ちょっと今回は後書きが多くなりそうです。
今回のデュエルイベントに向けてある事をするつもりだったため、急ピッチでモデルの仕事を片付ける。
当選で義父の選挙応援が無くなっても、広告塔になった都合上雑誌モデルやCMの仕事はそこそこ来ているのだ。
エナジードリンクを喉に流し込み、ハードスケジュールで疲労した頭と体を無理矢理叩き起こす。
(事情を説明したらここぞとばかりに際どい衣装出してきてるなぁ……)
転生者的に、男の心理は分かるので理解が出来るがそれ故に恥じらいも怒りも湧き上がる。そんな中で届いた知らせに、思わず声を上げてしまった。
「はあ!?」
原作知識的には知っていたが、柚子の護衛をしていたユートに、遊矢と勘違いしたシンゴがデュエルをふっかけて負傷したらしい……ただ、原作と違いかなり善戦した事で怪我は数回の通院で済むかすり傷とのこと。
(ただでさえ忙しくてあの
とりあえず、ユートが護衛として有能と判明したとプラスにとらえる事にしよう……そうじゃないとタダでさえバタバタしてるのに余計な事をしてくれた義弟にブチ切れてしまいそうだ。
深呼吸して、気持ちを落ち着かせる……義弟の怪我の報告を受けておいて放置ともいかないので電話で状況を確認する。
『シンゴ? アンタが怪我したって連絡来たけど、大丈夫?』
『ああ、大した事ねえよ。あのニセモノ野郎、次会ったらタダじゃおかねえ!』
『ニセモノ野郎?』
『榊遊矢にそっくりだったんだよ。でも使うカードも違ったし、オレのカウンターシンクロ戦法に驚いてたからな』
あー、なるほど。それで別人と分かり、完全に誤解して突っ走らない分まだ原作の暴走よりはマシか。
『それだけ騒げるなら心配いらないね。ただでさえ忙しいんだから余計な心配かけないでよ』
『そりゃこっちのセリフだ。いったん帰って寝とけ』
『え?』
『自覚ないのかよ、声で分かるくらい疲れ切ってるぜ』
『! ……アンタ変なものでも食べた?』
『何だよそのリアクション! これでも付き合い長いんだからわかるっての! 何かやるんだろ? その調子じゃ本番でぶっ倒れんぞ』
まさか逆に心配されてしまうとは思わなかった……この先の備えの重要性を意識し過ぎて、大分無理をしていたようだ。お調子者でわがままで自信家だが、あれで慕ってくれる取り巻きがいるのはちゃんと人を見ているという事なのだろう。そんな義弟の忠告となれば、聞いておくのが無難と言うものだ。
『分かった、もうちょっとで撮影終わるからそしたら今日はもう休む』
悔しいが、シンゴの忠告は正しかったようで帰宅後にベッドに倒れ込むと、そのまま電源が落ちるように意識が飛んで眠ってしまった。
そんな危うい場面をフォローしてもらいつつ準備を進め、高校ではデュエル部、演劇部、文芸部の面々とシナリオの確認を行い、休日にヘアサロンで本番前に髪を仕上げる。その日は以降休養に当てていたため事後報告で聞く形になったが、やはり素良とユートが接触したらしい……柚子のブレスレットが光り、空間転移と思われる現象が起きたというので危機感を募らせたが、どうやら市内で中心部から工業地帯まで飛ばされただけで済んだようだ……別次元まで飛ばされた、という事態を避けられた事に胸を撫で下ろし、その翌日に仕上げとして衣装合わせを行う。
「思ったよりヒールが高いけど、他は問題ないかな」
「アクションデュエルで走り回るわけじゃないんだから大丈夫でしょ。何か鞭とか持っても似合いそうだよ」
「あのねえ……どう考えてもいらないでしょ」
「あっちは?」
「もうバッチリよ。あのさえないメガネがまるで別人……というか思ったより素材良かったの」
「それは嬉しい誤算だね。でも今までのジュニアユース選手権、出場してもずっと予選落ちだったんでしょ? 大舞台でセリフ噛んだりしなきゃ良いけど」
一抹の不安を覚えつつ、迎えたイベント当日。
『それでは、これよりレオ・コーポレーションの新作ペンデュラムカード発表会エキシビジョンマッチを行います。新作カードのデッキを握るのは舞網高等学校デュエル部部長・
満員のシティホール中央に設置されたデュエルフィールドに、白い軍服調の衣装で登場する栗田部長……その姿は意外にも様になっており、緊張した面持ちはまさに戦場に立つ青年将校といった感じだ。
戦場を知らない青年将校を捻り潰さんと現れた対戦相手……私の姿に会場がどよめく。青地の軍服調衣装にベレー帽を被った私が……
