真・恋姫†無双 糜芳伝外伝 -恋姫時代の政治について-   作:蛍石

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講義二を投稿します。

ただし、サブタイトルに偽りありな内容になっていますw


講義二 -外戚について①-

「鈴々を差し置いて美味しいお菓子を食べてるなんてふてえ野郎だ、なのだ!」

「誰が不逞な野郎ですか。 師父は一応秩序と倫理は人並み程度に備えてはいますよ。 ……ところで、不貞な野郎だと色々と品がなくて残念な感じになりますね」

「残念を通り越して、大問題になるだろうね」

「色々な方が荒れ狂う事を考えると、正しく大問題でしょうね。 おそらく師父の考えているのとは意味が異なるでしょうが」

「うにゃー!! 鈴々の事を無視するなー!!」

 

 私は三人が好き勝手喋っているのを呆然と聞いています。

 場が非常に混沌としています。こ、講義。講義が進みません!

 

「り、鈴々ちゃん。 今は街の巡回の時間でしょ? 何でまだ出てないの?」

「今日は星に替わって貰ったのだ。 お姉ちゃん達が何か美味しい物を食べようとしているとも聞いたから、鈴々も食べに来たのだ」

「せ、星ちゃん……」

 

 まさか私の講義の妨害のために替わったわけじゃないんだろうけど……。うう、それでも結果的に私の邪魔になってるよ。

 

「翼徳殿。 子竜殿から言付けはある?」

「えーっとね。 『メンマと酒を一壺ずつで良いですぞ。 はーはっはっはっは』って言ってたよ」

「……安全の値段と思えば安いか。 じゃあ、玄徳殿は勉強中だから大人しくお菓子を食べてて。 くれぐれも話の邪魔はしないようにね」

「分かったのだ!」

 

 呆れたような、諦めたような、色々な意味を持ちそうな疲れた顔をした後、糜芳さんはそう言い、鈴々ちゃんは元気にそう返事をしました。

 あ、あれ?糜芳さんも講義の邪魔にならないように鈴々ちゃんの同席は嫌がると思ってたんだけど。

 

「それじゃ、まずは『外戚』から話していこうかね」

「悪い奴等なのだ!」

「そんな感想は要らん」

 

 だ、大丈夫なのかな、この講義……。

 糜芳さんの言葉に即座に茶々を入れる鈴々ちゃんを見て、そう不安に思ってしまうのは止める事ができません。

 

 

 ・・・

 

 

「それじゃ、まずは世祖(光武帝)以降の歴代の帝とその皇后を書いていこうか」

 

 そう言って糜芳さんは私に筆を渡して、広げた木簡を私の前へ置きました。

 

「えーっと、それじゃあ……」

 

 盧植先生の私塾で勉強していた時に覚えた事を思い出しながら、書き出していきます。

『桃香ちゃんも天子様の血を引いているなら、歴代の天子様達のお名前は覚えておこうか』と柔らかい笑みを浮かべながら話していた盧植先生。董卓さんに歯向かって官吏を辞していたはずだけどお元気なのかな?

 うん、またお会いして色々とお話を聞きたいな。近況報告も兼ねてお手紙を書いて、会えるかどうかお伺いしてみよう。

そんな事を片隅に考えつつ、私はすらすらとお名前を書いていきます。

 

光武帝 陰皇后

明帝 馬皇后

章帝 (とう)皇后

和帝 鄧皇后

殤帝 なし

安帝 (えん)皇后

少帝(懿) なし

順帝 梁皇后

冲帝 なし

質帝 なし

桓帝 竇皇后

霊帝 何皇后

少帝(弁) なし

今上帝(協) (現時点では)なし

 

「……偉いな。 少帝の二人もちゃんと入れるんだ」

「それはそうですよ。 きちんと帝位に就いていらっしゃるんですか」

 

 感心したように言う糜芳さんへ、私は少し不満げにそう返します。

 確かにお二人は帝位に就きこそした物の、後に剥奪されて王に封じられています。しかし劉姓を持ち帝位に就いている以上、帝位へ就いた方々への礼を尽くすべきだと私は常々考えています。

 

「まあ、細かい評価は百年後の史家に決めてもらおうよ。 ただ先帝の解釈に関しては、間違えると今上陛下即位の正当性が揺らぎかねないからね。 今の朝廷の面々が認めるとも思えないんだよなぁ」

「ううう……」

 

