聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜 作:斉宮 柴野
黄金聖闘士を狙う影が、平穏な日常を打ち砕く!
妹・翔子の恋路に立ちはだかるは、最強の肉食系ヤンデレ姉・響子!
狙われたのは、翔子の心の支えにして太陽の戦士、射手座の黄金聖闘士アイオロス!
怒り狂う翔子、挑発をやめぬ響子、そして無邪気に爆弾を投下するアイオロス!
三人の痴話喧嘩は常人には見えぬ速度で激突し、やがて庭園すらも瓦礫と化す――!
次回、『姉襲来!黄金聖闘士を狙う影‼』
友情も、愛も、家族も吹き飛ばす、これぞ聖闘士級の大惨事!
――翔子、愛と家族を守り抜けるか!?
(翔子視点)
お姉ちゃんが日本に帰ってくる――。その知らせを聞いた時は、心底うれしかった。だって、姉妹だし。小さい頃からずっと私を守ってくれた人だから。久しぶりに一緒に暮らせるかもしれない、そう思うと胸が高鳴った。
……ただし。私の今の生活を考えると、喜んでばかりもいられなかった。だって「邪神と同棲してて、彼氏はギリシャから来た黄金聖闘士」なんて、どうやって説明しろっていうのよ!?いやいやいや、絶対理解してもらえないから!
そんな葛藤を抱えたまま、成田空港。到着ロビーから出てきたお姉ちゃん――響子は、記憶よりもさらに美しかった。黒髪のロングがつやつやしてて、背筋はスッと伸びて、まるで雑誌から飛び出したモデルそのもの。いや、モデルより綺麗。周りの外国人観光客まで、思わず二度見してたもん。
「お姉ちゃん!」
「翔子!」
駆け寄って抱きついた瞬間、胸がじんわり熱くなる。懐かしい香水の匂い。父まで混じって三人で抱き合って……もうね、涙腺が崩壊しかけた。
――問題は、この後だった。
タクシーに乗り込んでから数分。車が市街地へと走り出したところで、お姉ちゃんの爆弾質問が投下された。
「で、翔子。恋人はできたの?」
……来た。避けたかった地雷。思わず声が裏返る。
「え!?い、いないよ、そんなの!」
必死にごまかす私。でも、お姉ちゃんはジト目で私を睨む。
「ふーん?怪しいわね。こんなに可愛くなった妹に、男がいないわけないじゃない。さあ、白状なさい!」
あ、ヤバい。この圧。子どもの頃から嘘を一秒で見抜かれてきた、あの圧。私はしどろもどろになって窓の外を見たり、髪をいじったりして誤魔化そうとする。
ところが。よりにもよって、一番余計な人が口を開いた。
父である。
「いやあ、翔子にもアイオロス君という素晴らしい青年がいてな。ギリシャ彫刻のような美男子で、礼儀正しくて――」
「お父さん!!!!」
叫んだ時にはもう遅い。お姉ちゃんの目が、スッと冷えてハイライトが消えた。怖い。めちゃくちゃ怖い。
「……アイオロス君、ですって?」
ゴゴゴゴゴ……という擬音が聞こえるほどの重圧を感じた瞬間、肩をガシッと掴まれる。お姉ちゃんの指が食い込んで痛い!
「翔子。あんただけ幸せになるなんて、ずるいじゃないの……!」
いやいやいや、なんでそうなるの!?怖すぎるって!慌てて両手を振る。
「お、落ち着いてお姉ちゃん!本当に違うから!」
しかし次の瞬間、お姉ちゃんはスイッチが切り替わったみたいに満面の笑顔に戻り、いきなり私の脇腹をわしゃわしゃくすぐってきた。
「きゃー!いいじゃない、翔子!さあ、お姉ちゃんに紹介しなさい!今すぐ!」
「わ、分かった!分かったから!くすぐらないでー!」
車内でジタバタ暴れる私。運転手さん、ミラー越しにめっちゃ怪訝そうな目で見てるんですけど!?
結局、根負けした私は観念した。
「い、今は……その……一緒に住んでる」
お姉ちゃんの顔がパアッと輝いた。やばい、これは追撃が来る。
「同棲ですって!?じゃあ、毎晩そのイケメンと、目くるめく官能的な夜を……!?」
ちょ、声が大きい!車内!タクシー!まだ外は夕方で混雑してるの!