軍人風、しかも悪役路線なんて初めての試みなので、黒髪のインパクトも合わせて既存の私のアイドル路線イメージは崩壊するだろう。これまで築き上げてきたイメージは、ここで手放す事になる。
「あらあら、震えちゃって可愛い事……捻り潰してあげるからせいぜい抗いなさい」
「そう簡単にやられはしない! 僕はこの新たなデッキの力を信じる!」
「「デュエル!!」」
「僕の先攻! 《強欲で謙虚な壺》を発動! 1ターンに1度、デッキを上から3枚めくり、その中の1枚を手札に加える! ただし、このカードを使うターン、特殊召喚はできない」
デッキトップ3枚 《クリフォート・エイリアス》《クリフォート・アーカイブ》《強欲で謙虚な壺》
「僕は《クリフォート・アーカイブ》を手札に加え、そのまま召喚する!」
「何をバカな事を、上級モンスターじゃない」
「《クリフォート・アーカイブ》をはじめ『クリフォート』モンスターの大部分はリリース無しで召喚できる! リリース無しで召喚した場合、レベル4、攻撃力1800になる。カードを1枚セットして、ターンエンド!」
「ふぅん……面白い効果じゃない。私のターン、ドロー! 行きなさい、私の可愛い猟犬ちゃん。《
「出たな……召喚成功時のダメージ効果に加え、手札のモンスターを使い融合召喚する効果を持つ地獄の猟犬……!!」
これは本来この次元には存在しない、アカデミア御用達の支給品カードなのだがユート、黒咲のデュエルディスクに効果も含めログが残っていた。イラストもカード効果もバッチリ記録が残っているのなら、レオ・コーポレーションにかかればコピーなんて楽勝である。
カード効果を説明されれば、観客もその脅威に戦慄する。元々EXデッキの使用が少ないスタンダード次元では、融合モンスターは強敵となる場合が多い為だ。
「融合はさせない! リバースカードオープン、《スキルドレイン》! ライフを1000ポイント払い発動、このカードが存在する限り、お互いにフィールド上のモンスター効果は無効になる!!」
栗田 LP4000→3000
「チッ、やってくれる……」
「更に、この効果により《クリフォート・アーカイブ》のレベルは6、攻撃力は2400に戻る!」
少し、観客席の様子を見る。妥協召喚から《スキルドレイン》の無効化を逆手に取った戦術は中々好評のようだ……では、ラスボス登場と行こう。
「これで融合召喚を封じて有利に立った……とか思ってる?」
「何?」
「魔法カード《
古代の機械モンスター4体という相当な重さに見合った、攻撃力4500を誇る破壊の権化……先出しの《スキルドレイン》によりその強固な耐性と攻撃時に相手の反撃を封じる能力は失われているが、それでもなお圧倒的な巨躯と不気味さは会場が静まり返る程の威圧感がある。
「ううっ……!」
「バトルフェイズ。《古代の機械混沌巨人》で《クリフォート・アーカイブ》を攻撃! クラッシュ・オブ・ダークネス!!」
「ぐああっ!!」
栗田 LP3000→900
その圧倒的な力の前に《クリフォート・アーカイブ》が呆気なく砕け散り、リアルソリッドヴィジョンが起こす衝撃に吹き飛ばされる栗田部長。
「これでターンエンド。良い格好だね……アンタみたいな雑魚はそうやって地面に這いつくばってるのがお似合いだよ。そのままサレンダーするなら、無様に尻尾巻いて逃げても良いよ」
私のライフは全く減っておらず、古代の機械混沌巨人の傍らで膝をつく栗田部長を見下ろす……うん、良い感じに絶望を演出できているんじゃないだろうか。
「ぐっ……サレンダーは、しない! 僕のターン、ドロー!」
さあ、ここからがクライマックスだ。
「魔法カード《召喚師のスキル》! デッキからレベル5以上の通常モンスターを手札に加える事が出来る! デッキから《クリフォート・ツール》を手札に加える! スケール9の《クリフォート・ツール》をペンデュラムゾーンにセッティング! 《クリフォート・ツール》のペンデュラム効果、ライフを800払い、デッキから『クリフォート』カード1枚を手札に加える。《クリフォート・アセンブラ》を手札に加える」
栗田 LP900→100
「スケール1の《クリフォート・ディスク》をもう片方のペンデュラムゾーンにセッティング! これでレベル2から8の『クリフォート』モンスターが同時に特殊召喚可能!」
『クリフォート』はペンデュラムゾーンにクリフォートをセットすると『クリフォート』モンスターしか特殊召喚できない制約が付いてしまうが、今は全く問題ない。
