聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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翔子「だから!『俺の幼なじみがこんなに可愛いわけがない』は最高のギャルゲーなんだって!」


エリス「ふん!乙女ゲーム『禁断の王子は私だけを見つめる』こそ至高!選択肢次第で愛も破滅も味わえるのだ!」

翔子「ギャルゲーは女の子全員攻略したくなるんだよ!全ルート制覇してこそ真の愛なの!」

エリス「乙女ゲーは逆だ!推し一人に全振りして他の男を塵にする!それこそ真の愛だ!」

翔子「いやいやいや!複数ヒロインを全員救う方が人道的でしょ!」

エリス「甘いな!真の愛は独占!選ばれなかった者は滅ぶのみ!」

翔子「その理論で世界滅ぼそうとしたんでしょ!?だからダメなんだってば!」

エリス「黙れ!ギャルゲーは浮気の温床!乙女ゲーこそ一途の極み!」

翔子「浮気じゃなくてハーレムエンドだから!公式公認だから!」

エリス「ハーレムなど神の怒りを買う不敬!我が乙女ゲーの一夫一妻こそ絶対!」

翔子「いやだから!ギャルゲーの“トゥルーエンド”はみんな幸せなんだってば!」

エリス「ならば次回!勝敗を決する!ギャルゲーか乙女ゲーか、神すら震撼する決闘!」


セインティア翔編 ~明けの明星~
甦る黄金の林檎、忍び寄る邪神の影


(翔子視点)

 

 

正直に言おう。私は、平和を満喫していた。

だってそうだろ?エリスとの壮絶バトルも終わって、もう日常には平和しかないはずだったんだ。

 

……そう、「はず」だったんだ。

 

朝、城戸邸の自室。私は机にかじりついて、レポートを書いていた。いや、正確には「スマホで資料をコピペして体裁を整えていた」と言った方がいい。

 

その時、頭の中に響く声。

 

「ショーコ!いつまでスマホを弄っておる!アイオロスとの愛を育む努力を怠るな!」

 

邪神エリス、今日も絶好調。

 

「うるさいわね!こっちは大学のレポートで忙しいの!あんたが私のクレカで推しグッズ買いまくったせいで、今月バイト増やさないとヤバいの!」

 

「フフン、良きではないか!夫(仮)のために働く女、これぞ健気さの極み!」

 

「誰が夫(仮)よ!」

 

……平和って、案外やかましい。

 

で、問題は唐突にやってきた。

 

スマホの画面に、国際電話の着信表示。

相手は――フランスにいるはずの姉、響子。

 

「もしもし!?お姉ちゃん!?」

 

「翔子?元気にしてる?実はね、日本支社への転勤が決まったの。来週には帰るわ」

 

……来週。来週!?

 

「本当!?やったー!」

 

思わず叫んだけど、電話を切った瞬間、私は頭を抱えた。

 

ちょっと待て。今の私の生活、姉にどう説明する?

 

「実は邪神と同棲してて、彼氏はギリシャから亡命してきた黄金聖闘士で、同居人に元伝説の音楽家と超大手企業の営業マンがいます」

 

……頭おかしいと思われるに決まってる!!

 

しかも響子お姉ちゃん、超絶面食いなんだよ!

アイオロス君見た瞬間に惚れたらどうする!?いや絶対惚れるだろ!私ですらたまに見惚れるんだから!

 

私は部屋で一人、シミュレーションを始めた。

 

シミュレーションその1。

「お姉ちゃん、紹介するね。彼氏のアイオロス君」

→響子、秒速で恋に落ちる。

→エリス、ブチ切れて「ショーコ!夫を奪われるぞ!」と大騒ぎ。

→家が修羅場。

 

シミュレーションその2。

「お姉ちゃん、この人たちはただのルームシェア仲間だから」

→響子「嘘つけ!全員モデルみたいにイケメンじゃない!」

→職質される私。

 

シミュレーションその3。

「お姉ちゃん、実は私は魔法少女で、この人たちは守護精霊なの」

→響子「頭冷やしてこい」

→精神病院に直行。

 

……詰んでない?

 

エリスが、得意げに言ってきた。

 

「よいではないか!姉には、我が力を見せつけてやればよい!世界を滅ぼす神と同棲している妹…さぞ羨ましがられるぞ!」

 

「誰が羨ましがるかあああ!!」

 

しかも、問題はアイオロス君だけじゃない。

伝説の音楽家(オルフェウスさん)は、昼夜問わずギター弾き語りしながら作曲してるし、営業マン(ヤンさん)は、毎日スーツで出社しては毎晩パチンコ屋から帰ってくる。

 

お姉ちゃんが真面目な社会人だから、このメンツ絶対ドン引きされるって!!

 

私は布団に顔を埋めて、もだえた。

 

「どうしよう…!お姉ちゃんにどう説明したら…」

 

その時、スマホにLINE通知。送り主は――アイオロス君。

《翔子、今日の夕飯は何がいい?》

 

何だこの安定感。何で黄金聖闘士なのに主夫力高いんだよ。

「……好きにならない方がおかしいじゃん……」

 

いやいやいやいや、ダメだ。姉に惚れられるのが一番困る!

