ARC-V転生美少女物語   作:らびどっぐ

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 4連続デュエルの後ですが、ここから会話パート回でデュエル無しとなります。


女の本音(前編)

 レジスタンスの拠点に到着したランサーズエクシーズ次元班は、その様相に言葉を失った。

 

「これは、レジスタンスの拠点というより……」

「避難所だな」

「見たところ、戦える者は多くない。少数のレジスタンスで、逃げ延びた人々を守っているようでござる」

「占うまでもない……あの人達」

「怯え、不審……仕方ないけど、私達がデュエルディスクを持っているだけで怖いんだろうね。余所者って事も相まって警戒心MAXって感じ」

「こんな調子でレジスタンスを味方につけるなんて……」

「とりあえず、生活物資だけ渡してそれを交換条件に寝床は確保しよう。今日はみんな疲れただろうし」

「わかった、俺が話してこよう」

 

 ユートが率先して話をつけに行ってくれて助かった。

本当はカードも豊富に準備してきたのでデュエルが出来る者のデッキは強化したいのだが、それは信頼を勝ち取ってからだ。特に日影とミエルは偵察で体力を使ったので休息は重要だ。

 こういう場所では盗難を疑うが、準備してきたカードにレジスタンスが勝手に手を付ける可能性は、正直低い。

 信用ならない余所者を困らせようと考えるケースはあるかもしれないが、そもそもこの環境ではデュエルディスクもカードもほとんど危険物に見えているはずだ……わざわざ危険物に手を出したい人間はそうはいないだろう。もっと言えば、避難民もレジスタンスも見るからに疲れている。悪事を働こうなどという気力がある人物がいるなら、むしろ使える……交渉の価値がある有能な人物と判断出来る。

 そんなわけで、差し当たり危険は無いと判断し全員に休息を促す……強いて言えば、私も含めて女性陣が美少女揃いなので手を出されかねないのでは? という疑念だが念のため固まっているし、そういう不届き者が現れたら、とりあえずデュエルディスクを構えれば良い。

 カード化の恐怖はエクシーズ次元なら皆知るところなので、こちらがデュエルディスクを構える=事実上の死刑宣告に見えるはずだ……スタンダード次元のデュエルディスクはカード化機能が無いのだが、そんなことを知るはずもないエクシーズ次元の人間にカード化される危険を冒してまで捨て身の突撃をする阿呆は(おそらく)いないだろう。

 

 そうして一応の身の安全を確保して休んだ翌日、エクシーズ次元2日目の行動を決める為に集まった。

 

「みんなおはよう。早速提案だけど、今日はこの拠点周辺のアカデミア兵を倒して回ろうと思う」

 

 開幕好戦的な意見を出した事による反応はバラバラ。特にユートと真澄ちゃんは怪訝な目を向けてくる。

 

「あまり派手に動くのは好まないと思っていたんだが」

「遭遇した相手を追い払うならともかく、こちらから打って出るのは得策じゃないんじゃ?」

「それはそうなんだけど、今私達に向けられている不信感……これを放置していたら協力どころじゃない。一番手っ取り早いのは、私達が味方だって行動で示すことでしょ」

「だったら、レジスタンスにも同行してもらって直接その目で見てもらう必要があるんじゃねえか?」

 

 刃の指摘はもっともだ。

 

「うん、だから昨日会ったアレン君とサヤカちゃんに来てもらえないか頼むつもり。二手に分かれてそれぞれについて貰おうか。メンバー分けは……とりあえず男女で分かれよう。男同士、女同士の方が話しやすい面はあるだろうから」

「わかった。回り方は……大雑把だけど西回りと東回りで分かれれば良いか」

「どちらにどちらの班が良いかは、ミエルが占ってあげるわ」

 

 占いの結果、女性組が東回り、男性組が西回りとなった。サヤカとアレンも同行を承諾し、出発の段階でデュエルディスクを構える。

 

「昨日は気が付かなかったんだけどさ、アクションデュエルそのものはあまり乱用すると面倒だけど、質量があるソリッドヴィジョン技術自体はもうどの次元にもあるんだから移動はこれで良かったよね。《アポクリフォート