「揺れろ、希望のペンデュラム! 勝利に続く道へ
『公式の場で榊遊矢以外が初めてペンデュラム召喚を決める』という衝撃に会場が一気に沸く。
「《クリフォート・エイリアス》は『クリフォート』モンスターの共通効果でレベル4、攻撃力1800になるが《スキルドレイン》によってレベル8、攻撃力2800に戻る」
「それで? 残りたった100のライフで悪あがきをするには、ちょっと頼りないんじゃない?」
「僕はまだ通常召喚を行っていない! 《クリフォート・アーカイブ》をリリースして《クリフォート・アセンブラ》をアドバンス召喚! 《クリフォート・アーカイブ》がリリースされた場合、相手モンスター1体を対象に取り、手札に戻す! この効果はフィールド外で発動するため、《スキルドレイン》の影響を受けない!!」
「なっ!? 《古代の機械混沌巨人》が!!」
「ペンデュラムスケールの《クリフォート・ディスク》の効果! 『クリフォート』モンスターの攻撃力を300ポイントアップする!」
《クリフォート・エイリアス》 攻撃力2800→3100
《クリフォート・アセンブラ》 攻撃力2400→2700
「バトル! 《クリフォート・アセンブラ》、《クリフォート・エイリアス》で直接攻撃!!」
「そんなっ……!!」
遊花 LP4000→1300→0
エキシビジョンによって会場の盛り上がりは最高潮。栗田部長は『大ピンチからの華麗な逆転』というヒーローの演出を見事やり切ってくれた。ここからは再び私の出番だ。
「皆様、レオ・コーポレーションの新作カードを見事使いこなしエキシビジョンに勝利した栗田部長に盛大な拍手を!!」
降り注ぐ拍手が止んだところで、本題に移る。
「今日は私、沢渡遊花より重大な発表があります。私は本日をもって、プロ決闘者としての活動を無期限休止します!!」
そう。これがもう1つの手放すものだ。資格を停止したとか引退ではないが、事実上プロの試合を組む事は今後復帰宣言をする時まで無い……当然、観客からは驚きと何故なのかという疑問の声が響き渡る。
「元々、ピンチヒッターを頼むほど無理のあるスケジュールで試合を組んでいたため、と言うのも理由の1つですがもう1つの方がより大きな理由となります。それは……私は近くレオ・デュエル・スクールに新設される『ペンデュラムコース』専任講師となるからです!!」
ペンデュラムコースの新設だけでも大ニュースで、しかも専任講師が赤馬零児社長と並んでほぼ最速でプロとなった私……エキシビジョンマッチに勝るとも劣らない衝撃に会場は驚愕と熱狂に包まれた。だが、更にもう一押しあるんだなこれが。
「なお、ペンデュラムコースは1ヶ月の体験入学コースが設けられます。そして、体験入学をされる方には先程お見せしました【クリフォート】デッキを教材として支給いたします!!」
最新の召喚法であるペンデュラムのデッキを支給……こうなれば当然、体験入学の申し込みは殺到するだろう。そして、ここに仕掛けがある。
実は、このデッキ支給と合わせて『ジュニア選手権、及びジュニアユース選手権不参加の体験入学者』に『当日の警備ボランティア』募集がかけられる手はずになっているのだ。
ボランティアなので報酬こそ支払われないが最新のデッキを試すにはもってこいの舞台であり、【クリフォート】の扱いを覚えたばかりの体験入学者達はその力を振るう絶好の場に嬉々として名乗りを上げるだろう……アカデミアの『オベリスクフォース』に対抗できる即席の兵隊の出来上がりである。
流石に独自のデッキを持つ指揮官クラス・エース級に対抗するのは少々厳しいが、先にエキシビジョンで見せたように一般部隊が使う【古代の機械】相手であれば【クリフォート】のスペックをもってすれば(立ち回りにもよるが)互角以上に戦える。差し当たり、作戦は大成功と言えるだろう……後は、話をする時間だ。
イベントを終え、遊勝塾の面々に会いに行く。
「みんな、イベントは楽しんでくれた?」
「うん! あのお兄さんかっこよかった!」
「遊花さんのでっかいモンスターの迫力もシビレたぜ」
「そう? 演劇部と文芸部に融合召喚の口上考えてもらった甲斐があったね……でも演劇部は顔出しにくいなぁ。絶対ダメ出しが待ってるもん」
「え?」
「まさか遊矢、気付かなかったとか? あのエキシビジョンマッチ、ぜーんぶ筋書き通りなんだよ。要するにお芝居だったわけ」
「ええ!?」
「正直栗田部長の演技力はびっくりしたね。あの人決闘者より舞台役者の方が向いてるんじゃないのかな?」
