春を護りにソラは翔ける   作:イモ天屋

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 この話は前話とセットなので初投稿です。


#0-2 Prologue

 

 ヘルメット団が占拠した校舎は大混乱に陥っていた。朝方の襲撃で体勢を立て直す前にロケットランチャーによって撃ち込まれたスモーク弾。濃密に広がる煙幕の所為でヘルメット団は敵部隊を完全にロストしてしまっていた。

 

「うわああああああああああ!!」

 

 恐怖にかられ手に持った銃を乱射する二人のヘルメット団。しかし放たれた弾丸は全て突進してくる鉄の塊によって防がれる。

 鉄塊はそのまま勢いを緩めることなく二人のヘルメット団の片割れに向かって突撃、足で力む事すらままならず、ヘルメット団は吹き飛ばされ廊下の壁にめり込んだ。

 鉄塊の正体は鋼鉄製の防弾シールド。あの謎の部隊の中でも一際長身な人物が装備していたものだ。そして今ヘルメット団を吹き飛ばしたのもまさにその人だった。

 ヘルメット団をシールドバッシュによって行動不能にした持ち手に、もう片方のヘルメット団が狙いをつける。

 

 ──相手が立て直す前に殺す!

 

「死n」

 

「寝ててや」

 

 そのヘルメット団の側頭部に、零距離で放たれた散弾が全て叩き込まれた。

 同じく壁の装飾品となったヘルメット団を横目にショットガンをリロードするのは関西弁が特徴的な人物。

 

「このまま我々に引きつける。後ろを頼むぞ、セツナ」

 

「ほいほい任せときリョウちゃん」

 

───

─────

 

 シールドとショットガンを持った少女達がヘルメット団と交戦してる中、物音も立てずに移動する3人の黒づくめの少女。先頭を進むのはエーテルと呼ばれたリーダー格らしき人物。その左右をスナイパーライフルと、四角い箱のような物をそれぞれ背負った二人が固めていた。

 

 やがて3人は一つのドアの前にたどり着いた。

 SR(スナイパーライフル)を持った少女は右側に、箱を背負った少女とエーテルは左側に立った。

 

 一瞬の静寂。

 

 箱を背負った少女がエーテルの方を叩く。

 

 それを合図にエーテルはドアを蹴破り部屋に突入した。

 

 右、左、クリア。

 

 続いて二人が部屋に入り込む。

 

 中にヘルメット団はいなかった。しかし無人でもない。手を縛られ猿轡はかまされた、恐らくはこの学校の制服を着た生徒達が数人。

 

 周囲を警戒しながらエーテルは彼女らに近づいていく。

 

 ひとまず猿轡を外してやると、息苦しかったのか荒く呼吸を繰り返した。

 

「大丈夫か?」

 

「……ッ……はい。ありがとう……ございます」

 

「ここの生徒か」

 

「は、はい」

 

「他の生徒は?」

 

「多分他の教室に……」

 

「なんでアンタらだけここに?」

 

「私達は、生徒会なので」

 

「アンタ生徒会長か」

 

「はい」

 

「なるほどな」

 

 手足を縛っていた縄を解く。他二人も手伝い、その部屋にいた生徒の拘束は全員解かれた。

 

 痛そうに縛られていた箇所をさする生徒を横目に傍らに控える箱を背負った少女に話しかける。

 

「ジャミングは?」

 

「もう解いたよ」

 

 それと同時にエーテルの持つ無線に通信が入る。

 

「どうした?」

 

『校舎内のヘルメット団は全員片付けたで』

 

「そうか、ご苦労さん」

 

『それと各教室に縛られた生徒が何人か詰められてたで』

 

「人数確認は俺たちには無理だな……あとでここの生徒会長に頼むとして」

 

 後は。

 

『ヘルメット団の数が少なかったのが気になるなぁ』

 

 別行動している二人が制圧したヘルメット団は十数人のみ。表でミニガンとガトリングガンに蜂の巣にされのびている連中を勘定に入れたとしても少なすぎる。この規模の学園を制圧するには。

 

「レン」

 

「はいよ」

 

「屋上に行ってくれ。イオが着陸する予定だから、"ラハティ"の準備を」

 

