新せいきエヴァンゲリオン   作:七九六十

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第壱話 使徒襲来
第弐話 見知らぬ、天

・ザザーンして今度は守ると宣言して逆行。
 使徒じゃなくて人間相手に力の差を見せつけて百億万円請求すれば、大体の形になる第一話。


1 - 、、天(てんてんてん)
1-1 第3使徒(サキエル)戦 表(1)


 

 

 

 特務機関NERV(ネルフ)

 国際連合直属非公開組織であり、使徒と呼ばれる謎の存在を殲滅するための超法規的組織である。

 一般人が聞いても何のことやらサッパリの組織だが、自称国際公務員な人たちの集まりなのだ。

 

 さてそこに勤めるは葛城ミサト29歳独身。

 戦術作戦部作戦局第1課の課長という立派な肩書を持つが、そもそも使徒殲滅という仕事自体が世界中を見渡しても発生したことがないため、適切なモノなのかは誰にも分からない。

 

 ただし、1つだけ確かなことがある。

 給料が安いのだ。

 彼女の能力的にも、負わされる責任に対しても、給料が安いのだ。

 公務員だから仕方がないとはいえ、もう少しどうにかならないものか。

 

 そんなことを考えながらも彼女は1通の報告書を読み進めている。

 

『サードチルドレン碇シンジ 調査報告書』

 

 彼は本日昼過ぎに此処、第三新東京市に来る予定となっており、彼女が駅まで迎えに行く手筈となっている。

 母親とは死別しており、その関係で現在は京都に住む知人の家に預けられているとか。

 

「あ、その子なら先ほど第三新東京市駅に着いたって、保安部から連絡がありましたよ」

「はあっ?!」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 第三新東京市は将来の新首都として芦ノ湖北岸を開発して建設中の都市である。

 というのも今から15年ほど前、2000年9月13日に発生した大災害、通称セカンドインパクトと呼ばれる隕石の衝突によって発生した津波や地殻変動、海水面上昇に加え、これによって発生した紛争の余波で当時の首都である東京が壊滅してしまったのだ。

 

(観光するところがない)

 

 そんな街をお(のぼ)りさんよろしくキョロキョロしながら歩く少年、碇シンジ。

 機能性を重視し、建設中・工事中の区域も目立つこの街には、14歳の彼が楽しむような観光スポットは残念ながら存在しない。

 

 前述のセカンドインパクトにて地軸が移動したことにより、日本は常夏の国になった。

 彼にとっては生まれてからずっとこの気候のため少しは慣れているが、それでもコンクリートの輻射熱は耐えがたい。

 目についた喫茶店に入り、冷たいパフェでも食べながら街の案内パンフレットでも眺めようと思っていたのだが。

 

 

 

「あなたが碇シンジ君ね?」

 

 どうしてこうなったのか。

 いつの間にやら現れた黒服サングラスの人たちに囲まれ、連れてこられた地下施設。

 そこをさらに下ると地上と変わらぬ、というより地上よりも自然豊かな地下空洞(ジオフロント)が広がっていた。

 ピラミッド型の建物といういかにもな建造物まであって、まさに秘密結社のアジトという(おもむ)きである。

 

 流されるままに連れてこられた一室にて、彼は昼過ぎに駅で落ち合うはずの女性、葛城ミサトと遭遇する。

 遠方での待ち合わせだったために、もしもの事を考えて事前に移動を終えておこうと思ったのだが、まさかそのせいで前倒しでイベントが進むとは。

 観光を兼ねて街を散策し、そこで昼食をと考えていたのに台無しである。

 

「あなたが乗るのよ」

 

 途中で合流した金髪白衣の女性に巨大ロボット、正確には人造人間エヴァンゲリオン、その初号機というらしい紫色の物体を見せられた。

 しかもこれ、人類の最後の切り札らしい。

 さらに何故かこれに乗ることになった。

 

「分かりました。乗ります」

 

 そう返したときなぜか目の前の女性2人、そしてどこか遠くから『えっ?』という声が漏れ出てきた気がするが。

 

 彼とて人類の端くれである。

 人類が滅亡の危機にあるというなら、喜んで立ち上がるというのに。

 

