作り売りの探索者   作:六道むくろ

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3話

 米田黒璃は腰に迷宮鼠の片手剣を携え、2階層へと下りる。

 1階層に比べ、出てくる魔物は1種類増えるだけだが、ゴブリンやダンジョンラットも僅かながら強くなる。

 気を引き締めて探索しつつ、錬金の素材を探していきたい。

 

 階段を下りるとすぐに小部屋があり、そこでは数人の若者が談笑していた。

 この小部屋には魔物が出現しないこともあり、休憩所のようになっているのだ。

 黒璃が下りると談笑していた若者がこちらを見てくるが、すぐに視線を外した。

 仮面をつけた者となど関わりたくないのだろう。それが黒璃にはありがたいのだが。

 

 小部屋から出ると、出待ちをしていたかのように魔物が現れる。

 汚い水色の粘液で構成された魔物『スライム』だ。

 弱いように見えて物理攻撃は効きづらいため、魔法が使えることが戦闘の最低条件という初心者殺しの魔物である。

 

 スライムは黒璃を見るなり、体を震わせて突進してくる。

 スライムの体は触れたものを少しずつだが溶かすため、黒璃は急いで回避する。

 スライムは壁にぶつかったが、すぐにまた突進をしようと体を揺らす。

 

「ファイアボール」

 突進する前に、黒璃は炎の玉を放ちスライムを燃やした。

 魔法への耐性は0に近いため、どれほど弱い魔法でもスライムを殺すことが可能だ。

 

「これがスライムのドロップアイテム?」

 赤い球体を拾うと、黒璃はそれをじっくりと観察する。

 『スライムの赤玉』はスライムのコアであり、物理攻撃でもこれを砕けば殺すことはできるのだが、その場合はドロップしない。

 地上では使い道がないものだが、錬金に使える可能性があるため拾っておく。

 

 拾ってすぐに、魔物の気配が近づいてくる。

 ファイアボールの爆破音に引き寄せられた魔物が音の方に移動してきたのだ。

 黒璃の後ろからはさっきまで小部屋にいた若者が来ている。

 

 来たのはゴブリンやスライム、ダンジョンラットの群れであった。

 魔物には仲間意識は薄いが、探索者を倒す際には協力することもある。

 黒璃は炎の玉を飛ばして数体の魔物を吹き飛ばすが、数も結構いるようで全部は倒しきれない。

 

「手伝った方がいいか?」

「……!おねがいします!」

 若者のリーダーらしき人が協力の申し出をしてくれたのでお願いする。

 

「じゃあいくぞ!」

 若者たちが各々の武器を手に魔物たちに突っ込んでいく。

 ゴブリンやダンジョンラットは瞬時に倒せたが、スライムだけは若者たちに倒すすべはないらしい。

 黒璃は炎の玉を放ち、スライムを吹き飛ばしていく。

 

 そして戦闘開始から数分で魔物の群れを討伐することが出来た。

「協力ありがとうございます!ドロップアイテムは差し上げますよ」

 黒璃は若者に感謝を伝える。探索者は一応助け合いの精神が求められているため、お礼としてドロップアイテムを譲ろうとする。

「いやいらない。それよりも魔法が使えるんだったら手伝ってほしい。実は俺たちは魔法が使えなくて困っていたんだ」

「えっ……!はい!」

 さっき手伝ってもらったお礼として次はこちらが手伝うことにした。

 

「俺の名前は太郎。こっちの斧を持ってるやつが(たける)。そっちの弓を持ってるやつが(みえる)だ」

「えっと……。私の名前は黒璃です」

 軽い自己紹介をお互いがして、次の階層まで一緒に行動することにする。

 黒璃の仮面が気になっているようだが、何か事情がありそうだと触れてこない。

 

 道中何度か魔物に襲われるが、4人でなら楽に勝利できる。

 太郎さんたちもスライムを倒す術が見つかって喜んでいるようだ。

 

 そうして軽々と3階層への階段まで行くことが出来た。

「どうしますか?進んじゃいますか?」

「いやもうそろそろ帰ろうと思う。昼から用事もあるし……」

 黒璃が進むか聞くと、残念そうな顔をしながら太郎さんが帰ると言った。

「なら私も帰りますね。帰り道にスライムに襲われると危ないですし……」

 少し残念だが、自分もそろそろ帰った方がいいかもしれないためそう言って太郎さんたちとともに帰った。

 

 ダンジョンの出入り口まで来たとき、ふと黒璃は思いついた。

「あっ!そうだ。お近づきの印にこれあげます。ドロップ品をたくさんもらって心苦しいですし」

 そういって黒璃が差し出したのは迷宮鼠の片手剣だった。

 結局、若者に出会ったため使わなかったため新品である。

「いいのか?武器って結構高いぞ?」

 太郎は心配そうに言うが、黒璃が何度も頷くともらってくれた。

 ダンジョンの素材で作った剣なので、初心者用の剣よりは多少ましだろう。

 

 ダンジョンを出て黒璃は若者達と分かれ、買取カウンターに『スライムの赤玉』の一部を売る。

「個数は20個ですね。一つ200円で買い取っています」

「はい!お願いします!」

 とても安い価格だが、4000円ならまあ許容できる。

「あっ!それとこれって買取できますか?」

 黒璃は修理済みゴブリンナイフを買取員に見せてみる。

「少し使ってありますが、この品質なら3000円くらいですかね」

「じゃあ売ります」

 意外と加工したものは高く売れるらしい。

 黒璃は修理済みゴブリンナイフと引き換えにお金をもらうと家に帰る。

 

「じゃあ始めますか」

 黒璃は帰ってシャワーで汗や汚れを落とすと錬金を始める。

 まずは『スライムの赤玉』から錬金してみる。

 

『スライムボム

 特殊効果:爆発時、周囲に粘液をまき散らす

 爆発とともに粘液をまき散らす爆弾。

 粘液は触れたものを溶かすが、せいぜい一般の服くらいしか溶かせない。

 昔性的な目的で作成して捕まった者がおり、所持するだけでスケベ野郎と思われる。』

 

 あまり使えないものが出来てしまった。

 魔法が使えない人の中には使いたい人がいるかもしれないぐらいのアイテムだ。

 

 次に錬金素材としたのは『迷宮鼠の毛皮』だ。

 前回より少なめにして数回に分けてやってみる。

 

『迷宮鼠の手袋

 特殊効果:なし

 迷宮鼠の毛皮で作られた手袋。

 冬場に使えるかもしれない程度の防寒性だが、目立つ色ではないため装備しやすい。

 しかし、ダンジョンラットから作られると知ればほしい人は少ないだろう。』

 

 その結果『迷宮鼠の手袋』が5個できた。そんなにいらないのでまたダンジョン局で売ってみる。

 ネットでも売れないことはないだろうが、手続きが面倒なためやめておく。

 

 そして最後に『迷宮鼠の前歯』で片手剣を作った。

 前回作ったものよりも見るからに品質が良いが、黒璃のレベルが5になったことが理由だろう。

 

 次のダンジョン攻略の準備を完了した黒璃はホームセンターに材料を探しに行くことにした。

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