体を休めた私は取引サイトにアクセスし、『野蛮なる剣』と『潮の杖』の商品登録をしていた。
登録するとすぐに値段が上がっていき、前回そこそこ有名なクランに買われたのが認知度上昇につながっているのだと分かる。
「面倒ですね。この登録サイトはそこまで悪辣ではないので私の情報を売ることは無いでしょうが……」
私は知名度が上がると詮索してくる奴もいるだろうと思っているので面倒に思いつつ、夕食の野菜スティックを齧った。
次の日、取引が成立したことを知らせるメールが来ていたので確認する。
『野蛮なる剣』はアメリカの中小クラン『ワイルドスカンク』が購入したらしく、日本円にして12万円ほどで売れていた。『潮の杖』は商品説明に重量が重いことを書いていたこともあってそこまで値段は上がっておらず、8万円で個人が購入している。
私はまたクランに買われたことを少々残念に思いつつ、ダンジョンへと向かうのであった。
「黒璃さん!奇遇ですね!」
ダンジョンゲートへ入ろうとした私は声をかけられたので振り返る。
そこにいたのはあかりちゃんだ。相変わらずキラキラ輝くオーラは眩しい。
「どのダンジョンに行くんですか?」
「『潮騒の海』だよ」
「あそこですか。いいですよね……一緒に行きましょうよ」
「えっ……うんいいよ?」
あかりちゃんの提案に少し戸惑いつつも、一緒に行くことを同意したためダンジョンゲートをくぐる。
そこにはいつも通りのダンジョンが広がり、安全な場所では楽し気に遊ぶ人々の姿が見えている。
「黒璃さん、今日はどの魔物を狙いますか!」
「『ラージクラブ』を狙っていきたいけど、他の魔物がいればそっちも狙いたいかな?」
あかりちゃんと一緒に安全地帯から離れ、ラージクラブを討伐することにした。
歩いてすぐに数体の巨大ヤドカリがいたので私はウィンドカッターで遠距離攻撃を担当し、近距離であかりちゃんが戦うこととなった。
あかりちゃんは前に交換したあの鎌を振るい、それだけであの硬いラージクラブの甲殻ごと真っ二つに切断して命を刈り取っていく。交換してそこまで経っていないと思うが、使いこなしているのに驚きつつ、私も風の刃で攻撃していった。
「これだけあればいいですかね!」
「『大宿借の爪』5個と『大宿借の宿』1個だからもういいかな……」
そろそろいいだろうと帰ろうとしたその時だった。
いきなり海の方からカモメが突っ込んできた。
カモメは私たちの進路を塞ぐように集まり、10体になった瞬間に突進してきた。海の方からは更に飛行してきている。
その突進を回避しつつ、私はあかりちゃんに説明を求めるがあかりちゃんも知らない魔物のようで観察しているだけである。
「新種の魔物ですね!少々マズいかもしれません!」
あかりちゃんはそういいつつも鎌でカモメを切り落としていくが、鎌は振るうたびに隙が生まれるため次々に飛来してくるカモメには分が悪い。
私も『魔剣アクアモア』を振るってアクアカッターを放って撃ち落としていくが、数が多すぎて焼け石に水だ。範囲攻撃はあかりちゃんを巻き込む可能性があるので撃ちづらく、カモメもそれを知っているかのように私が魔法を放とうとするとあかりちゃんに接近している。
カモメとの攻防を1時間ほど続けていると、ようやくカモメの援軍が収まったので勝利することが出来た。
「あかりちゃん大丈夫!?」
「はい……疲れましたが攻撃力はあまりなかったみたいですね。流石に元気よく話すのは無理です……」
あかりちゃんに言われて、私はあのカモメの攻撃が突進しかなく、当たっても小石が当たった程度の威力しかなかったことに気付いた。数が多い代わりに一体ごとの戦闘力はあまりない魔物だったのかもしれない。
私たちは疲れた体を動かして、カモメのドロップアイテムを拾っていく。落とすのは魔石と『群海鳥の羽根』、『群海鳥の嘴』とかいう素材ばかりであった。
ダンジョンから出た私たちは職員にドロップアイテムを見せつつ説明をする。
「……少々お待ちください!?」
話を聞いている内に職員の顔色が悪くなっていき、ドロップアイテムを持って上層部に相談しに行ってしまった。
そして待つこと30分、皇さんとの取引時に同席していた大犬走さんが来て説明をすることとなった。あかりちゃんが積極的に説明してくれるのでとてもありがたい。
「そうですか。新種は海側から飛んできたのですね?」
「はいそうです!」
「海側の方は探索できていませんからね……ドロップアイテムはどれだけ集まったのですか?」
「えーと……羽が50枚、嘴が47個です」
「なるほど全体では100を超えていそうですね。黒璃さんは今すぐお金にしたいかもしれませんが、その素材を売ったり加工したりするのは待ってください」
「分かりました」
大犬走さんは私にそう言うと、疲れているから早めに帰るように忠告して去っていった。
「黒璃さん!申し訳ありませんが私も用事が入ってしまいまして……さようならです!」
「うんさようなら。あかりちゃんまた今度ね!」
私はあかりちゃんと別れ、家に帰っていくのであった。