 思わずうなってしまいます。

 先帝である少帝(劉弁)様が董卓さんに廃位されて、弘農王に封じられた事で天子様(劉協)は帝位に就かれました。それが起こらなければ天子様は陳留王のままだった可能性もあるので、確かに少帝様を認める事は難しいかもしれません。

 

「折角だからこのまま話を繋げるけど、少帝(懿)が死後に帝位を剥奪されたのは外戚である閻氏の誅殺が強く関わっている。 順帝自身が閻氏によって一度廃嫡までされてるから、恨み骨髄に徹していたのは想像に難くない。 それに加えて、完全に閻氏と手を切ったという事を内外、特に孫程達閻氏誅殺の立役者達に示す必要があった。 閻氏の立てた帝である少帝の正当性を認める訳にはいかなかっただろうね」

「そして宦官を侯に封じ、今日まで続く宦官の権勢の礎を作る事になった、と。 ……まあ、今は大分宦官達の権勢には翳りが見えていますけど。 しかし師父。 自らを擁立した宦官達を信任するのはわかりますが、侯に封じるまでは些かやりすぎだったと思うのですが。 他の官吏達の反発もあったでしょうし、そこまでする必要は有ったのでしょうか?」

 

 糜芳さんの講義に、杜畿さんは質問をしました。

 確かに宦官は元々天子様の身の周りのお世話をするのが役目であり、今ほど力は強くなかったはずです。ならば、そこまで気を遣う必要はなかったと思います。

 

「考えられる可能性は二つかな。 まあどちらの場合も動機は怖かったからなんだろうけど」

「怖い?」

 

 糜芳さんは思わず疑問の声を上げてしまいました。その私の言葉には直接答えずに、鈴々ちゃんに話しかけました。

 

「翼徳殿。 私が仮に玄徳殿をいじめたらどうする?」

「ぶっ飛ばすのだ!」

「私は現在別駕従事史の役に就いていて、無冠の翼徳殿よりもずっと偉いよ。 それでもするの?」

「そんなの関係ないのだ! お姉ちゃんをいじめるなら、例え漢の大将軍であってもぶっ飛ばすのだ!」

「ふむ、それは怖い。 玄徳殿の事はいじめないし、私の分の菓子もあげるからぶっ飛ばすのは勘弁してください」

「ふふん、そこまで言うなら許してやるのだ」

「……とまあ、こんな感じだったんじゃないかと」

「え? え、え?」

 

 今のやり取りを見ても私は何の事だったのか良く分かりません。多分さっきの話に繋がるんでしょうけど。

 そんな私を尻目に、ひょいと肩を竦めて糜芳さんは、鈴々ちゃんが満足そうにお菓子を食べるのを見た後、笑いを堪えている杜畿さんに話しかけました。

 

「な、なるほど。 確かに怖い事ですね」

「だろ? 本当に怖い事だぞ、これは」

「えーっと?」

 

 しみじみとそう口にする糜芳さんと、分かった様子の杜畿さんとを交互に見ながら私の頭の中には一杯疑問符が湧いてきます。

 

「玄徳殿にとっては翼徳殿は絶対に裏切らない存在だから今の例えじゃ分からないかもしれないけど、権威の通じない相手っていうのは権力を持つ人間にとっては怖い物だよ」

「皇叔様。 例えば、私たちみたいに徐州に来てから知り合った人間が、『玄徳殿のために、隣の州の牧に天誅を下してきました!』って言ったら、本当に皇叔様の為だと全面的に信用できますか?」

「あ、ああ! そういう事ですか!」

 

 そこまで言われて、ようやく私は理解する事ができました。

 

「順帝にとって孫程は自分を擁立してくれた忠臣であると同時に、宦官の身にありながら車騎将軍閻顯、つまり自らよりもずっと高い身分の相手を討った、何をしでかすか分からない不気味な人物でもあったんじゃないかな。 『もし扱いを間違えれば自分も殺されてしまうかもしれない』と思えば、多少甘めに恩賞を与えないと駄目だっただろうね」

「古の彭越は、はじめ項羽に仕えていましたが恩賞の不満から項羽に背き、広武山の和睦の後、梁王に封じるという高祖との約定により全面的に漢を支援する事を決めました。 この故事からも、十分な恩賞を与えなければ人は容易く背く事が分かると思います」

「だから、孫程に十分すぎる恩賞を与えなくては『怖い』んですね」

 

 代わる代わる説明をする師弟に、思わず何度も頷いてしまいます。

 それと同時に、私は仲間達に十分な物を与える事が出来ているのかと少し不安に思います。だ、大丈夫だよね、きっと。

 