 

 

 まあそれはともかく。

 プラグスーツと呼ばれる青いダイビングスーツのような、胸部を白い装甲のようなもので補強された服に着替えさせられ。

 さらには頭に一対の白い三角形のヘッドセットを取り付けられ。

 

 

 

 気が付けばコックピットのような座席に座らせられているのである。

 

 

 

A10(エーテン)神経接続、異常なし』

『LCL電荷率は正常』

『思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス』

『初期コンタクト、すべて問題なし』

『双方向回線、開きます』

『シンクロ率……』

 

 発令所では発進シーケンスが次々と進められていく。

 

「……シンクロ率は?」

 

 金髪白衣の女性───本件の技術的な責任者である赤木リツコは、報告の途切れたオペレーターに確認を行う。

 シンクロ率はエヴァンゲリオンとパイロットの神経回路同調率で、これが高いほど自在に操縦できるようになる。

 戦闘においては大事な目安となるため、確認は必須である。

 

『シンクロ率、出ません……』

 

 しかしオペレーターからの回答は無い。

 計器も反応しておらず、この大事な時に故障かと眉をひそめる。

 

『!? パイロットの反応がありません!』

 

 またもや計器の故障であろうか。

 これまで演習では何度も行ってきた手番ではあるが、実戦では初めてである。

 いろいろと不具合が出ているのかもしれない。

 

『!? 初号機、動いています!』

 

 そりゃあ動くだろう。動かすために準備したんだから。

 

 発令所のメインモニタの一角にはエヴァンゲリオン初号機の様子が映し出されており、皆が注目している。

 パイロットの動きとシンクロしているのだろう、首を左右に動かして周囲の様子を探っているようだ。

 

『へー、こんな感じなんですね』

 

 パイロット用のマイクからシンジの声が聞こえる。

 そのときに初号機自身の(くち)も動き、外部装甲の顎部ジョイントが破損したようだが些細なことである。

 巨大ロボットであるエヴァンゲリオンは、些細な動きでも周囲に大きな被害をもたらすことがある。そのため身体の方は入念に固定されており、逆に言えばそこが動かなければ問題ないのである。

 

 とはいえ初回でここまでスムーズに操縦できるのは異常なことなのだが、如何せんサンプル数が少ない。

 こういう事もあるのだろうと、そして使徒が目前まで迫っているこの状況では都合が良いと、深くは考えずに受け入れる。

 

「構いませんね?」

「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」

 

 戦術作戦部作戦局第1課の課長として指揮を取っていたミサトは、最高責任者である碇ゲンドウに承認を求める。

 彼は特務機関NERV(ネルフ)の最高司令官であり、同時に碇シンジの父親でもある。

 実の息子を死地に追いやるというのに、実に落ち着いた様子だ。

 

「発進!」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 そのころ地上では、使徒と呼ばれる巨大生物が街を徘徊していた。

 首の無い人型で、胸部に2つの仮面のようなモノ、腹部に大きな赤い球体を持っている、どこかプラグスーツのようなデザインのこの使徒は、一部界隈で『第3使徒サキエル』と呼ばれている。

 

 使徒は何かを探すように歩き回り、時折胸部の仮面から強力な光線を放ち、周囲を破壊している。

 やがて何かを見つけたのだろうか、その歩みを止める。

 

 すると周囲に警報が鳴り響き、地面に設置された巨大エレベータのハッチが開いてエヴァンゲリオンが射出される。

 敵対生物の目の前で射出機構に固定されたままというのは何とも無防備だが、使徒の方でも警戒しているのか、幸いにも動く気配はない。

 

 

 

『最終安全装置、解除!』

『エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!』

 

 悠長なセリフが聞こえてくるが、達人同士が隙を窺うが如く、2体の巨人は動きを見せない。

 

『シンジ君。今は歩くことだけ、考えて』

 

 初心者に対しては適切なのだろうアドバイスをリツコが行う。

 しかしパイロットであるシンジからは何も反応が無い。

 

「どうしたの?! なぜ動かないの?!!」

「落ち着いてミサト!」

 

