デュエル当日。私は市議会選挙を乗り切った義父に付いて、お世話になった企業のお偉方へのお礼回り中だ。写真や握手はもちろん、場合によっては相手企業の商品アピールにも協力する。今日は無いが、ミニライブやデュエルイベントがある日もある……これでもちゃんと地道にアイドルもやっているのだ。
隙間時間に、遊矢とシンゴのデュエルの配信を見る……ちょうど、開始直前のようで実況の声が響く。
『赤馬零児とトップタイ、最速でプロの資格を得た沢渡遊花さんですが、彼女は同時にこの舞網市が誇るアイドル決闘者! そのデュエルの申込は増える一方、やむなくそれらに応えられるピンチヒッターを呼ぶ形となりました! その白羽の矢が立ったのは未知の召喚法ペンデュラム召喚を操りストロング石島を破って見せた榊遊矢! 今回も是非、ペンデュラム召喚で会場を盛り上げて欲しい!』
観客に手を振り、笑顔で入場する遊矢。その正面のフィールド入り口から、シンゴが入場してくる。
『榊遊矢君は、ペンデュラムのカードを一部、レオ・コーポレーションに貸与しています。これによりペンデュラムカードの開発はスムーズに進むでしょう! 今回はそのお礼、とのことでレオ・コーポレーションが運営するレオ・デュエル・スクール……通称LDSより拮抗した実力を持つ期待の新星が対戦相手に選ばれました! 沢渡遊花の義弟にしてLDSのホープ! 沢渡シンゴ!!』
(……使うぜ。)
遊花に渡されたものを調整したデッキを握りしめ、シンゴが会場入りする。
「よお、榊遊矢。聞いてるぜ、お前がペンデュラムのカードを貸した分は、義姉ちゃんがピンチヒッターの礼も兼ねてカードを貸してるってな」
「ああ、そこはありがとうって伝えておいてくれ」
「お断りだ、何故ならお前が伝える言葉は『カード借りておいて負けました、ごめんなさい』だからだ。オレもペンデュラムに対抗する為のデッキを借りてる、これで五分……じゃあない。実力はオレの方が上だからオレが有利なんだよ!」
「それでも、何とか乗り越えるさ。父さんもピンチからの逆転は何度もやってる、俺にだって出来るさ!」
「やれるもんならやってみな!」
「戦いの殿堂に集いし決闘者達が!」
「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション……」
「「デュエル!!」」
「先攻はオレだ、手札から《カードカー・D》を召喚して効果発動! このモンスターをリリースする事で、デッキから2枚ドローしてエンドフェイズに移行する。これでターンエンドだ」
『沢渡君は随分静かな立ち上がり。まさかの手札事故か?』
「そんなワケねーだろ! コレで良いんだよ、黙って見とけ!」
ここで、ターンが回ってきた遊矢がデッキからカードを引く。
「それでは、私のターンと参りましょう。ドロー! ……レディースエーンジェントルメン! 早速皆様ご期待のペンデュラム召喚を披露いたします! 《
インコーラス、キングベアーと順にセットしたところで、シンゴがニヤリと笑みを見せる。
「おーっと、ストップだ。ペンデュラムモンスターをペンデュラムスケールにセットするのは、魔法カードの発動扱いだよな? 手札から罠カード《タイフーン》を発動だ。相手フィールドに2枚以上魔法・罠カードがあって自分フィールドに魔法・罠が無い時、 このカードは手札から発動可能、相手の表側表示の魔法・罠カード1枚を破壊する! 魔法カード扱いのキングベアーを破壊!」
「なっ!?」
『あーっと! これはうまい! 手札から罠カードと言うまさかの奇襲でペンデュラムスケールの成立を止めた!!』
「2枚のペンデュラムスケールが揃わなきゃ、ペンデュラム召喚は出来ない。残念だったな」
「……破壊されたキングベアーは、EXデッキに表側表示で置かれます。これはお見事、と言うところですがこれで皆様をがっかりさせるつもりはありません!」
「何?」
「私は続いて、《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚!」
「それなら、オレも動かせてもらうぜ! 手札の《
