聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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聖域の扉を開けて──水洗トイレが欲しい‼‼

この世に邪悪がはびこるとき、必ずや現れるといわれる希望の闘士、聖闘士(セイント)。

 その拳は空を裂き、蹴りは大地を割るという。

 彼らは神話の時代より女神アテナに仕え、武器を嫌うアテナのため、素手で敵と戦い、天空に輝く八十八の星座を守護とし、それを模した聖衣(クロス)と呼ばれる防具を纏う。

 

 ギリシャ、聖域(サンクチュアリ)。

 ここは神話の時代より強力な結界で守られており、一般の人間はその存在すら知覚できない。アテナ神殿にたどり着くためには、十二の宮殿(十二宮)すべてと、教皇の間を突破せねばならない。

 聖闘士発祥の地――ここから幾多の闘士が世に送り出され、数多の戦いの歴史を積み重ねてきた。

 

 聖域の頂点に君臨する教皇シオンは、かつて牡羊座の黄金聖闘士として知られた。

 今は重厚な石造りの玉座に座し、神託と伝統を担う「最高権威」として、世界の闇と戦う聖闘士たちを見守っている。

 

 その朝、シオンは膝の上に広げた一通の報告書を読んでいた。

 「新たな白銀聖闘士、杯座(クラテリス)のアッシュ――正式拝命、認定の件」

 

 年季の入った視線で、シオンは一文字一文字を噛みしめるように追った。

 報告書によれば、アッシュはローマの貴族出身、幼少より文武両道。小宇宙(コスモ)の素養はもとより、気(ソウル)と力(パワー)の集中、精神力の高さ、そして並外れた柔軟性で修行を乗り越えてきた。

 師であるルカによると、その覚醒のきっかけは、ローマの大河ティベリスでの“死の淵からの生還”――従来の正統派修行に加えて、現代的な知恵や応用力が光ったという。

 

 さらに卒業試練「十二の課題」では、現代文明の“電子機器”を小宇宙で保護し、知識問題をインターネットで即時検索、聖衣もまたホルダーや各種機能を自動実装するという“進化”を遂げていた。

 シオンはしばし書類を持つ手を止め、ふむ、と小さく唸る。

 

 「……電子機器……ネット……。なんとも世の中は変わったものよのう……」

 齢を重ねた身には、これらの新語がどうにも腑に落ちない。

 石版や羊皮紙に記された文字ならば、目をつぶってでも意味が取れる。だが、“インターネット”――それは彼にとって“異世界の魔道具”のようなものだった。

 

 だが報告の文面からは、アッシュが型破りなだけでなく、驚くほどの柔軟さと、聖闘士としての“品格”を持ち合わせていることがにじみ出ていた。

 ロジックのすり替えを看破し、本質を掴む頭脳。肉体も小宇宙も、十二歳とは思えぬ強靭さ。

 嫉妬や弱ささえも自らの燃料とし、成長し続ける姿。

 

 「これもまた……アテナの導きかもしれん」

 シオンは静かに頷く。

 

 だが――。

 

 伝統を守る聖域の長として、一つだけどうしても譲れないことがある。

 “聖闘士の品格”――

 聖衣は武器ではなく、誇りそのものであり、神話の時代から脈々と受け継がれてきた魂の証だ。

 聖衣が“テレビ機能”や“ドリンクホルダー”として進化するというのは、さすがに看過できないのではないか。

 

 「……やはり、どこかで戒めねばならぬ」

 シオンは心の中でそう自戒した。

 時代の流れも大事、柔軟さも大事――だが、伝統の芯まで溶けてしまっては、聖闘士の意味がなくなる。

 “聖衣(クロス)は聖衣たるべし”――この一点だけは、未来の世代にきちんと示してやらねばならない。

 

 しかし、報告書の最後に書かれた一節――

 「アッシュは、自らを律し、皆が“楽しく生きる”ためのリーダーであれと語った」

 この言葉は、老いた教皇の胸にどこか柔らかな余韻を残す。

 

 若さ、自由さ、新しさ。

 それでもやはり“守るべきもの”がある。

 伝統と革新の狭間で、シオンは静かにペンを置いた。

 

 「杯座のアッシュ――

 そなたが聖域を訪れる今日、しかと品格を問い、導く責任が、私にあるのだろう」

 

 神殿の窓から差し込む朝日が、聖域の大理石の床を黄金色に染める。

 歴史の波に洗われながらも、“闘士”は必ず時代に現れる。

 教皇シオンは、古き良きものの重みと、新しきものの勢いを、胸に静かに受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

(アッシュ視点)

 

僕は、ついにアテネの地に降り立った。

飛行機の扉が開くと、さすがに心が躍る。これから聖域に近づくんだ。未来の聖闘士としての第一歩。そんな期待を胸に、僕は目の前に広がるギリシャの風景を見渡した。

 

