作り売りの探索者   作:六道むくろ

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4話

ホームセンターに来た黒璃は1m程の長さの木材を購入した。

 『迷宮鼠の前歯』数本と合わせて作ってみたいものがあったのだ。

 

 家に帰り、木材と『迷宮鼠の前歯』を錬金素材として作ったのは、一本の槍だった。

 せっかく色々なものを作れるなら、どんな武器が自分に合うのか試してみたい。

 武器を購入すると軽く数万円はかかるため、自作の武器で試すのだ。

 

 ゆっくりと体を休めた次の日、黒璃はダンジョンゲートの前で悩んでいた。

 レベル5となったことで、いくことのできるダンジョンが増えたのだ。

 『始まりの洞窟』の他に新たに、『ざわめきの森』に行くことが出来る。

 ちゃんと最後まで始まりの洞窟を攻略したい思いもあるが、やはり新しいダンジョンも気になってしまう。

 

 悩んだ末に今日は始まりの洞窟を攻略することにした。

 ゲートに入り、少しすると洞窟の土壁が見えた。

 

 槍をいつでも使えるように肩に担ぎながら黒璃は3階層まで素早く移動する。

 道中現れた魔物は、槍と魔法で蹴散らして進んでいく。

 

 すぐに3階層まで着くと、黒璃は少し息を整えて槍を見る。

 鉄製でないこともあり、少し傷がついているがまだ使えそうではある。

 しかし、元々が歯なことあり、そこまで信用できない。

 

「まあ魔物が素材を落とすしいいか」

 軽い様子で黒璃は3階層を探索してみる。

 この階層には今までの魔物に加えて、2種類の魔物が出てくるらしい。

 

 少しわくわくしながら歩いていると、すぐにその魔物に出会うことが出来た。

 空を飛ぶ大きな蝙蝠『ダンジョンバット』と大きなモグラ『ダンジョンモール』だ。

 ダンジョンバットは群れで探索者を襲う性質を持つが、強さ自体はそこまででもない。

 攻撃力は低く、体も飛ぶために槍で軽く貫ける程度の耐久しか持たないのだ。

 瞬時に刺し殺すと、ドロップアイテムである『迷宮蝙蝠の翼』を落とす。

 この翼はたまにコスプレイヤーが加工して使うくらいであまり需要はない。

 

 ダンジョンバットを倒して一息ついたとき、黒璃はダンジョンモールが地面に潜っていることに気づいた。

 ダンジョンモールは地中から奇襲してくることで有名な魔物だ。

 爪がドリル状になっており、当たると肉が抉れる威力を持つ。

 

 しかし、弱点として穴から出てくるときにわずかな振動という予兆がある。

 足元にわずかな揺れを感じた黒璃はすぐに飛びのく。

 飛びのいた瞬間に、ダンジョンモールが飛び出てきた。

 

 黒璃は空ぶって宙を舞っているダンジョンモール目掛けて小石を投げる。

 レベル5の投石となれば、魔物の肉に突き刺さる程度の威力にはなる。

 ダンジョンモールはわずかに血を撒くと、すぐに地面に潜るために爪を下へ向けた。

 

「させない!」

 しかし、地面に潜るのは叶わなかった。黒璃が槍で貫いたのだ。

 ダンジョンモールは少し痙攣して動かなくなると、消えていった。

 しかし、槍は限界が来たのか刃が砕けてしまった。

 

「あと片手剣だけか……」

 黒璃は嘆きながらドロップアイテムを拾い、先に行く。

 ダンジョンモールが落とす『迷宮土竜の螺旋爪』は、加工したものが工事現場で使われる。

 そのため、倒すのが面倒なのもあって1000円程度で取引されている。

 

 この階層では新たに出てくる2種類の魔物が高確率で出現する。

 黒璃は何十体も階段を見つけるまでに倒したが、剣も40体倒したらへんで折れてしまったため途中から魔法と投石で倒していた。

 

「しょうがない、作るか……」

 アイテムポーチから『迷宮土竜の螺旋爪』を30個ほど出すと、錬金を始める。

 すぐに新たな武器が生まれる。

 それは、レイピアであった。刃に螺旋状の溝が彫られており、刺されたら肉を抉りながら貫くだろう。

 

 次に、使わないのもどうかと思うので『迷宮蝙蝠の翼』を使って錬金してみる。

 作られたのはアニメ風にデフォルメされた蝙蝠の翼であった。

 さすがに気になるので、周囲を確認しながら説明を読んでみる。

 

『蝙蝠ウイング

 特殊効果:装備時、魔法『ノイズ』を発動可能。

 迷宮蝙蝠の翼で作られた装備アイテム。

 腰や背中に装備すると、音魔法の1つが使用可能。

 コスプレイヤーが付けているものにはこの効果は発動しない。』

 

 音魔法『ノイズ』は一応聞いたこともあるが、そこまで使える魔法ではなかったはずだ。

 効果は魔物のみに効く混乱効果のある音を放つもので、自分より強い魔物には効かない。

 また、音魔法の素養のある者は少しレベルアップすればこれ以上に使える魔法が習得できるため使う者はいない魔法である。

 

「まあ、可愛いし付けてみようかな?」

 そう言って、腰の後ろに付けてみる。

 今の姿は狐面を付け、マントを羽織り腰から蝙蝠の翼を付ける変な格好の人物である。

 

 そして、錬金が終わった黒璃は4階層へ移動する。

 この階層では新たに、少し強くなったゴブリン『ゴブリンエリート』が出現する。

 強さはゴブリンに毛が生えた程度だが、弓を扱うことが出来るので厄介だ。

 