「召喚に反応してモンスターが……でも、私も負けてはいられません。《EMドクロバット・ジョーカー》の効果、通常召喚に成功した時、ドクロバット・ジョーカー以外のEMモンスター、魔術師ペンデュラムモンスター、オッドアイズモンスターの内、いずれか1体をデッキから手札に加える事が出来ます!」
「チッ、それでペンデュラムスケールをもう一度成立させるつもりか。《PSYフレームギア・α》の効果で特殊召喚されたモンスターは、エンドフェイズに除外される」
「私は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加え、ペンデュラムスケールにセッティング! 更に《
「ペンデュラムモンスターにそんな性質があったのか!?」
「《
《PSYフレーム・ドライバー》も攻撃力2500で相討ち。《PSYフレームギア・α》も守備表示であり、攻撃したところでダメージを与える事は出来ず、放っておいても除外される。
「ここは、様子見と参りましょう。バトルフェイズを終了。メインフェイズ2も特に何もせずエンドフェイズ、ペンデュラムゾーンの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の効果、このカードを破壊する事で、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを手札に加える。《
「《PSYフレーム・ドライバー》と《PSYフレームギア・α》が除外される」
『シンゴ君の的確な妨害もあって、なかなか静かな立ち上がり。さあ、ここからどう動く?』
「まあまあ焦りなさんな、仕込みは順調だからよ。オレのターン、ドロー! フィールド魔法《
シンゴ LP4000→3200
「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
またしても静かな立ち上がり。だが、シンゴの表情は自信に満ち溢れている……『何かある』。だが、それで止まるという選択肢は、遊矢には無かった。
「それでは、私のターンドロー! もう一度ペンデュラム召喚をお目にかけましょう、《
「一つ覚えだな! 手札の《
「何だよ、沢渡こそ同じ事をして一つ覚えじゃないか」
「違うんだよなぁ。フィールド魔法《
『何とぉ! シンゴ君がペンデュラム召喚を防いだだけでなく、そのまま流れるようにシンクロ召喚を決めた!!』
「見たか! これが沢渡シンゴ様のカウンターシンクロ戦法だ! 更に《PSYフレームロード・Ω》の効果、ランダムの選んだ相手の手札1枚と、このカードを次の自分スタンバイフェイズまで除外する!」
たかが1枚、されど1枚。ペンデュラム召喚を連続で妨害されたうえに、戦術の幅が狭められる。苦しい展開だが、遊矢は1枚のカードに活路を見出す。
「俺は、《
そのままフィールドに現れたカバのモンスターに飛び乗る遊矢。『ディスカバー』の名に違わず、ディスカバー・ヒッポはアクションデュエルにおいて『アクションカードを発見しやすい』と言われている。
「なら、その召喚に対して手札の《PSYフレームギア・α》の効果を発動する。手札の《PSYフレームギア・α》と墓地の《PSYフレーム・ドライバー》を特殊召喚して、デッキから《
『アクションカードを探すためのディスカバー・ヒッポ召喚に更なるシンクロ召喚のカウンター! これは厳しい!』
「だとしても、簡単に諦めるか! ……あった!」
アクションカードを手にしたところで、遊矢は状況の打開に動く。
「ペンデュラムモンスター以外の『EM』モンスター1体をリリースする事で《
スライハンド・マジシャンは手札を1枚捨てる事でフィールド上の表側表示カード1枚を破壊する効果を持ち、攻撃力も2500と十分。打開策としては申し分なかったが、シンゴのカウンター戦術はその上を行く。
「それなら、《PSYフレームロード・Ζ》の効果発動だ。1ターンに1度、自身と特殊召喚された相手モンスター1体を対象に選んで次の自分スタンバイフェイズまで除外する。スライハンド・マジシャンと自身を除外!」
PSYフレームロード・Ζの効果は相手ターンにも打てるが、スライハンド・マジシャンは自分のターン限定だ。そのため『アクションカードをコストに除去効果を使う』という打開策は封じられてしまった。
「…………ターン、エンド」