そしてさらに、お姉ちゃんは私の胸をむにゅっと揉みしだいた。
「……あら?でも、あんまり育ってないわね。ちゃんと、揉まれてないの?」
カッとなって私は叫んでしまった。
「毎日揉まれてるわよッ!!!!」
……あ。言っちゃった。車内が凍る。お姉ちゃんはポカーン。父は「え、そうなのか?」って顔してるし。運転手さんは、無言でガチャッと仕切りを上げてしまった。
ああもう……穴があったら入りたい。いや、穴がなくても掘ってでも入りたい。
「ち、違うのよ!変な意味じゃなくて!ほら、健康のためのマッサージってやつで!」
必死に取り繕う私。でもお姉ちゃんは、ニヤリと笑って私の肩を抱き寄せた。
「安心しなさい、翔子。今夜はお姉ちゃんが直接、そのイケメンの素性を確かめてあげるわ」
地獄の尋問は、まだ始まったばかりだった。
◆
翌日。覚悟を決めた私は、姉を連れて城戸邸へと足を踏み入れた。もう嫌な予感しかしない。ここは普通の家じゃない。世界規模でトンチキな騒ぎを起こす「変人とイケメンの巣窟」である。
案の定、玄関ホールで出迎えてきたのは、お義父さま・・・いや、城戸光政さん本人だった。
「おお、君が翔子君のお姉さんか!いやはや、噂に違わぬ美人だ!翔子君のお姉さんなら、私の娘も同然!さあ、パパと呼んでみなさい!」
……はい来た、このじいさん。開口一番でこれ。私、もう無意識に顔を手で覆ってた。
「ふむ、いやか?ならば翔子君、君の方から見本を!…仕方ないのう。では、お兄様ではどうかな?」
いやなんでそこで「お兄様」になるの!?どういう思考回路!?
横を見ると、姉は「……」って真顔で固まってるし。絶対「翔子、やばいとこに住んでるな」って思ってる。お願いだから帰らないで。いや帰ってもいいけど、まだアイオロス君に会わせてないから!
私は心の中で「この色ボケジジイ!!!」と絶叫してたけど、代わりに精神世界でエリスが腹を抱えて転げ回ってた。あの女神、マジでこういう時だけ元気。
なんとか光政の歓迎(?)をやり過ごし、奥のサロンに案内された瞬間。
「……っ!」
横で姉が息を呑む音がした。私も「あー、やっぱり」って悟った。だってそこには、竪琴を奏でる神々しいイケメン――オルフェウスが座っていたんだから。
姉の目が、文字通りハート型になった。もうヤバい。止める間もなく、私を完全に置き去りにして突撃した。
「初めまして、翔子の姉の響子です!あなた、お名前は?」
「オルフェウスと申します。貴女のような美しい方に出会えるとは、我が竪琴も喜びの音色を奏でております」
……即死だった。姉の脳みそが、今ので完全に蒸発した。目がキラッキラしてる。
さらにタイミング悪く(いや良く?)、スーツ姿のヤンまで廊下から顔を出した。うちの敏腕営業マン。庶民的だけど、あの笑顔と長身とスーツ補正で妙にモテるタイプ。
「おや、翔子様。お客様ですか?」
「キャー!そこのあなた!連絡先、教えてくださらない?」
……え、初対面5秒で!?
オルフェウスには「今夜の夕食、ご一緒しませんこと?」って約束まで取り付けてるし!この人、昨日日本に着いたばっかりだよね!?
私はその場でバタリと崩れ落ちたくなった。
で、極めつけはその後。
オルフェウスとヤンが並んで姉に軽く会釈し、私の方へ向き直った。
「翔子様、本日もあなた様のために働いてまいります」
「翔子さん、後ほど経理書類の整理を済ませておきます」
そう言って、二人同時に私の手の甲にキスをして去って行った。
……いや、あの、私だってまだ慣れてないからね!?普通に赤面するからね!?
姉はその光景を見て、ぷるぷる震えていた。そして、私に振り返るなり、爆発した。
「なんなのよ、あんた!こんなイケメン天国で暮らしてるなんて、聞いてないわよ!」
うん、ごめん。私も想定外なんだよ。ここまで毎日イケメン供給される生活、私だって望んでないんだよ!!
