を握りしめる。
聖衣ボックスの上で、聖衣も期待に震えていた。
(最近はカスタムホルダーや音声テレビ機能も搭載されて、どんどん生活家電に近づいている気がするけど、それはさておき)
卒業試練は、コロッセオ型の円形闘技場。
聖域お抱えの施設で、ぐるりと並ぶ観客席には使者や関係者、師匠まで居並んでいる。
試練内容は「十二の課題(プローヴェ)」。
なんとも大仰なタイトルだけど、要は知識、力、柔軟性、精神力、応用力など“聖闘士に必要な全て”をバランスよくテストするメニューらしい。
まずは知識の課題。
目の前にズラリと並ぶ古文書や難問クイズ。普通の候補生なら冷や汗だろうが、僕には“秘密兵器”がある。
こっそり小宇宙で電子機器(=スマート端末)を保護し、袖口のホルダーからネットアクセス。「答えが分からないなら調べればいいじゃない!」
しかもこの最新聖衣、いつの間にかデバイスホルダーが実装されている(たぶん前回のアップデートのときにやってくれた)。
審判役の使者もまさか候補生が聖衣でネットサーフィンしているとは思うまい。
力を問う試練では、師匠が「ここは人間の限界ギリギリだぞ」と得意げに言うが、僕にとっては日々の修行で慣れっこになったものばかり。
重さ300kgの石を持ち上げる? 一発でクリア。
断崖絶壁のジャンプ? 15メートルは楽勝、着地も余裕。
師匠が「おいおい、難関だぞ……」と呟いているが、僕は「小宇宙でブーストかければ余裕ですよ」とピースサイン。
“柔軟性”や“機転”を問う課題では、持ち前の転生現代っ子頭脳が火を吹く。
古文書解読のパートでは、「この時代の用法では単語の意味が違います」と指摘したり、「論理のすり替えがあるので本質はこちらです」と突っ込んだり、まるで大学教授顔負けの解説を披露した。
(さすがに空気を読んで、あまりに言い過ぎないように気をつけたけど)
聖闘士としての精神力も問われる。
「己の心の闇と向き合え」とか言われて、一瞬、失恋時の記憶がフラッシュバックする。あのときは本当に苦しかった。でも、だからこそ今の僕がある。
「嫉妬も後悔も、みんな小宇宙の燃料にしてみせます」
……そう胸の中で呟いて、堂々と課題を突破した。
そして最後、全ての課題を終えた後、使者が厳かに宣言する。
「杯座のアッシュ、十二の課題すべてをクリアした。その才覚、実力、精神力を認め、聖闘士に推挙する!」
その瞬間――
僕は嬉しくて、飛び上がってしまった。
コロッセオの天井近くまで、ふわっと。
「おいおい、まだ子どもなんだから怪我するなよ!」
師匠がそう叫ぶけれど、僕は心の底から幸せだった。
子ども扱い?それでいい。だって、僕はまだ十二歳。
飛び跳ねて騒ぐくらい、許してほしい。
聖衣も僕と一緒に飛び跳ねていた――ような気がする。
(いや、実際にちょっと浮かんでいた。もはや家電を超えて、相棒みたいなもんだ)
会場の出口で、師匠がそっと僕の肩を叩いてくれた。
「アッシュ、よくやったな。本当に立派になった」
「うん、でもこれからが本当のスタートだよね」
そう言うと、師匠は少しだけ目を潤ませて、でもすぐに笑った。
伝統の聖域。現代っ子な自分。ギャップだらけだけど――
それでも、僕はちゃんと“聖闘士”になれたんだ。
もうしばらくは、子どものまま、自由に高く跳び跳ねていようと思う。
最近、うちの杯座(クラテリス)の聖衣の進化が止まりません。
もはや聖衣というより、“最新IoT家電”です。
この前なんて、ふと見たら――
「インターネット無線基地局」機能が実装されていました。
スマホはWi-Fi自動接続、デバイスのアップデートも全部クロス経由。おかげで田舎のローマ郊外でも、ネット環境だけは超快適です。
さらには、対話型AIまで搭載済み。
夜に「今日のニュースは?」って聞くと、
「ピピッ。本日の国際情勢とメロンソーダ在庫をお伝えします」
――なぜか必ず“メロンソーダ在庫”がトップニュースになる仕様です。
でも、問題が一つ。
メロンソーダが切れると、途端にWi-Fiのつながりが悪くなる。
「本体バッテリー不足」ならぬ「本体メロンソーダ不足」って、一体なんなんだこの聖衣……。
いやまあ、ちょっと便利すぎて普通の家電より頼れるし、
夜中にこっそり「今日の課題、何点でした?」と聞けば、
「ピカッ。師匠は“まあまあ合格”と申していました」とAI音声で返してくる始末。
……もはや相棒、というより、
「文明と生活を握るメロン中毒AI家電」ですが――
僕も、だんだんこの暴走進化を楽しんでる気がします。
来週はついに「メロンソーダ定期配送サービス」にクロスが自動で申し込んでいたらしい……。
財布もネットも、全部聖衣管理時代。
――いや、便利だけど聖闘士として大丈夫か僕!?
というわけで、
次回も家電とAIとメロンソーダで、聖闘士ライフを走ります!
大きな章ごとに新しい作品として分けて投稿しますか?それとも今まで通り一つの作品として連載し続けますか?
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一作品として連載してほしい(今まで通り)
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章ごとに作品を分けてほしい・十二宮編など
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どちらでも良い/お任せします
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その他(ご意見があればコメント欄で!)