「おっと、そのエンドフェイズにリバースカードオープン、《サイコ・トリガー》! 自分の方がライフが少ない場合に発動可能、墓地のサイキック族モンスター2体を除外して、2枚ドローする。《PSYフレームギア・α》と《PSYフレームギア・δ》を除外して2枚ドロー」
『徹底したカウンターの前に、遊矢君はやむなくターンエンド! ライフは遊矢君がノーダメージの4000、沢渡君が3200と差がついているが、ペースは完全に沢渡君が握っている! 序盤から素晴らしい攻防、今年のジュニアユースはレベルが高い!』
「この沢渡シンゴ様の時代なんだ、当然だろ! さあ、ここから攻めて行くぜ。オレのターン、ドロー! スタンバイフェイズに遊矢の手札とスライハンド・マジシャン、オレのPSYフレームロード・ΩとPSYフレームロード・Ζが戻ってくる。メインフェイズ1は何もせず、そのままバトルフェイズだ! PSYフレームロード・Ζでスライハンド・マジシャンを攻撃!」
『シンゴ君、ここにきて凡ミスか!? PSYフレームロード・Ζとスライハンド・マジシャンの攻撃力は同じ2500、このままだと相討ちになるぞ!?』
「そんなワケねーだろ? 何で、オレが『ただの通常モンスター』のPSYフレーム・ドライバーをずっと大事に握っていたと思う? こうするためだ! 《PSYフレーム・サーキット》のもう1つの効果! PSYフレームモンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時に手札のPSYフレームモンスターを捨てる事で、捨てたモンスターの攻撃力分、その攻撃力をアップさせる! PSYフレーム・ドライバーを捨て、PSYフレームロード・Ζの攻撃力をPSYフレーム・ドライバーの攻撃力分、2500アップだ!!」
「うあああああっ!!」
遊矢 LP4000→1500
「続けてPSYフレームロード・Ωで攻撃!」
「アクションマジック《回避》! その攻撃を無効にする!!」
「これでターンエンドだ」
《回避》を握っていたのは見えていたので、決着がつかずとも焦る事はない。むしろ、優位を確信しシンゴは悠々とアクションカードを探し始める。
「俺のターン……ドロー!」
このままでは、例えアクションカードを拾っても勝ち目がない。そこに来た1枚のカード。勝利を得るには、賭けに出るしかない。
「俺は、手札から《強欲で貪欲な壺》を発動! このカードはデッキからカードを裏側表示で10枚除外する事で2枚、ドローできる! 10枚除外して2枚……ドロー!!」
除外された中に重要なカードが入っている可能性は低くない。更に、ドローしてもシンゴはPSYフレームロード・Ωで手札を1枚除外する……それで逆転の芽を潰されてしまう危険もある。絶望的なのに、不思議とワクワクする。
「デッキを10枚も飛ばして逆転のドローソースに賭けるか、悪あがきだろうが、まあやってみな。PSYフレームロード・Ωの効果! このカードとランダムに選んだ相手の手札1枚を除外する! 更にリバースカードオープン、《PSYフレーム・アクセラレーター》。ライフを500払い次のオレのスタンバイフェイズまで、PSYフレームロード・Ζを除外する」
シンゴ LP3200→2700
(これで、手札の《PSYフレームギア・
「俺は《
「ちぃっ! ペンデュラム召喚を成功させやがったか! だがオレにはこの通り、アクションカードがある! これを使えばライフは残る!」
発見したアクションカードを見せるシンゴに対して、遊矢は笑みを返す。
「それはどうかな? 《|EMペンデュラム・マジシャン》のペンデュラム効果、EMモンスターがペンデュラム召喚に成功した場合に発動、自分フィールドのEMモンスター全ての攻撃力を1000ポイントアップする!!」
EMキングベアー 攻撃力2200→2600(自身の効果)→3600(ペンデュラム・マジシャンの効果)
EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2800
「バトル! ドクロバット・ジョーカーでプレイヤーに直接攻撃!」
「アクションマジック《回避》! その攻撃を無効にする!」
想定外の攻撃力に急いでアクションカードを探すシンゴ。
「続けて、キングベアーで直接攻撃!」
