皇さんとの取引から3日経ち、その間にもう一度『荒れ果て町』と『ざわめきの森』を探索した。
取引サイトに出品する物の材料集めと、レベルアップのためだ。
レベルに関しては、3日前の時点で15に到達していたが今回の素材集めで18まで上がっている。
私は集めた素材で武器や防具を作成して、今日はのんびりと過ごす予定にしている。
武器ばかり作っているので、今回は防具を中心に作る。
その結果、『迷宮蟻の小型盾』と『大蜘蛛のローブ』などの防具を大量に作りつつ、『死霊の結晶』を素材にした武器がいくつか完成した。
特に今回よくできたと自分で思う物は『死者の魔杖』だ。
『死者の魔杖
特殊効果:装備時『スキル:ゴースト特攻』を付与
『死霊の結晶』と『死者のクズ鉄』を使って作られた対霊体用の杖
これを保持している者は霊体に対して与えるダメージが増加すると噂される。
『死者のクズ鉄』をもっといい素材にすればよりよい杖が作れるだろう。』
ゴースト系の魔物に与えるダメージが増加するということは、駆け出し探索者の壁である『荒れ果て町』の探索が楽になるということだ。
無論この杖だけで探索が楽になるわけではないだろうが、それでも魔法銀の武器を購入するよりは値段も安めにはなると思われる。
そのため、私はこの杖を10本ほど試しに作って、出品してみる。
ちゃんと説明欄には特殊効果については記入している。
「これでよし……」
私はすべての出品物に説明を書いて出品ボタンを押す。
いつも通り、出品物が消滅して出品できたことが一目でわかる。
それを確認した私は、外に出て散歩を楽しむことにする。
散歩なので特に目的はないのだが、製作物のアイデアは必要だろう。
今までは装飾とかもない無骨なデザインにしているが、もう少し装飾したほうが高値がつくかもしれない。
そう思いながら、川沿いを歩いていると何か周りが騒がしくなった。
急いで周りを確認すると、イベントをしているようでにぎわっている。
近くに貼ってあるポスターを見ると、イベントについて書かれていた。
探索者用のアイテムを販売するフリーマーケットをしているらしい。
(……素材は少し余っていたはずだし、参加しようかな?飛び入り参加もお金を払えばOKみたいだし)
私はすぐに開催者のテントまで移動して参加の意思を伝える。
昔ならこんなことはしなかっただろうが、探索者になって出来るようになってきている。
「参加ですか?では、名前と連絡先をお願いします」
「はい、どうぞ」
開催者に渡された紙に、記入して渡す。
「米田黒璃さんですね。ではあちらの方で出品をお願いします」
渡してすぐに、私の販売スペースに案内される。
開始まであと1時間ほどらしいので、トイレに駆け込んで錬金を始める。
今回は余った素材ということもあり、そこまでいい商品は作れないが、フリーマーケットに来るのは初心者か駆け出し探索者くらいなので気にする必要はないのかもしれない。
「よし、出来た!」
私は『迷宮蟻のダガー』などのアイテムを作成して販売スペースに戻り、商品を並べる。
周りの販売スペースでは、性能よりも外見の可愛さを追求していそうな商品が多い。
そう考えると、私の商品は求められていないのかもしれない。
そんなネガティブなことを考えていると、開始の放送が流れてお客さんが歩いてき始めた。
どちらかと言えば女性が多いようだが、男性もぽつぽついる。
「すみません、これはいくらですか?」
少しすると私の店にもお客さんが来た。
「『迷宮蟻のダガー』ですね。それは5万円です」
「安いですね。買います」
値段はフリーマーケットということで安めに設定していることもあり、すぐに何本か売れる。
「売れていますね」
「ありがとうございます!」
隣の店の人から声をかけられる。
声に反応して返事をしながらそっちを見ると、私よりも年上そうなお姉さんがいた。
出品物はポーションなので、そういうスキルを持っている人なのだろう。
「ポーションってこういう場所で売れるんですか?」
「あまり売れないけど、こういうポーションは駆け出しくらいの頃に必要でしょう?だからここで売っているんです」
「あー……こんなところじゃないと安く売れませんものね……」
「よくわかっていますね。そうなんですよ」
お姉さんの答えに私は納得する。
ポーションは最低価格というのが決まっており、ちゃんとした場所だと1本10000円以上で売らなくてはならないのだ。
フリーマーケットで販売している辺り、新人に優しいタイプの人なのだと私は感じた。
そうして1時間ほどで私の商品は全て売れた。
武器を売る人は珍しいようで、大体そんな商品は『鍛冶祭』とかいうイベントで売られるとのことだ。
特に、私の武器は品質がよいらしくそんな武器がフリーマーケットに出てくることはほぼないとのことだった。
私はそれを聞いて驚いたが、駆け出し探索者に安く武器が売れたということなのでよかったとしか思えない。
隣のお姉さんも私の商品が完売したことを喜んでいる。
そのため、私はお姉さんの店も少しだけ手伝うことにした。
「いいんですか?用事とかないのでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
お姉さんは心配そうに私に聞いてくるが、本当に用事はないので手伝える。
私に本当に用事がなさそうだと分かったのか、お姉さんは手伝うのを許可してくれた。
そうして、フリーマーケットが終わったときにはお姉さんのポーションは15本ほど売れていた。
完売とまではいかないが、そこそこの人数の人にポーションが渡ったのだった。
私は感謝しているお姉さんと別れて家に帰る。
そして取引サイトで私の出品物を確認する。
すると、『死者の魔杖』の値段が100万まで上がっている。
今までにない武器なことのあり、値段が吊り上がっているのだ。
私は驚きつつも、自分の成果に対して誇らしく思いながら眠りについた。