 

エリスが、ニヤリと笑う。

 

「ならば簡単よ。姉の目に触れる前に、アイオロスの子を孕めばよい」

 

「発想が昭和のド直球なんだよ!!」

 

布団を抱えてゴロゴロ転がりながら、私は叫んだ。

 

ああ、来週が怖い。

エリスと同棲するよりも、黄金聖闘士と付き合うよりも、姉の帰国の方がよっぽど恐ろしい。

 

……頼む、神様。いや、邪神様。どうか私の恋と生活を守ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショーコよ。その『姉』とやらは、一体どんな女なのだ?」

 

不意に尋ねられたので、私はスマホをいじりながら答える。

 

「すごく奇麗な人だよ。黒髪のロングで、モデルみたいな美人。でもさ…一度思い込んだら絶対に曲げないし、ちょっと…いや、強烈に愛が重いところがあるかも」

 

するとエリスは、やけに得意げに手を打った。

 

「なるほど!それはシスコンというものだな!理解した!」

 

「いや違うよ!?シスコンは私の方!?いや違うっていうかお姉ちゃんはヤンデレ寄りだよ!」

 

「ヤンデレ…?なるほど、敵は殲滅し味方は束縛する、愛の形か。フフ…良きではないか!」

 

エリスの脳内辞書に現代サブカル用語が次々と追加されていくのを、私はひしひしと感じた。原因は分かっている。最近のエリス、スマホの使い方を完全にマスターしてしまったのだ。

 

しかも推し活と乙女ゲームに夢中。毎月の課金額を見た私の銀行口座は、すでに絶命寸前。

 

「女神の威光を維持するには、ガチャ課金は必須だ!」

「何が必須だよ!推しのSR出すために10万円溶かす女神なんて嫌だわ!」

 

私は涙目で突っ込む。

 

でもちょっと気になって聞いてみた。

 

「そういえばさ、アテナに仕える戦士は聖闘士でしょ?エリスに仕える戦士っていないの?オルフェウスさんたちは、元々亡霊聖闘士だったし…」

 

エリスは、珍しく昔を懐かしむような声になった。

 

「ふむ。かつて我が戦士には邪精霊(ドリアード)という、人間ではない者たちがいたな。聖衣の代わりに、邪霊衣(リーフ)を纏っていた。だが、神話の時代より久しく、我が呼びかけに応える者はいない」

 

私は素直に「へえ~」と返した。

 

「邪精霊なんて、まさしく邪神にピッタリだね!(笑)」

 

……次の瞬間。

 

「なんと罰当たりな小娘か!!」

 

女神ブチ切れ。空間がビリビリと震えた。

 

「ショーコがどうしてもと望むなら、我が新たな軍勢に加えてやろうというのに!もうよい!お前が泣いて頼むまで、絶対に作ってやらん!」

 

ぷいっとそっぽを向く。完全にすねた。

 

「ちょ、ちょっと!何拗ねてんの!?私そんな悪口言った!?」

 

「言った!“邪神にピッタリ”と言った!神に対して“ピッタリ”などと軽口を…!」

 

「いや、褒めたんだって!キャッチコピー的な意味で!」

 

「うるさい!もう我は、推しのグッズ開封配信に戻る!」

 

女神は精神世界の奥で、推し活に逃げてしまった。

 

私は布団に倒れ込んだ。

はあ…こんなんでお姉ちゃんに紹介できるわけがない。

 

エリスが軍勢を作る気になっても、それは多分「邪精霊」じゃなくて「推しのフィギュア軍団」か「課金ガチャで出したSSR従者軍団」になるんだろうな。

 

……うん、絶対に嫌だ。

 

こうして私の悩みは、姉の帰国という現実問題と、女神のオタ活暴走という超常問題に、同時に挟まれることになった。

 

「どうしよう…ほんとにどうしよう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(エリス視点)

 

私は、女神エリスである。

……と、毎度こう名乗るのも悪くはないのだが、最近どうも引っかかることがある。

 

「邪精霊」とか「邪霊衣」とか、我が軍勢の名前のことだ。

 

古代ギリシャでは格好良かったかもしれん。だが現代日本に生きる者たちにとってはどうだ。どう聞いても「中二病の黒歴史ノート」あるいは「某ソシャゲのハズレRキャラ」のように聞こえはしまいか。

 

そして、何より。

 

――アイオロスに知られたらどうだろう。

 

「邪精霊?なんか悪の秘密結社みたいだな、エリス」

とか笑われて、そっけなく背を向けられたら……!

 

いやだ!耐えられぬ!私の尊き恋心が、邪悪ネーミングで潰されるなど絶対にあってはならぬ!