でも姉の嫉妬心はとどまるところを知らなかった。オルフェウスとヤンが去った後の背中に、まるで「次は絶対落とす」ってオーラをぶちまけてた。いややめて。私の同居人たちをハント対象にしないで。
その夜。姉が「翔子、今夜はオルフェウスさんと夕食なの。ついでにヤンさんの連絡先も確認しておくわ」って笑顔で言ってきた瞬間、私は心から悟った。
◆
そして今日。最大の災厄が起こった。
玄関のドアが開き、軽快な足音とともに現れたのは――
「ただいま、翔子」
太陽のような笑顔、爽やかすぎる高校生の制服姿、神に愛された黄金比の肉体美。
そう、私の彼氏――いや、彼氏未満彼氏以上?とにかく心に決めてる人――アイオロス君である。
「……っ!!」
私は一瞬で硬直した。やばい、やばいやばいやばい!ここにアイオロス君を姉に見られたら……!
案の定、横に立っていた響子の瞳が、ギラリと輝いた。え?今、野生の肉食獣の目をしたよね?
「こちらの女性は?」と、にこやかに尋ねるアイオロス君。
あああ、やめて、その完璧な笑顔を向けないで!姉の理性が蒸発する!
そして次の瞬間。
「あなたがアイオロス君ね!?話は翔子から聞いてるわ!」
響子は猛獣のように突撃し、いきなりアイオロス君の腕に自分の腕を絡めた。
しかも、そのまま耳元に甘ったるい声で囁いたのだ。
「今晩、私といいことしませんか?」
………………
ちょっと待て。
お姉ちゃん、何言ってんの!?!?!?
私は素で「ひっ!?」って声を出した。だって、あまりにもストレートすぎる。あまりにも直球すぎる。球速200kmのストレートだよ!?
精神世界でエリスが絶叫した。
「させるかァァァ!!!」
女神の小宇宙がドカーンと爆発。私の頭の中が地鳴りで揺れる。
「こいつは断罪だ!お前の姉を地獄に送ってやろう、ショーコ!」
「待って待って待って!お姉ちゃんは悪い人じゃないから!ただの肉食系だから!」
「ただの!?獣だろうが!!!」
私の精神世界で、女神と妹の仁義なき争いが勃発した。
現実では、私は慌ててアイオロス君に駆け寄った。
「アイオロス君!ダメ!それ、毒だから!色仕掛けの毒だから!」
「え、毒!?」と混乱するアイオロス君の横で、響子はニッコリ微笑んでいる。
「あら、妹に毒なんて言われちゃった。ひどいわねえ」
……いや、毒だよ完全に!しかも猛毒!
でも、私がパニックになっている間に、アイオロス君は驚くほど冷静だった。
「申し訳ありません、お姉さん」
「え?」と響子が首を傾げる。
アイオロス君は真っ直ぐな瞳で告げた。
「俺には、翔子という心に決めた女性がいますので……」
――その瞬間、私の心臓は爆発した。
え、なに今のプロポーズ!?全国放送でもいいくらいの名言飛び出したよ!?
思わず床に崩れ落ちそうになったけど、ギリギリ踏みとどまった。
一方の響子は、驚いたように瞬きをした後――すぐに妖艶な笑みに戻った。
「あら、残念。……でも、私、翔子よりいい身体してますから、いつでも気が変わったら言ってちょうだい?」
……お姉ちゃん、やめてえええええ!!!
言うに事欠いてそんな挑発!?
私の顔が、羞恥と怒りと嫉妬で真っ赤に染まった。
「アイオロス君!!信じないで!信じたら殺すから!」
「ひどいわ翔子、妹が姉を殺す発言なんて」
「お姉ちゃんが彼氏を誘惑しなきゃ言わないわよ!」
精神世界では、エリスが「今すぐこの姉を冥界に叩き落とせ!」と叫んでるし。
現実では、私は必死にアイオロス君の反対側の腕にしがみつき、引っ張り合いになっているし。
「アイオロス君は私の!」「いいえ、私の旦那候補よ!」
「やめろって言ってんだろうがあああああ!!!」
……その混沌の中、アイオロス君は困ったように笑っていた。
「えっと……翔子、まずは落ち着こうか?」
いや無理だよ!!こんな大惨事で落ち着ける妹がいるなら連れてきて!!
◆
……はい、やらかしました。
いや、やらかしたのは私じゃないんだよ。うん。あれは完全にアイオロス君が悪い。
だってね?あの人、あの太陽みたいな微笑みで、うちのお姉ちゃんに向かってこう言ったんだよ。
「いえ、俺は、そのような豊満な方よりも、翔子ぐらいの小ぶりの方が好みなんだが…」
アウトォォォォ!!!!
私の頭の中で、審判の笛が鳴り響いた。笛だけじゃなくて「退場ー!」って札まで掲げられてた。よりによって姉の前でそれを言うか?いや、そもそもそんな爆弾発言するか!?