しかし――

 

待っていたのは、近代文明の片鱗すら感じられない、予想外の秘境だった。

空港から車で数時間、そこからさらに山間を歩くこと数時間。舗装もろくにされていない石ころだらけの道。

「道?何それ?おいしいの?」

と思わず突っ込みたくなるほどの前時代的なトレッキングが続いた。

それでも、僕はがんばった。未来の聖闘士の名にかけて。

 

ようやくたどり着いたのは、聖域に一番近いと言われるロドリオ村。

古びた木造の小屋が並び、夜は虫の声だけが響く。

「秘境」という言葉がこれほど似合う場所はそうないだろう。

僕はそこで一泊した。まるで冒険小説の主人公になった気分だった。

 

聖衣ボックスは、例のごとく最新装飾を施して、キャリーバッグのように持ち運びやすくしていた。

車移動なら完璧なのだが、この山道ではまるで役に立たなかった。

聖衣ボックスはゴツくて重く、石ころに当たるたびにがたんがたんと響く。

「もっと軽量化とか考えてよ、開発チーム!」と心の中で叫んだ。

 

普段から、僕は小宇宙でサングラスや服に汚れがつかないように守っている。

それでも、山道の埃は容赦なく襲いかかる。

小宇宙防護にも神経を使いすぎて、疲労度は高まる一方だ。

「何これ、修行じゃなくてマラソン?」と思う。

 

そして、ついに到着した聖域。

しかし、ここもまた想像以上に過酷だった。

トイレは……穴だった。いや、穴!

まさかの野営レベル。

「まあ、神話の時代から続く伝統とはいえ……」と嘆息。

 

お風呂は山水に浸かるだけ。

温泉とかジャグジーとか、そんな文明の利器は一切ない。

「これが聖闘士の修行環境なのか」と唖然。

 

食事はほぼ自給自足で、農作物や山菜、釣りで魚を得るという生活。

飲み物はひたすら水のみ。ジュースやコーヒーなんて夢のまた夢。

聖衣もさすがにご立腹の様子で、点滅と小さな放電で抗議してくる。

「お前、そうやって僕の苦労を増やすんじゃない!」と怒鳴り返した。

 

さらに驚いたのは、十二宮へと続くあの長く険しい石段だった。

息を切らしながら階段の上を見上げ、僕は案内人に尋ねた。

「ねぇ、エスカレーターとか、ないの?」

案内人は眉をひそめて答えた。

「それは……お前に体力がないのではないか?」

僕はその言葉に絶句し、頭にぽっと血が昇るのを感じた。

 

「えええ?体力の問題って、そんな……それにしても、この石段は長すぎるだろ!」

僕の頭に浮かんだのは、聖域の古い体制への怒りと疑問だった。

「これは革命だ!いや、改革が必要だ!」

僕の胸は熱く燃え上がっていた。

 

僕は声を張り上げた。

「聖域は伝統も大事だが、時代に合わせて変わらなければならない!便利なものは便利なように取り入れ、未来を生きる僕たちのために聖域をもっと快適にしよう!」

聖衣もまた、その決意に応えるように、小さく輝きを増した。

 

師匠が遠くイタリアで高級スーツを身にまとい美女を侍らせて微笑んでいるのが見える。

「お前ならできる、アッシュ」と。

僕はもう、全身で未来を感じていた。

 

これからの聖域は、変わる。というか変える。さもなくば帰る。

そして、僕たち聖闘士もまた、新しい時代の戦士として生まれ変わるのだ。

 

 

そのためにまずは教皇様(シオン)に直訴だ!

 

トイレは水洗がマストでしょうと!!




案内人:「白銀聖闘士のくせに体力ないだと? それはあるまじき不覚よ!」

アッシュ(にやりと笑いながら小宇宙をチラ見せ):
「おっと、そう言うなら見せてやるよ、これが僕の“本気の小宇宙”だ!」(プチッと威嚇の気配を漂わせる)

案内人(少し怯えながら):
「ひ、ひえっ!? そんな小物な威嚇で騙せると思うなよ……」

アッシュ(軽く鼻で笑い):
「まあまあ、見た目は小物でも侮るなかれ。これでもちゃんと白銀聖闘士だからね!」

 

……という感じで、秘境の案内人相手にちょっとした小競り合いを楽しんでいます。
このおじさんも意外と根は優しくて、イタリアでの試験の合間にちょくちょくツッコミを入れてくれる貴重な存在です。

秘境の厳しさと伝統の重みの中で、僕は自分のペースで成長しています。
次回もまた、こんなやりとりを楽しみながら、物語を紡いでいけたらと思います。

応援、よろしくお願いいたします!

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