ARC-V転生美少女物語   作:らびどっぐ

6 / 30
 本作のコンセプトの1つが『俺TUEEE!』ばかりではつまらないよね? だったりします。なので、ちょっと変わった話も書いてみます。


日常と契約のお話

「ここで、この公式に沿って計算をすると……。」

 

 小気味よい板書の音を聞きながら、ノートに公式を書き写していく……こんにちは、沢渡遊花です。今日は普通に高校の授業中です。

 

 さて、遊戯王世界の転生と言えばしょっちゅうデュエルしているイメージが強いのではないだろうか? それはある一面では正しいが、別の面から見れば正しくない。

 初代では《真紅眼の黒竜》にン十万円かけていたりして、確かにカード相場はバグっている。だが、それだけで社会は回らない……5D’sにおいて、クロウが宅配業やっていたり、遊星が機械修理を請け負っていたりが良い例だ。孤島での生活のGXですら、デュエル以外の授業は当然存在する。つまり『デュエルが占める割合こそ大きいが、普通の生活もある』のだ。

 

 私は『アイドル決闘者』と言われているが、実態は『アイドル』というよりは『モデル』に近い。義父の選挙活動の応援、広告塔以外ではグラビア撮影があり、ミニライブもあると言えばあるが、中身はと言えばCMに出た時のCMソングを口ずさむ程度。あとは歌って踊る代わりにアクションデュエルをやる感じだ。

 

 で、それらの仕事は土日や学校の後がほとんど。都合がつかない時はあるので、勿論休む事もあるがあくまでも本分は学生である。また『プロ資格』『インストラクター資格』を持ってはいるが、正式に企業と契約を交わしてはおらずフリーの状態だ……2ヶ所程、別の契約はしっかり交わしているけど。

 

 1つは遊勝塾。言わずもがな『ピンチヒッター契約』の話である。

 

・私が公式戦の都合をつけられず、相手が同意すれば遊勝塾の塾生をピンチヒッターとして公式戦に出せるものとする

・ピンチヒッターの勝敗はそのまま私の勝敗に加算されるものとする

・ピンチヒッターを出した場合、公式戦で入るファイトマネーは6割を遊勝塾に渡すものとする

 

 実際は7割でも構わないくらい稼いでいるのだが、そこはビジネスなので擦り合わせをした結果だ。

 

 もう1つは、レオ・コーポレーションとの契約。これはペンデュラムカードの貸与に手を貸した事で締結したもので、簡単に言えば主にペンデュラムをメインとした新規カードのテスター契約だ。新しいデッキの貸与の代わりに、デュエルログの提供が義務付けられており公式戦の場合は事前に使用申請をする事になった。

 こちらも企業との契約なので当然お金は動くが、内容としては臨時講師や、プロとしてのレオ・コーポレーション関係者とのデュエルの授業料、ファイトマネーを3割引きというものだ。大分値切られた……レオ・コーポレーションが大企業のくせにケチ臭いのか、私の交渉が下手くそなのか、はたまた両方か。ともあれ、強力テーマを優先的に回してもらえるのはかなりの強みなので結果的にはトントンか、こちらがやや不利というところでフリーの個人としては頑張った方だろう。

 

 話は変わるが、権現坂は権現坂道場の跡取りと考えると少し例外気味だが、遊矢や柚子は『中学生』である。そんな彼らがかなり戦えるデッキを所有している辺りから見て分かる通り、この世界はカード価格が一部バグってはいるものの無理をせず、的を絞ればちゃんと一般家庭でも購入出来る範囲である。つまり、カードも『よほど無理をしなければ趣味の範疇』で購入出来る……何が言いたいのか? 私も『高校生離れした収入』があるが、ちゃんとその範囲内で多様なデッキを作れていると言うことだ。ぶっちゃけ、高いのはEXデッキくらいである。

 

 これらを前提にしたうえで、何故アイドルにプロ決闘者に教師にと忙しい中で高校生をやっているのか? 真面目に『将来のため』である。転生前は社会人男性だから『もっと勉強しておくべきだった』という後悔もあったのだ。

 

 今の私はしっかり売れっ子であり、アニメ本編の動きは始まったばかり……ここからしばらくはかなり優位に立ち回れるだろう。しかし『本編終了後も世界は続く』し、それで将来も安泰とは言えない。