「なんの、間に合ったぜ! アクションカード……って《奇跡》!?」
アクションカード《奇跡》はモンスターの戦闘破壊を防ぎ、戦闘ダメージを半分にする強力なアクションカードだが『モンスター同士での戦闘』が前提となる。今のシンゴのフィールドはモンスターがおらず、カウンター効果の条件である『効果モンスターの効果発動』も無かったため、せっかくのアクションカードも意味を成さなかった。
「うおああああああ!?」
シンゴ LP2700→0
その日の夜。お偉いさんの会合で都合良く義父が留守だったこともあり、シンゴと二人で夕食を取る……うん、本当に好都合だ。もしこの場にいたら『遊矢に強力カードを渡すとは何事か』とか(今回は渡したカードで使ったのは汎用カードの《強欲で貪欲な壺》だけ)『何故シンゴにもっと強力なデッキを渡さなかった』とか(シンゴとの相性はともかく、ペンデュラムメタは十二分に積んである)とか嫌味を言われていたのが容易に想像できる。
「はい、これ食後のデザート」
出したのはシンゴ行きつけのケーキ屋の名物・スイートミルク・アップルベリーパイ・とろけるハニー添え……お金持ちの坊ちゃん行きつけというだけで分かるだろうが、結構いいお値段の品である。
「アンタよくそんな甘ったるいの食べられるよね、私なんて見てるだけで胸焼けしそうだよ……今日は、よくやったね」
「何だよ、結局負けただろうが……つまらない慰めならいらねえよ」
「私は、アンタの勝ちだと思ってるけどね。気付かなかった?」
「何が?」
「遊矢、追い詰められて父親の真似をした芝居がかった演出が全然できてなかったんだよ」
「言われてみれば……」
「デュエル自体は負けたけど、アンタは榊遊勝から引き継いだ遊矢のエンタメデュエルをぶっ壊して見せたんだよ。『試合に負けて勝負に勝った』って言えるんじゃない?」
「……バーカ、両方勝たなきゃ意味ねえんだよ」
目をそらした辺り、気付いていなかった勝利にまんざらでもないらしい。ワガママで生意気ではあるが、この義弟にも可愛いところもあるのだ。
「それでも悔しくて泣きそうなら、ぎゅーってしてあげるからお義姉ちゃんの胸で泣いても良いよ? ほら、小さい時よくやったでしょ」
「誰が泣くか! いつまでも子ども扱いすんな!!」
と言うわけで、遊花が渡したのは【PSYフレーム】デッキでした。
シンゴとの相性が微妙、と言うのは目立ちたがり屋かつ攻めのスタイルを取りたい性質なので基本受け身の【PSYフレーム】は気質的に合わない、と言う意味です。
【PSYフレーム】デッキには主に2つの採用理由がありました。
まず1つに【PSYフレーム】はデッキ丸ごと手札誘発みたいなデッキなので『今後手札誘発も惜しまず使います』というアピールにうってつけであったこと。うさぎは妖怪少女で唯一サイキック族であり、PSYフレームと相性が良いので自然に採用できるカードです。(※間違いの指摘を頂き《タイフーン》に変更しました)
2つ目に、今後の強化フラグです。沢渡シンゴの使用デッキと言えば【帝】(帝王)、【妖仙獣】【魔界劇団】ですが前者2つはPSYフレームと混ぜる構築が十分考えられます。特に【妖仙獣】はシナジーが強いため今後強化に使うのに好都合だと判断しました。
今回は正直難産でした。本当は《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》でγの発動を許さずサーキットをバウンスして決めるとか、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》でカウンター返ししつつバウンスとかやりたかったのですが、なかなか流れが思いつかず素直に殴る形になりました。
余談:最後のオチにあるように遊花は小さい時から一緒だったことと、元男性的に『こういうの好きでしょ』と言う悪ノリをするせいでシンゴに対しての距離感がバグっています。性癖は破壊するもの
ChatGPTさんに遊花のイメージ画を作ってもらいました
ライブの姿
【挿絵表示】
オフの姿
【挿絵表示】
タツヤのデッキ、何が良さそう?
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