 

そこで私は決意した。

「我が戦士たちに、新たな称号を与える!」

 

早速思考を巡らせてみたのだが……これがまた難しい。

 

「エリス軍団」……いや、直球すぎる。下町の商店街連合みたいだ。

「女神親衛隊」……アイオロスのファンクラブと勘違いされる危険がある。いや、実質そうかもしれんが。

「邪神騎士団」……だめだ、これでは某RPGのラスボス前座みたいだ。

 

私は机を叩いた。

「くそっ、どれもしっくりこない!」

 

そこで、現代文化に精通した私の秘書(?)ショーコに相談してみた。

 

「なあショーコ、我が新たな軍勢の名前、何か良い案はないか?」

 

彼女はペン回しをやめ、面倒くさそうに答える。

 

「うーん…“邪精霊”よりはマシにしたいんでしょ?だったら、いっそ“エリス・エンジェルス”とかにしたら?アイドルグループっぽくて人気出るかも」

 

「ば、馬鹿者!我をアイドル売りする気か!」

 

「いや、あんた最近サイン会とか妄想してるし、もう似たようなもんじゃん」

 

図星を突かれ、返す言葉もない。

 

別の日。私はこっそりオタク文化の海に潜って、流行りのネーミングを研究してみた。

 

「コード:カオス」

「ダーク・オブ・エターナル」

「†堕天の翼†」

 

……全部既視感がすごい。しかも今どき痛々しい。

こんな名前を使ったら、私の推し活仲間から「古いな」と笑われるのがオチだ。

 

「ううむ…現代とは恐ろしい。神話級のネーミングセンスすら通用せぬとは…」

 

そしてある晩。私は夢の中で、妄想を暴走させた。

 

「見よ、アイオロス!これが我が新たな軍勢――“エリス・フォース・オブ・ラブリー・ジェネレーション・アルティメット(略称EFLAGU)”だ!」

 

その場にいたアイオロスは、ニコリと笑ってこう言った。

 

「長い」

 

……目覚めた私は布団の上で頭を抱えた。

 

結局、ショーコに「ダサいからやめとけ」とバッサリ斬られ、案はすべて保留になった。

 

しかし、私は諦めてはいない。

女神としてのプライドと、恋する乙女の羞恥心が、私を突き動かしている。

 

いつか必ず、アイオロスに胸を張って披露できる、新たな称号を見つけてやるのだ!

 

「フフフ…その時こそ、世界は震撼し、推しは惚れ直すであろう!」

 

「はーいはい、寝言は寝て言えー」

 

「寝言ではない!これは神言だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帳に沈んだ、異国の地。

人々から久しく忘れ去られた古代の遺跡は、ひっそりと大地に埋もれていた。その中に、黒曜石のような髪を持つ一人の女が、静かに足を踏み入れていた。

 

彼女の瞳は、闇をも貫くように冷たく、しかしその奥には、燃え盛る炎のような情念が潜んでいた。衣は夜そのものの色を纏い、歩みのたびに、彼女の周囲の空気がわずかに震える。

 

女は遺跡の最奥へと進み、荘厳な台座に鎮座する黒いパンドラボックスの前に立つ。幾千年の時を経ても、その箱は傷一つなく、かつての禍々しい輝きを保っていた。

 

彼女は、その蓋に白い指先を触れ、低く囁く。

「……長かった」

 

重々しい蓋が音もなく開き、中から溢れ出すのは、目を灼くほどの邪悪な光。そこに収められていたのは、本来ならば破壊されたはずの――黄金の林檎だった。

 

女は、その林檎を両手で抱き、愛おしげに頬を寄せる。

「……フフフ。ようやく、機は熟した、か」

 

その声音には、慈しみと狂気が混じり合っていた。

 

彼女は独り言のように、しかし確かな宣告として言葉を続ける。

「待っていなさい、私のかわいい妹……そして、アテナの聖闘士たち」

 

黄金の林檎が、邪悪な脈動を放つ。

「最高の争いを、届けてあげるわ」

 

女の視線は、遙か彼方を見据えていた。

地図に描かれるその先は――東の果ての島国、日本。

 

「……日本、か」

 

冷たい風が、遺跡を吹き抜ける。

その風に乗って、これまで封じられていた邪神の気配が、静かに解き放たれていった。

世界がまだ知らぬままに、崩壊の幕開けは、確かに始まっていた。




……笑い声の裏で、私は確かに感じていた。
遥か遠く、異国の地から流れ込む――得体の知れぬ小宇宙。
それは、神にも等しき、古き邪悪の気配。

黄金の林檎が再び輝くかのような、甘美でいて破滅を孕む脈動……。
あれは、■■■■■■■■か。それとも――私をも超える何か。

翔子よ。お前と無邪気に笑っていられる時間は、長くはないかもしれぬ。
やがて、愛も、絆も、すべてを試す戦いが訪れる。

……フフ。だが恐れるな。
我が名はエリス。
邪神でありながら、お前の傍らに立つ者。
どのような不穏な影が迫ろうと――必ず、この手で払いのけてやろう。

エリスの新たな戦士の名前はどうしましょう?

  • 亡霊聖闘士のまま
  • 邪霊士(セインティア翔リスペクト)
  • オリジナル(ぜひコメントにて候補を)
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