夜のナイトクラブにて…
ズンチャンズンチャン♪
「ったく、やってれるかよッ!」
このやけ酒煽ってる着崩したスーツを着たバカ、ライス・カリルは苛立っていた。
最近、脅したガキが鈍くさくて中々に使えないからだ。
「親父も兄貴もさっさと殺せばいいのによぉ!あのガキ、見てるだけでイラつくッ!」
そこにグレーのスーツ姿の黒髪を綺麗に束ねたイケメン(黒髪に染めたシュウジ)が現れた。
目元が見えにくいサングラスをかけ、それが妙に似合っていた。
「ねぇワインを一つ」
「種類は?」
「それ」
「お前もそれが好きなのか?」
「好きだよ」ニッコリ
「ん~~~いい。この味、ボクは好きだ。飲む?」
「飲もう」
「ならそっちにもグラスを」
そこからはまるでとんとん拍子に話が進んでいった。
立って話す仲から、座って話すまでの進歩は恐ろしく早かった。
まるでお互いの趣味が合い、まるで幼馴染のような関係性。
それを彷彿とさせたが、それは全てアマテが調べ上げたのをシュウジに全て事前に叩き込んだからだ。
そしてそれをしれっとやってのける。
それをシュウジの持つ盗聴器越しに聞いて、アマテはこう思った。
コイツ、やけに手馴れてやがると
「お前は面白い奴だなぁ…初めて会った気がしねぇ」
「…もう仲良くなったから白状させて貰うよ。ボクは君に仕事を持ち掛けに来たんだ」
「へぇ、ウチは酒とかそういう輸出入業をしているだけなのになぁ」
「ボクは、もう少し大人の話がしたいな。君、いや貴方達はかなりの有名人だ。ボクもリスペクトをしている」
「…褒めてくれて嬉しいねぇ」
「ライスは一番話が分かると思ってるんだ。野心家で正にこれから家を仕切っていける逸材」
「お世辞が過ぎるn」
「人を見る目はあるつもり。それ位弁えないとこの業界では…」
シュウジは側頭部を撃ち抜くジェスチャーをする。
「…」チラリ
ライスはある方向を見る。
その方向をシュウジが見れば
夜遊びが過ぎる弟のことを思う兄が来たなと思い
「ビジネスチャンスは一度だけ…それじゃ」
シュウジはそう言い残して、すっとその場を去った。
一枚の名刺を残して。
name シンジ・カワムラ
am2:00 ○○廃棄場
=====
クラブから離れた社内にて
「やけに手馴れてるね」
「ユズリハのお陰さ。武器は?」
「そこの車内に積み込んでいる。大丈夫、イイモノは積んでるよ」
そこにはパッとしないデザインのエレカー(※盗難車)があった。
「どう調達したかは…聞くのは野暮だね」
「最近は色々と新規路線開拓中です。お陰で平凡から遠のいていく…原因その1」シュウジに指サシ
「さて、ならユズリハはどうする?」
「先に帰るよ。はぁ…先日のテロ騒ぎに心病んだかんだで色々口実つけて、ようやく塾サボれたのに…これだからさ」
「ユズリハって、エレカーって無免許?」
「一応持ってるよ」免許証チラチラ
(※ガンダムの世界のエレカーの運転免許は、15歳から取れるらしいです)
「ボクのエレカー…壊さないでね」
「停めとく場所は、アジト近くのいつもの空き地でいいんでしょ」
「車体カバーも掛けといてね」
「分かった。あっそうそう、あの車盗難車だから、何もかも終わったら適当なところに捨てといて。やり方は私の教わった通りに…シュウに任せる」
そしてこの後、シュウジはバカ息子と上手く話を纏めたのであった。
=====
「アマテ…」
「痛々しい顔してるね。相当扱いが酷そう」
「後どれだけかかる?」
「大丈夫。シュウが上手く話を纏めている。そしてこっちも色々準備しているから」
=====
ちょっとした高級食堂で、身なりのいい格好のシュウジと
「ライス、君とはもういい関係だけど…もう少し、信用の証は見せて欲しいな」
「シンジ、これ以上何を見せろというんだ」
「この前見せた武器に釣り合うだけの武器さ」
「ちょっ!?それは…特にウチの武器保管庫は見せられない…見せたら親父に殺されちまう…」