「もう一つはもっと単純。 外戚が一掃されて何の後ろ楯も持たない帝ってどこかで聞いた事がない?」

「……なるほど、今上帝ですか。 皇叔様を立てたのと同じだと」

「え? え? え?」

「玄徳殿はあまり自覚していないみたいだけど朝廷が玄徳殿を皇叔と認めたのは、味方を作りたいからだよ。 それも漢王朝を裏切る事なく忠誠を尽くす味方をね」

「自分達に力が無いから、力のある味方を求めたわけですか」

「この場合は信用できる人物に力を持たせたいから、っていうのが正確だろうね。 誰が味方かも分からないなら、既に擁立に力を貸してくれた人間を信用してもおかしくはない」

「順帝に関して言えば、誰にも害されずに二十年弱在位したんだから成功したと言えるかもしれませんね……」

 

 糜芳さんと杜畿さんが色々と話していますが、頭に入ってきません。それよりも、何よりも頭を占めているのは。

 

「私に求められているのも、力をつけて漢王朝のために働く事なんですね」

 

 天子様から、絶大な信頼を受けている。

 しかも、非常に大きな期待をかけられているとの事です。

 そう考えると、胸の奥がカーッと熱を持つ感じがしました!こう、何て言えば良いんでしょう。『何でもやってやろう!』ていうくらいのやる気と、『今の私なら何でも出来る!』という自信が溢れ出て来ます!

 

「まあ頑張れ。 徐州を蔑ろにしない限りは尊重するよ」

「はい! 頑張って天子様の力になります!」

「鈴々も頑張るのだ!」

 

 そんな私の様子を見た糜芳さんが苦笑混じりに言った事場に、私と鈴々ちゃんは元気に返事をしました。




最後までお読み頂きありがとうございます。

外戚というサブタイトルなのに、宦官孫程の話がほとんどになってるw

・ふてえ野郎
本当はふてぶてしい、図太いなどの意味。
不逞が語源とと勘違いしていたのは過去の作者です。

・大問題
麟「この場合不貞って玄徳殿が相手になるんだろ?絶対関羽に殺される」
恵「大荒れしそうな方々が師父の周りには大勢居ますからねー。その時は間違いなく刺されるでしょうねー」
鈍感系主人公と周りに居る人物との認識の差たるや……!

・安全の値段
麟が恵に同席を求めたのと同じ事を星も考えました。
(不貞行為が)何も無かった事を証明するためには、嘘が吐けない第三者を近くに置いておき、後で証言させるのが確実だと考えて、星は鈴々を送り込みました。ついでに、酒とメンマをせしめる好機だと考えた事も影響していますがw

・盧植先生
恋姫英雄譚の画像そのままと思って頂いて大丈夫です。
原作の方ではあまり桃香と絡みが無かったですが(精々白蓮のところに行った時に話題に上がった程度?)もう少し師に対する敬慕が有っても良いんでない?と考える次第。

・劉姓を持ち帝位に就いた方々
原作だと漢王朝と帝への敬意とか畏怖とか、そういった諸々の感情が素っ飛ばされているのが不思議なんですよね。なので、上の盧植と同様に漢に執着している内面描写を書いてみました。これだけ書いてもまだまだ表現が足りない気もしますが。

・少帝
劉弁が愚かだった、というよりも即位時に思春期くらいの年齢に達していたというのが問題だったんだろうと思います。董卓としても幼い劉協の方がやりやすいでしょうし。
何を言いたいのかと言うと、劉弁は可哀想な子なのでいじめないであげてください。例え恋姫英雄譚にまだ画像が追加されていなくても(涙)

・宦官への多大な恩賞
動機2つに関しては作者の妄想ですw
順帝が即位したタイミングでの年齢は10歳前後。周りに言われるままに宦官を優遇した可能性も十分ありえます。

・皇叔
原作では(ry)
お前さん、自分の出自が本物だと証明しなくて良かったんか?(笑)
魏ルートの舌戦でも、自らも漢王朝に連なるとはっきりさせておいて『天子様を蔑ろにしている逆臣曹操を討つ』と言った方が大義名分としては頷きやすいと思うんですが、どうでしょう?

ご意見・感想等ございましたら記載をお願い致します。
以前から記載していますが、本作は感想返しを自重しています。
とは申しましても、皆様にご記載頂きました感想自体は全部目を通し、創作の糧ややる気へと還元させて頂いております。本当にいつもありがとうございます。
少なくとも完結までは、返答できないという不義理を働くかと思いますが、どうぞご了承ください。
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