もう少し話が進みましたら、展開そのものに影響するアンケートを取ろうと思っています。
舞網チャンピオンシップ1日目が終わった。
ジュニア組は予想通り、フトシ、タツヤ、アユ、そして零羅。組み合わせも発表され、準決勝はフトシvsタツヤ、アユvs零羅ということだ。
(アユちゃんは可哀想だけど、多分零羅には勝てない。フトシ君とタツヤ君は……五分五分かな。単純火力では【ブンボーグ】を越えることは出来ないけど、早めに動きを止めれば逆転のチャンスは十分ある)
ジュニアユースも……ほとんど想定の範囲内かな。
勝ち上がってきた16人は以下の通り。
榊遊矢
権現坂昇
柊柚子
ユート
黒咲隼
紫雲院素良
沢渡シンゴ
デニス・マックフィールド
宝中ミエル
月影
日影
光津真澄
志島北斗
刀堂刃
茂古田未知夫
大漁旗鉄平
正直なところ、柚子ちゃんの勝ち残りは怪しいと思っていたがブロック2位で通過していた。実態としてはここまでで本編2回戦に相当する部分まで片付いた事になる。
この先についてもトーナメントで全く問題無いのだが、ベスト8決定戦は本編通り舞網市の一部を広々と使った『バトルロイヤル』とされた。
実のところ、これにはちゃんと意味が有る……罠だ。
普通にトーナメントを行うのと違い、バトルロイヤルは『デュエルが始まるまで』に関してはほぼノーマークなのだ。故にアカデミア側が行動を起こすにはこの時が最適となる。残念ながら、こちらとしては相手が動かなければその現場を押さえる事が出来ないためあえて餌を撒いた形である。
なお、バトルロイヤルの参戦条件は『デュエルフィールド内にある専用ペンデュラムカードを2枚所持している事』だけなので、極端な話舞網市内の決闘者なら誰でも乱入してベスト8に成り代わる事が出来る。
実のところ、ここでそういった暴挙をしないよう巡回し必要ならデュエルでぶちのめすのが警備ボランティア達の役割である。
「さて、と」
2日目、会場に向かう前にデュエルディスクを鞄に入れる。
「おい、何でデュエルディスクなんか準備してんだよ? どうせ会場で解説してるだけだろ?」
「非常時の備え。ボランティア組も【クリフォート】を握らせてるからそれなりの強さではあるんだけど、彼らで手に負えないような腕利きが出てきたら私がぶちのめす算段になってるの」
「鬼かよ……こりゃ余計な真似は出来ねえな」
「その事、知ってるのは?」
「赤羽零児とアンタだけ。ボランティアのみんなは薄々察してるだろうけどね」
「対策過剰もいいとこだな。そうそう妨害なんて起きるのかよ?」
「断言しても良いけど、起きる。トーナメント結果に納得できない奴は間違いなくいるから、そいつらがほぼ確実に、これを機に選手を倒しに来る。私が出る事態になるかは別だけど、アンタも狙われる可能性はあるから用心しておきなよ」
「へっ、何人来ようが返り討ちにしてやるぜ」
「その意気その意気。余計な手出しはさせないから、頑張りな」
義弟を送り出し、私自身も会場へ向かう。実のところ、私がどうにかしなければいけない相手が二人ほどいる……特に先に対処すべき方は敗北した者がカード化されてしまう可能性が極めて高いため、被害を抑える意味でも会場で発見された時点で早々に叩きに行かねばならない。
(やりたくないなぁ……)
黒咲の時からそうだったが、カード化される危険性がある=実質的に命懸けだ。遊戯王世界では命懸けのデュエルなど珍しくも無い、と言われればそうなのだが自分が命を張るとなればやりたくないのは当然だ。だが、ここで介入しなければ間違いなく被害は拡大し、ともすれば次元世界そのものの危機にすら繋がりかねない。幸いにして、今の私のデッキは単純なカードパワーだけなら現時点でのスタンダード次元最強クラスだ。
(正確には【EMEm】が最強なんだろうけどアレは理論上組めると言ってもイレギュラー過ぎる。この次元にはナンバーズがいないから《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》が無い分まだマシだけど、他のパーツは概ね無制限だから『プトレノヴァインフィニティ』なんてクソコンボまで全然採用圏内。下手に存在を明かすと地獄を生み出しかねない)
兵力強化と言う意味では理想的かもしれないが、あまりの破壊力から環境を完全に席巻してOCG次元の修羅環境を再現してしまうのはいただけない。主力がほぼランク4エクシーズだからエクシーズ次元みたいになるし、あまり暴れてしまうと現状必要以上の干渉はしない方向であろう融合次元を本気にさせてしまう恐れもある。
(過ぎたるは猶及ばざるが如し、ってね。健全な範囲なら、これも十分強い)
後は相手が本編レギュラーなので強烈な運命力補正が掛かっている可能性がある。それに対して、プレイングでどれだけ対抗できるかだ……デッキを握り締め、覚悟を決める。
(ここまで来て今更引けない! やれるだけやってみる!!)
