奥に進んでいくと、魔物の数も増えていくのがこのダンジョンの性質だ。
この奥にいる何かを守るために、一定以上奥まで進むと好戦的な魔物も現れてくる。
それが『スカイジェリー』と呼ばれるクラゲのような魔物だ。
ドロップアイテムは存在せず、ただ侵入者を襲うだけの危険な魔物であり、大量の触手には触れるだけで動けなくなる神経毒がある。
目の前にそのスカイジェリーが漂っているため、遠距離で攻撃を行うことにする。
近づくだけで危険なのもそうだが、物理攻撃が効きづらいためだ。
「ウィンドエッジ」
風の刃でスカイジェリーを切り刻んで消滅させていく。
そういてまた進んでいくと、開けた場所に出てきた。
その場所は腰に着くぐらいの海水があり、中心には1体の魔物がこちらを見ている。
この『響きの海岸』のボスモンスター『マーメイドクイン』だ。
不埒なことを嫌い、静寂を愛する気難しいボスだがこの魔物を倒すとダンジョンが消えるので手出しができない。
「お初にお目にかかります、私は黒璃と申します」
「そうか……、私に何の用があって来た?」
話すだけで跪きたくなるほどの威圧感を放ちながらマーメイドクインは要件を聞いてくる。
その声は威厳がありつつ、聞いているだけで魅了される程だが、ここで魅了されたら殺されるので耐えなくてはならない。
「……いくつかの素材を頂きたいと思い、ここまで来ました」
「素材……?私を倒しに来たのではないのか?」
「ええ……素材が欲しいだけです」
「そうか……そうか。面白い奴だ!」
マーメイドクインは私の言葉を聞いて愉快そうに笑い、空中に穴をあけていくつかの素材を出した。
「取引といこう。私の髪飾りを目の前で作ることが出来たのならば、素材をいくらでも渡してやろう!」
マーメイドクインは私に髪飾りの素材を渡してくる。
それは『桃色王妃貝』と『清流の王貝』であった。
2つともレア素材であり、上級探索者であったとしても手に入れられない可能性もある。
私はその2つの素材を手に乗せると、マーメイドクインから要望を聞いて錬金を開始した。
数秒後、私の手にはレア素材を使った最高ランクの髪飾りがあった。
「お主『高速錬金』の持ち主か?人間に捕まっておらんとは……」
「はいそうです。では、こちらが要望された髪飾りです」
私は堂々とマーメイドクインに髪飾りを渡し、反応を待つ。
「これは……確かに私の要望通りの代物だな。約束通り素材をいくらでもやるが……」
マーメイドクインは一度言葉を切ると、私の方を見て小さく頷いた。
「黒璃と言ったか?お前が人間の好きなように扱われるのは好かん。私の加護をやるとしよう」
「よろしいのですか!?」
「ああ、いい。私の加護がある限り、お前は水魔法が使えるようになり、私といつでも脳内で会話ができるようになる。いつでも素材を渡すことが出来るぞ」
マーメイドクインは説明をすると、私に手を向けて魔法を放った。
その魔法を私は躱すことなく、受け入れる。危害を加えるタイプの魔法ではないためだ。
「これで加護を与えることに成功した。では一度家に帰ってから素材の受け渡しを行うことにしよう」
「ありがとうございます。では一度帰宅いたします」
私はマーメイドクインと別れると、自分の家へと帰っていくのだった。