聖闘士星矢異伝 〜聖域なき聖域改革、時代遅れの場所には住みたくない〜   作:斉宮 柴野

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真実か妄想か――!?
愛ゆえに暴走する姉、響子。妹翔子の恋を奪わんとするその激情は、ただの嫉妬か、それとも邪神の復活を告げる兆しか!
彗星レパルス、再び空を駆ける時、日常は崩れ去り、世界は凶兆に震える!

次回――

「真実か妄想か!?姉の帰還と彗星の凶兆‼」

愛と狂気、そして小宇宙の運命が、今、日本に集う‼


真実か妄想か!?姉の帰還と彗星の凶兆‼

(アイオロス視点)

 

 

俺の名は、サジタリウスのアイオロス。黄金聖闘士にして、アテナの聖闘士の中でも真面目担当――のはずなんだが。

 

ここ最近、俺の生活は、黄金の鎧を着てるときよりよっぽど命がけだ。

なぜって?答えは簡単。

 

「アイオロス君♡昨夜はよく眠れたかしら?私の夢、見てくれた?」

 

出た、響子さん。翔子の姉にして、超絶美人。だがこの人、とにかく距離が近い。しかも俺に向かって毎日そんなことを言う。

 

「いや、えっと、ぐっすり寝ましたけど夢は覚えてなくて…」

 

そう答えれば、「まあ!それは残念。じゃあ今夜は私が直接、夢の中に入り込んであげる♡」とか言って、ウィンクしてくるんだ。

黄金聖闘士をやってきた俺でも、これには防御不能。

 

しかも彼女、俺だけじゃない。オルフェウスには「その指で私だけの愛の調べを奏でて♡」と絡みつき、ヤンには「その盾で私を守って♡」と抱きつく。全方位に恋愛爆撃を繰り出している。

 

……正直、邪神エリスより怖い。

 

当然、翔子も黙っちゃいない。

 

「お姉ちゃん!またアイオロス君に色目使ったでしょ!」

「色目だなんて失礼ね。妹の恋人選びを、頼れるお姉ちゃんが手伝ってあげてるだけよ」

 

その瞬間、空気が変わる。

バチバチと火花が散り、二人の間の気温が数度下がる。次の瞬間――

 

ドゴォォォン!

 

……庭の池がまた壊れた。

 

俺はいつも思う。なぜ一般人のはずの響子さんが、聖闘士の翔子と互角に戦えるんだ?小宇宙は一切感じない。なのに庭石は粉々になるし、鯉は毎回池から飛び出す。これもう超常現象だろ。

 

そんなカオスな日常を過ごしていたある日、ようやく俺に「まともな」仕事が来た。

聖域からの緊急通信だ。

 

「よし、翔子、一緒に通信室に行こう」

 

響子さんの猛攻をどうにか振り切って、翔子と二人で通信室に走った。

背後では「アイオロス君、すぐ戻ってきてね♡」と手を振る姉の声。いや戻りたくないんだが。

 

通信機の前に座ると、映し出されたのは――アッシュ。

 

 

「やあ、アイオロス。元気そうだな」

 

「いや、元気どころじゃないよアッシュ!俺は毎日生き地獄だ!」

 

思わず叫んでしまった。黄金聖闘士としての威厳?知らん。

 

アッシュは眉をひそめ、「また何かあったのか?」と聞いてくる。

「何か、じゃない!翔子の姉が帰国してからというもの、毎日俺は誘惑され、翔子と響子さんのバトルに巻き込まれ、庭は崩壊し、光政さんは『また修理費が…!』って泣いてるんだ!」

 

俺の訴えを聞いて、アッシュは静かに頷いた。

「なるほど、つまり聖域における外交危機、内部抗争、財政問題の三重苦を、君一人が背負っているわけか」

 

「違う違う!それ、全部翔子の姉が原因だから!」

 

……だがアッシュは完全に真面目モードで分析してる。俺の話、絶対半分くらいしか聞いてない。

 

横で翔子が口を尖らせる。

「ほら見なさいよ、アイオロス君。お姉ちゃんのせいで大変なんだから!」

 

「翔子だって毎日殴り合ってるだろ!俺は板挟みで潰れるわ!」

 

すると通信機から、アッシュの呆れ声。

「……痴話喧嘩なら通信切ってからやってくれないか?」

 

はい、すみません。

 

でも、俺だって言いたいことは山ほどあるんだ。

 

「アッシュ、聞いてくれよ。昨日なんか、夕飯のときに響子さんが俺の隣に座って、わざと落とした箸を拾うふりして俺の太もも触ってきたんだぞ!?しかも翔子がそれを見て大爆発!庭の木が一本消し飛んだんだ!」

 

「………………」

 

アッシュは額に手を当てて黙り込み、そのあと深いため息をついた。

「……俺が想像していたより事態は深刻のようだな」

 

そうだよ!だから助けてくれよ!