「奴ら戻ってくるかね」

 

「確実にな」

 

───

─────

 

 エーテルからレンと呼ばれたSRを持った少女が校舎の屋上に登ると、そこに武装ヘリが着陸するところだった。

 

「おう、お疲れレン」

 

 レンがヘリに乗り込むとパイロットが片手を上げて労うが、それを一旦無視してヘリ内の一角に近づく。

 

「どうしたよ」

 

「そろそろヘルメット団の連中が戻ってくるってさ」

 

「そう言えば情報にあった戦車を全く見なかったな」

 

「違う場所に隠してあるんだろうさ。カイザー製の戦車だからな。必要がない限り見られたくないんだろう」

 

「ご明察らしいぜ」

 

「あ?」

 

 パイロットが振り返って言う。

 

「通信だ。近づいてくる戦車あり。大隊規模」

 

───

─────

 

「そういうわけだから生徒会長さんはここにいてくれ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 部屋から出て行こうとするエーテルを慌てて呼び止める。

 

「ま、まさかあのヘルメット団と戦う気ですか!?」

 

「そうだが?」

 

「話聞いてました!?大隊規模の戦車部隊ですよ!?」

「あっ、もしかして他にお仲間が?」

 

「いや今ここにいるのは全員で5人だ」

 

「5人だけで戦う気ですか!?」

 

 だがエーテルは雰囲気を崩さず、逆にニヤリと笑った。

 

「モーマンタイだ、相棒がいるからな」

 

───

─────

 

「もっとスピード上げろよ!!」

 

「もう全速っすよぉ!」

 

 舌打ちするヘルメット団のリーダー格。

 スモーク弾に乗じて突入してきた5人組に、最初こそやる気満々だったもののどんどん制圧されていく自身の仲間を見て戦意を喪失。

 慌てて付近に潜伏させていた戦車部隊を呼び寄せ、自身はまだ接敵していなかった他のヘルメット団を招集してから離脱していたのだった。

 あの5人組は強い。あのまま校舎内で戦っても返り討ちにあっていただろう。だが校舎に残存していた戦力と戦車部隊を合わせれば勝機はある。

 

 この大兵力ですり潰してやる。

 

 あの学園が見えてきた。

 

「砲撃準備!!」

 

 リーダー格の声に応じてカイザー製の戦車の砲塔が照準を定める。このカイザーコーポレーションから格安で購入した戦車は素晴らしい。以前から使っていたヘルメット団の戦車よりもずっといい性能だ。

 

 これならば。

 

「あいつらを生き埋めにしてやれ!!」

 

 撃て、の意。

 

 号令から一斉に砲撃が始まるまでの一瞬。

 

 ヘルメット団はその一瞬を突かれた。

 

 ──ドゴォオン!!

 

「!?」

 

 味方の砲撃か、と思ったリーダー格は音のした方角を顧みて、

 

「は?」

 

 黒煙を上げて沈黙する味方の戦車を視界に収め絶句した。

 

(何が、)

 

 沈黙する戦車の向こう側。建物の壁。そこに先程はなかった穴に気づいた。

 

「横だァ───ッッ!!」

 

 リーダー格の叫び声をかき消しながら、建物の壁が爆音と共に弾け飛んだ。コンクリート片が飛び散り、土煙が一気に吹き上がる。その粉塵の中から、鋼鉄の怪物が現れた。

 

 黒づくめの、戦車。

 

「あいつらの仲間か!?」

 

 その戦車は正面装甲に瓦礫をまといながら、まるで獣のように低く唸り、砲塔をゆっくりと旋回させる。その狙いの先には──、

 

 当然ヘルメット団の戦車がいる。

 

「A2!避け──」

 

 警告を発しようとしたリーダー格を嘲笑うかのように主砲が吠えた。発砲音はこだまし、鼓膜を突き破るような衝撃波が全身を包む。思わず両腕で自身を庇ったリーダー格は、腕の隙間から見えた光景に愕然とした。

 

 1発の砲弾。

 

 たったそれだけでヘルメット団の、カイザー製の戦車は爆発、炎上していた。

 