 まず第一に、アイドルと言ってもちゃんと年齢は重ねる。いつまでも高校生ではない。第二に、この世界においてデュエルが占めるエンタメの割合はかなり高いが、それがいつまで続くかは誰にも分からない……つまり、いずれは別の形で収入を得て生活する可能性は低くないのである。そうなると、大卒とまでは言わなくとも高卒の学歴くらいは欲しい。

 赤馬零児のような高校生社長もいるが、アレはイレギュラーである。そもそも顔が良いと言っても顔面偏差値そのものが高めの遊戯王世界でアイドルを続けていられる期間も分からないし、OCGプレイヤー基準で見ればカジュアルプレイヤーの私が一線で戦い続けられる期間もいずれ終わると分かっている……所詮元が孤児の一般人、今のうちに稼げるだけ稼いでこれからの騒動を乗り切った先も安定した生活を手にしたいのだ。小心者と笑わば笑え。

 

 それから、これもかなり大きいのだがせっかく新しい人生を送るなら青春したいのである。

 昼休み、クラスメイトとスイーツのお店の話をしたり、デッキ相談を受けたりと言った時間が楽しい。

 

「遊花、よくそんなデッキで勝てるよね。あんまり強いカードが入っているように見えないのに」

「まあね。これでも結構試行錯誤したんだよ」

「プロ資格持ちなんだから、公式戦で使うデッキ持ってきたらいいのに」

「いや、そういうわけにもいかないでしょ」

 

 やろうと思えば融合、シンクロ、エクシーズをフル活用して戦う事はもちろんできる。だが、そもそもEXデッキを使う事が少ない環境なのは高校生も同じであり、それをやると一方的な蹂躙になってしまう。そこで、そこそこのカードパワーで、無難そうなEX無しのデッキを用意している……無論舐めプのつもりは無い。単純に、相手に合わせるというのも必要だという話だ……女子の中には『モテたい』とか『彼氏と遊びたい』なんて目的で手を付け始めたはいいが、いまいちデッキ構築やプレイングに難がある、と言う子も結構いたりする。そういう子にガチデッキをぶつけるのは流石に無いだろう。やはりというべきか、可愛らしいカードを使う傾向は強いので見ている分にも楽しく、これを実戦レベルに引き上げると本当に嬉しそうにしてくれるので教えがいもある。

そうした様子を何度も見せてしまっているからか、鬱陶しいのもいるのだが。

 

「沢渡さん! 我がデュエル部に……」

「断る」(0.2秒)

「速い!!」

「部活やってる時間なんてない!」

 

 まあ、事実そんな時間は無い。何せ放課後は試合やデュエル塾の講師直行コースが多いのだ。余裕がある時に少し放課後遊ぶくらいが割と限界で、それなら友達と過ごす方が大事である。

 

「懲りないねえ、あの人も」

「同じメガネでも赤馬社長とは大違いだよ」

「背も高いし、カッコいいよね! 遊花さんいいなぁ、デュエルして、しかも勝っちゃったでしょ」

「あれほとんどマグレだから。我ながら良く勝てたよ本当……」

「やっぱりそんな感じなんだ。デュエル出来るだけでも羨ましいよ」

「本当! 理知的だし、大企業の社長だし、やっぱり恋愛でも紳士的なんだろうなぁ……」

「あ、あの人は恋愛期待するだけ無駄」

「え?」

「あの後話する機会もあったけど、典型的な仕事人間だもん。デュエルになるとやけに熱くなる節があるのは、鬱憤晴らしも兼ねてるんじゃないかな? 恋愛感情なんて入る余地無いね」

「もー、非情な現実突きつけないでよ!」

「まあまあ……憧れるだけならタダだから」

 

 そんな何気ない話を昼にして、授業を終えた放課後に予定を確認する。

 

(試合の予定はなし、権現坂道場から単発の授業依頼……場所は遊勝塾でいいのか。じゃ、ピンチヒッターの経過報告も一緒に受け取るかな)

 

 せっかくなので、手土産でも買っていこう……そう思ってショッピングセンターに向かうと、その近くで水色の髪が特徴的な少年がウロウロしていた。あれは……アイツか。そういえば時期的にもう動き出してもおかしくない頃だった。スルーしたとしても遊勝塾でかち合う可能性が高い……あえてこちらから接触してみるか。