 

でもアッシュの返事は、予想の斜め上を行った。

 

「……まあいい。とりあえず、その響子殿の小宇宙を解析して、聖域にデータを送ってくれ」

 

「解析!?いや、そもそも小宇宙感じないんだって!ただの人間なんだって!」

 

「ただの人間が黄金聖闘士と互角に渡り合えるはずがない。つまり彼女は何か隠している。…いい機会だ、調査しろ」

 

調査しろって、毎日誘惑されてるのに!?これ以上近づけって!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(翔子視点)

 

モニターに映るアッシュ君の顔は、めちゃくちゃ険しかった。

普段から若干眉間にしわが寄ってる人だけど、今回はそれが二倍増し。おまけに背景の資料棚から漂ってくる「徹夜明けのカフェイン臭」までモニター越しに伝わってきそうで、正直ビビる。

 

「本題だが、アイオロス、翔子さん。厄介なことになった」

 

低い声でそう切り出したアッシュ君に、私は背筋を正して思わず正座。いや、画面の前で正座したって意味ないんだけど、反射的にそうしちゃったのよ。

 

「ここ数日、世界各地でまたしても不自然な紛争やテロが増加している。聖域の観測網が、世界中に渦巻く、不穏で邪悪な小宇宙を感知した」

 

「まさか…!」と隣でアイオロス君が声を上げる。

いやいや、あんた冷静に反応してるけど、私の心臓はもうバクバクよ?

 

アッシュ君は淡々と続ける。

「一度は去ったはずの、不吉な彗星レパルスが、再び地球の衛星軌道上に出現している。これは、伝説に言うところの、争いの女神エリスの復活に違いない」

 

……。

 

え、ちょっと待って。

 

「エリスの復活」って、今さら言うけど、私の中にいるんですけど!?

 

私は内心で呼びかけた。

(ねえエリス。あんた、また復活するつもり?)

 

すぐに、精神世界からあの図太い声が返ってくる。

 

「馬鹿を言え、ショーコ。我が魂は、既にお前の魂と完全に融合している。これ以上の復活も、ここからの独立もありえんわ。全く、気色の悪い話だ」

 

……言ってることは真面目なのに、最後の「気色悪い」で台無し。

てか、融合してるこっちが一番気色悪いんだよ!

 

私は慌ててアイオロス君に伝えた。

「アイオロス君!エリスが言うには、復活なんてしないって!」

 

彼はすぐにアッシュ君に向き直る。

「アッシュ、聞こえた通りだ。エリスは今も翔子の中にいる。これは、偶然ではないのか?あるいは、俺たちの知らない、他の何かか…?」

 

アッシュ君は深くため息をついた。

「…まあ、そうだろうとは思っていたがな…」

 

……って、その溜め息やめて!心臓に悪い!

 

でね、ここから私の本音。

ずっと思ってたんだけど、この人、年下なんだよね。どう見ても落ち着いてるし、参謀長だし、言ってることはだいたい理解不能に難しいし、威厳はあるし。けど実際は、私より下。

 

だから、ずっと呼びたかったのよ。

 

「ねえアッシュ君」

 

画面の向こうの眉間のしわが、ぴくっと動いた。

……おお、効いてる効いてる。

 

「……君は、本当に自由だな、翔子さん。だがまあ、好きに呼ぶがいい」

 

おおおお!了承された!

 

やった!ついに!参謀長殿を「アッシュ君」呼び!

