今回はこの先の展開に影響するアンケートがあるので、ご協力いただけますと幸いです。
長い長い夜が明けた。
「徹夜はお肌にも健康にも悪いんだけどなあ……そんな事言ってもいられないか。もう少しで選手達が戻ってくるし、こっちも準備しますか」
スマホを操作し、電話連絡を取ったのは……私の養父。少しばかりデュエルが強かっただけの孤児を自らの選挙広告として利用したクソ親父だ。
「グッモーニン、お父様。ご機嫌いかが?」
軽い調子で話しかけると、不機嫌な声が返ってきた。
『ただでさえ気が気でない大会の様子を見るのに徹夜、こんな時間に電話してくるバカのせいで最悪だ』
「それは申し訳ございません」
何となく察しているだろうが、私と養父の関係は滅茶苦茶悪い。
実子であるシンゴには相当甘いが、私は養子でしかも最初からデュエルの腕を買ったシンゴのデュエル教育役兼選挙広告……道具だ。その道具が結果を出す上での必要経費とはいえ高価なカードを買いまくり、いずれ縁を切るための自立目的とはいえシンゴのライバルになる生徒を育てているのだからあちらからすれば面白いわけがない。
恐らく本音では今すぐにでも養子関係をやめたいだろうが、売れているアイドル兼決闘者だと言っても社会的に自立ができていない学生を放り出すのは世間体に響く……政治家も人気商売の面が結構あるのでそれは都合が悪い。
そこで、お互いの了承した話で私は高校を卒業すると同時に沢渡の家を追い出される事になっており言わば家族関係という名の業務提携をしている状態だ……事実必要な時は従順なお人形さんを演じているが、何やかんや金がかかるお人形さんである。
金がかかる分だけ実績は積み上げているが、それでも気に入らないのは気に入らないのだろう。それとなく芸能事務所に手を回して嫌がらせに際どい格好をする仕事をやたら回される状況を作られている……発覚時のリスクが高過ぎる事を向こうも承知しているので、枕営業をさせようとしないだけマシというくらいである。
「気が気でない、ねえ? ベスト16入りだけでも実績としちゃ十分だと思うけど?」
『フン、貴様が余計な入れ知恵をした奴らがいなければシンゴはもっと上にいるわ! 6位タイだぞ! あの子はこんなものではない!』
親バカ極まれり。柚子ちゃんと素良が消え、北斗がセレナに倒されたので残りは13名。その中の真ん中なら相当善戦している。
「デュエルは運の要素もあるし、上出来上出来。用件は1つだけ。例のものの搬入に人を回して下さいな」
『……わかった。本当にこれはシンゴのためなんだろうな?』
「当然。本当はLDSがやるべきなんだけど、零児社長はとんでもなく忙しいので手が回らないんですよ。代わりに、ウチから提供したというだけでそれなりに市民の心象が良くなる事は保証しますよ」
戦地に赴く戦士達に大盤振る舞いのスポンサー……美談としては十分だろう。
『フン、お前といい赤馬零児といい最近の若者はまるでネズミだな。裏でコソコソ動きおって』
裏でコソコソ財界とのパイプ作りに奔走しておいてどの口が言うのか。
「若者には若者なりにやる事がありまして。ご安心を、訳あってしばらくは顔を合わせる事もなくなりそうですから」
『それは数少ない朗報だな。私を顎で使うような真似をした以上、それなりの成果は上げてもらおう』
「シンゴも頑張ってくれますから、吉報をお届けできると思いますよ」
うまくやらなければスタンダード次元そのものが次元統合によって消されかねないため、本当は失敗が許されない。だからこそ、クソ親父に頭を下げる事も含めやれる事はやっておきたかったのだ。
会場へ戻ると、13人の参加選手達が帰り着き始めていた。ボランティアという名の衛兵とも言える『クリフォート部隊』のうち7名、参加選手1人がカード化され素良と柚子が消えたために大会中止は宣言済みだ。そのため順位の意味はほぼ無いのだが、ペンデュラムカードの枚数という本来順位を決めるスコアで見ると暫定トップが黒咲、そこに1枚差で権現坂とユートが続きこの3名がトップ3となる……妥当と言えば妥当なところだ。
シンゴは今私が提供した【PSYフレーム】とLDSが渡した【妖仙獣】の混合デッキを使っていたが、スペックは高い反面場を空けて戦う性質上高度なプレイングを求められる……一戦一戦普通に戦う分には強いが乱戦となるバトルロイヤルとは相性が悪い。その辺りは【魔界劇団】を手に入れていれば少し話が変わっていたかもしれない。