「……仕方ない、なら今回の話は忘れて欲しい」
「オイオイオイ…」
「いやいいんだ。こういう商売をしているとこういうのは当たり前だから。ボクにはボクのやりかたがあるように、そっちにはそっちのやり方がある。譲れないものがある同士、仕方ないさ」
シュウジはスッと財布から現金を出し
「それと嫌な空気にさせてしまったお詫びに、この場はボクが奢るよ」
「待て…」
「どうしたの?」
「一つ条件がある。そこまで目隠し…これなら飲まなくもねぇ。どうだ?」
「いいよ。ボクはどんな武器か見たいだけだから」ニッコリ
=====
「これは…凄いね」
「だろ?」
シュウジは色々と武器を弄る。
その中でもアマテに教わった通りにやれば
「ひゅ~流石は手馴れてるねぇ」
相手は口笛を吹いて感心した表情をする。
ただこのバカは気づいていなかった。
尾行されていることに…
=====
世も明け、昼前の時間帯
カリル家、秘密の武器倉庫付近にて
「この馬鹿者がぁぁぁぁ!!」
「ご、ゴメンナサイ…親父…」
ボコボコにされたバカ息子がそこに居た。
ニャアンがこの家族に駆けこんで来たのだ。
そこの息子の友達がやって来て、この一家のことを根掘り葉掘り聞いてきたと。
しかも色んな書類も持っていて、そこには家族構成、銀行口座、資産リスト、ありとあらゆるものが網羅されていたというのだ。
そして激高したライスはニャアンをいつも殴っているように殴ろうとしたが、今回は親父にぶん殴られたのだ。
正に、一体何をやらかした!貴様はッ!?である。
ニャアンはそのどさくさに紛れてその場から逃亡したが、この一家からすればそれどころではない。
脅す側から脅される側に転落したかもしれないのだ。
そして息子はゲロした。
家族しか知らない秘密の武器倉庫を見せたと。
当然親父は激怒したが、バカ息子は目隠しをしたから大丈夫と抜かすが当然。
「後を付けられるということまで頭が回らんかったのかッッ!このバカがッ!」
更にボコボコにされる始末。
そして武器倉庫に到着する辺りで、1つの最悪が襲い掛かる。
軍警が動いたのだ。
『いやぁ…カリルさんには色々お世話になってたんですけどねぇ…色々とリークされちゃいまして、これ以上は庇えなくなりましてねぇ』
「ぐっ!」
『せめてもの慈悲です。最低限の荷物を纏めて逃げられる程度の時間は猶予してあげますよ。それを過ぎたら逮捕しますけd』
「あいつ等…今までの恩を仇で返しやがって!!」
そして直ぐに家に帰ればどうなっていたか?
家が全焼していたのだ。
貯えてた資産ごとである。
「私の…家が…」
「親父!早く逃げよう!」
この一家、とにかくイズマから逃げ出したという…
文字通りの最低限の荷物だけを持って…
=====
「アマテ…これで私は…」
「もう大丈夫よ。あいつ等どっかに逃げたようだし」
「そうかな…」
「シンジ・カワムラという存在に暫くの間は怯え続けるんじゃない。そしてあいつ等の資産も奪うだけ奪って、焼ける物は焼いて処分した。色々情報もばら撒いて悪党としての格も落としておいたし、そう簡単に再起もできないんじゃない。何よりあいつ等はイズマ、サイド6ではお尋ね者。もう二度とここには近寄れないでしょ」
アマテはあの一家から盗んだ現金、宝石類を数えていた。
「ボクにも分け前欲しいな」
「ダメ。アンタの金の使い方は駄目過ぎ。だけど」
幾つかの現金を渡し
「それだけはくれるんだ」
「ガンダムの整備なりに使いなさい。メンテしないとどんな機体でもあっという間にボロボロだから」
「それとニャアン」
「っ!?」
コツン
アマテは優しく拳骨して
「これを機にもっと身を護るやり方を色々と教えなきゃね…辛かったでしょ?」
その瞬間、ニャアンはアマテに抱き着いて大泣きし
シュウジはそれを見なかった振りして、買い物へと向かって行ったのだった。