・キラー》!!」

 

 女性陣用の移動手段として遊花がデュエルディスクによって実体化させたのは要塞のごとき威容を放つ巨大な機械族モンスター。

 

「これって……クリフォート?」

「うん、LDSペンデュラムコース体験入学の支給品と同じだよ。実はあのデッキ、自由枠も15枚用意していてサイドボードからデッキタイプを少し弄れるようになってるんだ。これはメインのデッキにピン挿しされてるいわば奥の手なんだけど、ある程度特化させることもできるよ」

「何でわざわざ支給品のデッキを出したんですか?」

「エクシーズのデッキも持ってきたんだけど……実はアカデミアの主力の【古代の機械】とちょっと相性が良くないうえに、乗るのに適したモンスターがほとんどいないんだよね。だから支給品以上のデッキを持っているだろう幹部級ならともかく、雑魚相手なら基本的にメタビートの色が濃くて安定感があるこっちの方が良いと判断した。さ、乗った乗った」

 

 サヤカが乗る時、少し腰が引けていたが用途はともかくやっている事はアカデミアと変わらないのだから仕方がないところだろう。一応、こんなデカブツを選んだ理由もある。

 

 まず、大型であるゆえに全員で乗れる。そして、その威圧感だけで雑魚を追い払えるならそれに越したことはない……あくまでも目的は拠点の安全確保であって、アカデミア兵をカード化することではない。

 そして、浮遊している故に空中から索敵が出来るという点だ……あてもなく地上を探し回るよりもずっと効率が良い。

 

 そうして、出発して数十分経過したが……アカデミア兵は影も形もない。

 

「これ、もしかして……」

 

 逆に空からでは見えない可能性に思い至り、地上を歩くと……思った通りだ。

 

「そこら中にカードが……」

 

 真澄が散乱するカードを1枚ずつ拾い上げる。

 

「どれもこれも、アカデミア……」

「つまり、私達がやるよりも前にこの辺のアカデミア兵を片っ端からカードにした奴がいる」

「カイト……」

「これはサヤカちゃんに来てもらって正解だったね。遭遇してデュエルになったとして私達が『勝つ』ことはできたとしても『説得して止める』のは多分サヤカちゃんじゃないと無理だろうからね」

「それで、これからどうするの? この感じだと、それこそカイトが徹底的に倒してそうだけど」

「予定通り、東回りでぐるっと拠点周辺を移動しながら今度はカイトの捜索も視野に入れようか。それにしても、まさか本当に単独行動とは……」

 

 最初にカイトに遭遇した時、単独行動ではないと踏んだ理由として物資がある。カイトも人間である以上、水や食料は必要不可欠だ……それを持っている様子が無かったため、誰かのところで補給していると見ていたのだが……解決策は呆れる程シンプルだった。

 

「アカデミア兵をカードにするついでに、水や食料をかっぱらってるみたいだね……」

 

 避難所、もといレジスタンスの拠点では水や食料、毛布といった生活物資にも難儀しているが、あるところにはあるということだ。

 

「でも、これは私達にも好都合だね。さ、私達もカイトの取りこぼしを頂いちゃおう。1人で持ちきれない分はそのまま放置されてるみたいだし、みんなに必要だからね」

「やってる事は完全にコソ泥なのに遊花さんやたら生き生きしてる……」

「もう! 信用を得るとか言ってまるっきり小悪党じゃない!」

「固いこと言わずに貰えるものは貰っちゃおうよ……あ、ラッキー! チョコレートバーじゃん! こんな中だと甘い物なんてレアもレアだよ! ……この感じなら人数分見つけられそうだけど、真澄ちゃんいらない?」

「…………食べます」

 

 遊花の行動のセコさには呆れつつも、女の子は甘い物の魅力には勝てないのである。

 

「遊花さんって、すごい人ですね」

 

 女子4人でチョコレートバーを食べていると、サヤカからこんな言葉が出てきた。

 