 

横でアイオロス君が「(翔子…やっぱり怖いもの知らずだな)」みたいな顔してたけど、気にしない。

 

ただね、この「アッシュ君」呼びが、思った以上に甘美で危険な響きを持ってたらしい。

 

エリスが精神世界で絶叫してた。

「ショーコ!お前、その呼び方は何だ!?甘ったるいではないか!貴様、もしやアッシュを籠絡する気か!」

 

「ちょ、違うって!私はただ年下だから親しみを込めて!」

 

「年下だからといって“君”をつける発想!それは、俗世の乙女どもが恋に落ちる前触れとして使うやつだぞ!我を裏切るのか!?」

 

……うるさいなもう。私の自由でしょ。

 

そしてここで問題発生。

「アッシュ君」って呼んだ瞬間、アイオロス君の顔がピキッと固まったのよ。

 

「……翔子、俺のことは?」

 

「え?」

 

「いや、その……俺は今まで“アイオロス君”って呼ばれてるだろ?なら、参謀長を“アッシュ君”って呼ぶなら、俺の方はどうなるんだ?」

 

……まさかの嫉妬!?

 

「アイオロス君は“アイオロス君”でしょ!?」

「だが区別がつかん!」

「区別つくわ!名前が違うじゃん!」

 

二人して子供みたいに言い合ってたら、アッシュ君がめんどくさそうに溜め息。

 

「……やれやれ。やはり人間関係の調整が、この世で一番難しいな」

 

参謀長、あんたその一言で全部片付けないで!

 

こうして私は、無事に「アッシュ君」呼びを手に入れた。

でも同時に、アイオロス君の嫉妬という新しい火種を作っちゃった。

 

聖戦?彗星?エリスの復活?

そんなのより先に、私の身が持つかどうかが心配だわ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

アッシュ君の顔が、また一段と険しくなった。いやほんとこの人、険しい顔以外のバリエーションないのかな?ってぐらいのデフォルト険顔。

 

「問題は、その異変が、特に日本で、2週間前から急増していることだ。…分かるな?教皇(サガ)には、まだ適当にごまかしているが、このままでは聖域本軍の本格的な介入を招きかねん。そうなれば、お前やアテナの存在も…」

 

私は息を呑んだ。いや、横でアイオロス君がカッコよく「…!分かった」って真剣にうなずいてるから余計に。

 

「俺と翔子で、こちらのことは調査しよう。エリスも、何か役に立つかもしれん」

 

おお、任務キター!って思った瞬間、私の中でゴソゴソ動く気配。

 

「ちょ、やめろ、今は私が喋ってんでしょ!」

 

ドンッ、と内側から弾き飛ばされて、身体の主導権がエリスに入れ替わった。もう、無理やりすぎる。

 

モニターに向かって、彼女は例の高笑いを響かせる。

 

「フン、ようやく我が力を頼る気になったか、小僧!」

 

……小僧。

相手、聖域の参謀長で、私からしたら「アッシュ君」なのに、堂々と「小僧」。もうやめて、こっちの胃が痛い。

 

「よかろう!我が名を騙る不届き者がいるのであれば、この我が直々に誅してくれる!そもそも、アイオロスは我が夫。我が守るゆえ、心配するには及ばん!」

 

「誰が夫じゃあああ!!!」

 

私は精神世界でエリスを羽交い絞めしながら叫んだ。

いやほんと、なんで勝手に婚姻届出してんの!?

 

でもエリスの暴走は止まらない。

彼女はさらにアッシュ君に向かって、とんでもないことを言い放った。

 

「ついでに言っておくが、アッシュよ。お前の聖域も、いずれ我が支配してくれる。アテナもこの日本にいる。我が子として育ててやるのも、面白いかもしれん!」

 

……。

 

いやいやいや。

 

なに勝手に聖域を「いただきます」って言っちゃってんの!?

しかもアテナを「我が子として育てる」って。

 

私はもう限界だった。

「この駄女神!余計なこと言うなぁぁぁぁぁ!」

 

バキッと精神世界で殴ったつもりで、自分の額を叩きつけた。痛い。

 

で、問題はここから。

またしても、アッシュ君の表情が動かなかったこと。

いや普通さ、「えっ」って動揺したり、「ふざけるな」って怒ったり、何かしら反応するでしょ?

でもあの人、ポーカーフェイスのまま眼鏡を押し上げて、淡々と「…理解した」とか言うんだもん。

 

理解しないで!?

 

「アッシュ君!今のはこの駄女神の妄言だから!記録とか残さないでね!?教皇サガに報告とかしないでよ!?」

 

私が必死で叫ぶと、モニターの向こうで彼が微かに笑った。

「…安心しろ、翔子さん。いや、翔子。君の言葉は、俺だけが覚えていればいい」

 

……やばい。

その一言で、なぜか心臓がドキッとした。

いや違う違う!アッシュ君にときめくとか、そんなのは絶対ない!今はアイオロス君で手一杯なんだから!