選手全員が帰還したところで、赤馬零児から別の次元の存在と大会目的がランサーズのメンバー選出にあった事を明かされる。彼らジュニアユースより年上の大学生や社会人の枠、ユースの決闘者達はどうしたと遊矢から当然の質問が飛び出す。ここからは私も口を出すところだと判断し、彼らの前に立つ。
「理解が追いついていないのは承知の上で、教えるとさ……ここに残ったメンバーは現時点でユースの決闘者よりも高レベルだよ」
「え?」
「理由は簡単、ペンデュラム召喚。もちろんユースでも取り入れようとした人はいるけど、登場してすぐ使いこなした適応力って点でこの場の決闘者は並のユースに勝る。もちろん単純なスキルで言えば、ユース上位の方が高いだろうけど大事なのは新しい技術への適応力なんだよ」
「適応力……」
「そう、何せアクションデュエルとペンデュラム召喚は私達の数少ない武器だからね。これを十全に使いこなせる事はランサーズにとって何より重要なスキルになる」
ジュニアユースがランサーズに選ばれた理由は、理解できたようだがやはり納得がいかないとこちらを睨みつけてくる遊矢。
「みんな納得いかないのは分かるよ。そもそも私が納得してないから」
「当たり前だ! 何でデュエルが戦いの道具にされなきゃいけないんだ!」
「うんうん。私も本当にそう思う……でもさ、理想を語る前にまず現実を見ないといけない」
「現実……?」
「そこの黒咲とユートは実際融合次元に攻め込まれたエクシーズ次元の人間だよ。融合次元の連中が説得に応じるなら、ここにはいない。それとこれ」
目の前に出してやったそれに、特に真澄と刃が大きく動揺する。
「マルコ先生!!」
「北斗!?」
「早めに動いたおかげで最小限に抑えられたけど、それでもこうして現実に被害が出てる。融合次元を滅ぼせとは言わないけど、自分達の身は守らなきゃいけない」
マルコをカード化したのは黒咲だし、北斗を倒したのも次元戦争に関与する意図は全くなかったセレナなのでこの二人に関しては融合次元の戦士であるオベリスクフォースは犯人ではないのだが危険は事実なので全く問題は無い。
「それでも!」
人々を笑顔にするのがデュエルだ、と言いたいのだろう……まだ納得しない遊矢の前に零児が立つ。
「それは、危機が去ってからの話だ。後で、デュエルを通して話をしよう。ランサーズは、まずシンクロ次元に向かう」
ユーゴがオベリスクフォースを撃退したわけではないが、私との遭遇戦において身内が攫われたと口にしていた事でただの勘違いであり、この混乱での不干渉もあってシンクロ次元は中立または融合次元侵攻前のエクシーズ次元のように何も知らない可能性が高いと判断した、と改めて説明される。
ここからシンクロ次元を味方につけるか、最低でも不干渉を取り付ける余地は十分あり、むしろここで融合次元に加勢されるとアウトなので交渉に向かうという趣旨も伝えられた。
自分達から侵攻するわけではない、というだけでいくらか安堵の空気が流れるが、私からすればそれだけでは足りない……ユーゴと一戦交えたのは完全に不運でしかないが、私も赤馬零児の次くらいに苦労していると思うので口出しする権利はあるだろう。
「はいはい、ここで私から提案があるんだけど」
「何だ?」
零児から冷めた視線と同時に聞かれるが、そんな警戒心を剥き出しにしないで欲しい。
「部隊を2つに分ける事を提案するよ。1つ目はもちろん、シンクロ次元に交渉に向かう」
「もう1つの部隊は?」
「融合次元かエクシーズ次元に向かう。言っておくけど、融合次元に行くとしても目的は正面からの殴り込みじゃない。いくらなんでも戦力が足りないからね」
「……ならば、融合次元もしくはエクシーズ次元に向かう目的は?」
「偵察と戦力の確保。エクシーズ次元はまず間違いなく、黒咲やユートみたいな抵抗を続ける奴らがいる。融合次元にしても、クリフォート部隊が戦った奴らの様子を見るに明らかに洗脳された連中だからね。そういうやり口に反感を持つ人間は少なくない。どちらにせよ数や質は期待しづらいけど、現時点で認識の違いからこっちは多勢に無勢……猫の手でも借りたいのが本音でしょ」