 降りてすぐに矢が飛んでくるが、それに対し炎の玉を飛ばす。

 炎の玉は矢を燃やしながら矢が飛んできた方向に飛んでいく。

 汚い悲鳴が聞こえ、そちらに向かうとゴブリンエリートが使う弓が落ちていた。

 『ゴブリンの弓』はゴブリンサイズの弓なこともあり人間は使いこなせないが、解体すれば薪代わりには使える。

 

 周囲にはゴブリンエリートをリーダーとしていたゴブリンも数体いるが、弱いので瞬殺できる。

 ゴブリンは武器持ち以外素材を落とさないため旨味がない。

 そう思いながら歩いていると、5階層への階段を発見した。

 

 次の階層が最後だが、ボス部屋になっているので初心者がソロで行くのは大変かもしれない。

 しかし、黒璃は行ってみることにした。

 レベルもいつの間にか8レベルまで上がっており、ボスの推奨レベルである5は超えている。

 

 5階層に下りると、そこには巨大なミミズがいた。

 『ダンジョンワーム』と呼ばれる巨大ミミズだ。

 15m程の長さの体はブヨブヨとしていて気持ち悪い。

 これがこの始まりの洞窟のボスだが、見た目と体力の多さから挑む者は少ない。

 

 黒璃が階段を下りて少し近づいてみると、急にダンジョンワームが動き出した。

 目はないが何か敵を察知する手段を持っているのだろう。

 

「ファイアボール」

 動き出したダンジョンワームに向けて、黒璃は炎の玉を放つ。

 動きが遅く、的も大きいダンジョンワームには簡単に命中したが、軽くその肌を焦がしただけだった。

 

 ダンジョンワームはミミズなのに穴を掘らない。

 巨体で突進するだけの単純な魔物である。

 しかし、その巨体ゆえにただの突進でも軽く探索者を轢き殺せる。

 

 黒璃は突進を跳躍して回避して背中に飛び乗ってみる。

 感触は柔らかく足場としては不安定だが、安全地帯と言える場所だ。

 

 黒璃は無防備な背中に向けてレイピアを突き刺す。

 突き刺すことに特化したレイピアは軽々と肉に刺さるが、この巨体にはほとんど効かないだろう。

 だが、それでいいのだ。これは次に放つ魔法でダメージを与えるために準備に過ぎない。

 

 魔法とは様々な種類があるが、大体はレベルアップすることで新たな魔法を覚えることが出来る。

 レベル8となった黒璃も新たな魔法を覚えたのだ。

 

「フレイムアロー」

 そう言葉にした瞬間、炎の矢がダンジョンワームに放たれる。

 その炎の矢はレイピアで作った穴に命中し、体内を焼く。

 

 これにはダンジョンワームも無視できなかった。

 痛みに悶えるように体を振り回して、黒璃を吹き飛ばした。

 

「エアクッション」

 黒璃は風の魔法を使い、風のクッションを作り出して衝撃を緩和する。

 そして、レイピアを持ち直すと姿勢を低くする。

 

 その瞬間、ダンジョンワーム目掛けてレイピアで突進する。

 その一撃はダンジョンワームの肉体を大きく仰け反らせ、レイピアを深々と突き刺すことに成功した。

 

 ダンジョンワームは急いで体を持ち上げて黒璃を押しつぶそうとするが、黒璃のほうが動きは速い。

 すぐにレイピアを離して距離を取ると、風魔法の詠唱を始める。

 

「ウィンドエッジ」

 数秒で詠唱は終了し、黒璃の右腕から数個の風で作られた刃が放たれる。

 その刃はダンジョンワームを切り付けるが、それでもまだダンジョンワームは倒れなかった。

 

「しぶとすぎない?」

 倒れないダンジョンワームに少し面倒そうに言うが、倒すのは魔法が使えれば簡単なのが分かった。

 

「ウィンドエッジ」

 もう一度風の刃を飛ばしてダンジョンワームを切り刻む。

 ずたずたになったダンジョンワームの体からは液体がこぼれるが、ボスのプライドからか倒れない。

 

 黒璃も魔力の使い過ぎで疲れているが、あと少しで倒せそうなこともあり撤退できない。

 突進を回避しながら魔法で少しずつ攻撃していくこと、数十分。

 ようやくダンジョンワームの動きが止まった。

 

 ダンジョンワームの体が少しずつ空気に溶けていき、完全に消えるとともに体に刺していたレイピアが落ちて軽い音を鳴らす。

 息を荒くしながらレイピアを拾いに行くと、そこにはドロップアイテムも落ちている。

 

「これがこのボスのドロップアイテム?」

 そう言いながら拾ったのは巨大な黒く輝く石だった。

 これは魔石と呼ばれるもので、スキルが獲得できることもあり高値で取引されているものだ。

 ダンジョンワームの魔石からは、『体力上昇』のスキルが得られる。

 スキルの効果は体力の低下を抑制するという効果であり、長い時間動けるようになるためそこそこ人気のスキルである。

 

 黒璃はそれをアイテムポーチに入れ、レイピアをしっかりと腰に差す。

 そうして疲れた体でダンジョン局に戻ったのだった。

 

「お疲れ様です」

「…………ありがとうございます」

 職員が黒璃に挨拶をするが、疲れと緊張で返事が遅れる。

 

「これの査定をお願いします」

 黒璃はダンジョンワームの魔石を職員に渡す。

「これはダンジョンワームの魔石ですね。この魔石なら30万はしますよ」

 とても高く買い取ってもらえるようだ。

 

 黒璃は頷いて魔石と引き換えにお金をもらって家へ帰った。

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