「そういうのって……」
「くだらない八百長だ、とか思う? 私はこれもエンタメデュエルの1つの形だと思うよ」
「エンタメデュエル……」
「エンタメって、色々じゃん。あんたのお父さんのがマジックショーなら、今日見せたのはヒーローショーかな? 私は基本的にデュエルとなったら真剣勝負であんまり話術とか自信ないから、どっちかと言えばスポーツみたいなスタイルになるし」
「エンタメは、色々か……」
「そう。でも、どんなエンタメでも共通する事がある」
「どんなエンタメでも?」
「間違いなく、どんなエンタメでも。エンタメってのは大前提として、一人じゃ成立しないんだよ……私があんたの父親が最低の自己中だって言ったのは、そこのところ」
本当、あの無責任親父はそこのところの自覚が致命的に足りていない。
「デュエルは大前提として相手がいなきゃ始まらないし、こうやって大きな会場でエンタメとしてやるなら観客もいる。更に言えばその前から設営に物販、チケットの販売にステージ衣装……多くの人間が関わる。榊遊勝は、そうやって大勢が作り上げようとしたステージを台無しにしたんだよ」
「!!」
「体調不良とかならまあ、良くはないけど延期でもすればいい。それが何の連絡も無く姿をくらませた……予定していた興行収入は全部パア、それどころかチケットの払い戻しに会場のキャンセル料、作るだけ作ってそこで発生した人件費……どれだけお金が飛んでどれだけの人に迷惑かけたか、考えたくもない。他人の迷惑を一切考えないでいなくなるなんて、自己中で無責任としか言えないでしょ」
改めて、父親のやらかしを叩きつけられて押し黙ってしまう遊矢。だが、エンタメデュエリストを目指すと言っている以上、これは言っておかなければならない事だ。
「私は榊遊勝のエンタメデュエルと実力に関しては、一定の評価をしてる。でも人としての礼儀とマナーがなってない。だから私はあいつが嫌いなの。だから、押し付けるつもりは無いけどこれだけは言っておくね」
これは遊勝にも、多分本編ラスボスとなったアイツにも刺さるだろう。
「自分一人でエンタメやってる、なんて思い上がったらもうそいつはエンターテイナー失格だよ。どういう方向のエンタメをやっていくかは自分で決めれば良いけど、これは覚えておきな」
余談 栗田部長のネーミングは栗(くり)田 塞(フォート)→クリフォート とかいうしょーもないネタだったりします。
体験入学にかこつけて大量にクリフォート使いをばら撒いて兵隊補充しよう作戦。戦いは数だよ兄貴!
スキドレクリフォートはペンデュラム召喚デッキの中ではかなり自由度が低いんですが、代わりにやる事も限られているため挙動が覚えやすく、基本的に妥協召喚とアドバンス召喚を軸にしているためスタンダード次元の人間でも覚えやすい、と言うのが採用理由の1つだったりします。ツールのコストがLP4000だとクッソ重いので多分支給品にはアクセスとかデストラクト・ポーションとかのライフゲイン系カードも入っています(勝手な妄想)
また、一回休みやスキドレはモンスター効果に依存している相手にはめっちゃ刺さるというのも対抗策として選出した理由。
教師やるからきっちりしよう、で遊花さんは黒髪に戻してみました。その都合で先に予定されていた分は消化しましたが、アイドル稼業の部分も仕事が減るリスクは高いでしょう……初の悪役路線で変な性癖の扉が開いて需要が生まれる可能性もありますが。
そして本作で叩きつけたかった部分、ラストでがっつり叩きつけました。特に無責任親父、ここんとこだぞ。
本作ではラスボスの承認欲求モンスターは統合させず、ハゲを力づくでも止めるが理想のラストだと思っています。
タツヤのデッキ、何が良さそう?
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ジェネクス系列
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ギアギア系列
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ブンボーグ
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幻獣機
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裏サイバー