ダンジョン局から逃げた私は、気づかれないように隠密行動をしつつ家まで帰った。
そして、次に行くダンジョンのことを考える。レベルが10を超えているため『荒れ果て町』に行くことが出来るのだが、そのダンジョンはネットの情報によると死霊系の魔物やアンデット系の魔物が出てくるらしい。
そのような魔物には光魔法か魔法銀の装備が有効だ。しかし、私はそんなものは持っていない。魔法は最初に決まった属性しか扱えないのもあり、光魔法を使うというのは現実的ではない。
そのため魔法銀の武器を作りたいのだが、素材が無いのだ。
素材に関しては取引サイトも無いので知り合いにもらうしかない。もしかしたらあかりちゃんが持っているかもくらいである。
「まあ……聞いてみようかな?」
私はあかりちゃんに連絡をしてみる。
「もしもし!永遠乃です!黒璃さんですね!」
「そうだよ……。ごめんね電話かけて……」
電話をかけた瞬間に、通話状態となりあかりちゃんが出てきた。
私は謝ってから、あかりちゃんに用件を伝える。
私の話をあかりちゃんは嬉しそうに聞いている。その反応からもしかしたら持っているのかなと思っていると、あかりちゃんが提案してきた。
「持ってはいますけど……タダというわけにはいきませんねぇ?」
「……そうだよね!いくらかな!」
急に明るさが抑えられた声であかりちゃんが話はじめるが、私もタダでもらおうとは思っていない。すぐにいくら出せばいいのか聞く。
「いえ……お金の話では無いんですよね。お金は正直腐るほどあるので……。例えば
私の言葉にあかりちゃんは更にいつもとは違う声色で要求してきたのは武器だった。
(あかりちゃんには武器のことは言っていないはずだけど……?)
「分かった。どんな武器が欲しいの?」
なぜあかりちゃんが武器の要求をしてきたのかは知らないが、気にせずにほしい武器について聞いてみる。
その途端、あかりちゃんは楽しそうな声になった。
「そうですね!私としては『赤蟷螂の片手剣』とかが欲しいですね!」
「なんでそれを知っているの?」
あかりちゃんの要求に私は驚いた。『赤蟷螂の片手剣』のことをなぜあかりちゃんが知っているのか分からないためだ。
「それはですね!SNSに黒璃さんの写真付きで投稿した不届き者がいたからですよ!肖像権をなんだと思っているんですかね!」
「噓でしょ……!」
あかりちゃんの言葉に私は勝手に写真を撮られたことに腹が立ったが、それ以上に自分の顔が知られてしまったことに絶望する。
仮面をつけているので顔の大部分は分からないだろうが、ダンジョンに行ったときに話しかけられる頻度が増えるかもしれないためだ。
「それはともかく!魔法銀と『赤蟷螂の片手剣』を交換でいいですか!」
「それは……まあいいよ。作ればいいし……」
「そうですか!実は武器を落としてしまっているので助かります!」
そういえばあかりちゃんは武器をなくしていることを思い出した。
すぐにあかりちゃんと私の家で待ち合わせの約束を行う。
電話が終わって15分程度であかりちゃんは私の家に到着した。
「黒璃さんこんにちは!一人暮らしなんですね!」
「そうだよ。じゃあ中に入って」
「お邪魔します!」
玄関で軽く挨拶を行い、私たちはお互いに取引物を相手に見せる。
あかりちゃんから渡された魔法銀は純度が高いのか、キラキラとオーラを放っており、武器を作れば素晴らしいものができそうだ。
「これが黒璃さんの作った剣……!とても美しいですねぇ……」
「そうかな?誰が作っても同じだよ……多分」
「いえいえ違いますよ!黒璃さんの才能でしょうかね!とてもいい剣ですよこれは!」
あかりちゃんは私の剣を気に入ったようで、頬ずりまでして褒めてくれる。
私の謙遜も否定して、褒め続けられるととても照れる。
「他にはどんなものがあるんですか?一応見ておきたいです!」
「えっとね……あとはこんなのがあるよ!」
そう言って私が見せたのは、『大蜘蛛のローブ』だった。ビッグスパイダーが落とす『大蜘蛛の白糸』で作られたローブで、装備するだけで魔法耐性がわずかながら上昇する防具である。
「これも中々よさそうですね!」
「これもあげようか?」
「いいんですか!なら貰いますね!」
魔法銀に対して『赤蟷螂の片手剣』だけでは足りないと思い、あかりちゃんに『大蜘蛛のローブ』を追加で渡す。
これであかりちゃんとの取引も完了したため、少しダンジョンのコツを教えてもらいながらお茶をして解散した。
あかりちゃんが帰った後、私は魔法銀を自分用の武器に錬金してみる。
『魔法銀の片手剣
特殊効果:死霊・アンデット系の魔物に対し、与えるダメージ増加。
魔法銀で作られる片手剣。
切れ味もよいが、それ以上に聖なる力によって悪しき魂を浄化できることが特徴だろう。大体の死霊は一撃で消し飛ばせる。』
何かすごい強そうな武器が作れて私は満足だ。
何度か素振りしてみるが、軽くて使いやすい。
この剣を気に入った私は明日には『荒れ果て町』に挑戦することを決め、早めに眠りについた。