「一撃だと……?」

 

 リーダー格が呆けている間にも再び黒い戦車の砲塔が動き始める。ゆっくりと。リーダー格はそれか鎌を構える死神のように見えた。

 

「も、目標変更!!あの黒い戦車をやれ!早く!!」

 

 リーダー格の指示に、だが不意を突かれ混乱している戦車部隊の動きは鈍い。その中でも比較的立ち直りの早かった戦車が敵の戦車に砲塔を向け──

 

 砲撃を放つ直前、彼方から飛来した()()に貫かれ、沈黙した。

 

───

─────

 

「ど真ん中ストラーイク」

 

 校舎の屋上、SRを装備していた少女が鈍い痛みの残る右肩を回しながら呟いた。

 彼女はたった今、仲間の駆る戦車の援護射撃をしたところだった。

 

 それに用いた銃は"異様"と形容するのが相応しい。

 

 全長およそ2メートルに達する巨大な銃身が、黒光りする鋼鉄の塊のような威容を備えている。銃身の根元には熱がこもり、うっすらと陽炎が立ち上っていた。

 

 名をラハティL-39。

 

 重戦車を撃破した実績を持つ怪物。

 

 大砲と見紛うほどのこの銃から放たれる20mmの弾丸の前にはヘルメット団の戦車の装甲など紙切れに等しい。

 

───

─────

 

 轟音。

 

「なんなんだよ……」

 

 再び黒い戦車により放たれた雷撃のような砲弾がヘルメット団の戦車の砲塔を吹き飛ばした。

 必死に反撃しようとするヘルメット団の戦車が、音速を超えてやってくる()()に貫かれる。

 

 また一つ、また一つと撃破されていく仲間の戦車達。

 

 最後に残った、リーダー格の乗った戦車に向けて、黒塗りの戦車の砲塔が向いていく。

 

「お前らなんなんだよぉ────ッッッ!!」

 

 リーダー格の絶叫に返事はない。代わりとばかりに叩き込まれた砲撃音を最後に、リーダー格の意識は途切れた。

 

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─

 

 ヘルメット団による学園の占拠。

 

 それは何処からか現れた黒づくめの戦闘部隊によって制圧された。

 

「そろそろヴァルキューレが来るだろうから、その辺に伸びてるヘルメット団はその()達に任せとけばいいよ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 屋上にて着陸しているヘリの前で、この学校の生徒会長は部隊のリーダーと思しき少女に頭を下げていた。

 しかし生徒会長は疑念を払拭出来ずにいた。なぜ辺境のしがない自治区の、この学校に高い戦闘力を持つ部隊がやってきたのか。

 

「気にすんな、物のついでだし」

 

 しかも学校帰りにちょっとコンビニ寄った、くらいのノリで。ちょっと、いや、だいぶ意味が分からない。

 

「で、助けた見返りとしてちょ〜っとばかしお金を払ってもらいたいんだけど」

 

 そら来た、と身構えた生徒会長に言い渡された見返りの金額とは……?

 

「500万」

 

「えっ」

 

「500万」

 

 安い。辺境の学校の財政で、ポンと出せる金額ではないが、かといって払えないというほどでもない。しかも武装ヘリや戦車を投入しておいてこの値段。採算は取れるのか?

 

「じゃあこの口座に振り込んどいてね〜」

 

 手渡される引きちぎられたメモ帳。それを見ると確かに何処かの口座の番号が書かれている。

 

「あ、ちょ……!」

 

 困惑する生徒会長を尻目にヘリに向かって歩き出すエーテル。ヘリにはすでに他のメンバーが乗り込んでおり、直ぐにでも出発しそうな雰囲気を醸し出している。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 なんとか呼び止めようと生徒会長は声を上げた。

 

「あ、あなたたちは一体……!?」

 

 それを聞いたエーテルは振り返る。待機しているヘリのローターによって生じた風で、彼女の髪はなびいていた。

 

「俺たちは」

 

 不思議と、その名前だけは、ローター音の中であっても明確に聞き取れた。

 

「Unit SORAだ」

 

 

 

 




 さてここからどうしますかね……。続きを書くかも迷ってる始末ですよ。
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