 初の実戦、使徒を目の前にして動きをみせない初号機に、ミサトが()れる。

 リツコはそれを(なだ)めつつ、プラグスーツに組み込まれたセンサーが何もアラートをあげていないことを確認し、パイロットが落ち着いていることを認識する。

 死ぬかもしれない状況で冷静なのは違和感があるが、今はむしろ頼もしいとも言える。

 

 事前に聞いていた碇シンジの人物像とは異なり、使徒を前にして堂々とした立ち姿で対峙していた初号機が、ついに動き出す。

 

「歩いた!」

 

 パイロットには聞かせられない内容で沸き上がった歓声とは裏腹に、落ち着いた様子で歩を進める。

 

「よし、その調子で……」

 

 そこまで言ったミサトは、ふと気付く。

 その調子で、この後どうするのか、と。

 

 使徒の方からも近づいており、既に至近距離まで迫っている。

 

「シ、シンジくん!」

 

 彼女にできるのは、ただ呼びかけることだけだった。

 そしてそれが合図だったかのように、使徒の右腕が凄まじい速さで初号機を襲う。

 

「!?」

 

 しかしダメージを負ったのは攻撃を仕掛けた使徒の方であった。

 初号機は左腕を使って攻撃を()なすと同時に、その反動も利用して右の拳を叩き込んだのだ。

 それは腹部にこれ見よがしに付いている赤い球体にも傷を付け、その身体を揺るがせる。

 

 完璧なカウンターである。

 相手の勢いに加え、さらに本来なら身体を吹き飛ばすことに使われるはずのエネルギーを、すべて体内を破壊するために利用したのだ。

 

 しかし、今回はそれが(あだ)になった。

 今の一撃だけで(かな)わないと悟ったのか、使徒は身体を液状化させて初号機に覆いかぶさる。(こぶし)の届く範囲に居た初号機には()(すべ)がない。

 

「自爆する気!?」

 

 その意図を察知したミサトが叫ぶのと、どちらが早かったであろうか。

 初号機の眼前に迫った赤い球体が、強く輝くと同時に大爆発を起こすのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 白く輝いていた発令所のモニタが機能を回復し、現場の惨状を映し出す。

 

「……あれ?」

 

 しかし、覚悟していた光景はそこにはなく。

 無傷で(たたず)む初号機と、その隣には壁面にひびが見られるものの健在なビル。

 一部で小さな火の手は上がっているものの、特に被害らしい被害は見当たらない。

 

「……や、やったぞ」

「ああ、やったんだ!」

 

 それを認識すると同時に歓声が上がる。

 あまりにもあっさりとした決着であったが、勝ちは勝ちである。

 初の使徒戦を乗り切った安堵と達成感で周囲はお祭り騒ぎである。

 

 一部、思惑通りにならずに憮然としている者たちがいるが、些細なことである。

 その内の1人である最高司令官の碇ゲンドウは席を立ち、同じく副司令官である冬月コウゾウと共に発令所を後にする。

 

「計画通り、とは行かなかったな」

「………………まだチャンスはある」

 

 彼らはこれから国連軍の相手や、各部署からの戦後報告を受ける身である。

 なので一足先に業務へ戻ることを建前に、勝利に沸く職員たちに背を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

「よくやったわ、シンジ君」

 

 周囲と喜びを分かちあったミサトは、そういえば忘れてたと慌てて回線をつなぐ。

 今回の一番の功労者はいまだ地上に(たたず)んでいたのだ。

 

「機体を回収するから、今から指示するポイントに向かってくれる?」

『了解です』

 

 気のせいか、少し声の感じが先ほどまでと異なるような。

 戦闘による高揚のせいなのか、それとも放置してしまったことで不機嫌になってしまったのか。

 後者だったらマズイと、ミサトはモニタ越しに彼の様子を(うかが)おうとするが。

 

「あれ? シンジ君の姿が映らないわね?」

 

 パイロットはエントリープラグと呼ばれるコックピットにて操縦を行う。

 しかしそのプラグ内の映像の中に、シンジの姿が見当たらないのだ。

 

「…………!?」

 

 座席の上はおろか、隠れられるスペースなど無い狭いプラグ内のどこにも、彼の姿は無かったのだ。

 

 

 

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