 

そのアイオロス君はというと、隣で腕を組んでた。

「翔子、やっぱり俺の前で他の男を『君』呼びするのはどうかと思うぞ」

「え、いや、だってアッシュ君は年下だし!」

「俺だって“アイオロス君”だろう」

「そういうことじゃなくて!」

 

あーもう!二人して私の呼び方にいちいち突っかかるのやめて!

 

結局、任務は「日本で急増する異変を調査すること」に決まった。

でも私の頭の中では、「エリスの暴走」「アッシュ君の無表情」「アイオロス君の嫉妬」の三本立てで、もはやパンク寸前。

 

(……これ、異変が片付く前に、私の恋愛(?)と生活の方が崩壊するんじゃないの?)

 

そう思いながらも、私は深呼吸して立ち上がった。

「とにかく、やるしかない!エリス!アイオロス君!私と一緒に頑張るんだからね!」

 

……まあ、エリスは「我が夫」とか言ってる時点で完全に戦力外なんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

通信が切れると、アッシュ君の顔がモニターから消えた。

最後に見えたのは、あの人らしい「やれやれだ」って苦笑だったけど…目は笑ってなかった。むしろ、冷たい光が浮かんでいた気がする。あの参謀長、本気で日本の状況を危惧してる。

 

私は、エリスとの口喧嘩をいったんやめて、ベッドに腰を下ろした。胸の中で、イヤな予感がずっと渦巻いている。

 

(不穏な事件が起き始めたのは、2週間前…)

(世界各地で…特に、日本で…)

 

私は思わず、両手で頭を抱える。だって――

 

(お姉ちゃんが、日本に帰国してからじゃない…!?)

 

……。

 

…………。

 

……………………。

 

いやいやいやいや!!まさか!

あの優しくて、ちょっと愛が重くて、イケメンを見たら自制心が吹き飛ぶお姉ちゃんが、邪神復活の黒幕とか、そんなRPGのシナリオみたいなこと……。

 

でも、考えれば考えるほど符合していく。

空港での異常なまでの抱擁、あの時点で既に私の小宇宙を奪おうとしていたのでは!?

「妹に彼氏ができた」って聞いた瞬間に目のハイライトが消えたのだって、あれはシスコンではなく邪神の目覚めの兆候だったのでは!?

 

私の背後で、精神世界からエリスの呆れた声が飛んでくる。

「ショーコ、それはただのシスコン女の嫉妬だろうが」

 

「うるさい!黙っててよ駄女神!」

 

私は布団にバタリと倒れ込んで、天井を見つめた。

(いや、でも…もし本当にお姉ちゃんが邪神と関わってるなら…私、戦えるの?家族を相手に?)

 

その瞬間、胸がギュッと締めつけられた。いつも私を守ってくれた、大好きなお姉ちゃん。

考えただけで、涙が出そうになる。

 

だから私は、強く首を横に振った。

「違う、違う…そんなわけない…!」

 

ただの妄想だって分かってる。けど――心のどこかに残る、拭いきれない不安。

平和に見える日常の裏で、じわじわと不気味な影が広がっていく音が、確かに聞こえていた。




翔子「ねえ、何でそんな顔してるの?」

アイオロス「……翔子。お前、この前、アッシュを“君”付けで呼んでいただろう?」

翔子「え?ああ、それ?年下だし、親しみを込めて――」

アイオロス「……俺のことは?俺はいつも“君”付けで呼ばれているが、そこに特別な意味はないのか?」

翔子「え、いや、それはもちろん――」

アイオロス「翔子……。お前は、本当に俺を愛してはいないのか?」

翔子「な、なに言ってんのよ!愛してるに決まってるでしょ!」

アイオロス「……っ」

翔子「むしろ毎日でも抱かれたいくらいなんだから!!」

アイオロス「……!? ……しょ、翔子……!」

翔子「あっ……(言っちゃった……!)」

エリスの新たな戦士の名前はどうしましょう?

  • 亡霊聖闘士のまま
  • 邪霊士(セインティア翔リスペクト)
  • オリジナル(ぜひコメントにて候補を)
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