お姉ちゃんは一瞬硬直して、それからニッコリ笑った。でもその目は笑ってなかった。完全に修羅の目。
「……へえ。そう。じゃあ、私のこの魅力的なボディより、妹のほうがいいって言うのね?」
アイオロス君はキョトンとして「うん、そうだ」って頷くからタチが悪い。
天然って時に凶器だよ。
で、私は。
「二人とも、いっぺん死んでこいやぁぁぁぁ!!!」
って叫んで、もうキレた。完全に我を忘れて拳を振りかざした。
でもね。普通ならここで「キャーやめて翔子!」とか「誤解だ!」とか言うじゃん?
ところがうちの姉は違う。響子は目にも止まらぬ速さで私の拳をかわして、逆に私の腕を捻りあげた。
「フフ…翔子、姉に勝てると思ったの?」
ぐぎぎぎぎぎ。痛い。痛いけど、私だって聖闘士見習いだ。負けてらんない!私は逆に背負い投げを狙ったんだけど、今度はアイオロス君がお姉ちゃんの腰を後ろから抱えて止めてきた。
「落ち着け翔子!暴力はよくない!」
その瞬間。
「あら♡腰に手を回すなんて、翔子の前で大胆ね?」
お姉ちゃんの挑発。
「いや違うから!」って必死で否定するアイオロス君。
でも私には見えてしまった。姉の背後に立ち昇る、漆黒のオーラが。
その後の展開はもう、ただの痴話げんかじゃなかった。
庭に出た私たち三人、もはや常人には目で追えない速度で殴る蹴るかわすの超高速バトル。
父の植えた高級バラ園は吹っ飛び、石畳は砕け、鯉の泳いでた池は波立って鯉が飛び跳ねていた。
「翔子!私の幸せを邪魔する気!?」
「お姉ちゃんが私の幸せ奪おうとするからでしょ!」
「やめてくれ二人とも!俺は翔子しか見てない!」
「それが余計にムカつくのよ!!」
まさかの姉 VS 妹 VS 黄金聖闘士。
構図おかしいでしょ!?
いやほんと、戦闘描写するならこうだよ。
私の拳が姉の頬を掠める。姉はその拳を掴んで投げようとする。そこにアイオロス君の蹴りが飛んできて、二人まとめて吹き飛ばされる。
「ごめん!力加減間違えた!」とか言ってるけど、その威力で庭の倉庫が倒壊したからな!?
お姉ちゃんはその瓦礫を飛び越えて、背後からアイオロス君に抱きついた。
「ほら、こんなにぴったりフィットするじゃない?」
「やめてくださいお姉さん!俺には翔子が!」
「翔子より私のほうが大人の色気があるでしょ?」
「お姉ちゃん!放せぇぇぇ!!」
私は渾身のタックルで姉を吹っ飛ばし、アイオロス君を奪還。
「この人は私のなんだから!!」
庭の端で見てたエリスは大爆笑。
「フハハ!なんだこの小娘どもの争いは!これぞ真の聖闘士レベルの痴話喧喧!」
お前も笑ってないで止めろよ。
最後は三人ともゼェゼェ息切らして、庭に膝をついた。
周りは廃墟。お義父様の悲鳴が遠くから聞こえる。
「私の庭がァァァァ!!!」
でも誰も聞いてない。
私とお姉ちゃんは互いに睨み合い、同時に言った。
「絶対に譲らないからね」
横でアイオロス君が頭を抱えていた。
……こうして、我が家の新しい日常が幕を開けた。
普通の女子大生ライフ?そんなものは二度と戻らない気がする。
響子「で、翔子。あんたとアイオロス君、実際どこまでいったの?」
翔子「……え、えっと……正直に言うと……Bまで」
――シーーーーン。
次の瞬間。
響子「な、なんですってえええ!?妹のくせに!黄金聖闘士相手にBまで!?世の女たちの夢を独占する気!?」
翔子「ちょっと待ってよ!私だって流されただけで、アイオロス君が天然で距離感バグってるんだから!」
響子「翔子、許さない……!これはもはや姉妹戦争の火蓋が切られたわ!」
翔子「やめて!あとがきでまで修羅場は勘弁してぇぇ!!」
――こうして、戦いはまだ終わらない。
エリスの新たな戦士の名前はどうしましょう?
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亡霊聖闘士のまま
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邪霊士(セインティア翔リスペクト)
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オリジナル(ぜひコメントにて候補を)