会場に入ると、ベスト16が揃い盛り上がりは最高潮。実況の宣言と共にアクションフィールドが広がり、専用ペンデュラムカードとアクションカードがばら撒かれる。
『さあ、制限時間はここから24時間! 飲食や休憩はデュエルフィールドの範囲内にLDSが設置した休憩スペースがあり、そこの近辺ではデュエルが禁止されているため安全に休めます』
流石にそのくらいの配慮はされている。選手達がトーナメント会場を飛び出し、散って行く様子がモニターに表示される。
『ふむ、皆さん各方面の休憩スペースに向かっているようですね』
『丁度お昼時ですからね……腹が減っては何とやら、バトルロイヤル条件のペンデュラムカードだけ確保したら一旦腹ごしらえしてバトルに臨むつもりでしょう。会場の皆さんも本格的にデュエルが始まる前にお昼食べておくと良いかもしれませんね』
『そちらは、ここの売店のホットサンドですか? 良ければお1つ頂いても……?』
『ええ、どうぞ』
『おお! 出来たてですね! トマトの酸味がたまりませんな!』
『コーヒーも、スッキリして飲みやすいですよ。本格派の人には物足りないかもしれませんが、軽食と合わせるには丁度良い感じです』
こういうちょっとした宣伝も大事な仕事だ。これがあるか無いかは意外と売上に影響するのだ。
「優雅にコーヒーとホットサンドかよ、こっちは味気無い塩おにぎりなのによ」
いち早く休憩スペースに辿り着いたシンゴが愚痴る。なお、ペンデュラムカードは2枚確保済みだ。
「まあ良い、見たところ2人近くにいるみたいだからな、そいつらを倒して6枚……スタートの戦果としちゃまずまずだ」
このバトルは専用ペンデュラムカードをより多く持った状態で会場に帰還した者が勝者となる。敗北しペンデュラムカードを奪われても、制限時間内に再び2枚回収すればバトルに復帰できる……最初のデュエルで勝てる前提というのは皮算用も良いところだが、ある意味沢渡シンゴらしいと言える。
そんな一幕の裏で、融合次元の者達は動き出していた。
「目標の柊柚子の確保は僕がやる、君達の任務は邪魔が入らないように他の参加選手を足止めする事。この専用カードを2枚以上所持していない場合そもそもデュエルが成立しない仕組みみたいだから、まずは専用カードの収集から始めて」
「はっ!」
「プロフェッサーによれば、スタンダードは敵ではない……痛めつけるのは自由だけど、カード化は最小限に留めること。それから……参加選手の中にエクシーズ次元の生き残りがいる。そいつらは見つけたらカード化して構わない、とりあえずエクシーズ召喚を見せたら獲物だと判断して良いよ」
「了解しました!」
「エクシーズのネズミ共め、オレが見つけ出してやるぜ」
「スタンダードの雑魚は倒すだけでカードにはしない、か。面倒な事だ」
「我らオベリスクフォースに敵う者などスタンダードにはいないだろう。エクシーズ召喚を見せた者の『巻き込み事故』ならやむを得んだろうさ」
オベリスクフォースが作戦行動を開始したのとほぼ同時刻。
「これで4枚……欲張りすぎたか? 休憩スペースまで少し距離があるな」
選手の一人がフィールドのペンデュラムカード回収に夢中になっていたところに、一人の決闘者が姿を見せた。
「貴様、私とデュエルしてもらおう」
「柊柚子? ちゃんとペンデュラムカードは持っているか?」
「これの事か? 2枚揃えなければデュエルが出来ないとは、面倒なルールだ」
「それはごもっとも。しかし、最初のデュエルが僕とは運が無かったな」
「その言葉、そのまま返してやろう」
こうして、最初のデュエルの後攻1ターン目。
「うわああああああ!!」
「フン、エクシーズ召喚などやはり大したことはないな」
後攻1キルを決めると少女はペンデュラムカードと『志島北斗のカード』を拾い上げ、自信に満ちた笑みを浮かべるのだった。
志島北斗、
早速被害が出たのでこれ以上の暴走を食い止めるために次回は遊花出動です。