「すごい、って単語でも大分マイルドよ。最年少タイのプロ決闘者でアイドルで、先生でもあるんだから」

「アイドルに関しては政治家の義父(オヤジ)に言われるがまま広告塔やっていたら持ち上げられただけだよ。拾われておいて言うのもなんだけど、私あの養父と致命的に相性が悪くてね。早く自立したくてインストラクター資格の勉強したんだよ。プロは将来塾を開くなり、塾で雇われるなりした時のための箔付け……つまり、全部繋がっているけどあくまでも本業はインストラクターなんだ」

「それで、幅広く教えることが出来るように融合もシンクロもエクシーズもマスターしているわけですね」

「そういうこと。私だって、プロとかアイドルだといつまで通用するかわからないけど一通り教えられるようになっておけば子供達に教えるくらいはできるでしょ」

「なるほど……でも実際、遊花さんのデュエルって賛否両論なのよね。多彩な召喚法を使いこなし、色々なデッキで観客を魅せる千変万化の決闘者、って好評だけど……」

 

 ミエルちゃんの遠慮がちな発言に対しても、気にすることなく答える。むしろ、こういう時にこそ本音で話しておきたいくらいだ。

 

「基本的に制圧かワンキルだから、口の悪い連中からはエンタメを破壊する魔女呼ばわりされてるって話でしょ? 本人が知らないわけないじゃん。半分生い立ち由来だから悪いとも思ってない」

「生い立ち由来……?」

 

 サヤカちゃんが不思議そうに首をかしげるので、これまたサラッと答える。

 

「私、実の親の顔も知らない孤児だから。孤児院に寄付されるクソ雑魚カードで、一般の子供の充実したカードプールに対抗して大会で勝とうと思ったら、どうすればいいと思う?」

「え? ええっと……」

「答えは簡単。一切の容赦を捨てるんだよ。手持ちのカードの中でベストを尽くした上で、隙を見せた瞬間に叩き潰す……そうでもしないと勝てないからね」

 

 そういう意味では、生い立ち的には零羅に近いのかもしれない……私は気質的に大分お気楽な方なので、まだ緩い空気でいられるし戦場にいた零羅と比べればマシな育ちだったと言えるか。

 

 そんな話をしたところで、サヤカちゃんがおずおずとデッキを差し出してくる。

 

「先生、なんですよね? 私のデッキ、見てもらえませんか?」

「いいよ。ちょっと貸してね」

 

 うっかり汚さないよう手を拭いて、一枚ずつカードを見ていく。

 

「うん、見た目も可愛いしカジュアルで楽しむなら良いデッキだと思う。強いて言えば火力面がコンボ依存だからもうちょっとサーチを厚くするか、突破力のあるエクシーズモンスターが欲しいね」

「カジュアルで楽しむなら、ですか」

「私も色々な立場でデュエルするからね。友達と気軽に遊ぶのと、仕事で負けられない戦いをするんじゃデッキは違って当然でしょ。そういう意味じゃ、これは気軽に遊ぶデッキとしてならかなり完成度が高い……でも、アカデミアと負けられない戦いをするにはちょっとパワーが足りない」

「それなら……」

 

 サヤカが決意のこもった目でこちらを見てくる。

 

「私に、戦える力を下さい……私はあの時力も、勇気も無かった! もう後悔したくない!!」

 

 その言葉を聞いて、ニヤリと笑ってみせる。

 

「任せなさい。拠点のカードプールを使って、サヤカちゃん向きのデッキを一緒に作ってあげる。そこら辺をウロウロしてる雑魚程度なら、ボッコボコに出来るレベルは約束するよ……流石にカイトを確実に止められるか、って聞かれると相当キッツいと思うけどできるだけの事はやってみる」

「はい!」




 思ったより長くなってしまったので、2パートに分けようと思います。
 本当はここでもう少し緩めるつもりだったのですが、次回に持ち越しです。

 実はここでネタばらししてしまうと、実はここの乗り物案の1つが《真竜凰マリアムネ》でした。
 ズァークとの対比で遊花には9軸真竜もしくは征竜握らせる案があったのですが、シナリオ展開上次元統合阻止してハゲと榊遊勝を殴る事を考えると無理に握らせる必要も無いので見送りとなりました。
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