「……メンバー選出の条件は?」
「とりあえず、言い出した手前私が斥候部隊のトップに立つよ。あとは本家本元の斥候役である忍者決闘者……月影か日影のどちらかと、エクシーズ次元出身のユートか黒咲は1人ずつ回して欲しいかな。それから、セレナと零羅も入れるつもりなら2人はそっちで連れて行って。悪いけどシンクロ次元と違ってエクシーズ次元であれ融合次元であれ、敵陣のド真ん中。誰彼構わず噛みつくような
ここまで話した上で、最終的な参加は自由意志である旨も告げる。実力は確かな者達だが、誰だってわざわざ戦いに行きたくはない。目の前の危機を知り、それを踏まえて戦う意志のある者でなければ別の次元に渡ったところでカードにされるのがオチだ……そうさせないための仕込みはしてあるし、ちょうどそれが届いたという報告が入った。
「まだ時間はあるから、よく考えて決めてね。その上で参加するなら……これを渡しておくよ」
私の合図とともに、ジュラルミンケースが次々運び込まれてくる。
「レオ・コーポレーションの新規開発も含めた最新鋭のカード。数で劣る分、質で負けるわけにはいかないからね。用意できる中で最高の武器を握れるようにお父様に手を回してもらった……あとこれは軍資金でもある」
「軍資金? カードが?」
ジュニアユース……中学生ではすぐには意味が理解できないのも無理は無いか。
「私が黒咲とユートに会った時、2人はろくなお金を持っていなかった。そりゃそうだよね、次元を隔てた世界で自分達の通貨が使えるなんて思わない方がいい。でも、カードを売ればその次元のお金に出来るでしょ。あの親父に頭下げただけじゃなく、私も結構な額を出資したからね……このジュラルミンケース1つだけでもこの場の全員が半月は余裕で生活できるくらいのお金になるはずだよ」
その価値を聞いて事情を知る零児以外の全員が目を丸くする。
「人が何かをするにはお金がかかるものなんだよ。特に、多くの人間を動員する戦争なんてのは途方もない金額が動く……そのくせ得られるものはほとんど無いんだから、私だって戦争なんてまっぴら。だからこそ、こんなくだらない争いはさっさと終わらせるに限る! そのために全力を尽くす気になったら協力して」
こうして考える時間にジュニアユースの子供を送り出す故の家族への説明、依頼行脚と参加の意志を表明した決闘者のデッキ強化、そのデッキを使いこなす特訓の日々が始まった。
本来のシンクロ次元で戦う『1本目の槍』であるランサーズに加え、私が指揮を執る事になった『2本目の槍』もまた旅立ちの時が迫る……幸いにしてクリフォート使い達にストロング石島と万一の守りも遥かに強化されている。本編よりも多くの準備期間を設ける事になったが、それだけの価値はあった――くだらない争いを終わらせるため、新たなる次元へ向かおう。
この後本編よりもエクシーズや融合を使いこなせているとはいえダークリベリオン等が無い遊矢は本編同様ボコられました。また、本編とは若干入手タイミングが異なっており我らが沢渡シンゴさんの【魔界劇団】はこのタイミングで入手した流れとなります。その他にも何人かのキャラのデッキが変貌・強化される事となりこの辺りから『自重』の二文字が墓地に送られることになるでしょう。
そしてこの後の展開がアンケートになります。ずばり遊花達別動隊メンバーが向かう先を『エクシーズ次元』にするか『融合次元』にするかです。
判断いただくためにメンバー内訳や展開予想を伝えます。
・確定メンバー
『沢渡遊花』『日影』『ユート』『方中ミエル』『刀堂刃』『光津真澄』
・参戦の可能性があるメンバー(希望者や作者の気分と実力次第)
『茂古田未知夫』『勝鬨勇雄』
エクシーズ次元
・カイトと共闘したり、エド・フェニックスやタイラー姉妹とデュエルするかもしれません
融合次元
・天上院明日香と共闘したり、榊遊勝を殴ったり、紫キャベツとデュエルするかもしれません
ランサーズ第2部隊、2本目の槍はどちらへ向かう?
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エクシーズ次元
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融合次元