 

「ボク、どうしたのかな? 迷子?」

「ボク、なんて呼ばれる程子供じゃないよ。迷子は、間違いでもないかも……遊勝塾、ってデュエル塾を探してるんだ」

 

 知ってた。こっちにいるのは図らずも同じ目的か……こいつもシンゴ同様、どころか味覚障害を疑うレベルの甘党なので甘い物の調達に寄り道したのだろう。

 

「奇遇だね。私はこれからその遊勝塾に臨時講師の仕事に行くところなんだ。手土産に甘い物買う時間は貰うけど、良かったら一緒に来る? なんならボクの分も買ってあげる」

「良いの!? ありがとう! でもボクはやめてよね。ボクは素良、紫雲院素良」

「私は沢渡遊花、よろしく……あ、これでも私有名人だからもしかしたら知ってる? あんまり目立たないようにしてね、見つかるとサインだなんだって面倒だから」

 

 制服着て髪型を工夫するだけで意外と誤魔化せるが、それでも見つかる時は見つかるのだ。

 

「わかった、それじゃ買い物して行こう!」

 

 私がプロ決闘者にしてアイドル決闘者なのは気にしていないようで、好都合だ……まあ、この子別の次元の子だからね、スタンダードの芸能人なんて知らないか。

 

 スイーツをいくつか見繕い、遊勝塾に向かう。

 

「素良君は、入塾希望者? それなら、ジュニアはともかくジュニアユースはこれから公式戦の都合つけるの大変だよ?」

「違う違う、ボクは榊遊矢に挑戦しに行くんだよ。無いと思うけど、負けるような事があれば弟子入りも考えようかな?」

「大きく出たね。と、言う事はEXデッキの使い手かな」

「へえ……何で、そう思うの?」

「遊矢に挑戦する、って事はペンデュラム召喚を見て、戦いたいんでしょ? ペンデュラム召喚の初公開後、私が簡単にペンデュラムの説明を遊勝塾でした時、君はいなかった。となると、目を付けたのは多分最初のピンチヒッター戦……あの対戦で、負けはしたけどシンゴはカウンターシンクロで遊矢を追い詰めた。ペンデュラム召喚はシンクロ召喚デッキと互角以上に戦えると証明されたわけで、そうなるとEXデッキを使わない並みのデッキなら相当手強いと判断する。そこまで自信たっぷりに勝てる、って言えるなら同じEXデッキを扱うデッキを持ってる可能性が高い」

「……お姉さん、大した洞察力だね」

「これでもプロ資格とインストラクター資格を持ったプロだからね。と、なると持っているのはエクシーズ……いや、融合系デッキかな?」

 

 今のはわざと反応を見る為に間を開けた。そのくらいは流石にバレたようで素良は僅かに悪意の混じる笑みを見せた。

 

「……お見事、と言っておこうか。それで? 遊矢に勝てると思う?」

「融合を使う、ってだけじゃ、何とも言えないね。ま、お手並み拝見ってところかな……今日はシンクロ召喚の授業の予定だけど、見ていく?」

「シンクロ召喚には興味無いから良いや」

 

 生意気な。今やアイドル兼プロ決闘者の私の授業はアタッシュケースいっぱいのレアカードを差し出してお願いします、と頼み込まれる程レアなんだぞ(かなりの誇張表現)

 

 ……まあ、こちらとしては授業に集中できて好都合だ。シンクロ召喚に関してと言われた理由はやはりこの前のピンチヒッター戦を見たからだろう。アレは対ペンデュラムを想定したメタデッキなので、今回の授業にはそぐわない……代わりに独特なギミックを搭載したデッキは用意した。

 権現坂道場はアクションカードを使わないため、久しぶりの通常のデュエルでもある。楽しい対戦をして、ついでに生意気小僧に授業辞退を後悔させてやるとしよう。




 ちょっとだけストーリーを進めつつ、次は普通にデュエルしようかと。
 転生後、ストーリー後とか結構異質感があると思いますがお付き合い頂ければ幸いです。

タツヤのデッキ、何が良さそう?

  • ジェネクス系列
  • ギアギア系列
  • ブンボーグ
  • 幻獣機
  • 裏サイバー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。